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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第14話 奇術師と孔雀と鏡の主

第14話 奇術師と孔雀と鏡の主 作:イベリコ豚丼

「つ、つぐみん!?」
自分でもびっくりするぐらいの大声が出たが、事態はそれどころではなかった。
欧米がかった顔立ち。バランスのいいプロポーション。そしてなにより、宝石箱をひっくり返したような七色のロングヘアー。どれだけ遊午の頭が煩悩まみれでも、彼女だけは見間違えるはずがない。
秋葉 鶫。今をときめく一級アイドルであり、遊午が長らく追っかけてきた憧れの存在。
そんな最高位存在が目の前にいる。夢でも見ているのではなかろうか。
「へぇ、あたしのこと知ってるんだ。だったら話が……いやなんでいきなり自分の顔面全力でぶん殴ってんの!?」
「おぉ、現実だった」
試しに手加減なしで自分を右フックしたら普通に痛かった。ついでに鶫の視線も痛かった。
「いや待て待て、現実だったらそっちのが問題じゃないか!」
「そうよ。だから早く話を進め……」
「畜生、こんなことなら朝シャワー浴びてくるんだったぜ!」
「だから一体なんの話よ!!」
「あのな、握手会で手の皮が剥がれるくらい清潔にして行くのは常識だろ? それと一緒でアイドルに面と向かって会うときは滝行ばりに身体を清めていくってのは当然のマナーってうおぉぉいご本人だった!」
「なにこの茶番意味わかんない……」
頭が痛そうに鶫はため息をつく。なんだかいつもどこかで誰かに同じような反応をされている気がした。
と、そこでようやく遊午は事態の真の重大さに気がついた。
「ってあれ? つーことはつぐみんが-No所有者? マジで?」
「だからさっきからそう言ってんでしょアホなのあんた!?」
「でもなんで? つぐみんに-Noに頼らなくちゃならないことがあったってっことか?」
「っ。それは……」
急に口ごもる鶫。遊午に聞こえないくらいの声で何かを呟いたかと思えば、
「どうでもいいでしょ、そんなこと。ていうかそのつぐみんってのやめてくんない? それから言葉遣いも。さっきまで普通だったでしょうが」
「え、いやそれはさすがに……」
「そういう相手によって態度変えるとか、そーいうの嫌いなの。いいから、あたしがそうしろって言ってんだから素直に聞きなさいよ」
「……そういうことなら。じゃあ鶫」
「なに?」
「D-ゲイザーの番号教えてくんね?」
「いきなり距離詰めまくってんじゃないわよ訴えるぞ」
どさくさに紛れてもバレバレだった。

「あんたもあたしのファンだったら知ってるでしょうけど、あと2時間足らずでライブが始まっちゃうのよ。だからヘンテコ空間の調査なんて悠長なことしてないで、強行突破でここを抜け出すのよ」
「そんな方法があんのか?」
「それを今から考えんの」
「なるほど、ノープランってことね……」
「っていうかあんた飛べるんでしょ? それでどうにかできないの? 陸路は散々試したけどまだ上から出ようとはしてないし」
「やってみてもいいけど……あんま期待すんなよ?」
「なんでよ。その翼も相手と同じ-Noの力なんでしょ?」
「それはそうなんだけどさ。なんつーかな、突破できる気がしないんだよなぁ……」
「はぁ? なによそれ。そんなのただの気持ちの問題でしょ」
「相性の問題じゃよ」
横合いから口が挟まれる。声の主はもちろん八千代だ。
「-Noの力にはカードと同じでそれぞれに相性がある。今回の掌握結界は見えない力《事象干渉系》、見える力《物理干渉系》をもつウィングリッターの力では区切られた場の中で右往左往するだけじゃ。まさに籠の中の鳥というわけじゃな。恐らく、遊午にはそれが感覚でわかっておるのじゃろう。どっかの鈍い女子と違っての」
「あの、八千代ちゃん。珍しく褒めてくれてるのはそれはもうすごく嬉しいんだけど、なんだか心なしか言葉に棘があるというかそんな言い方したら絶対……」
「あ゛ぁ?」
「ほらぁやっぱりぃ!」
振り返るともの凄い剣幕で鶫が八千代を睨みつけていた。どれくらい凄いかというとテレビだったら間違いなく事務所NGがかかるレベル。今の「あ゛ぁ?」とかもうヤーさんみたいだった。ある意味貴重映像なのかも知れないがいちファンとしてこんなつぐみんは見たくなかったと心の底から遊午は思う。
「ちょっと、あんたさっきからその上から目線なんなワケ? チビっこのくせに大人を馬鹿にしてんじゃないわよ。チビっこのくせに」
二回言った。今チビっこって二回言った。
「やめろ鶫! 挑発に乗るんじゃない!」
「あ゛ぁ?」
「ひぃいいこっちも!」
「口の聞き方に気をつけろよ小娘が。妾の方が格上なのじゃから上から目線は当たり前じゃろうが。……それからこれはあくまで仮の姿、本来の妾はお主など目ではないぐらいのないすばでぃなのじゃぞ」
「ぷっ、なんだ。やっぱ身体のこと気にしてるんだ。てかナイスバディ? 無理無理、つーか無駄。その可哀想な胸はどれだけ成長したって可哀想なままでしょ」
「可哀想ちゃうわい!! ちゅーか無駄とかいうな! ほんとのほんとにぼんきゅっぼんのぼーんなのじゃー!」
「最後どこが出てんのよそれ」
「う、うるさいうるさいうるさい!! ヤドクガエルみたいな頭した女子に言われたくないわい!!」
「誰の髪がヤドクガエルだ! 人のアイデンティティを有毒動物で例えてんじゃないわよ!!」
「ならばヒョウモンダコ」
「そいつも有毒でしょーが!!」
どうやらこの二人、まったくもって反りが合わないらしい。ついには子供みたいにお互いの身体のことまで取り上げ始めた。なんだか女子更衣室《ひみつのはなぞの》のガールズトークを聞いている気分になって遊午はちょっと興奮した。
とはいえ、可愛い女の子が角を付き合わせているところは見ていられない。大体女の子にツノを突くのは男の仕事だ。ここは男として身を呈して止めに入るべきだろう。
そう決心した遊午は、こんなときのために人類が考案した必殺のセリフを叫んだ。
「やめて! 俺のために争わないで!」
「「黙ってろど変態!!」」
息ぴったりだった。やったね仲良くなったぜ☆
「いや、今のは冗談としても仲間内で争ってる場合じゃないってのは本当だろ。これからどうするにせよさっさと決めないと、またあの似非マジシャンに見つかっちまうぜ?」
「いやはや、まったくその通りだ。さすが何人も我々の仲間を撃破しているだけあってボーイは危機管理能力が違うね」
『っ!!?』
今度もやはり、なんの脈絡もなかった。
「おやどうしたね? 揃って伝鳩がスパークガンを食らった様な顔をし……」
「鶫!!」
「え? ひゃっ!!」
ビル風に翻った燕尾服を目に留めたと同時に、遊午はもう行動に移っていた。
ウィングリッターの翼を発動、鶫を抱えて一直線に飛ぶ。目的地など決めなくていい。今はとにかくヤツから距離をーー
「おいおい、人が話している途中に消えるのはマナー違反だろう。さっき私はきっちり待っていたはずだがね」
ーー取った、はずだった。

黒い燕尾服とシルクハット。
右手にはビショップがあしらわれた長いステッキ。
まさにマジシャンといった容貌の男。

飛び去った先にいたのは見間違えようもなくCHESSの刺客であるMr.トリックだった。
さっき突き放したはずの、Mr.トリックだった。
「なん、で……」
「どうなっておる……」
無意識に驚愕を漏らす遊午と八千代。
「…………。」
だが鶫だけは何かを納得したように押し黙っていた。
「おいおい、返事をしたまえよ……と言いたいところだが、まぁそこは今は不問に付しておこうか。私の-Noの能力を初めて体感した者は皆同じ反応をする」
「-Noの能力……?」
「ああ、瞬間移動のね」
「!!」
遊午の頬を汗が一筋伝っていった。
副作用の強さはそのまま本体の強さに直結する。瞬間移動なんていう漫画やゲームの世界ではお馴染みの、わかりやすすぎるほどに強力な副作用を持つ-Noとはいったいどれだけのパワーをもっているか計り知れない。
遊午の焦りを見て取ったのか、トリックはシルクハットの下で不敵に笑う。
「さて、これで私からは絶対に逃げられないということは理解できたね? どうする? その上でまだ逃げ続けるかね?」
「ふん、よかろう」
安易な挑発だが、それを理解した上で八千代が挑発に乗る。
「準備はいいな、遊午。……遊午?」
「あ、うん……」
力無い返答を返す遊午。いつもなら八千代より先に挑発に乗っているところだが、今回は訳が違う。
-Noの闘いは命がけだ。それは本当に命がかかっている遊午に限った話ではない。自分の-Noを召喚することによる負荷。相手の-Noの攻撃による負荷。体に、脳に響くダメージは、蓄積されててさらに深いところにまで及んでいく。
-Noを破壊されればもしかしたら精神が壊れてしまうかもしれない。二度と意識が戻らぬ植物状態になってしまうかもしれない。
未知数の力には未知数の闇がつきまとう。
そしてそんな闘いに、このままでは鶫を巻き込むことになってしまうのだ。
トリックの狙いはあくまで鶫。ここで遊午が囮になっても逃がしはしないだろう。
(くそっ、どうすりゃ回避できる……!)
「なに? もしかしてあんた、あたしのこと心配してんの? だったら余計なお世話よ」
そんな遊午の逡巡を切り捨てるがごとく、鶫はきっぱりと言い切った。
「あたしはアイドルなのよ。待っているファンがいる以上、アイドルはなにがあっても期待に応えなくちゃならない。あたしにはその覚悟がある。マジシャンだかチェスだか知らないけど、ライブまでの道のりを邪魔しようってんなら全部まとめてぶっ飛ばす!」
「お前……」
頭を思いっきり叩かれたような気分だった。
そうだ、何を勘違いしていたのだ。アイドルという仕事に誇りを持ち、ファンのために努力をたゆまず自分を磨き続ける。妥協なんてものは許さない、紛れもなく一流の精神。自分が応援していたアイドルは、秋葉 鶫という少女はそういう人間だった。
「……ったく。推しメンにそう言われちゃ、付き合うしかねぇじゃねぇかよ!」
傷つくのが心配なら、一番近くで体を張っていればいいだけの話だ。
それは最高にシンプルで、最高に遊午好み考え方だった。
「グッド! 素晴らしい心意気だ。では二人まとめてかかってきたまえ!」

