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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第9話 初陣:俺の竜たち

第9話 初陣:俺の竜たち 作:にしん

☆前回終了時の状況
遊飛
LP:5300
手札:3枚
モンスター:クリアウィング・シンクロ・ドラゴン
魔法・罠:なし
Pスケール:未設定

   VS

ミミカ
LP:8000
手札:0枚
モンスター:トリックスター・キャンディナ、トリックスター・リリーベル、チアブルーム・プリムローズ、チアブルーム・チューリップ
魔法・罠:トリックスター・ライトステージ+伏せカード2枚
Pスケール:未設定


【ターン3:遊飛のターン】
ミミカちゃんにレベル・ランク5~7モンスターの効果のロックはされているものの、他の行動はまだ大丈夫だ。ここで一気に展開、制圧しておきたい。

「俺のターン!ドロー!」
遊飛:手札3枚→4枚


手札を眺める。思いついた。俺はそばにあった滑り台に階段で上る。それに合わせてクリアウィングは俺の真上に飛んできた。


「俺は魔法カード<死者蘇生>を発動!対象は俺の墓地の・・・」
遊飛:手札4枚→3枚


イメージする。俺の目の前に<死者蘇生>のイラストにある十字架が現れ、聖なる光と共に1機のプロペラ機が飛び出す。ゴブリンドバーグだ。


「特殊召喚だから運ぶ燃料もねぇぜ」
>ゴブリンドバーグ:星4:攻1400(守0)

「知ってる。次の飛行のために準備してて。んじゃあ次にこいつだ!<貴竜の魔術師>!」
遊飛:手札3枚→2枚

滑り台の上から召喚したので貴竜の魔術師はその小さな身体に似合ったかのように滑り台を滑って着地した。突然の滑り台にびっくりしている貴竜の魔術師と、なんだか和んでいた観客とミミカちゃん。と、ゴブリンドバーグ。俺も少しにやけそうになったが我慢した。


「滑り台とは少し恥ずかしいです・・・」
>貴竜の魔術師:星3:チューナー:攻700(守1400)


魔術師モンスターの登場で、後ろから視線を感じた。入場口横にいるローラさんだった。やっぱり魔法使い系には目がないのか。今度魔術師系をもっと入れてみようかな。


「またシンクロ召喚だね!かっこいいドラゴン2体とはあたしのアイドルたち相手に思い切って来るね☆」

「ロックがあるのは知ってるけど、俺の超展開はさせてもらうぜ!レベル4<ゴブリンドバーグ>をレベル3のチューナー<貴竜の魔術師>でチューニング!」

「今度はどの竜を運ぶのかい?・・・って、竜は運べねえぜ」


貴竜の魔術師は音叉のような杖を天に掲げると、そこから3つの赤色の輪が現れた。その瞬間、遠方でプロペラ機の整備をしていたゴブリンドバーグが着座し、発進する。その機体でアクロバット飛行をし、3つの輪の上からスクリューしながら突っ込んだ。その瞬間、天から赤い炎の柱が床に向かって落ち、爆炎が上がる。まるで炎の輪を炎がくぐるかのような、迫力のある炎の輪くぐりをイメージした演出。俺が召喚しようとしてる竜は、それが似合っている竜だ。

大迫力ある爆発の中から起き上がったのは・・・


現れろ!爆炎を放つ紅きドラゴン!!その光で更なる輝きを与えろ!!シンクロ召喚!<オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン>!!

「ふしゅうぅぅぅ・・・」
>オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン:星7:攻2500(守2000)


大迫力の登場。俺の場に白と赤、大型の竜が2体揃ったことで観客は大きく盛り上がる。

俺はここで思い出す。Pゾーンにペンデュラムモンスターを置くことを忘れていた。まぁ・・・魔法カード扱いだし、相手の除去に警戒しておくに越したことはないか。確かミミカちゃんは除去はしてこないとは聞いたが、他のデュエリストだと思ったらこのミスもむしろ大丈夫だろう。そう思ったけど自分の手札には今はペンデュラムモンスターはなかった。


(まだEMSカードも手札にあるしな)


俺の手札2枚のうち1枚は、俺のEMSカード<EMS 虹彩烈竜・遊飛>。だけど、効果を見る限りまだ出番はなさそうだった。とりあえずは次だ。


「俺はレベル7のメテオバースト・ドラゴンと同じくレベル7のクリアウィングをオーバーレイ!」


俺は周辺を見てイメージをする。あれを使おう。メテオバースト・ドラゴンは爆炎に、クリアウィングの白い風になり、背後にあった巨大シーソーの両端に乗る。その炎と風は小さい竜の形になり、実際にシーソーをしているかのように揺れる。そして、爆炎が強く下がって白い風が上空に跳ね上げられ、爆炎と融合する。その瞬間、台風のように渦を巻き、この舞台に強風が起きる。

神秘なる蒼き虹彩の光を放つ絶対零度の竜!エクシーズ召喚!<オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン>!!


