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第十話 遊香vsトラップデッキ 作:サクラ
前書き
はじめましてサクラです。
1ヶ月ぶりの投稿になり申し訳ございませんでした。そして、今更ですが今作の注意です。この作品は作者の自己満の要素が強いです。オリ主の原作介入による元々の原作のキャラクター(主に城之内君の)活躍の場を奪う展開等があったりします。そう言った点にご注意下さい。全然OKな方はどうぞ!以下本編です。
遊香と男はエレベーターで天空デュエル場に向かっていた。お互い喋るわけでもなく、気を集中させる。遊香は偶に男の方に目を向けてみるが、男は目を瞑って壁に寄りかかっている。
(コイツはマリクではない事は知っている。トラップデッキのリシド。これが奴の本当の名だ。コイツのデッキには《ラーの翼神竜》のコピーカードが入っている。千年アイテムの所持者か神に選ばれた者にしか神のカードは扱えない。記憶ではコイツの対戦者は城之内だったが、今回は私。コピーの神を出す前に捻り潰してあげるよ……リシド)
エレベーターが止まると直ぐに扉が開き、遊香達はデュエル場に登っていく。観戦スペースと違い、より風を遮ぎる物が無いためモロに冷たい風がキャミソールとショートパンツ姿の遊香に吹いてくる。
「これよりバトルシティ決勝トーナメント第2回戦を開始いたします!」
遊香と男は互いのデッキを交換しシャッフルする。男はシャッフルしながら遊香を見る。いや、見るというより睨みつけていた。
ある程度シャッフルをすると互いのデッキを元に戻す。
「それではデュエル開始ぃ!!」
「「デュエル」」
デュエルディスクが変形して手札を5枚ドローする。
「先攻は私からだ。私は永続魔法《王家の神殿》を発動!野崎遊香よ。これから貴様が挑むのは、ファラオの秘宝眠りし神殿。そこには数々の罠が仕掛けられている。それを掻い潜る勇気があるか?」
「ふふ。この私に挑戦状を叩きつけるとは、面白い。いいだろう。お前の戦術を破り王家の神殿にたどり着いてやる」
「ここでは墓守以外は誰であっても謙虚な存在でなければならない。私はカードを4枚伏せ、ターン終了だ」
早速全てのカードを伏せた男ことリシド。トラップデッキというだけあって、スタートからのガン伏せは想定内だった。遊香はデッキに指を掛ける。
「私のターン、ドロー。私は手札から───」
「その瞬間!罠カード発動!《魔封じの芳香》!」
「何?」
「野崎遊香。お前のデッキは《魔導書》魔法カードを主力としたデッキという事は調べがついている。そしてこの罠カード《魔封じの芳香》は魔法カード発動する為には一度伏せなければ発動する事が出来なくなるカードなのだ」
「ふ、何とも面倒なカードを出してくれたな……だが、私がその様な魔法封じの対策をしていないと思うか?来い《魔導戦士ブレイカー》」
剣を持った赤い魔術師が現れた。魔術師は剣を構えると肢の所の六芒星が光り出した。
「これで《魔導戦士ブレイカー》に魔力カウンターが1つ乗った。そしてこれを取り除く事で、魔法罠カードを一枚破壊出来る様になる」
「ではその召喚時に罠カード《バージェストマ・カナディア》発動!《魔導戦士ブレイカー》は裏側守備表示になって貰おうか」
「ほう……カードを3枚伏せ、ターンエンド」
遊香は心の中で舌打ちをする。予想以上にリシドの自分に対するメタを張っていたとは思いもしなかった。
「私のターン。ドロー。罠カード《バージェストマ・ビカイア》発動!手札の《バージェストマ》を墓地に送り、カードを二枚引かせてもらう。そして私が罠カードを発動した事により墓地に眠る古代生物達が目を覚ました」