「デュエルディスク、セット!」

「D-ゲイザー、セット!」

『ARビジョン、リンク完了』

無音、無風。三人の決闘者が発する熱気だけが場を支配する。
デュエルが始まる直前特有の張り詰めた空気が最高潮に達し、そして。

「デュエル!!」

YUGO 4000
TUGUMI 4000
ーーーVSーーー
Mr.TRICK 4000

「ハンデ代わりだ、先行は譲ってやるよ」
「ほう、なかなかどうして優しいのだね。ではお言葉に甘えるとしようか」
どういう仕組みになっているのかわからないが、デッキからカードが勝手に飛び出してトリックの手に吸い込まれていった。いちいち演技がかった奴である。
さておき、トリックの1ターン目である。遊午が先行を取らせたのはただのお人好しではなく、トリックのプレイングを見る目的があった。デュエルにおいて、相手の仕草や癖や言葉遣いなどから読み取れる情報は多い。底の読めないトリックの実力。結局事前に分析できなかった分闘いながら見極めていかねばならない。
「手始めにトリックメイカー・シンブルを通常召喚しよう」

トリックメイカー・シンブル ☆4 ATK 0

「そのままリバースカードを2枚伏せて、ターンエンドだ」
……のはずが。
えらくあっさりとトリックはターンを次に回してしまった。
「はぁ? それでおしまい? なによ、あれだけ思わせぶっといててんで素人じゃないの。これならちゃっちゃと勝ってライブに間に合いそうね」
「おい待て、攻撃力0を攻撃表示なんてあからさますぎるだろ。伏せカードもあるんだし一応警戒して……」
「ごちゃごちゃうるさいわね。いいから黙って見てなさい! 私のターン、ドロー!」
遊午の忠告など耳に入れようとせず、鶫はさっさと自分のターンを開始してしまう。
「PN《パレットノート》-レッドスパローを召喚!」

PN-レッドスパロー ☆3 ATK 1200

「レッドスパローの効果発動! このカードと属性の異なるモンスター1体を選択し、そのモンスターを破壊する!」
レッドスパローの翼から熱風が放たれ、一直線にシンブルを狙う。赤みがかった靄に包まれたシンブルはそのまま空気に溶けるように消失した。
だがおかしい。破壊時のガラス細工が壊れるようなエフェクトがない。

コインパーム 永続罠

「セットしていた永続罠、コインパームでシンブルをガールのターンのエンドフェイズまで除外させてもらったよ。これにより対象を失ったレッドスパローの効果は不発となる」
「なっ!?」
「そして効果によってフィールドから離れたことで、シンブルの効果が発動。デッキからトリックメイカー・ディスクを特殊召喚する!」

トリックメイカー・ディスク ☆3 ATK 0

「レッドスパローの効果を無効化しただけじゃなくて、デッキからモンスターまで特殊召喚!? なにそれ聞いてないんだけど!」
「聞いてないじゃねぇよ! だから警戒しろって言っただろうが!」
「あんな罠があるってわかってたんならはっきりそう言ってくれればよかったじゃない!」
「相手の伏せカードの詳細までわかるか! 俺はエスパーじゃないんだよ!」
「なによ、使えないわね」
「あれおかしいぞ? なんで俺が責められてるんだ?」
「はっはっは、早速仲間割れかね?」
言い争う二人を見てトリックがくつくつと笑う。大げさなジェスチャーまで入れて実に楽しそうだった。
「しかし喧嘩もいいが、することがないなら早めにターンエンドを宣言してくれたまえよ」
「う…………変則ルールでは、すべてのプレイヤーにターンが回るまで攻撃できない。私はターンエンドよ」
「この瞬間コインパームの効果は終了し、シンブルはフィールドへと帰還する」

トリックメイカー・シンブル ATK 0

なかなかの酷い結果となってしまった鶫のターン。ついでに遊午の中の完璧超人なイメージもガンガン崩れていっていた。どうやら彼女は思っていたよりずっと普通の女の子らしい。
だったら尚更遊午が前に出ていかねばならない。
「ったく仕方ねぇな。見てろよ。デュエルってのはこうやるんだよ! 俺のターン、ジャイロガンナーを攻撃表示で召喚!」

ジャイロガンナー ☆4 ATK 1600

「ジャイロガンナーの効果! フィールド上の魔法・罠カードを一枚破壊して、相手に500ポイントのダメージを与える! 破壊するのはもちろんコインパームだ!」
ジャイロガンナーが素早く腰だめでピストルを唸らせる。音を切り裂いてカードを狙う凶弾。
だがその軌跡はヒットする直前でひん曲がった。
「速攻魔法ミスディレクション。ジャイロガンナーの効果の対象をコインパームからこのカードに変更する」
「はっ!?」

ミスディレクション 速攻魔法

「その後『トリックメイカー』モンスターであるディスクを墓地へ送る。そしてディスクが効果によってフィールドを離れたことでデッキからトリックメイカー・ダンシングケインを手札に加えさせてもらうよ」
混乱する遊午をよそに無情にもミスディレクションが破壊される。
「ジャイロガンナーの効果を無効化しただけじゃなくて、デッキからモンスターまでサーチ!? なんだそれ聞いてないぞ!」
「あんた人にとやかく言っといて同じこと繰り返してんじゃないわよッ!」
見事なまでの天丼であった。あれだけ意気込んでいたので余計に恥ずかしい。
「あーくそ、カードを1枚セット!」
「ターンエンドかね? ではコインパームの効果を再び使用し、シンブルを除外。さらにデッキからトリックメイカー・パラソルを特殊召喚だ」

コインパーム 永続罠

トリックメイカー・パラソル ☆2 DEF 0

悔やんでも仕方ない。ここはトリックが二度の攻撃をいなしきるほどの実力があることがわかったとポジティブに考えよう。
……余計悔やみたくなってきた。
「では私のターン。トリックメイカー・ウォンドを召喚」

トリックメイカー・ウォンド ☆1 ATK 0

「これにて私のフィールドに『トリックメイカー』が三体揃ったね? よって手札からトリックメイカー・ダンシングケインが特殊召喚できる!」

トリックメイカー・ダンシングケイン ☆6 ATK 0

「さらにダンシングケインの効果! まず自分の『トリックメイカー』を任意の数墓地へ送る。私はシンブル、パラソル、ウォンドを墓地へ送ろう。その後ダンシングケインの攻撃力はこの効果で墓地に送ったモンスターの数×1000ポイントアップする!」

トリックメイカー・ダンシングケイン ATK 3000

「効果で墓地へ……? ってことはまさか!」
「察しがいいね。効果でフィールドを離れたシンブル、パラソル、ウォンドの効果が同時に発動!!」
「さ、三体同時発動!?」
「パラソルの効果でダンシングシルクを墓地へ送り、シンブルの効果でシガレットを特殊召喚。加えて特殊召喚したシガレットをウォンドの効果で墓地へ送る。そしてシガレットが効果でフィールドを離れたことにより墓地のダンシングシルクを守備表示で特殊召喚だ!」

トリックメイカー・ダンシングシルク ☆5 DEF 0

「おいおいふざけんな、1ターンの間に一体いくつ効果を発動するつもりだよ!」
発動したモンスター効果が次のモンスター効果を誘発。さらに次、次、次と繋がっていく驚異のコンボ術。もはや無限に続くのではないかと思えてしまう程だった。
「そう言われても、これがこの『トリックメイカー』のコンセプトなものでね。まぁちょっとしたショーと思って楽しんでくれたまえ。ではバトルフェイズに入ろう。攻撃力3000となったダンシングケインでレッドスパローを攻撃!」