その渦から白い爆炎と共に現れたのは、まるで炎の竜が風で一気に冷やされて凍結したかのような、蒼い竜だった。

「・・・・・」
>オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン:ランク7:攻2800(守2500):ユニット×2


うーん、イメージ通りだけどちょっと違うな・・・今日が終わったら考えてみるか。

ぼんやりと蒼色の虹彩を放つその神秘なる竜に歓声が再び起こる。さて、ここまで来たけど後はどうやって覇王烈竜までこぎつけるか・・・


「すっごい綺麗だねっ。なんだか吸い込まれそうだよー。だけどランク7。あたしのステージとアイドルたちにどう立ち向かうのかなぁ」

「ロックがかかっているのは効果だけ・・・つまり攻撃は可能!バトル!俺はアブソリュート・ドラゴンでチアブルーム・プリムローズを攻撃!」


普通ならアブソリュート・ドラゴンの攻撃は絶対零度の光のブレスだが、俺はイメージしてエンタメ向けに一工夫加える。

アブソリュート・ドラゴンの背後でぼんやりと光る虹彩の輝きが増す。それに合わせてサーカスとステージの周辺に蒼い氷のような光が生成される。そしてアブソリュート・ドラゴンはその虹彩から蒼い光を周辺に放出し、その光に反射させた。その光が向かう場所はミミカちゃんの左、プリムローズ。


「相手にけがはさせないけど・・・あたしのアイドルたちもけがをさせないのです☆罠カード発動!<チアブルーム・イバラ>!」
ミミカ:伏せカード2枚→1枚

<チアブルーム・イバラ>(オリカ):罠カード
自分の「チアブルーム」モンスターを対象として相手のレベル5以上および、レベルを持たないモンスターの攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にし、相手に攻撃対象となったモンスターの攻撃力分のダメージを与える。


突然、プリムローズを護るようにバラの花が咲いたイバラがステージの床から生える。そして光を防御した。それと同時に俺に一本のイバラが飛んできた。そのイバラが当たって地味に痛い。


「痛ぇ・・・」

「けがはしていないでしょ?えへへ」

「LPは減るけど、だろ?」
遊飛:LP5300→4700


攻撃をやめようとも、ロックによってクイックで効果を使えない。相手のターンをどうしのぐか、アクションマジックを探しながら考えよう。


「俺はカードを1枚セットしてターンエンドだぜ」
遊飛:手札2枚→1枚

遊飛
LP:4700
手札:1枚
モンスター:オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン
魔法・罠:伏せカード1枚
Pスケール:未設定

   VS

ミミカ
LP:8000
手札:0枚
モンスター:トリックスター・キャンディナ、トリックスター・リリーベル、チアブルーム・プリムローズ、チアブルーム・チューリップ
魔法・罠:トリックスター・ライトステージ+伏せカード1枚
Pスケール:未設定


【ターン4:ミミカのターン】
「あたしのターン、ドロー☆」
ミミカ:手札0枚→1枚

「更にロックをかけちゃいますっ!まずはライトステージの効果で新人さんのその伏せカードをこのターン中ロック!そして<チアブルーム・ジャスミン>ちゃんを召喚☆」
ミミカ:手札1枚→0枚


今度はミミカちゃんの後ろからひょっこり覗くように現れた、チューリップより少し小さい、黄色がかかった白色のおさげな髪をしたかわいらしい妖精のチア少女。陰から応援をするという感じでなんだか健気な感じが出ていてかわいい。

「みんな頑張って・・・応援します!」
>チアブルーム・ジャスミン:星1:攻100(守300)