「お、おい見てみろよ!マリクの野郎のフィールドに何が蠢いてるぞ!」
「あれは!?」
観戦している城之内と遊戯が声をあげる。リシドのフィールドには2体の魚の様な虫の様な生物が出現した。ぐねぐね動くそれは何とも言えない物だ。
「私の《バージェストマ》達は墓地に存在している時に罠カードを発動したことで墓地からモンスターカードとして蘇るのだ。《バージェストマ・マーレラ》!《バージェストマ・カナディア》!そして私は《バージェストマ・マーレラ》をリリースし、《聖獣セルケト》をアドバンス召喚。この《聖獣セルケト》こそ神殿の守り神だ。やれ!裏守備表示の《魔導戦士ブレイカー》を攻撃!」
蠍の様な姿をした聖獣セルケトは両手のハサミで魔導戦士ブレイカーを挟み込み、頭からムシャムシャ食べ始めた。あまりにも無残な光景な為、観戦者達は顔を背けたり目を瞑ってたりする人もいた。対戦者の遊香も少しではあるが顔が引き攣っている。
「身の毛もよだつ光景だろうが、これにより《聖獣セルケト》は成長し攻撃力が500上昇する!これで《セルケト》の攻撃力は3000となった!」
セルケトの身体が光り、身体が変化する。二足歩行になり、ウジャト眼でこちらを睨み付けてくる。
「ほう、モンスターを捕食する事で攻撃力を上げていくモンスターか」
「そうだ。そして《セルケト》に捕食されたモンスターは除外される」
遊香はブレイカーをデッキケースに入れる。このデュエルディスクには除外ゾーンが設置されていない為、プレイヤーによってはポケットに入れたりする事もあるが遊香の場合はデッキケースに入れるようだ。
「私はカードを伏せ、ターン終了だ」
「私のターン、ドロー。1ターン経ったことで伏せたカードを発動する。魔法カード《グリモの魔導書》。デッキから《魔導書》カードを手札に加える。更に伏せた魔法カード《テラ・フォーミング》でデッキからフィールド魔法カードを手札に加える」
「フィールド魔法……」
「そして、カードを伏せてターンエンド」
「ふ、余程この《魔封じの芳香》が効いているようだな野崎遊香よ。だが、貴様だけは容赦はしない!武藤遊戯同様抹殺してくれる!私のターン。ドロー!私は伏せていた罠カードを発動する。神殿の兵士《アポピスの化身》!」
罠カードから蛇の兵士が現れた。アポピスの化身はこの時代では珍しい罠カードでもあり、モンスターカードでもあるカードだ。
「《アポピスの化身》は1800。《聖獣セルケト》は3000。2体の攻撃力の合計は4800でモンスターの居ない貴様のライフポイントは一気に0になるだろう。その前に1つ問いたい。貴様は何故この大会に参加したのだ?」
「何?」
「神のカードの為か?それとも決闘王の称号の為か?答えろ野崎遊香。いや、野崎遊香の邪悪なる魂よ」
リシドの突然の問いに虚を突かれた遊香。だが、直ぐに何時もの自信に溢れた表情に戻る。
「私の目的は、今はまだない。が、お前たちは知っているだろう?神のカードはただのカードではないという事を。それこそ私たちの記憶を取り戻す為のキーパーツだということをね!」
その瞬間リシドの瞳が揺れる。3枚の神のカードはただのカードではないと言う事実は創造主であるペガサス・J・クロフォードと自分たち一部の墓守の人間しか知られていないものだった筈だ。それを何故この少女は知っているのだろうか。リシドはチラッとナムこと本物のマリクの方を見る。マリクも遊香へ鋭い目線を向けている。
怪しい。この少女は怪しすぎる。どこまで知っているのだろうか。