トリックメイカー・ダンシングケイン ATK 3000 vs PN-レッドスパロー ATK 1200

「ッ! 罠発動、攻撃の無益化!」

攻撃の無益化 通常罠

「バトルフェイズの間、戦闘を行うすべてのモンスターの攻撃力は強制的に0に変更される!」

トリックメイカー・ダンシングケイン ATK 0 vs PN-レッドスパロー ATK 0

「堂々と女の子を先に狙ってんじゃねぇよ……っ!」
「弱い方から先に潰すのは闘いの定石だろう。むしろ正しいことをしていると思うがね」
「あぁそうかよ。いいぜ、そっちがそういう姿勢だっつーなら俺も容赦痛いいぃぃいいっ!!!」
せっかくかっこいいこと言おうとした遊午のセリフは左爪先に走る激痛によって途中でキャンセルされた。
「さっきから黙って聞いてりゃあんたらねぇ……」
「ちょ、ストップストップ痛い痛いマジで痛い小指ビキビキ言ってから離してぇ!!」
「弱い方から狙う? 女の子だから守ってあげないと? ざっけんじゃないわよ」
苦痛に悶える遊午を無視して鶫は啖呵を切る。
「こっちは一人の決闘者としてこのフィールドに立ってんのよ! そうである以上そこに上も下もないでしょうが! 人を勝手に特別扱いすんな! わかった!?」
「はいすんませんしたぁっ!」
最後に一歩限界まで踏み込んで、遊午の足から靴底が離れた。慌てて左足を抱えてフーフー息を吹きかける。無意味だとわかっているがそれでも気休め程度にはなった。
そこで、突如拍手の乾いた音が鳴った。音の主は消去法的に当然トリックである。
「いやはや、全くもって君の言う通りだ。確かに私は君を特別扱いしていたらしい。すまなかったね、ガール。ーーーーここからは、誠意を持って全力で君を叩き潰そう」
ぞわり、と遊午のうなじが総毛立った。足の痛みが登ってきたわけではない。トリックの放つ気迫が明らかに質を変えたのである。
似非マジシャンでもデュエルを盛り上げようとするエンターテイナーでもなく、それ以前にCHESSのメンバーであることを力づくでわからせる殺気に。
「バトルフェイズ終了、そのままターンエンドだ。さて、ガール。君の番だが……さっきまでとは違って、うかうかしているとあっさりその首を取ってしまうよ」
「言われなくても! あたしのターン。まずはレッドスパローの効果を再び発動! 炎属性ではないダンシングケインを破壊する!」
「そうはいかんよ! 自分フィールドにダンシングシルクが存在する限り、私の『トリックメイカー』モンスターは効果の対象に選択されない!」
またも不発に終わる熱風。しかし今度は鶫の顔に焦りはなかった。
「なら次はPN-ブルークレインを召喚!」

PN-ブルークレイン ☆3 ATK 800

「ブルークレインが召喚に成功したとき、デッキからレベル4以下の『PN』モンスターを手札に加えられるわ。だけどこのとき、あたしのフィールドにブルークレインと属性の異なるレッドスパローが存在することでレベル5以上のモンスターも選択可能となる!」
「おおっ!」
「よって、あたしはレベル6のPN-パープルスワンを手札に加えるわ。そして、パープルスワンは自分フィールド上の炎属性と水属性のモンスターをリリースすることで手札から特殊召喚できる! よってレッドスパローとブルークレインをリリースして……行きなさい、パープルスワン!」

PN-パープルスワン ☆6 ATK 2200

「パープルスワンの効果! パープルスワンの特殊召喚成功時、相手モンスターの攻撃力はすべて0となる! 『サイレント・フォース』!!」
甲高く嘶くパープルスワンを中心としてマゼンタの波紋が広がる。波紋はダンシングケインを通り抜け、フィールド全体へと伝播した。

トリックメイカー・ダンシングケイン ATK 0

「バトルよ! パープルスワンでダンシングケインを攻撃!」

PN-パープルスワン ATK 2200 vs トリックメイカー・ダンシングケイン ATK 0

「ここで、自身を対象にダンシングシルクの効果を発動!」
「!?」
「このターンモンスターが攻撃するとき、相手はダンシングシルク以外の私のモンスターを攻撃対象に選択できなくなる」
「悪あがきね。だったらダンシングシルクを……」
「気が早いよ、ガール。さらに永続罠コインパームの効果を三度発動! ダンシングシルクをエンドフェイズまで除外する!」

コインパーム 永続罠

「ダンシングシルクを除外? 一体それになんの意味があるんだ?」
「わからんのか。ダンシングシルクの効果で小娘はダンシングシルク以外を攻撃できんようになっておるのじゃぞ」
首をかしげる遊午に八千代は語気に少し苛立ちをにじませながら解説する。
「それが?」
「ダンシングシルクしか攻撃できんのに、そのダンシングシルクがフィールドからいなくなったらどうなる」
「……。あっ……!」
「気付いたようじゃな。そう、これでこのターン小娘は矛先を向ける場所がなくなったというわけじゃ」
ダンシングシルクの効果によって鶫の攻撃はダンシングシルクに固定された。しかし当のダンシングシルクはコインパームによってエンドフェイズまで除外されてフィールドからいなくなった。
この場合、ダンシングシルクの効果は適用されたままであり、鶫はモンスターへの攻撃・直接攻撃問わず一切の攻撃ができなくなってしまうのだ。
「だがそれだけではない。ダンシングシルク、コインパームはともに毎ターン発動できる効果。あの二つが揃っている限り、いつまでも奴に攻撃が届くことはないというわけじゃ」
「要は完璧なロックってことかよ……!」
「さてガール、コインパームに対して何かカードを発動するかね?」
余裕の表情のでトリックは笑う。それもそうだろう。この無敵のコンボを突破するカードはいくつかあるが、バトルフェイズに発動できるものの数は限られている。さらにそのうちの一枚をちょうど今引いている可能性となれば、それはもうほとんど0みたいなものだろう。
だが、そこで簡単に引き下がるような鶫ではなかった。
「ええそうさせてもらうわ」
「ほう?」
「手札から速攻魔法発動、トーンチェンジ!」

トーンチェンジ 速攻魔法

「パープルスワンをリリースし、デッキからパープルスワンとレベルが同じで属性の異なるモンスターを攻撃表示で特殊召喚する! 来なさい、PN-オレンジクホーク!」

PN-オレンジホーク ☆6 ATK 2400

「そしてこの瞬間、コインパームより先にチェーンを組まないオレンジホークの効果が適用される!オレンジホークが特殊召喚に成功したとき、相手フィールドに表側で存在する全てのカード効果は無効化される! 『シーリング・エフェクト』!!」
力強く羽ばたくオレンジホークの翼から槍のように飛び出した橙の羽根が三枚のカードに突き刺さる。
「これでコインパームもダンシングシルクも効果が発動できなくなった。やるじゃねぇか鶫!」
「あったりまえでしょ、あたしを誰だと思ってんの! さぁバトル再開よ。オレンジホークでダンシングケインを攻撃!」

PN-オレンジホーク ATK 2400 vs トリックメイカー・ダンシングケイン ATK 0

「効果の割り込み、か。いつかは破られると思っていたが、まさか一度も成功しないままこのコンボが崩されるとは思っていなかったよ」
オレンジホークの鋭利な爪が迫る中、トリックはそう驚きの言葉を述べる。どうしてかその表情はえらく落ち着き払っていた。
「されど私は腐ってもマジシャン。仕込んだトリックは一つや二つではないさ」
「なによ、負け惜しみ? みっともない」
「いいや、事実さ。手札のゼロ・フェイカーを墓地へ送ることで、効果を発動!このターン攻撃力0のモンスターは戦闘では破壊されず、攻撃力0のモンスターの戦闘で発生する私へのダメージは0となる!」
「なっ……!?」
オレンジホークの一撃が確かにダンシングケインにヒットする。けれどその爪が敵を引き裂くことはなく、途中で見えない壁に阻まれ鈍い音を立てるだけ。
必殺の攻撃に失敗したオレンジホークは悔しそうに主人の元へと舞い戻っていく。
「なんなのよあいつ……。2対1なのに、なんでなにされても対応できるのよ……!」
狼狽する鶫。
同じように遊午も本気で戦慄を覚えていた。
今の攻防、最後の最後までは間違いなく鶫が優勢だった。相手の戦略を読み、場を制圧し、さらに仕込まれていたコンボをひっくり返した。普通ならそこで勝負が決まるとまでは言わずとも、大方の趨勢は決まってもいいくらいのファインプレーだ。鶫にとっても会心のプレイングだったに違いない。
だが。しかし。それでもなお。
Mr.トリックという男は凌ぎきってしまったのだ。
思い出すのは、以前に元・CHESSのメンバー沖島 茅野から聞いた話。
CHESSにおいて階級《キャリア》の違いはそのまま実力の違いとなっているらしい。例えば茅野の階級兵士《ポーン》、学園の化学教師に扮していた嵯峨野 京治は城の21《ヴェントゥーノ=ディ=ルーク》、初めて闘ったCHESSである墨田 園心は僧侶の8《オット=ディ=ビショップ》とを比べると、茅野と嵯峨野の間にはとてつもない壁があり、嵯峨野と墨田ではさらに倍以上の格差があるという。
CHESSとのデュエルはどれもこれも一歩間違えれば負けていてもおかしくない闘いだったが、そう言われると確かに墨田が一番の強敵だったように思われる。
しかし同時に、あのレベルならまだなんとかなるとも思いもした。

