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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第十二話マリクvs城之内 苦痛と絶望の闇

第十二話マリクvs城之内 苦痛と絶望の闇 作:サクラ

「ふぅ〜。よし!」

城之内は深呼吸をしてデュエル場に立つ。対戦相手であるマリクはまだ到着していないため、緊張を解そうと深呼吸や屈伸運動をしたりしてアップをする。するとエレベーターが到着した音が聞こえて来た。

「来たな……!マリク!」

マリクはニヤニヤ笑いながらデュエル場へと上がっていく。

「マリク!テメェだけは絶対許さねぇ!卑怯なマネをした上に、俺たちの絆を弄びやがったテメェはこの俺がぶっ倒してやる!」
「クハハ……雑魚の分際でよく吠えるな。安心しな……。直ぐに楽にしてやるからよぉ」

マリクはニヤニヤと笑い続ける。城之内とデッキを交換してお互いカットアンドシャッフルをする。そしてデッキをすとデュエルディスクにセットした。

「では決勝トーナメント第3戦、城之内克也vsマリク・イシュタールのデュエルを開始する。デュエル開始ぃ!」

「「デュエル」」

お互いのデュエルディスクが変形する。

「俺の先攻……。先ずはコイツだ。《ギル・ガース》を攻撃表示で召喚。更に3枚カードを伏せて、魔法カード《天よりの宝札》発動。これでお互い手札が6枚になるようにカードをドローする。ターンエンド」

マリク LP4000
ギル・ガース ATK1800

城之内LP 4000

「俺のターン!ドロー!カードを2枚伏せて、《アックス・レイダー》召喚!攻撃力1700!ターンエン──ッ!?」

城之内のターン終了を宣言した時、辺りが突然重苦しい暗闇に包まれた。明らかに飛行船による雲の影響などではなく、これは……

「闇のゲームの始まりだぜ?城之内ぃ……」
「この空気、遊戯がペガサスと戦った時と同じか……!?」

遊香は居なかったが、遊戯と城之内は『決闘者の王国』に参加してミレニアムアイを持つペガサス・J・クロフォードとデュエルをした事があった。あの時もペガサスの奥の手として闇のゲームステージを作り出していた。

「へ……受けてやるぜ!闇のゲームをな!そしてマリク、テメェをぶっ倒す!」
「クハハ、イキがいいな……。いい事を教えておいてやるよ……。この闇のデュエルステージで起こることは、モンスターとの命の共有。自分のモンスターが倒されれば、そのモンスターと同じ痛みを受けてもらう。そして、敗者には罰ゲームとして永遠の深い闇の世界へと身を沈めていく。ゆっくり……ゆっくり、永遠の苦痛と共に死の世界へ落ちていく。クハハ、どうだ?興奮するだろう?いいなぁ城之内。もうじきお前はそれを味わえるんだからよぉ!」

マリクは大きく笑う。城之内はマリクとこの空気に飲み込まれないように気をしっかり持つ。

「では、俺のターンだなぁ。ドロー……来たぜ!俺は《処刑人マキュラ》を召喚。更に装備魔法《黒いペンダント》を装備。これで《マキュラ》の攻撃力が500上昇!バトルだ2100となった《処刑人マキュラ》で《アックス・レイダー》に攻撃!」
「させるかよ!罠カード発動!《鎖付きブーメラン》!これで俺の《アックス・レイダー》も攻撃力が500アップする!返り討ちにしろ!《アックス・レイダー》!」

アックス・レイダーは出現した鎖に繋がれた鉄製のブーメランをグルグル回して、突っ込んでくる《処刑人マキュラ》を倒した。

「ぐっ……はは。いいねぇ……そう来なくちゃ面白くない」

気味悪く笑うマリク。余裕を崩さないその姿に城之内は気を引き締める。

「だが、《黒いペンダント》には更なる効果があってなぁ……。こいつを装備したモンスターが墓地に送られた事で、貴様に500のダメージを与えるのさ!」

城之内のライフから500引かれる。なんて男だ。城之内は思う。自らが戦闘によって先制ダメージを与えて流れを引き寄せたつもりが、すぐさま自分のライフを逆転されてしまった。城之内は唇を噛みながらマリクを睨み付けた。