「神のカードが記憶を取り戻す為のキーパーツだと!?」
観戦席で遊戯が声を漏らす。
「その通りだよ遊戯君。いや、『名も無きファラオの魂』か。君はイシズと呼ばれる女性にこの大会に参加する様に言われた。それは何故だと思う?簡単な事さ。君に神のカードを集めさせ、記憶を取り戻させる為だ。その為の試練だとね」
「何故俺の参加した理由を知っている?まさか貴様、また魂を!?」
「ふふふ。勘が鋭くて助かるよ。そう、イシズの魂は今私の体の中に幽閉されているよ。だが、勘違いはするな?これは彼女の自業自得だ。私を消そうと現れた彼女を返り討ちにしてやっただけだ」
遊香もマリクの方を見ると、凄まじい形相で此方を睨み付けていた。
「貴様……よくもイシズ様を……!許さん!やれ!《聖獣セルケト》《アポピスの化身》!!野崎遊香に裁きを与えろ!」
セルケトとアポピスが一斉に遊香に襲いかかる。セルケトに両腕を挟まれ、アポピスに斬られた。遊香は頭を垂らして動かなくなった。
「終劇だ。審判」
「は、はい!バトルシティ決勝トーナメント。第2回戦勝者はマリ──」
「ふふふ……」
遊香が頭を垂れながら笑い出す。
「審判、私のライフポイントを見てもらおうか」
「は?……な!?8800だと!?」
「!?」
審判もリシドも遊香のライフポイントゲージを見て絶句する。
「攻撃宣言時に罠カード《レインボー・ライフ》を発動しておいた。これにより、このターンは全てのダメージが回復効果に変換される。戦闘ダメージも例外ではない」
「くっ」
ふと遊香は笑うと、
「さて、デュエルを再開する前に1つ種明かしをしてもらおうか。なぁ……リシド」
「!!」
「何!?」
リシドの目が大きく見開かれる。海馬は思わず声をあげ、観客席のマリクも同様に驚愕の表情を露わにしていた。それだけじゃない。観客席の人達も全員が驚いていた。
「リシド!?遊香!そいつはマリクじゃねぇのか!?」
「ああ。この男はマリクではない。マリクではないが、近しい男なのだろう?」
遊香が城之内にそういうと、リシドに向き直す。リシドは凄い眼力で睨み付けてくるが、遊香はそれを愉快そうに笑う。
(やはり……奴からは闇の力を感じなかった。遊香のいう通りマリクでは無かったか。では、本物のマリクは?)
遊戯はチラッとナムの方を見る。
(ば、馬鹿な……!何故奴はわかった!?いや、それ以上に何故リシドの名を知っているんだ!?)
ナムことマリクは遊香へこれでもかというぐらい睨み付けてている。
「何を馬鹿な事を!私こそマリク・イシュタールだ!この千年ロッドが目に入らないのか?」
「ふふ。そんな贋作でこの私を騙せるとでも?」
リシドは冷や汗をかきながら、それでも千年ロッドを遊香に向ける。
(マズイな。このままでは僕の計画が狂ってしまう。リシドよ!)
(はい、マリク様)
(野崎遊香は神のカードでトドメを刺せ!)
(しかし、私のデッキには神のカードは入っておりません)
(それはどうかな?お前の伏せてあるカード、そいつを使ってデッキの中を見てみな!)
リシドは伏せておいたカードを発動する。
「私は魔法カード《タイム・カプセル》発動!これにより、デッキからモンスターカードを一枚ゲームから取り除く。そして2ターン後のスタンバイフェイズに手札に加える!……ッ!?」
(何故このカードが私のデッキに!?)
(どうだ?あっただろう?リシド、そいつを選べ。そいつはグールズの技術によって作られたコピーカードだ。僕はコピーカードでの実験の結果、ある事が分かった。コピーカードには使用者の心が試される。墓守の鍛錬を受け、強靭な精神力を持ったお前ならそのカードを使いこなせるはずだ!)