『私はMr.トリック。僧侶の4《クアットロ=ディ=ビショップ》としてCHESSの末席を汚す者だ』

僧侶の4。墨田とたった4つしか数字が違わないのに、この実力差。
そしてそんな男が幹部ですらないただの構成員。
一体CHESSという組織はどこまで巨大なのか。
「っぷし!!」
そこまで考えたところで、遊午は自分の頬を両手でひっぱたいた。
ヒリヒリとした痛みが脳を突き抜け思考をリセットする。
考えても答えの出ないことをうだうだ悩むほど無駄なことはない。
そんなことより今はなんでもいいから突破口を見つけ出す方が先だ。
「俺はジャイロガンナーをリリースしてジャイロストライカーをアドバンス召喚!」
『フンッ!』

ジャイロストライカー ☆5 ATK 2100

「さらに魔法カード、戦意継承を発動! 墓地のジャイロガンナーをゲームから除外し、手札からジャイロガンナーよりレベルの低い戦士族モンスター、チューンナップ・トルーパーを特殊召喚する!」

戦意継承 通常魔法

チューンナップ・トルーパー ☆3 ATK 1100

「チューンナップ・トルーパーの効果! このカードを守備表示にすることで、自分のモンスターのレベルをひとつ変化させる! 俺はジャイロストライカーを選択し、レベルを5から6にアップ!」

チューンナップ・トルーパー DEF 900

ジャイロストライカー ☆6

「そして、ジャイロストライカーのレベルが変わったことで、効果が起動する! トリック、お前のフィールドのモンスターの表示形式をを全て守備表示に変更させてもらうぜ!」

トリックメイカー・ダンシングケイン DEF 0

「行け、ジャイロストライカー! ダンシングケインを攻撃!」

ジャイロストライカー ATK 2100 vs トリックメイカー・ダンシングケイン DEF 0

「さらにこのとき、ジャイロストライカーのもう一つの効果が発動する! このモンスターが攻撃したダメージステップ開始時、相手フィールドの守備モンスターを全て破壊する! 『ストライク・バニッシュ』!!」
着弾、炸裂。ジャイロストライカーのキャノン砲を模した右腕から放たれた火炎弾が2体のモンスターを四散させた。鼻奥を刺激する硝煙の匂いがあたり一面に充満する。
これでトリックのフィールドはガラ空きになった。まだコインパームが残ってはいるが、あれは『トリックメイカー』がいなければ意味のないカードだ。
「…………コインパーム?」
快調に回っていた思考回路が一時停止する。
そうだ、コインパームだ。
どうしてトリックはコインパームを発動しなかった? どうして1体だけでもモンスターを退避させなかった?
「ボーイ、ガール。度重なるコンボに負けずに見事私のモンスターを薙払ったこと、素直に称賛するよ。君たちは優秀だ。この先きっと勝利を重ね、いつか右に出るもののいないデュエリストになることだろう。ーーーーだからこそ、ここでひとつ学んでいきたまえ。完璧なまでの敗北の味というヤツをね」
答えはすぐに出た。
「私のターンだ。魔法カード、ゼロ・リターン!」

ゼロ・リターン 通常魔法

「私の墓地に存在するレベル5以上で攻撃力0のモンスター2体を守備表示で特殊召喚する! 条件を満たすのはダンシングケインとダンシングシルクの2体のみ。よって2体を特殊召喚! さらにこの効果で特殊召喚したモンスターのレベルは、もっともレベルが低いモンスターのものに統一される!」

トリックメイカー・ダンシングケイン ☆5 DEF 0

トリックメイカー・ダンシングシルク ☆5 DEF 0

レベル5のモンスターを2体同時に揃えること。それがトリックの目的だったのだ。
もしジャイロストライカーの効果からダンシングケインとダンシングシルクのどちらかを守っていた場合、守らなかった方を蘇生するカードとレベルを揃えるカードで最低2枚必要だった。それをわざと破壊を甘んじることで手札の消費を1枚に済ませたのである。デュエルモンスターズにおいて手札の数は可能性の数に直結する。使える枚数が多ければその分できることが多いということだ。
そして、-No所有者同士のデュエルでレベルの等しいモンスターが並んだということはすなわち。

「私はダンシングケインとダンシングシルク、2体のレベル5の魔法使い族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚!!」
魔術師たちが織りなす美麗なる銀河。強大な魔力に耐えきれず、渦の中心が炸裂する。
「現れよ、-No.49。稀代の奇術師よ、己が魂さえ道具に変えて運命の星を掌握せよ! 奇術魔スター・ソリアナ!!」
黒塗りのステッキが宙に揺れる。見るものの視線を惹きつけるように、そして見るものの視線を欺くように浮遊するステッキがリズムを刻見ながら空間をノックすると、何もないところからシルクハットが出現した。同じように、蝶ネクタイ、燕尾服、ベストが順々に。まさに所有者の身なりをそのまま複製したかのような装飾品が次々に揃っていく。
そしてすべてのパーツが揃い、刹那。装飾品が内側から弾け、無数のトランプの束へと姿を変えた。
フィールドに咲き乱れるトランプに視界が埋まる。どこからか響く高笑い。
やがてカードの霧が晴れると、赤いマスクで目元を隠し、召喚エフェクトの光をスポットライトに利用した奇術の申し子が顕現した。

-No.49 奇術魔スター・ソリアナ ★5 ATK 0 ORU 2

「あれが-No……? あたしのと見た目も効果も全然違う……」
隣でソリアナを見上げていた鶫がぼんやりとこぼす。
「鶫、お前自分以外の-No見るの初めてか?」
「なに、悪い?」
「いや悪くねぇよ。普通なら所有者同士がすれ違っても気づかないだろうし、当然っちゃ当然だからな」
そもそも彼女は自分の他に-No所有者が存在していることも知らなかったようであるし。
「ただ、それなら今より警戒レベルを数段あげとけよ。お前の-Noも大概強力な効果を持っているんだろうが、他の-Noはもっとわけわかんねぇぞ」
言いながら、遊午も淡く明滅する二つの衛星に警戒心を強めた。
「さぁ、ショータイムだ」
所有者と写し身、二人の奇術師が不敵に笑う。
「永続魔法、カットフォースを発動。1ターンに一度デッキからカードを5枚確認し、好きな順番で元に戻す!」
トリックの眼前に遊午たちには見えないように5枚のカードが展開される。それを数度フリック操作し、トリックはデッキ操作を終了した。
「それでは、オーバーレイ・ユニットを使用しないソリアナの効果を発動! デッキトップのカード2枚をめくり、めくったカードをソリアナのオーバーレイ・ユニットへと変換する! 『マジカル・ブースト』!!」
トリックのデッキの上から2枚が自動的に全プレイヤーに公開される。ホログラムとして投影されたのは名前もイラストも、全く同じカードだった。
「めくったカードは速攻魔法のゼロ・ブラストが2枚。よってこの瞬間、さらなる追加効果が発動する!」
「追加効果?」
「そう。追加したオーバーレイ・ユニットが同名カードだった場合、相手フィールドのカードを全て破壊すると言う効果がね」
「はぁ!?」
「す、全て!?」
うろたえる二人の目の前でモンスターたちは一斉にポリゴンの破片になって消える。
せっかく時間をかけて展開した盤面が無残に崩壊してしまった。
「さぁバトルフェイズだ。ソリアナでボーイ自身にアタックしよう!」

-No.49 奇術魔スター・ソリアナ ATK 0

「このタイミングでソリアナの第2の効果を発動する! 1ターンに1度、このモンスターのオーバーレイ・ユニットとなっているカードを私のフィールドにセットする! 『トリック・キャスト』!!」
トリックの言葉に合わせてソリアナが手にしたステッキで自身のオーバーレイ・ユニットのひとつに触れる。そのまま袈裟懸けに振り抜くと、虹のごとき弧が描かれた。
と、さっきまで何もなかったトリックの魔法・罠ゾーンの一箇所に新しくセットカードが出現していた。
「っ。オーバーレイ・ユニットをセットカードにするなんて確かに珍しい効果だけど、魔法・罠カードはセットしたターンに使えないし意味ないわよ!」
「奇術師をナメてもらっちゃあ困るね」
「なに言って……」
「ソリアナの効果でセットしたカードはそのターンのうちに使用できる! よって私は、速攻魔法ゼロ・ブラストを発動!」

ゼロ・ブラスト 速攻魔法

「攻撃力0のモンスターが攻撃を行うとき、ダメージを与える代わりにそのモンスターの元々の守備力分のダメージを相手に与える!」
「守備力分……っつーことは3000ダメージだと!?」
ソリアナがまたもステッキを振るうと、周囲に十数枚のトランプが浮かぶ。数字も柄も様々なトランプは鋭利な刃物となって遊午と鶫に降り注いだ。
「がっ……!」
「……痛ぅっ!」