マリク LP3900
城之内 LP3500

「まだ終わりじゃあないぜ?《処刑人マキュラ》は墓地に送られたターン、罠カードを手札から発動出来るようになるんだよ!よってこのカードを発動《命の綱》」
「《命の綱》?」
「教えてやるよ。《命の綱》はモンスターが戦闘で破壊され墓地に送られた時に手札を全て捨てる事で、破壊されたモンスターの攻撃力を800上げて蘇生する事ができる!復活しろ!《処刑人マキュラ》!」

マリクの目の前に墓地に続くゲートが開かれ、そこに一本の綱が垂らされる。少しずつ上がってくる綱を見ていると、先程アックス・レイダーに倒されたはずの処刑人マキュラが上がって来た。マリクの宣言通り、マキュラの攻撃力は2400まで上がっており、城之内の鎖付きアックス・レイダーの攻撃力2200を上回っていた。そして今はまだバトルフェイズである。

「《処刑人マキュラ》で《アックス・レイダー》を攻撃!」

マキュラの手にある鋭い鉤爪でアックス・レイダーを切り刻んだ。それと同時にモンスターと繋がる城之内も同じダメージを受ける。

「ぐあ!……いててて。何だよ今のは!?」
「言っただろう?今の貴様はモンスターと繋がってるってなぁ!それにまだ《ギル・ガース》の攻撃が残っている……クハハ、ダイレクトアタックはモンスター共有の痛みとは比べものにならないぜ?やれ!《ギル・ガース》!城之内にダイレクトアタックだ!」
「そうはさせない!速攻魔法《スケープゴート》!その攻撃は羊トークンが受ける!羊トークンはモンスターでは無いため、痛みはないだろう?」

ギル・ガースの攻撃が羊トークン一体に直撃する。羊トークンは真っ二つに切り裂かれて消滅した。

マリク LP3900
城之内 LP3300


「チッまぁいい。俺はターン終了」
「俺のターン!ドローだ!よし、俺は《漆黒の豹戦士パンサー・ウォリアー》召喚!攻撃力2000だぜ!」

隻眼の黒豹の剣士が現れ、マリクに向かって剣を構える。

「城之内!貴様がモンスターを召喚した瞬間、俺の伏せられた罠カードが発動する!《戦線復帰》発動!俺の墓地のモンスターを守備表示で場に蘇生するカードだ!蘇れ《プラズマイール》!」

マリクのフィールドに機械仕掛けの虫の様なモンスターが現れる。そして、そのモンスターはそそそっと城之内のパンサー・ウォリアーに近づくと、体を締め上げていく。

「《パンサー・ウォリアー》!?」
「ハハハ!《プラズマイール》の特殊能力が発動したのさ!《プラズマイール》が場に召喚、特殊召喚された時に相手モンスターに装備され、そのモンスターの攻撃力を相手ターンのエンドフェイズに攻撃力を500下げていく。そして0になった瞬間、そのモンスターは破壊されるのだ」
「何だと!?」

プラズマイールは少しずつ締め上げる力を強めると、パンサー・ウォリアーは苦しそうに声を漏らす。

「くっターンエンドだ……」
「この瞬間!《プラズマイール》の効果発動!やれ!《プラズマイール》!」

プラズマイールは電磁波を起こしてパンサー・ウォリアーを苦しめ始めた。そしてパンサー・ウォリアーと繋がっている城之内も、プラズマイールの発生している電磁波の影響を受ける。

「ぐわああ!」

城之内は絶叫する。それを見ているマリクは愉快そうに笑い続ける。その光景はあまりにも残酷だった。

「これにより《パンサー・ウォリアー》の攻撃力は500下がって1500ポイントだ。ハハハ!俺のターン!ドロー……。いいカードを引いたぜ。カードを伏せてターン終了だ」