(マリク様……)
「私はこのカードを除外する。そして、教えてやろう。私が《タイム・カプセル》によって未来に送ったカードは神のカードだ!これで私がマリクである事が証明されるだろう!ターンエンドだ!」
「私のターン、ドロー。《青き眼の乙女》召喚。ターンエンドだ」
「攻撃力0だと?」
リシドは目を細める。攻撃力0のモンスターなどを素で置いておくなど罠以外の何者でもない。リシドのターンだが、彼は残り1つの魔法罠カードゾーンにカードをセットし、ターンを終えた。再び遊香のターン。
「私のターン、ドロー。(来た!これで切り札を呼び出せる!だが、《魔封じの芳香》ですぐに発動ができない。ここは伏せておくか)カードを3枚伏せ、ターンエンド」
「私のターン。ドロー。これで、《タイム・カプセル》の封印は解かれた。これにより《ラーの翼神竜》を手札に加える。2枚目の罠カード《アポピスの化身》を発動!現れろ《アポピスの化身》!」
セルケトの隣にもう一体のアポピスの化身が現れた。これで生け贄となるモンスターが3体揃った。すると、雲が厚くなっていく。そしてあたり一帯に雷が落ちる。
「これより、神のカードを召喚する!」
遊香はニヤリと笑う。
「私は2体の《アポピスの化身》と《聖獣セルケト》を生け贄に捧げ、神!《ラーの翼神竜》を召喚する!!」
リシドが三枚のカードを墓地に送って召喚されたのは、ラーの翼神竜だ。しかしその姿は幻影の様にユラユラ揺れており、安定しない。
「どうだ!これでも私がマリクではないと言うか!?野崎遊香よ!」
「……」
遊香は黙ってラーの翼神竜を見つめる。
「ぐうの音も出ないようだな。《ラーの翼神竜》の特殊能力を教えてやろう!《ラー》の攻撃力と守備力は生け贄に捧げたモンスターの攻撃力の合計値となる!よって、攻撃力は6600だ!そして、神には相手のあらゆる効果を受け付けない能力も備わっている!攻撃力0の《青き眼の乙女》と共に仕掛けられている罠など、《ラー》には通用しない!やれ!《ラーの翼神竜》の攻──」
「罠カード《威嚇する咆哮》発動。こいつは神に対するカードではない。よって適用されるだろう?」
「チッ……このターンの攻撃宣言が出来なくなったか。ターンエンド」
観客席の人達は圧倒されていた。遊戯の時のオシリスの天空竜もそうだったが、リシドのフィールドにいるラーの翼神竜も凄まじい威圧感が場を支配していたからだ。しかし、
(これは……本当に神の姿なのか?まるで幻影のようだが……)
遊戯の中に疑問が浮かぶ。その疑問は海馬も同じ様だった。海馬もオベリスクの巨神兵の所有者であるが故に今のリシドのラーの翼神竜には違和感しか無かった。周りの他の人達には違和感は特に感じられない様で、リシドを完全にマリクだと信じきっていた。
「さぁ!野崎遊香よ!神の前で最後の足掻きをしてみせろ!」
「ふふふ……足掻きだと?違うな。リシド、お前などに神は操れない!」
遊香の千年ピアスが光る。そして遊香はカードをドローした。
「リシド。神を操るとはどういう事か、今見せてやろう!リバースカードオープン!魔法カード《死者蘇生》!」
「何……?」
空から再び雷が落ちる。それも先程とは比べ物にならないぐらいの数だ。
「私が蘇らせるのは……」
「ま、まさか……そんな事があり得るのか!?」
遊香はニヤリと笑う。その美しい容姿からは想像できない程、邪悪で妖美な笑顔で。
「《ラーの翼神竜》を蘇生する!!」
遊香の墓地から火柱が上がる。火柱は高く高く舞い上がり、雲の切れ間に吸い込まれる。そして、雲から何本もの光の線がデュエル場を包み込みそれは現れた。
「《ラーの翼神竜》……!!」