YUGO 1000
TUGUMI 1000
ーーーVSーーー
Mr.TRICK 4000

「ただしゼロ・ブラストには発動後私のモンスターが全て守備表示になるデメリットがある」

-No.49 奇術魔スター・ソリアナ DEF 3000

「なにがデメリットじゃっ、守備力の方が高いそのモンスターにとってはメリットではないか! くっ、大丈夫か遊午!」
「げほっげほっ……、あ、あぁなんとかな……」
口ではそういった遊午だが、意識はいつ途切れてもおかしくない状態だった。
一度に3000もの効果ダメージなど食らったこと経験などない。慣れない衝撃は余計に身体に負担がかかってくる。
加えて、心臓を絞り上げる鈍痛が痛覚を焼く。
心配そうに遊午の顔を覗き込む八千代越しにうっすらと青空が見えた。-Noによって成り立っている八千代の存在が希薄になってきているのだ。
勝者が総取りの所有者同士のデュエルにおいて、遊午の敗北は八千代の消滅を意味する。そして八千代が消滅すれば彼女の魂によって命を繋いでいる遊午は今度こそ、死ぬ。
ライフが減るにつれ色濃くなっていく死の感覚を振り払うように、遊午は袖で脂汗を拭って前を向いた。
「生きてっか、鶫」
「勝手っ、に、殺すんじゃないわよ……!」
息も絶え絶えという風に鶫が応じる。大丈夫だ。まだ心は折れていない。
「……ねぇ。あんたは何度も-Noと闘ったあるんでしょ」
「おう」
「なら教えなさい。どうやったらアレに勝てる? どうやったらあのムカつく野郎に一泡吹かせられる?」
光沢のある虹彩にギラリと見据えられる。
どうやら心が折れるどころか一層闘争心が燃え上がったらしい。
あぁ、こいつと一緒ならきっとなんとかなる。いつの間にか遊午はそう思っていた。
周りの人間に自分の熱を伝える力はさすがアイドルといったところか。
「いいか。さっき-Noはわけわかんねぇっつったがな、それでもデュエル中ルールに縛られてるとこは他のカードと一緒なんだ。……-Noは-Noでないと倒せないって例外はあるけどな」
デュエル外では超人的な力を授ける-Noも、一度デュエルとなればおかしな言い回しだがただのパワーカードにすぎない。そしてカードであるならば戦闘破壊、効果破壊、除外にバウンスだってしっかり効く。
「だからまずは敵のカードを完璧に理解しろ。ここまで起こったことを頭の中で何度も反芻して、ひとつひとつ噛み砕け。そしたらだんだんあのカードに出来ること、出来ないこと、得意なこと、苦手なことがわかってくるはずだ。あいつよりもあいつのカードを把握したとき、必ずなにか光明が見える」
「他には?」
「目に見えているものだけに囚われるな。見えないところにこそ穴は潜んでる。さすがにこんなことは起こらないだろって思ったことに限ってほんとに起こりやがるもんだ。特に奴の-Noは本来非公開情報であるはずのデッキトップに干渉する。最悪のパターンと、そいつをひっくり返す手段を一緒に考えだせ」
「最悪のパターン、ね……」
ほんの少しでもなにかを掴み取ろうと、鶫は遊午のアドバイスを自分の口で繰り返す。
「それからもう一個」
「まだあるの?」
「あぁ。こいつが一番重要なことだ」
遊午は自分の-Noの刻印がある位置ーー左胸を右の拳で二度ノックし、付け加えた。
「心《ここ》で負けんな」
ニヤリと笑う遊午に、一瞬あっけにとられてぱちぱちとまばたきしていた鶫だったが、
「上等!!」

さぁ、反撃といこうじゃないか。

「PN-グリーンパロットを召喚!」

PN-グリーンパロット ☆3 ATK 1900

「グリーンパロットが召喚に成功したとき、手札からレベル4以下の『PN』モンスターを特殊召喚できる。出番よ、イエローピジョン!」

PN-イエローピジョン ☆3 DEF 2300

「さらに! イエローピジョンの効果によって、墓地からレベル3のレッドスパローを特殊召喚する!」

PN-レッドスパロー ☆3 ATK 1200

「仕上げよ。魔法カード発動、『クレシェンド・カラーズ』! 表側表示で存在する全ての『PN』モンスターのレベルを、私のフィールドの属性の数分上昇させる!」
鶫のフィールドにあるのはグリーンパロットの風、イエローピジョンの光、レッドスパローの炎の3属性。3体のモンスターはレベルが揃ったまま3から6へとレベルアップする。

PN-グリーンパロット ☆6

PN-イエローピジョン ☆6

PN-レッドスパロー ☆6

「レベル6のモンスターが3体。来るかね、ガール」

「異なる属性のレベル6モンスター3体でオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!!」
赤、黄、緑。三色の光芒が混ざり合って新たな宇宙を創造する。
「現れなさい、-No.90。プリズムフェザー・ピーコック!!」
境目のわからないほどに透き通ったクリスタルが太陽の光を受けて様々に色を変える。光線の乱反射は回数を重ねるごとに加速し、それに応じてクリスタルの輝きも際限なく上昇してゆく。
やがて、直視できないくらいまで光量が達したところで、クリスタルは自身の光沢に耐えきれなくなって内側から崩壊した。
一気に溢れ出す光。耳をつんざく超高音。一面に飛散したガラス片は空に大輪の花を咲かせたところで静止する。
そのまま光を核として収束したガラス片たちは自ら新たな姿に組み変わってゆく。
もっと生物的に。もっと複雑に。そして、もっと光を集められる姿へと。
それはあたかも己を最も美しく魅せる羽根の広げ方を模索する孔雀のようで。
やがて完成した姿はその身に虹を宿す孔雀の王そのものだった。

-No.90 プリズムフェザー・ピーコック ★6 ATK 2600 ORU 3

「これがガールの-Noか。なんとも美麗なモンスターじゃあないか。ステージに上がる者としてはミラーボールを思い出して心が踊るよ。もっとも、美しいだけでは私の-Noは越えられんがね」
「うっせーなクソッタレ。今からその薄ら笑いをひっぺがしてやるから覚悟しなさい」
トリックの挑発をすげなくつっぱねる。ただし今までと違って感情的になっての行動ではなさそうだった。
「プリズムフェザー・ピーコックの効果はエクシーズ召喚に使用したモンスターの属性によって決定するわ。炎属性を素材にしたとき、このモンスターの攻撃力は500アップする!」

-No.90 プリズムフェザー・ピーコック ATK 3100

ピーコックの体内で煌めいている三色の光線のうち、炎のように激しい赤い光が全身に行き渡る。
「よっしゃ! これでソリアナの守備力を上回った!」
「そして、風属性モンスターを素材にしたとき、ピーコックは一度のバトルフェイズに二回攻撃できる!」
今度は緑。風のように渦巻く光が増幅された。
「さぁ、バトルフェイズよ! ぶっ放せ、『セブンレイ・キャノン』!!」

-No.90 プリズムフェザー・ピーコック ATK 3100 vs -No.49 奇術魔スター・ソリアナ DEF 3100

鶫の命令に合わせてピーコックの尾羽が大きく逆立つ。表面積が増えたことで取り込まれる光が倍増、限界まで光度が上がったピーコックは大きく胸を膨らませ、

ゴオッッ!!!

閃光一閃。極太のエネルギー砲が奇術師の防御壁を穿った。
「続けて2回目の攻撃!」
再び極大サイズの光線が放たれ、トリックを丸ごと呑み込んでしまう。

YUGO 1000
TUGUMI 1000
ーーーVSーーー
Mr.TRICK 900

「最後、きっちり決めなさいよ」
「おう、任せな」
鶫の奮闘でライフは逆転。トリックのフィールドはモンスターも伏せカードもなく、現時点では使い道のないコインパームとカットフォースのみ。
ついに、ついにここまできた。
経験・カードパワー・プレイングのすべてが格上の相手に、それでも二人掛かりでどうにか食らいつき、最後には鉄壁の防御を打ち破ったのだ。
そして次は遊午のターン。ここで残り900ポイントをきっちり削りきってしまえば、トリックにターンを回すことなく勝負を決められる。
だが慢心はしない。鶫に忠告した通り、なにもないと油断したときこそ罠に嵌り易い。
「俺のターン! フィールドにエクシーズモンスターが存在することで、手札のジャイロアクセルは特殊召喚できる!」

ジャイロアクセル ☆4 DEF 500

「もう1体、ジャイロスレイヤーを召喚!」

ジャイロスレイヤー ☆4 ATK 800

「俺はジャイロアクセルとジャイロスレイヤー、2体のモンスターでオーバーレイユニットを構築。エクシーズ召喚!」
奇術魔スター・ソリアナ、プリズムフェザー・ピーコックとくれば、もちろん遊午はこのモンスターだ。
「現れろ、-No.39。天騎士ウィングリッター!!」
『ハァッ!!』

-No.39 天騎士ウィングリッター ★4 ATK 2500 ORU 2

「ウィングリッターがエクシーズ召喚に成功したとき、俺のライフは800ポイント回復する。さらにこの瞬間、オーバーレイ・ユニットをひとつ使うことで回復したライフ分ウィングリッターの攻撃力をアップする!」

YUGO 1800
TUGUMI 1000
ーーーVSーーー
Mr.TRICK 900

-No.39 天騎士ウィングリッター ATK 3300

「最後にウィングリッターに装備カードクリア・メイルを装備する。これでウィングリッターが攻撃する間、ダメージステップ終了時まで相手はモンスターの効果を発動できない!」
これで遊午のバリア・ジャンパーのように、手札から飛んできてモンスターが攻撃を防がれたりダメージを無効にされたりすることもなくなった。
「決めるぜ。ウィングリッターでダイレクトアタック!! 『クロスウィング』!!」

