1-2 VS山口兄弟　チェックメイト　作：霧雨

一週間は早かった。まず、遊戯王のルールの熟知から始まった。あらゆるところから情報を仕入れ、自分に合ったカードを集めていった。
特に問題もなく、久しぶりに充実した一週間を過ごせた気がする。まあ、カードを集めることが充実に直結するほど、俺も相応に苦労したものだ。

どれくらい出費したかは分からないが、そんなこんなで俺のデッキが完成し、今はといえばあの例の兄弟と対峙していた。

「わかってるんだろうな！俺たちが勝ったら・・・ハンターになる！！足を引っ張るなよ、次郎！」
「何を言ってるんだ！太郎こそ、この前みたいな運の悪い手札を引いたらただじゃおかないからな！」
「うるさい！あれは俺の実力じゃねえ、運が悪かっただけだ！」

早くも仲間割れの様相を呈している。まだ始まってすらいないというのに・・・。

「はやく始めよう、邪魔口兄弟・・・。二人まとめて、な」
「うるせえ！山口だ！余裕こきやがって！次間違えたらぶっ潰すぞ！」

◇ランキング戦◇4000デュエル開始◇
山口 太郎（396201位）VS山口 次郎（400118位）VS新峠 遊（ランカー未登録）

※ランキング戦
お互いに自分のランクを賭けたデュエル。上位の者が勝てば変動はないが、下位の者が勝った場合は上位の者のランクと入れ替わることができる。そのため、上位の者が下位の者とランキング戦を行うメリットは少ないが、上位の者が勝利した場合は微小ながらもランキングポイントが貰える。これは換金をしたり、レアカードと交換する目的でつかわれる。またデュエル内容によってポイントは変動し、負けてもポイントが加算されることもある。

※4000デュエル
ライフポイント4000でスタートするデュエル。この世界では2000、4000、8000、10000などから双方の合意をもって決めることができる。意見が割れた場合、基本は下位の者に選択権が委ねられる。

太郎「俺の先攻だ！バトルロイヤルルールのため、先攻1ターン目は全員攻撃を行うことができない！」
遊「分かっている」
太郎「げはは！いつまで余裕でいられるかな！俺は、『ジャンピングゴリラ』を召喚！」

◇ジャンピングゴリラ◇星4・獣族・地・攻1600／守1300

太郎「カードを1枚伏せて、ターン終了！」
次郎「ワ～ハハ！さすが太郎だぜ！俺のターンだ！俺は、『地面を歩くブタ』を召喚！」

◇地面を歩くブタ◇星4・獣族・地・攻1300／守1700

次郎「太郎が1枚伏せるなら俺は2枚伏せてやる！ターンエンド！さあ、どうする初心者！」
遊「・・・ふふふ。お前ら・・・。それでよく遊戯王を始める気になったな・・・」
太郎「なんだとぉ・・？」
遊「正直、がっかりしたよ。まあいい。このターンで終わらせてやる」
太郎「なんだと！？馬鹿め！このターン、戦闘は行うことはできない！ダメージなんて与えられないはずだ！」
次郎「そうだそうだ！」
遊「馬鹿はどこまで行っても馬鹿か。まあいい。俺のターンだ。カードをドローする。・・・。俺は手札からマジックカード、『相反する魂・ダブルコンボ』を発動。手札を2枚同時に捨て、お互いにその攻撃力の合計のダメージを受ける。俺が捨てるのは、『ギガルト』、『ランデル』の2枚だ」

◇ギガルト◇星4・ドラゴン族・光・攻2500／守2600
◇ランデル◇星3・雷族・光・攻／守1400

遊「全員、合計3900のダメージを受ける！」
太郎「な、なんだと！？」

◇山口 太郎◇LP4000→LP100
◇山口 次郎◇LP4000→LP100
◇新峠 遊◇LP4000→LP100

遊「更に・・・俺は、新たにマジックカード『チェック・メイト』を2枚発動する。このカードは、相手ライフが500以下の時、0にしてしまう効果を持つ。お前らには攻撃をする価値すら存在しない」
太郎「ち・・・ちくしょう、罠カードを！」
遊「無駄だ。俺の手札の最後の1枚、速攻魔法『ギガルトスピリット』発動だ。墓地の『ギガルト』をゲームから除外し、このターン相手のカード効果はすべて無効となる・・・惨めに散れ！2人同時にチェックメイトだ！」

◇山口 太郎◇LP100→LP0
◇山口 次郎◇LP100→LP0

太郎・次郎「うわあああああ～～～！！！」
遊「・・・弱すぎる」

◇ランキング戦◇4000デュエル終了◇

☆勝者　新峠 遊（未登録→396201位）
★敗者　山口 太郎（396201位→400118位）
★敗者　山口 次郎（400118位・変動なし）


「「ちくしょー、覚えてろよ！いつか必ずリベンジしてやるからな！」」
捨て台詞を残し、邪魔口兄弟は走り去っていった。
終わった。いつから見ていたのか、昴がこちらにやってきて、今回のデュエルを総評してくれた。
「まあ、こんなものだろう。最初にしては上出来だが、このような相手にここまでLPを使ってしまうあたり、まだまだ未熟だな。他の相手ではこうはいかないだろう」
「・・・返す言葉もないな。こんなお粗末なデュエルを見せて、本当に申し訳ない・・・」
「・・・なんてな！そう固くなるな！実際いい線いっていたぞ。抜け目もなかったしな。ただ、『チェック・メイト』は元々、発動と効果を無効にされないカードだからな。最後の『ギガルトスピリット』は必要なかったかもな」
「・・・念のためだ。自らのLPを回復することでこちらの効果を回避してくるかもしれなかったしな」

そういうと、昴は目を丸くした。まるで、そこまで抜け目なく考えていたのか、と言わんばかりに。
俺の遊戯王は、まだまだこれからだ。