「同じ神のカードが二枚だと!?」
海馬は驚きのあまり叫ぶ。リシドもマリクもこれまでで一番の表情を浮かべていた。
そして遊香は言い放つ。
「さぁ、始めようか!」
後ろのラーの光を受け、今の遊香の姿は神々しかった。
はじめましてサクラです。
1ヶ月ぶりの投稿になり申し訳ございませんでした。そして、今更ですが今作の注意です。この作品は作者の自己満の要素が強いです。オリ主の原作介入による元々の原作のキャラクター(主に城之内君の)活躍の場を奪う展開等があったりします。そう言った点にご注意下さい。全然OKな方はどうぞ!以下本編です。
遊香と男はエレベーターで天空デュエル場に向かっていた。お互い喋るわけでもなく、気を集中させる。遊香は偶に男の方に目を向けてみるが、男は目を瞑って壁に寄りかかっている。
(コイツはマリクではない事は知っている。トラップデッキのリシド。これが奴の本当の名だ。コイツのデッキには《ラーの翼神竜》のコピーカードが入っている。千年アイテムの所持者か神に選ばれた者にしか神のカードは扱えない。記憶ではコイツの対戦者は城之内だったが、今回は私。コピーの神を出す前に捻り潰してあげるよ……リシド)
エレベーターが止まると直ぐに扉が開き、遊香達はデュエル場に登っていく。観戦スペースと違い、より風を遮ぎる物が無いためモロに冷たい風がキャミソールとショートパンツ姿の遊香に吹いてくる。
「これよりバトルシティ決勝トーナメント第2回戦を開始いたします!」
遊香と男は互いのデッキを交換しシャッフルする。男はシャッフルしながら遊香を見る。いや、見るというより睨みつけていた。
ある程度シャッフルをすると互いのデッキを元に戻す。
「それではデュエル開始ぃ!!」
「「デュエル」」
デュエルディスクが変形して手札を5枚ドローする。
「先攻は私からだ。私は永続魔法《王家の神殿》を発動!野崎遊香よ。これから貴様が挑むのは、ファラオの秘宝眠りし神殿。そこには数々の罠が仕掛けられている。それを掻い潜る勇気があるか?」
「ふふ。この私に挑戦状を叩きつけるとは、面白い。いいだろう。お前の戦術を破り王家の神殿にたどり着いてやる」
「ここでは墓守以外は誰であっても謙虚な存在でなければならない。私はカードを4枚伏せ、ターン終了だ」
早速全てのカードを伏せた男ことリシド。トラップデッキというだけあって、スタートからのガン伏せは想定内だった。遊香はデッキに指を掛ける。
「私のターン、ドロー。私は手札から───」
「その瞬間!罠カード発動!《魔封じの芳香》!」
「何?」
「野崎遊香。お前のデッキは《魔導書》魔法カードを主力としたデッキという事は調べがついている。そしてこの罠カード《魔封じの芳香》は魔法カード発動する為には一度伏せなければ発動する事が出来なくなるカードなのだ」
「ふ、何とも面倒なカードを出してくれたな……だが、私がその様な魔法封じの対策をしていないと思うか?来い《魔導戦士ブレイカー》」
剣を持った赤い魔術師が現れた。魔術師は剣を構えると肢の所の六芒星が光り出した。
「これで《魔導戦士ブレイカー》に魔力カウンターが1つ乗った。そしてこれを取り除く事で、魔法罠カードを一枚破壊出来る様になる」
「ではその召喚時に罠カード《バージェストマ・カナディア》発動!《魔導戦士ブレイカー》は裏側守備表示になって貰おうか」
「ほう……カードを3枚伏せ、ターンエンド」
遊香は心の中で舌打ちをする。予想以上にリシドの自分に対するメタを張っていたとは思いもしなかった。
「私のターン。ドロー。罠カード《バージェストマ・ビカイア》発動!手札の《バージェストマ》を墓地に送り、カードを二枚引かせてもらう。そして私が罠カードを発動した事により墓地に眠る古代生物達が目を覚ました」