-No.39 天騎士ウィングリッター ATK 3300

ウィングリッターは雷剣と大剣を両手に握って力強く大地を駆ける。プリズムフェザー・ピーコックの光が透明な鎧に反射して、騎士の背中に虹色の翼が広がった。
火力オーバー。対抗手段は全て封じた。間違いなくこの一撃で勝利できる。
そんな状況の中で。
なぜか遊午の本能が黒い影を察知した。
それはほんの気の迷いだったのかもしれない。
それでも足を止めさせるには十分だった。
「とまっ、」
「もう遅い。攻撃宣言は終了した」
そして影は、ありえない場所から遊午の喉を絡め取った。
「私のフィールドにモンスターが存在せず、相手エクシーズモンスターがダイレクトアタックしたとき、その攻撃を無効にしてこの罠カードは手札から発動できる!!」
『!!?』

エクシーズ・ショータイム 通常罠

「まずは私の墓地からエクシーズモンスターであるソリアナを攻撃表示で特殊召喚する」

-No.49 奇術魔スター・ソリアナ ★5 ATK 0 ORU 0

「そしてその後、全てのエクシーズモンスターは自身の効果を条件を無視して発動しなければならない」
強制効果発動。そちらも驚くべき効果だが、問題はそこではない。
「手札から罠、だと……」
「聞いたことないわよそんなカード……」
「当然さ。これは-Noに対抗するためにCHESSが独自に考案したカードだからね」
「なんだよそれ……インチキじゃねぇか! デュエルはお互い公平なのが当然だろうが、片方だけに使えるカードがあるなんておかしいだろふざけんなテメェ!」
「おかしいのはどっちだ。散々-Noに毒されておいて、今更不条理に文句を言うなよ小僧」
「っ!?」
突如トリックの顔から笑みが消える。気迫も殺気もない、ただの怒りがそこにあった。
あらゆる文句をねじ伏せる感情の塊の前。
文句ならいくらでも出てくるはずなのに、どうしてか遊午はそれ以上なにも言えなくなった。
「さて。では順々に処理していこうか」
今の一幕が嘘のようにトリックは笑顔に戻る。
「……ウィングリッターのオーバーレイ・ユニットを消費して、効果を発動。ただし効果は重複しない」
「ちょっ、あんたいいの!?」
「仕方ねーだろデュエルディスクが認識してんだからよ」
「うっ……!」
デュエルはルールこそが絶対。ルールが是と判断しているのならプレイヤーに非を唱えることなどできない。
しぶしぶながらも鶫も従わざるを得なかった。
「……プリズムフェザー・ピーコックの効果。オーバーレイ・ユニットになっているイエローパロットを取り除いてデッキから1枚ドローする!」

-No.90 プリズムフェザー・ピーコック ORU 2

「素直で嬉しいよ。私も奇術魔スター・ソリアナの効果によりデッキトップのカード2枚をこのモンスターのオーバーレイ・ユニットにする。めくられたのが同名カードではないので追加効果は発動しない」

-No.49 奇術魔スター・ソリアナ ORU 2

「さらにもう一つの効果。オーバーレイ・ユニットのうち通常罠であるカードファウンテンをフィールドにセット」
「それで全部なら、俺はターンエンドだよ」
「そうかい。では私のターンだ」
「ちょっと待って!!」
カードをドローしようとしたトリックに鶫が口を挟んだ。
「どうかしたかい?」
「別になんかカードを発動したいってわけじゃないわ。ただ、少しだけ時間を頂戴」
構わんよ、と言う代わりにトリックは手の平をこちら側に向けて差し出す。
返答を確認するが早いか鶫はつかつかと遊午の前に歩み寄ってきた。
「あんた、まさか諦めたんじゃないでしょうね」
遊午は答えない。
「まだライフは尽きてないでしょ。あいつが馬鹿みたいに強くても、二人掛かりならなんとかなるはずよ! なに弱気になってんの!」
答えない。
「このっ……なんとか言いなさいよ!」
「諦めたさ」
「えっ……」
「今の攻撃が通らなかった時点で、俺がアイツを倒すのは諦めた」
「……本気で言ってんの?」
「あぁ、本気だよ。つーかお前にもわかってんだろ。次のターン、あいつはまたカットフォースを使ってデッキを操作する。そしたらソリアナの効果で全部破壊され、んでもってあいつの腕なら間違いなく俺たちのライフを0にしてくる」
しっかりと鶫の瞳を見つめ、遊午は絶望の未来を予言した。
「それだけならもういいな? おいトリック、ドローしていいぜ」
「待ちなさい! まだ話は……」
「これ以上話すことはなにもねぇよ。あとは全部お前に任せた」
なおも追いすがろうとする鶫の手を避け、遊午は一歩距離をとる。
そんな遊午の態度に鶫はまだなにか言いたそうだったが、さすがにそれ以上問い詰めて来ようとはしなかった。
「聞いていた話と随分違うね」
「お前が俺の評判をどう言う風に聞いてたか知らねぇが、別に俺はいつも通りだよ」
「……まぁいいさ。では改めて私のターンだ。永続魔法カットフォースの効果を再び使用し、デッキを上から5枚操作する」

カットフォース 永続魔法

「次にソリアナを対象に魔法カードダブルトリックを装備させてもらおう」

ダブルトリック 装備魔法

「ダブルトリックを装備したソリアナの攻守の値は反転し、さらに相手にダメージを与えた場合もう一度だけ相手に攻撃することができる」
粛々と進むトリックのターン。
最悪の予想通り、これでソリアナの効果を発動すればフィールドはガラ空きになり二度のダイレクトアタックで二人のライフは0になる。
「最後に奇術魔スター・ソリアナの効果により、デッキトップを二枚めくりソリアナのオーバーレイ・ユニットとする。ここでめくるカードは当然同名カードのゼロ・トラップが2枚。よって追加効果が発動し、相手フィールドのカードを全て破壊する!!」
ソリアナのステッキの動きに合わせて遊午と鶫のカードが炸裂した。
プリズムフェザー・ピーコック、天騎士ウィングリッター、クリアメイルが無残に粉々になって、
「破壊したな?」
「なに?」
「クリアメイルが相手によって破壊されたとき、同時に破壊されたカードを全てデッキに戻してこのカードを永続魔法扱いとしてフィールドに発動でする!」

クリアメイル 永続魔法

「そして、永続魔法となったクリアメイルはさっきまでとはまったく別の効果となる。1ターンに一度、戦闘もしくは効果で発生するダメージを無効化できる!」
これでこのターンはもちろん簡単にゲームエンドになることはなくなった。
などといううまい話は無い。
「……ただし、この効果にはデメリットがある。次のターンのエンドフェイズにクリアメイルは墓地に送らなければならず、同時にそのとき俺は2000ポイントのダメージを受けちまう」
「!!」
驚いていたのはトリックよりもむしろ鶫の方だったろう。
だって遊午のライフは残り1800。回復手段なんてない。2000ポイントものダメージを受ければ一瞬で敗北が決定してしまう。
「しかも、次のターンってことは私のターンのエンドフェイズでしょ!? 結局あんたはなんにもできないじゃないの!!」
「んなことはわかってんだよ。本来クリアメイルは回ってきた自分のターンでコストなり効果なりで除去してデメリットを踏み倒すっつー使い方をするカードだからな。こんな場面で使うことはそもそも想定してねぇんだ」
けれど、今ここで使わなければ二人まとめてお陀仏なのである。
「これで本当に俺にできることはなくなった。クリアメイルの第2効果も起こるはずのないコンマ1%のリスクを回避するだけのものだった。だから、あとはお前が次のターンのうちにあの-Noを突破して、奴のライフを削りきれ。頼む、削り切ってくれ!」
守るとか大口叩いておいて結局最後は他人任せにする無力感に、頭の片隅で『彼女ならなんとかしてくれる』と思ってしまっている情けなさに。
遊午は悲痛に叫ぶ。
「さっきの全部任せるってそういう……!」
宝石箱みたいな髪をガシガシと乱す鶫。下唇を噛みつつしばらくうーうー唸っていたが、最後には諦めたらしく。
「あぁもうわかったわよ!! やればいいんでしょやれば! 任されんのは慣れてんのよ! 私のターン!!」
生か死か。運命のラストドローが引かれた。
「PN-ブラッククロウを召喚!」

PN-ブラッククロウ ☆3 ATK 1700

「ブラッククロウが召喚に成功したとき、デッキからレベル4以下の『PN』モンスターを墓地へ送るわ。ここで墓地へ送るのはPN-グレーオウル!」
宣言に合わせてデッキから指定したカードが自動で墓地へ移動する。
「とっておきを見せてやるわ。ブラッククロウをリリースして魔法カード発動。フルカラー・オーケストラ!」