マリクはドローしたカードを伏せるとモンスターで攻撃することなくターンを終えた。
(《スケープゴート》を破壊しに来なかっただと?何か裏があるのか?)
城之内はマリクの動きに戸惑いながらカードを引いた。マリクはプラズマイールによって攻撃力を下げて戦闘破壊が可能なラインの筈なのに攻撃してこなかった。ということはあの場に伏せられたカードは確実に罠カードだということになる。

「だが罠だと思って攻撃を躊躇してたら、そのまま不利になっていく。なら前進あるのみだ!《蒼炎の剣士》召喚!そして装備魔法《稲妻の剣》を装備させ、攻撃力800アップだ!行け!《蒼炎の剣士》で《処刑人マキュラ》を攻撃!」

蒼炎の剣士は稲妻の剣を左手に持ち、二刀流の構えを取る。そして某星屑の剣戟の如くマキュラを斬り倒した。

マリク LP3700
城之内 LP3300

「どうだマリク!《処刑人マキュラ》は墓地に送られたターン手札から罠カードを発動出来るが、テメェの手札は0!よって発動できるカードは無いぜ!」
「フン、この程度でいい気にならない事だな城之内。貴様の《パンサー・ウォリアー》は攻撃力1500。俺の《ギル・ガース》を倒す事は出来ない!ハハハハハハ!」

マリクは挑発を含めながら笑う。しかし、城之内には秘策があった。

「ハハハハハ!そいつも解決済だぜ!マリクちゃん?」
「何?」
「《蒼炎の剣士》には特殊能力があるのさ!自身の攻撃力を600下げる事で、エンドフェイズまでこいつ以外の戦士族の攻撃力を600上げる事が出来るんだよ!」
「だが残念ながら《パンサー・ウォリアー》は獣戦士族モンスターだぜ?戦士族とは別物。全く違う種族なんだよ!クハハハハハ!!」
「知ってる。だからこいつを使うのさ!速攻魔法《コード・チェンジ》!このカードを発動後、ターン終了時までの間に1度だけ、カードの効果テキストに記された種族を自分の選択した種族に変更する事ができる!《蒼炎の剣士》の適用される種族は戦士族から獣戦士族に変更!これで《パンサー・ウォリアー》の攻撃力は2100になって《ギル・ガース》を上回ったぜ!いけ!《パンサー・ウォリアー》!『追撃のソードアタック』」

プラズマイールに縛られながらも、どうにか腕を間から出して羊トークンの魂を受け取りマリクに斬りかかりにいく。

「いい気になるのもそこまでだ城之内!罠カード発動!《アルケミー・サイクル》!自分のモンスターの攻撃力を0にする!」
「何!?自分のモンスターの攻撃力を0にするだと!?」

城之内はマリクの意味不明な動きに驚きを隠せない。攻撃力を0にすればパンサー・ウォリアーの今の攻撃力、2100をモロに食らってしまう。それをわざわざするとは正気とは思えない。

「更に俺はこのカードを発動するぜ?罠カード《遺言の札》!俺のモンスターの攻撃力が0になった場合、俺の手札が5枚になる様にカードをドローする!」
「なんだって!?」
「手札が増えた事で俺の戦術の幅は広がった。そしてこのターンは《マキュラ》によって手札から罠カードを発動できる!手札から罠カード《パワー・ウォール》発動!戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0になるように500ダメージにつき1枚、自分のデッキの上からカードを墓地へ送る!」

マリクは5枚のカードをデッキの上から抜き取って墓地に送る。ギル・ガースは破壊されたが、おかげで『あのカード』を墓地に送る事が出来た。使う事は無いだろうが、奥の手として準備をしておくマリク。

「《アルケミー・サイクル》の対象になったモンスターが破壊された事で、俺はカードをドローする!クハハ!」
「…….ターンエンドだ」
「おっと、《プラズマイール》の電撃地獄の時間だぜ城之内ィ!」

再びプラズマイールの電磁波がパンサー・ウォリアーと城之内に襲いかかる。パンサー・ウォリアーの攻撃力は1000まで下がってしまった。

「なんて奴なの……。一瞬で手札を回復させるだけじゃなくて墓地肥やしまでやり遂げるなんて……」
「ああ。一見城之内君の方が有利に見えるが、流れは完全にマリクの方に傾いている」

表の遊香と遊戯はマリクのコンボに冷や汗を流す。以前にも説明した通り、デュエルモンスターズは手札の多い程戦術が広がる。そして墓地が肥えていれば更に柔軟な動きが出来るようになるのだ。

(頑張って!城之内君!)
(頑張ってくれ!城之内君!)