「お、おい見てみろよ!マリクの野郎のフィールドに何が蠢いてるぞ!」
「あれは!?」
観戦している城之内と遊戯が声をあげる。リシドのフィールドには2体の魚の様な虫の様な生物が出現した。ぐねぐね動くそれは何とも言えない物だ。
「私の《バージェストマ》達は墓地に存在している時に罠カードを発動したことで墓地からモンスターカードとして蘇るのだ。《バージェストマ・マーレラ》!《バージェストマ・カナディア》!そして私は《バージェストマ・マーレラ》をリリースし、《聖獣セルケト》をアドバンス召喚。この《聖獣セルケト》こそ神殿の守り神だ。やれ!裏守備表示の《魔導戦士ブレイカー》を攻撃!」
蠍の様な姿をした聖獣セルケトは両手のハサミで魔導戦士ブレイカーを挟み込み、頭からムシャムシャ食べ始めた。あまりにも無残な光景な為、観戦者達は顔を背けたり目を瞑ってたりする人もいた。対戦者の遊香も少しではあるが顔が引き攣っている。
「身の毛もよだつ光景だろうが、これにより《聖獣セルケト》は成長し攻撃力が500上昇する!これで《セルケト》の攻撃力は3000となった!」
セルケトの身体が光り、身体が変化する。二足歩行になり、ウジャト眼でこちらを睨み付けてくる。
「ほう、モンスターを捕食する事で攻撃力を上げていくモンスターか」
「そうだ。そして《セルケト》に捕食されたモンスターは除外される」
遊香はブレイカーをデッキケースに入れる。このデュエルディスクには除外ゾーンが設置されていない為、プレイヤーによってはポケットに入れたりする事もあるが遊香の場合はデッキケースに入れるようだ。
「私はカードを伏せ、ターン終了だ」
「私のターン、ドロー。1ターン経ったことで伏せたカードを発動する。魔法カード《グリモの魔導書》。デッキから《魔導書》カードを手札に加える。更に伏せた魔法カード《テラ・フォーミング》でデッキからフィールド魔法カードを手札に加える」
「フィールド魔法……」
「そして、カードを伏せてターンエンド」
「ふ、余程この《魔封じの芳香》が効いているようだな野崎遊香よ。だが、貴様だけは容赦はしない!武藤遊戯同様抹殺してくれる!私のターン。ドロー!私は伏せていた罠カードを発動する。神殿の兵士《アポピスの化身》!」
罠カードから蛇の兵士が現れた。アポピスの化身はこの時代では珍しい罠カードでもあり、モンスターカードでもあるカードだ。
「《アポピスの化身》は1800。《聖獣セルケト》は3000。2体の攻撃力の合計は4800でモンスターの居ない貴様のライフポイントは一気に0になるだろう。その前に1つ問いたい。貴様は何故この大会に参加したのだ?」
「何?」
「神のカードの為か?それとも決闘王の称号の為か?答えろ野崎遊香。いや、野崎遊香の邪悪なる魂よ」
リシドの突然の問いに虚を突かれた遊香。だが、直ぐに何時もの自信に溢れた表情に戻る。
「私の目的は、今はまだない。が、お前たちは知っているだろう?神のカードはただのカードではないという事を。それこそ私たちの記憶を取り戻す為のキーパーツだということをね!」
その瞬間リシドの瞳が揺れる。3枚の神のカードはただのカードではないと言う事実は創造主であるペガサス・J・クロフォードと自分たち一部の墓守の人間しか知られていないものだった筈だ。それを何故この少女は知っているのだろうか。リシドはチラッとナムこと本物のマリクの方を見る。マリクも遊香へ鋭い目線を向けている。
怪しい。この少女は怪しすぎる。どこまで知っているのだろうか。