フルカラー・オーケストラ 通常魔法

「墓地から炎、水、地、風、光、闇、全ての属性をひとつずつ含むように任意のモンスターを特殊召喚する! 特殊召喚するのは風・光属性のオレンジクレイン、」

PN-オレンジクレイン ☆6 ATK 2400

「炎・水属性のパープルスワン、」

PN-パープルスワン ☆6 ATK 2200

「地属性のグレーオウル、」

PN-グレーオウル ☆3 ATK 800

「それから、リリースしたブラッククロウ!」

PN-ブラッククロウ ☆4 ATK 1700

圧巻の4体同時召喚。だがこれだけでは終わらない。
「その後、私はフルカラー・オーケストラで特殊召喚されたモンスターを使って、召喚条件を無視してエクシーズ召喚を執り行う!!」
「召喚条件を無視だと? まさかガール、君の狙いは……!」
「そのまさかよ」
初めてトリックの表情に焦りが見える。
「4体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚!!」
実に6色からなる巨大な銀河が形成されてゆく。
「再び現れなさい、-No.90。輝きを放つ絢爛なる翼よ、美しくも勇猛なる力で空を裂け! プリズムフェザー・ピーコック!!」
『クエェェェェッッ!!』

-No.90 プリズムフェザー・ピーコック ★6 ATK 2600 ORU 4

そのモンスターが顕現した瞬間、空に赫赫たる虹がかかった。自然法則など優に超越した七色の橋。所有者の髪によく似ていた。
「ピーコックの属性素材効果発動! 炎属性を素材にしているとき、ピーコックの攻撃力は500アップする!」

-No.90 プリズムフェザー・ピーコック ATK 3100

「いくわよ。プリズムフェザー・ピーコックで奇術魔スター・ソリアナを攻撃! 全力全開『セブンレイ・キャノン』!!」

-No.90 プリズムフェザー・ピーコック ATK 3100 vs -No.49 奇術魔スター・ソリアナ ATK 3000

放たれたエネルギー砲の眩さに遊午は思わず目を閉じた。
虹を圧縮した一撃。三色の時とはパワーもスピードも段違いだ。
「リバースカードオープン。ゼロ・ウェーブ!」

ゼロ・ウェーブ 通常罠

「攻撃力もしくは守備力が0のモンスターが攻撃対象に選択されたとき、その攻撃モンスターを破壊する!」
「無駄よ! 地属性を素材にしているとき、ピーコックはカードの効果では破壊されない!」
二体の間に割り込んだ薄膜が攻撃を反射しきれずに破砕する。
「ならばこちらだ。罠カード、カードファウンテン!」

カードファウンテン 通常罠

「自分の魔法使い族モンスターの数までフィールドのカードを対象とし、そのカードを手札に戻す!」
「だから無駄だっての。水属性を素材にしているとき、ピーコックは効果の対象にならない!」
杖を振ってソリアナが出現させたトランプの奔流は羽虫でも焼き払うように滅却された。
「っ! ソリアナの効果により、オーバーレイ・ユニットとなっているカード1枚をフィールドにセットする!」

YUGO 1800
TUGUMI 1000
ーーーVSーーー
Mr.TRICK 800

「ぐっ……」
エネルギー砲を真正面から受け止めたソリアナが玉砕する。豪奢な燕尾服は跡形もなく焼き消え、唯一の存在証明として持ち主を失ったシルクハットだけが爆風に揉まれてヒラヒラと落下し、
「もともとの攻撃力が0のモンスターが先頭で破壊されたこのタイミングで、最後の罠ゼロ・トラップが起動する!!」
不気味な牙を並べた化物となってピーコックに襲いかかった。

ゼロ・トラップ 通常罠

「相手フィールドのモンスターを全てデッキに戻し、この効果で戻ったモンスター1体につき1000のダメージを相手に与える! 一流の奇術師は土壇場でこそ奇跡を起こす。終わりだ、ガール!!」
破壊せず、対象に取らず、なおかつ鶫のライフを削りきるカード。今の状況を覆す至高の一枚。
「さすがね。これ以上ないくらいに綺麗なカウンターだわ。ーーだけど、フルパワーのプリズムフェザー・ピーコックは誰にも止められない」
「なん、」
「闇属性を素材にしているピーコックは、1ターンに一度だけ、表側表示のカードの効果を無効にできる!」
魔法・罠カードはフィールドで表側表示で発動する。つまり、ピーコックの効果でゼロ・トラップは不発にしてしまえるのだ。
シルクハットの化け物がピーコックの光に照らされ悪夢が醒めるごとく搔き消える。
「そして風属性を素材にしているとき、ピーコックは二回攻撃できる」
周囲の光がピーコックに吸収され、一段暗くなる。
限界まで光度を高めた孔雀の王。もはや太陽に匹敵する神々しさだった。
「『セブンレイ・キャノン』!!!」

-No.90 プリズムフェザー・ピーコック ATK 3100

閃光に、目を背けるようにトリックはシルクハットのつばを下ろす。
その下では諦観に満ちた、されど清々しい笑みが浮かんでいた。
「見事だ。私の負けだよ」

YUGO 1800
TUGUMI 1000
ーーーVSーーー
Mr.TRICK 0




「……って、」
心身ともに疲れ切った様子の鶫は頭が痛そうにこめかみをおさえて言う。
「なんでまだ出れないのよ!!」
その絶叫さえもきっちり返ってきやがってうんざりする。
トリックとの激戦を制し、-Noを回収したあと、遊午たち三人は改めて掌握結界の突破に挑んだ。
が、相も変わらず結界はそこにあった。
どギツいピンクのポストも延々消えなかった。
「いや、まぁわかってたぞ?」
「はぁ!?」
「だってトリック本人が言ってたろ。自分の能力は瞬間移動だって」
「あ……」
そのせいで何度逃げても追いつかれたのである。
「じゃあどうなってるっていうのよ?」
「もともと敵さんは二人組だったんだろうよ。お前を閉じ込める奴と、お前から-Noを回収するトリックで」
「つまり、ここから脱出するにはまだもう一人倒さなきゃいけないってこと?」
「だろうな」
「かーっめんどくさ!」
まったく同感だった。
ちなみに遊午が掌握結界が残っていると判断したのは理詰めな理由以外にもある。最初に感じた、なんとなく勝てない感覚がまだつきまとっていたのだ。
「ぷーくすくす。そんなことにも気づかん頭をしておるとは栄養が他へ奪われておるのではないか? 主にその無駄な胸に」
「口を閉じてろ底なし落とし穴」
「どこについて言うた今!? 胸か、胸なのか!? 妾の胸が陥没どころか貫通しておるとでも言いたいのか!? なぁ!?」
「で。それならそうとして結局どうすればいいのよ?」
喚く八千代を鮮やかに無視してさっさと話を進める鶫。容赦なさすぎるだろ。
「そりゃあどうにかしてもう一人を見つけ出して叩くしかないだろ」
「それはわかってるわよ。だからどうやって?」
「具体的な方法に関しては俺はまったくの無知だからアドバイスをもらうしかないん、だけど……」
ぎこちなく横を盗み見る。
八千代が屋上の隅っこでうずくまって地面に『の』の字を書いていた。
「えーと、八千代ちゃん?」
「……なんじゃい」
「-Noに造詣の深い八千代ちゃんのお知恵を拝借したいんですが」
「知らん。妾はモンスターを裏側守備にするので忙しいんじゃ」
「あ、そうすか……」
取りつく島もなかった。
罵倒からのスルーが相当こたえたらしく、自虐ネタに走るぐらい卑屈になっている。
「(おいどうすんだよ! 八千代ちゃんの協力ナシじゃ出られないんだぞ!)」
「(知らないわよ! 先にふっかけてきたのはあっちじゃない!)」
「(どっちが先とかそういうのは今どうでもいいんだよ! とにかく謝っとけ、な!)」
「(イ・ヤ!)」
「(意地張ってる場合か! 見ろあのしなびた姿! 心なしかカチューシャの耳までしおれちまってんじゃねえか!)」
視線を戻すと死んだ魚をさらに腐らせたみたいな目の八千代と目が合った。
「…………。」
「…………(じー)」
「…………。」
「…………(じーー)」
「…………。」
「…………(ふいっ)」
いたたまれねぇ。
「(ぐぬっ……、……あっ、そうだ! 要は機嫌が治りさえすればいいのよね?)」
「(え? あぁ、まぁな)」
「(だったら適当に誉めそやしてやればいいじゃない。チビっこなんだしそれでなんとかなるでしょ)」
「(お前マジで八千代ちゃんのことナメてんな……)」
しかしそれで本当に八千代が元気になるのなら問題はない。
ひとまずその案に乗るとしよう。
「いやーそれにしても八千代ちゃんは美人だなー! 肌は白いし顔の作りは黄金比だし、まるで天使みたいだ。あ、てかそもそも人間なんか超越した存在なんだっけ。だったら本当に天使かもしれないなー! ハハッ! な! 鶫もそう思うだろ?」
八千代の耳がピクリと動いた。
「そ、そうね! あたしなんか骨格がしっかりしてるせいでどうしても体つきがゴツくなっちゃうから、線が細いのは羨ましいわ」
八千代の体が少しずつこちらに傾いてきた。
「それに気立ても良くて頼り甲斐があって、いやぁ俺はなんて素敵な美少女と日々を一緒に過ごせているんだろう幸せだなー!」
八千代との物理的な距離が少し縮まった。
「う、羨ましいわねー。あんな魅力的な娘そうそういないわよ。…………胸ないけど」
八千代が顔から地に倒れ伏した。
「なんてことすんだテメェ!」
「我慢の限界だったのよ! 心にもないこと言ってたらだんだん全身かきむしりたくなってきたの! そろそろ本音吐き出しとかないともうちょっとで蕁麻疹が出てたわ!」
「あともうちょっと大丈夫だったんなら我慢してくれよ! 」
八千代はカエルに電極繋いだみたいにビクビクしていた。
「だいたいなぁ! 八千代ちゃんの胸を小さい小さい言うけど、」
遊午は八千代を庇って立ちはだかり、握った拳をわなわなと震わせる。
「その小さいのが良いんだろうがあぁぁっ!」
「フォローになっとらんわ腐れ変態ッッ!!」
背骨をへし折る勢いで繰り出される飛び横蹴り。元気溌剌、意識混濁。
「ふん! 小虫どもが足りん頭を寄せ合いおってからに。そんな浅知恵絞らずとも傷付いてなどおらんわい」
そう言う八千代の目が若干赤らんでいるのはご愛嬌だ。
「いつまでも這いつくばっておる。こんなふざけた場所さっさと出るぞ」
「りょ、了解です……って八千代ちゃん出る方法知ってんの!?」
「妾を誰じゃと思っとる。落ち着いて考えればこのくらい朝飯前じゃ」
さっきまでのポンコツ具合が嘘みたいに頼もしかった。
宙にとどまったままゆっくりと瞼を閉じる。目に見えない気のようなものが八千代を中心として渦を巻く。