<チアブルーム・ジャスミン>(オリカ)
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールドに存在する「チアブルーム」モンスターのレベルの合計より低いレベル、ランクを持つ相手のレベル5および、ランク5以上のモンスターは自分のレベル4以下のモンスターを攻撃、効果の対象にできない。
②:このカードが召喚に成功した時に発動できる。自分フィールドに存在する「チアブルーム」モンスターの数までドローする。この効果を発動したターン中自分はバトルフェイズを行うことができず、相手が受ける効果ダメージは0になる。


「ジャスミンちゃんの効果であたしはあたしのチアブルームちゃんの数・・・3人だから3枚ドローだよっ☆」
ミミカ:手札0枚→3枚

「さ、3枚だって!?」

「その代わりこのターン中ダンスを行えないから退屈になっちゃうの。だけど、ここであたしの裏方は準備を進めておきます!<フレグランス・ストーム>発動!あたしはプリムローズちゃんを応援エネルギーに変えちゃいます!」
ミミカ:手札3枚→2枚→3枚

<フレグランス・ストーム>
フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスター1体を破壊し、自分のデッキからカードを1枚ドローする。さらに、この効果でドローしたカードが植物族モンスターだった場合、そのカードをお互いに確認し自分はカードをもう1枚ドローする事ができる。


ミミカちゃんのステージで花びらの竜巻が起こり、プリムローズを包む。竜巻が収まった時、1枚のカードになっていた。それを手に取るミミカちゃん。今更だけどどうやってボンボンで手札やディスク上のカードを処理しているのだろうか。


「あたしはカードを1枚セットしてターンエンドっ。この瞬間、ライトステージのロックは解除されるけど、効果で新人さんはその伏せカードを発動するか墓地に送らないといけないのだ☆」
ミミカ:手札3枚→2枚
伏せカード1枚→2枚

「な、なんだって!?うーん、発動条件は満たしているけど墓地に送るか・・・」
遊飛:伏せカード1枚→0枚

墓地に送った伏せカードは<ペンデュラム・リボーン>。発動できるけど貴竜の魔術師しか出せないし、次のターンで覇王烈竜を絶対に出すという強い気持ちがあったからだ。


遊飛
LP:4700
手札:1枚
モンスター:オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン
魔法・罠:なし
Pスケール:未設定

   VS

ミミカ
LP:8000
手札:2枚
モンスター:トリックスター・キャンディナ、トリックスター・リリーベル、チアブルーム・チューリップ、チアブルーム・ジャスミン
魔法・罠:トリックスター・ライトステージ+伏せカード2枚
Pスケール:未設定


【ターン5:遊飛のターン】
「俺のターン!ドロー!」
遊飛:手札1枚→2枚

ドローしたカードはキーカードとなるであろう<地獄の扉越し銃>。だけどこれをセットしてもライトステージの効果で封じられる。でもチラ見して見つけたアクションマジックの中に効果を無効にする類のがあった。だけど、それがある場所は空中ブランコの中心の下にある、人一人が入れそうな大きい輪の上部。しかも、その輪は観覧車のようにサーカス仕様で回るようになっていた。

ミミカちゃんの伏せカードは2枚。さっきみたいに防御もされるかもしれない。だけど、ダメージを与えておかないといけないという焦りもあったかもしれない。色々考えていたら、いつもの癖で俺は無意識にバトルフェイズ宣言をした。


「バトル!アブソリュート・ドラゴンでリリーベルを攻撃!・・・っ!?」


さっきと同じように蒼い光を周辺の氷の光に反射させる。しかし、やはり攻撃宣言後に感じた嫌な予感は当たった。ミミカちゃんは2枚の伏せカードを両方発動したのだ。


「速攻魔法カードだよ☆まずは<チアブルーム・エール>!チアブルームちゃんたちの応援であたしのアイドルたちはパワーアップ!」
ミミカ:伏せカード2枚→1枚

<チアブルーム・エール>(オリカ):速攻魔法
①:自分フィールドのレベル4以下のモンスターの攻撃力、守備力はターン終了時まで自分フィールドに存在する「チアブルーム」モンスターの数×400アップさせる。


「更にもう1枚は<トリックスター・ブーケ>だよ☆キャンディナちゃんを手札に戻してリリーベルちゃんにブーケトス♡」


速攻魔法の発動に応じて流れ始めた音楽に合わせてミミカちゃんとチアブルームたちがトリックスターたちを応援し始め、キャンディナはリリーベルに向かって花束を投げた。それを華麗にキャッチすると同時に、チアブルームたちの応援のフィニッシュが決まり、ステージや周辺が光で包まれる。観客は大歓声。俺も思わず拍手をした。
ミミカ:手札2枚→3枚