「神のカードが記憶を取り戻す為のキーパーツだと!?」
観戦席で遊戯が声を漏らす。
「その通りだよ遊戯君。いや、『名も無きファラオの魂』か。君はイシズと呼ばれる女性にこの大会に参加する様に言われた。それは何故だと思う?簡単な事さ。君に神のカードを集めさせ、記憶を取り戻させる為だ。その為の試練だとね」
「何故俺の参加した理由を知っている?まさか貴様、また魂を!?」
「ふふふ。勘が鋭くて助かるよ。そう、イシズの魂は今私の体の中に幽閉されているよ。だが、勘違いはするな?これは彼女の自業自得だ。私を消そうと現れた彼女を返り討ちにしてやっただけだ」
遊香もマリクの方を見ると、凄まじい形相で此方を睨み付けていた。
「貴様……よくもイシズ様を……!許さん!やれ!《聖獣セルケト》《アポピスの化身》!!野崎遊香に裁きを与えろ!」
セルケトとアポピスが一斉に遊香に襲いかかる。セルケトに両腕を挟まれ、アポピスに斬られた。遊香は頭を垂らして動かなくなった。
「終劇だ。審判」
「は、はい!バトルシティ決勝トーナメント。第2回戦勝者はマリ──」
「ふふふ……」
遊香が頭を垂れながら笑い出す。
「審判、私のライフポイントを見てもらおうか」
「は?……な!?8800だと!?」
「!?」
審判もリシドも遊香のライフポイントゲージを見て絶句する。
「攻撃宣言時に罠カード《レインボー・ライフ》を発動しておいた。これにより、このターンは全てのダメージが回復効果に変換される。戦闘ダメージも例外ではない」
「くっ」
ふと遊香は笑うと、
「さて、デュエルを再開する前に1つ種明かしをしてもらおうか。なぁ……リシド」
「!!」
「何!?」
リシドの目が大きく見開かれる。海馬は思わず声をあげ、観客席のマリクも同様に驚愕の表情を露わにしていた。それだけじゃない。観客席の人達も全員が驚いていた。
「リシド!?遊香!そいつはマリクじゃねぇのか!?」
「ああ。この男はマリクではない。マリクではないが、近しい男なのだろう?」
遊香が城之内にそういうと、リシドに向き直す。リシドは凄い眼力で睨み付けてくるが、遊香はそれを愉快そうに笑う。
(やはり……奴からは闇の力を感じなかった。遊香のいう通りマリクでは無かったか。では、本物のマリクは?)
遊戯はチラッとナムの方を見る。
(ば、馬鹿な……!何故奴はわかった!?いや、それ以上に何故リシドの名を知っているんだ!?)
ナムことマリクは遊香へこれでもかというぐらい睨み付けてている。
「何を馬鹿な事を!私こそマリク・イシュタールだ!この千年ロッドが目に入らないのか?」
「ふふ。そんな贋作でこの私を騙せるとでも?」
リシドは冷や汗をかきながら、それでも千年ロッドを遊香に向ける。
(マズイな。このままでは僕の計画が狂ってしまう。リシドよ!)
(はい、マリク様)
(野崎遊香は神のカードでトドメを刺せ!)
(しかし、私のデッキには神のカードは入っておりません)
(それはどうかな?お前の伏せてあるカード、そいつを使ってデッキの中を見てみな!)
リシドは伏せておいたカードを発動する。
「私は魔法カード《タイム・カプセル》発動!これにより、デッキからモンスターカードを一枚ゲームから取り除く。そして2ターン後のスタンバイフェイズに手札に加える!……ッ!?」
(何故このカードが私のデッキに!?)
(どうだ?あっただろう?リシド、そいつを選べ。そいつはグールズの技術によって作られたコピーカードだ。僕はコピーカードでの実験の結果、ある事が分かった。コピーカードには使用者の心が試される。墓守の鍛錬を受け、強靭な精神力を持ったお前ならそのカードを使いこなせるはずだ!)