「RoR.16://真髄捉えし紅き月輪《ハクトノミコイナバ》」

☆ ☆ ☆

「嘘だロォ……。負けちまったのかヨォ、トリックの旦那ァ」
夢の国にしか存在しなさそうな頭のおかしいビルがひしめく路地裏にあぐらをかいた反谷 金吾は泣きじゃくりたい気分で頭を抱えた。
足元には表面が鏡でできた半球物質。鏡に映る自分はひどく情けない顔をしている。
反谷がトリックとコンビを組んでしばらく経つが、彼の強さは異常だった。
攻、守どちらをとっても一級品。敗北どころか劣勢すら微塵も感じさせず、常時自分のペースでデュエルを展開する。まさに百戦錬磨という言葉がぴったりな男だった。
そんな彼が負けたなど、声に出してみても全く実感が湧かない。
むしろ彼なら高笑いとともにいきなり反谷の後ろに現れるんじゃないかという気さえする。
……現実逃避をしている場合ではなかった。
実際問題トリックがターゲットに負けてしまった以上、反谷は次の手を打たねばならない。
首からぶら下げたチェスのナイトを型どったシルバーアクセサリーをいじりながら思考する。
「どうすっかナァ。旦那を倒す奴らにオイラが勝てるとも思えねェシ…………逃げッカ?」
管理している掌握結界を解除すれば弊害なく元の世界に帰還できる。
そして元の世界でこの路地裏の外は繁華街。毎日がお祭り騒ぎの雑踏に紛れれば仮にターゲットたちが反谷を捕えにきたとしても見つかることはないだろう。
「どうせターゲットは出られやしないんだから応援を待つってのもありカァ? そっちのがオイラの覚えも良さそうだしヨォ。うん、そうすッカァ。そうと決まれば早速本部に連絡して旦那より上位のメンバーを……」
「呼ばせるわけないでしょマヌケ」
ポケットから取り出したD-ゲイザーがいきなりひったくられる。何かが粉々になる音はまさか反谷のD-ゲイザが握りつぶされたというのか!?
背中にドライアイスをぶち込まれたような感覚で恐る恐る後ろを振り返る。
直後、反谷は驚愕に目を見開くことになった。
「なななな、なんでお前らがここニィ!!?」
「妾が『視た』のじゃよ。この掌握結界の中心点をな」
CHESSの最重要ターゲットはいともたやすくそんなことをのたまう。
「ふざ、ふざけるナァ! オイラのチカラがそんな簡単に破られて……ングッ!?」
「あーはいはい。そういう三下台詞はもういいから。こっちは時間無いって言ってんでしょうが」
いきなり反谷の顎を閉じた少女は全身から苛立ちがあふれていた。
この二人はヤバい。ありとあらゆる感覚がけたたましい非常警報を鳴らしてくる。
反谷は藁にもすがる思いで残る一人、一歩引いたところにいる少年に視線で助けを求めた。
目配せに気がついた少年は苦笑いを浮かべながら首に手を当てる。
待て、なんだその反応は。そんな、嘘だろ……!
「残念だったなおっさん。あんたはここでゲームオーバだ」



数分後。
ビルの隙間風に紛れて男の悲鳴が響き渡った。



「せめて相手に攻撃ターン回すぐらいしてやれよ……」
「はぁ? なんで敵に気を使わなくちゃいけないのよ意味わかんない」
開始からわずかに4ターン。最高火力のプリズムフェザー・ピーコックで相手を葬った鶫はそう言って半眼を向けてきた。
とてもじゃないが今の彼女に逆らう気は起きなかったので遊午は両手を挙げて降参の意を示しておく。
「しっかし『-No.96 鏡の英雄シュピーゲル』ねぇ」
たった今回収した-Noを太陽に透かすようにして眺める。
ビルを挟んだ向こうでは既に街のざわめきが聞こえている。どうやら無事元の世界に戻ってこれたらしい。
(あれだけの超常現象を生み出してた-Noにしては大したことなかったような気がするな……鶫が瞬殺したせいかもしれないけど)
それも相性の問題というやつなのか。
こうして手にとって読んでみると、確かにシュピーゲルはウィングリッターにはバッチリ突き刺さる効果ではある。
ということは相性が良かったプリズムフェザー・ピーコックはシュピーゲルと同じグループにカテゴライズされるのだろうか。
なんと言ったか……事象干渉系?
「あ…………」
そうして、遊午は自覚した。
「? どうした遊午?」
「……いや、なんでもないよ」
曖昧な返事とともにシュピーゲルのカードを頭の近くに来た八千代に手渡した。
「うわっ! ライブまでもう30分も無いじゃない! うわー、マネージャーから死ぬほど連絡入ってるなー……やば」
路地の奥でようやく電波の繋がったD-ゲイザーを操作していた鶫が焦った声をだす。
遊午も自分のD-ゲイザーを確認してみると、モニターには午前10時33分の文字が表示されていた。
「今から歩いても絶対間に合わないわよね……。バイクもどこかに帰って来てるんでしょうけど今から探してられないし、どうすれば……あ、そうだ」
わずかに欧米の血が混ざった瞳で見つめられる。その虹彩が先ほどより光を帯びていた。
「ねぇ、あんたもちろんライブ会場把握してるわよね。ならあんたのチカラで私を会場まで連れてってくれない? あのデカい翼ならひとっ飛びでしょ。ね、お願い!」
「あぁ、構わねぇよ」
「ほんと!? やった、これでギリギリなんとか……」
「ただし、」
嬉しそうにガッツポーズをとる鶫の前に壁を作るように立って、遊午は言葉をつなぐ。

「先に俺とデュエルしてもらおうか」




◎-No.46 奇術魔スター・ソリアナ
◎-No.96 鏡の英雄シュピーゲル

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イベリコ豚丼
新生活が始まって、やるべき仕事も増えて、土日もほとんど時間がなくなって、まだ慣れない毎日に必死で食らいついて生きています。

……つまり何が言いたいかというと、投稿が遅くなってごめんなさい。今までストックを使って騙し騙しやって来たのですがついにそれでも首が回らなくなりました。
ということでここからしばらくは投稿日が遅れたりそもそも投稿できなくなったりすると思います……。本当に申し訳ありません、なんとかリズムを確立するまで温かい目で見守ってくだされば幸いです。 (2018-06-07 00:17)
ター坊
あんなのでもまだ構成員という名のしたっぱなのか。
アイドルの二面性はよくあることで、粗暴な感じが妙にリアルです。八千代ちゃんとの喧嘩も面白く髪と胸の言い合いがなんとも言えません。
貧乳には貧乳の良さがあるんだよ。エターナルナイペッタン。 (2018-06-07 17:33)
イベリコ豚丼
》ター坊さん
コメントありがとうございます!
巷にはロリ巨乳という言葉もあって別にロリだから胸が小さくないといけないなんて決まりごとはないのですが、何をどう鑑みても八千代は貧乳です。クイーン・オブ・貧乳です。彼女の胸が大きくなることは永遠にありません。
イエス、エターナルナイペッタン。 (2018-06-07 17:54)
ギガプラント
デュエル展開がアニメ遊戯王感強くて凄く好きです!
鶫ちゃんのデッキコンセプト良いですね~フルパワーエクシーズは燃えます。
トリック氏も敵ながら良いキャラクターでしたね。言葉通りトリッキーなデッキでした。

投稿に関してはご自分のペースで無理せず頑張って下さいませ。
……と言ったそばから次回が非常に気になりますね。 (2018-06-07 21:17)
イベリコ豚丼
》ギガプラントさん
コメントありがとうございます!
プリズムフェザー・ピーコック を一目見た時からこいつの所有者は属性変化テーマ使いにしよう! とか考えていたらOCGでもエレメントセイバーなんていうカテゴリが出て来やがりました。なんたる偶然。
でもって変に片手落ちにするのも違うなと思った結果があの全部乗せフルパワー。光の効果も活用したかったです。

ありがとうございます……! 優しい、泣きそう。
次回をできるだけ早く投稿できるように頑張ります! (2018-06-07 21:27)

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