<トリックスター・リリーベル>:攻撃力800→1600→3400
<チアブルーム・チューリップ>:攻撃力800→1600
<チアブルーム・ジャスミン>:攻撃力100→900


まずい!このまま攻撃を通してしまうと返り討ちでフィールドはがら空き。覇王烈竜までつなげることができないどころかデュエルに大敗してしまう。近くにアクションマジックは?・・・ない。間に合わない。効果ダメージ扱いだからあの空中ブランコのアクションマジックは・・・いや、プリムローズはもういない。近くにあったアクションマジック<緩衝クッション>も選択をした時点で消滅した。

どうする俺。このままだと何もできずに負けるぞ。


(やっぱりプロには敵わないか・・・)





ふと思い出す。チューリップの効果はチアブルームのレベルの合計以下のレベル5、ランク5以上の効果の発動を封じる。攻撃宣言時に発動できる効果はタイミングを逃した。つまり・・・

俺は反射ダメージを覚悟してそのまま続行した。アブソリュート・ドラゴンの光はリリーベルが持っていたブーケから光の盾になった花びらによって跳ね返され、アブソリュート・ドラゴンを包んだ。そして破壊された。だけど、そこには蒼い巨大な氷が遺されていた。

返り討ち→破壊 <オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン>:攻撃力2800 > 攻撃力3400:<トリックスター・リリーベル>
遊飛:LP4700→4100→3900(ライトステージの効果)


「な、何この氷!?綺麗だけど・・・」


アブソリュート・ドラゴンが破壊されたと思ったら謎に残るこの氷。ロックが緩んだ今、効果が使える!


「ミミカちゃん、プリムローズを引っ込めたよね」

「そうだけど・・・あっ!!」


ミミカちゃんはしまった!という感じで衝撃を受けていた。


「エクシーズ召喚されたアブソリュート・ドラゴンが墓地に送られた時、EXデッキからアブソリュート以外の“オッドアイズ”モンスターを1体特殊召喚だ!!現れろ・・・俺のエース・・・」


本当はこの形でこいつを出したくなかったのだが仕方ない。今しかない。俺は気合を入れて、召喚の口上を叫ぶ。



虹彩を放つ絶氷より、虹色の光と共に虹彩を継承せよ!!



「覇王烈竜・・・いや、虹彩の覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!!」


氷を虹色の光で包んで溶かすようにして現れたのは、かの竜。だけど、虹色の光によって生まれ変わった覇王烈竜。


「グオオォォォォッ!!」
<覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン>:ランク7:攻3000(守2500):ユニット×0


「「わあああぁぁぁ!!」」
「覇王・・・!?」
「覇王って、あの覇王!?」
「「きゃあああぁぁぁ!!」」
「覇王だああああぁぁぁ!!」

「やっぱりか・・・」


覇王烈竜が現れたことにより、場内が騒然とする。予想はしていた。やはりこの世界で「覇王」は「恐怖」の象徴だ。それもつい最近、十数年前の出来事で、今でも大多数の人にその恐怖が残っている。・・・でも俺は、こいつを出さなきゃ俺のエンタメが始まらない。俺は恐れずに胸を張る。

だけど、予想外なことが起きた。それはすぐにみんな落ち着いたことだった。観客やミミカちゃん、審査員、そして司会の団長は虹色へと生まれ変わった覇王烈竜を静かに見る。そして、最初に口を開いたのはミミカちゃんだった。


「綺麗・・・」


ミミカちゃんや団長、そして観客。全員がこの覇王烈竜の神秘的で美しく生まれ変わった姿に見惚れて、口を開いて固まっていた。そしてすぐに観客から期待の声が上がる。


「なんだあの竜!かっこいい!」
「素敵・・・!!覇王らしくない!」
「あのデュエリストが懐かせたのか!?」
「懐かせただけじゃああならないでしょ・・・」
「きれー!」
「かっこいーー!」


団長も、審査員も拍手をする。どうやら俺の覇王烈竜はすぐに受け入れられたようだ。みんなの反応に感動して、思わず涙が出そうになる。とりあえずはよかった。覇王烈竜も指示を待つかのように静かに佇んでいた。

気合を入れなおしてエンタメデュエルを続ける。ここから俺のエンタメを・・・と思ったけど、まずはこの状況を打破しなければ。

「俺のエンタメは、ここからだぜ!!」
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