(マリク様……)
「私はこのカードを除外する。そして、教えてやろう。私が《タイム・カプセル》によって未来に送ったカードは神のカードだ!これで私がマリクである事が証明されるだろう!ターンエンドだ!」
「私のターン、ドロー。《青き眼の乙女》召喚。ターンエンドだ」
「攻撃力0だと?」
リシドは目を細める。攻撃力0のモンスターなどを素で置いておくなど罠以外の何者でもない。リシドのターンだが、彼は残り1つの魔法罠カードゾーンにカードをセットし、ターンを終えた。再び遊香のターン。
「私のターン、ドロー。(来た!これで切り札を呼び出せる!だが、《魔封じの芳香》ですぐに発動ができない。ここは伏せておくか)カードを3枚伏せ、ターンエンド」
「私のターン。ドロー。これで、《タイム・カプセル》の封印は解かれた。これにより《ラーの翼神竜》を手札に加える。2枚目の罠カード《アポピスの化身》を発動!現れろ《アポピスの化身》!」
セルケトの隣にもう一体のアポピスの化身が現れた。これで生け贄となるモンスターが3体揃った。すると、雲が厚くなっていく。そしてあたり一帯に雷が落ちる。
「これより、神のカードを召喚する!」
遊香はニヤリと笑う。
「私は2体の《アポピスの化身》と《聖獣セルケト》を生け贄に捧げ、神!《ラーの翼神竜》を召喚する!!」
リシドが三枚のカードを墓地に送って召喚されたのは、ラーの翼神竜だ。しかしその姿は幻影の様にユラユラ揺れており、安定しない。
「どうだ!これでも私がマリクではないと言うか!?野崎遊香よ!」
「……」
遊香は黙ってラーの翼神竜を見つめる。
「ぐうの音も出ないようだな。《ラーの翼神竜》の特殊能力を教えてやろう!《ラー》の攻撃力と守備力は生け贄に捧げたモンスターの攻撃力の合計値となる!よって、攻撃力は6600だ!そして、神には相手のあらゆる効果を受け付けない能力も備わっている!攻撃力0の《青き眼の乙女》と共に仕掛けられている罠など、《ラー》には通用しない!やれ!《ラーの翼神竜》の攻──」
「罠カード《威嚇する咆哮》発動。こいつは神に対するカードではない。よって適用されるだろう?」
「チッ……このターンの攻撃宣言が出来なくなったか。ターンエンド」
観客席の人達は圧倒されていた。遊戯の時のオシリスの天空竜もそうだったが、リシドのフィールドにいるラーの翼神竜も凄まじい威圧感が場を支配していたからだ。しかし、
(これは……本当に神の姿なのか?まるで幻影のようだが……)
遊戯の中に疑問が浮かぶ。その疑問は海馬も同じ様だった。海馬もオベリスクの巨神兵の所有者であるが故に今のリシドのラーの翼神竜には違和感しか無かった。周りの他の人達には違和感は特に感じられない様で、リシドを完全にマリクだと信じきっていた。
「さぁ!野崎遊香よ!神の前で最後の足掻きをしてみせろ!」
「ふふふ……足掻きだと?違うな。リシド、お前などに神は操れない!」
遊香の千年ピアスが光る。そして遊香はカードをドローした。
「リシド。神を操るとはどういう事か、今見せてやろう!リバースカードオープン!魔法カード《死者蘇生》!」
「何……?」
空から再び雷が落ちる。それも先程とは比べ物にならないぐらいの数だ。
「私が蘇らせるのは……」
「ま、まさか……そんな事があり得るのか!?」
遊香はニヤリと笑う。その美しい容姿からは想像できない程、邪悪で妖美な笑顔で。
「《ラーの翼神竜》を蘇生する!!」
遊香の墓地から火柱が上がる。火柱は高く高く舞い上がり、雲の切れ間に吸い込まれる。そして、雲から何本もの光の線がデュエル場を包み込みそれは現れた。
「《ラーの翼神竜》……!!」
「同じ神のカードが二枚だと!?」
海馬は驚きのあまり叫ぶ。リシドもマリクもこれまでで一番の表情を浮かべていた。
そして遊香は言い放つ。
「さぁ、始めようか!」
後ろのラーの光を受け、今の遊香の姿は神々しかった。
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116 | 第十話 遊香vsトラップデッキ | 889 | 2 | 2018-11-02 | - | |
89 | 第十一話 神の一撃 | 848 | 2 | 2018-11-07 | - | |
124 | 第十二話マリクvs城之内 苦痛と絶望の闇 | 1117 | 2 | 2018-11-10 | - | |
88 | 第十三話 城之内死す | 1189 | 2 | 2018-11-13 | - | |
71 | 第十四話 バトルシップ最終戦 海馬vs舞 | 1009 | 2 | 2018-11-16 | - | |
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111 | 第十六話 準決勝開幕!激突する二人 | 915 | 2 | 2018-12-16 | - | |
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更新情報 - NEW -
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