遊香と遊戯は城之内の勝利を願う。ターンはマリクに代わった。

「俺のターン、ドロー……。《リバイバルスライム》を召喚!」
「あれは!?人形のデュエルの時のスライムモンスター!」

幽霊のようなフォルムを持つスライムが浮き上がる。

「墓地の《ADチェンジャー》の効果により、《リバイバルスライム》を守備表示に変更。そして、カードを2枚伏せてターンエンドだ」
「俺のターン!ドロー!(遊戯が言っていたスライムモンスター。どんな効果があっても流れをこっちに持ってくる為に攻撃するぜ!)《蒼炎の剣士》で《リバイバルスライム》を攻撃!」

蒼炎の剣士は再び二刀流でリバイバルスライムを粉々になるまで斬り裂いた。しかし、

「な、何!?」

リバイバルスライムはカケラとなった体を集め、再生していく。

「《リバイバルスライム》は戦闘で破壊され墓地に送られた時、再生し蘇る。残念だったなぁ城之内!ハハハ!」
「戦闘で破壊されると瞬時に再生されるモンスター!?そんなのありかよ!」

城之内は舌打ちしつつ対処法を考える。リバイバルスライムは戦闘で破壊されるとその再生能力で蘇る。
そして城之内のエンドフェイズとなりプラズマイールの電撃攻撃でパンサー・ウォリアーは500になり、なんだか息も荒くなってきているようにもみえた。

「では俺のターン。ドロー。《リバイバルスライム》をリリースしてアドバンス召喚。《地獄詩人ヘルポエマー》召喚!これでターン終了」

攻撃しない……?城之内は不思議に思う。不死のモンスターをリリースしてまで召喚した攻撃力2000のモンスター。何かがあるのだろうと城之内は慎重に分析する。

「俺のターン!ドロー!よし、このカードで攻める!《パンサー・ウォリアー》をリリースしてアドバンス召喚!絽馬!俺に力を貸してくれ!出でよ《人造人間サイコショッカー》!」

城之内の場に長身の人型のモンスターが現れる。

「《サイコショッカー》だと?」
「こいつは俺がこのバトルシティで戦ったライバル達から受け取った魂のカードだ。マリク!テメェには分からないだろうがな、本当にカードを大切にしていれば心が宿るんだ!それをテメェに教えてやる!バトルだ!《サイコショッカー》で《地獄詩人ヘルポエマー》を攻撃!『電脳エナジーショック』!」

サイコショッカーは両手から高圧の電磁波の塊を作り出す。そしてそれをヘルポエマーに向かって発射された。ヘルポエマーは電磁波を受けながら消滅する。そしてヘルポエマーと痛みを共有しているマリクも同じように電磁波で痺れる。

「ぐああ!」
「どうだ!これだけじゃねぇ!こんなもんじゃあまだ終わらねぇぞ!」

城之内はマリクに睨み付ける。マリクは俯きながら動かない。

「ハ……ハハ……」

マリクはいやらしく笑いながら顔を上げる。

「ハハハ……気持ちいいよ。思った様にデュエルが運ばれていくのはなぁ!」
「何!?」

城之内は慄く。マリクの言葉はハッタリなのか、それとも何か秘策があるのだろうか。マリクは嗤っていた。
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ター坊
少し前倒しになって実現した城之内VS闇マリク。おおよそ原作のカードを駆使した忠実な流れになっていますね。 (2018-11-10 18:54)
サクラ
結構オリカ使っちゃいましたが、再現度高めで頑張りました笑 (2018-11-13 19:22)

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