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虹彩竜と歩むもの/番外編:青春 作:光芒







「おそい! わたしをどれだけまたせるきだ!」

 誰が書いたのか一発でわかる「はたしじょう」を手に体育館裏に向かった陸。そんな彼を待ち受けていたのはやはり留奈であった。
 体育館裏の石垣に座っては退屈そうに両足をぶらぶらとさせていた彼女は、陸が現れたのを見ては来るのが遅い、と怒鳴りつける。日陰とはいえ、初夏の体育館裏は決して過ごしやすい環境ではないため、待たされる形になった彼女は当然いい気分はしなかった。最もそんな場所に呼び出した留奈自身にも問題はあるのだが。

「ごめんごめん、果たし状とか書いてあるから行っていいのかなって」
「おまえそれでもデュエリストか! うけたしょうぶにせをむけるな!」
「うーん、俺はどっちかというとアスリートでもあるからね」

 デュエリストではあるが、陸はリアリストではなくアスリート。少なくともデュエルやサッカーといった分野ならいざ知らず暴力的な挑発には乗らないと決めている。

「それで、どうしたの。俺をいきなり呼び出して」
「おまえわたしのかいたはたしじょうはよんだんだよな? だったらなぜよびだされたかわかるだろう!」
「ああ、読んだよ。おまえにしょうぶをもうしこむ、って書いてあったね。で、何で勝負するの?」

 こうしてわざわざ書面にしたためて呼び出したということは決して小さなことではないだろう。しかし、勝負の内容がデュエルであるとすれば、このようなところではなく、学校のデュエルフィールドですればいいだけの話である。

「えっと、そのだな……」
「うん」
「しかし、きょうはあついな!」

 露骨に話を逸らした留奈。陸はそんな彼女の矛盾点を指摘することなく、流れに話を合わせて相槌を打っていく。そうこうしているうちに陸が体育館裏に着いてから早くも20分近くが経とうとしていた。
 そんな時、沈黙に包まれる体育館裏に響く電子音。留奈はポケットからスマートフォンを取り出すと、その画面を見て顔を真っ赤にする。開いたスマートフォンの通話アプリには、留奈の真意を知る親友たちからのメッセージが入っていた。



調子はどう?>礼


留奈<なにがだ


何って……>美鈴


国広君には伝えたの?>林檎


留奈<うるさい! おまえたちはだまっていろ!


その様子だと……>美鈴


ダメだった?>林檎


もしくはまだできていないか>礼


留奈<これからしようとおもっていたところだ! きょうをそぐな!


やっぱりヘタれてるのね>礼


あの、頑張ってください! 私は応援していますよ!>美鈴


やーい、留奈のヘタレー!>林檎


留奈<もーっ!! わかった! いまからいうぞ! いうからな!! ぜったいにいうからな!!


それは「絶対に押すなよ!」フラグなんですがそれは>林檎



「あいつらめ……ばかにして!」
「どうしたの?」
「べ、べつになんでもない。おい、陸! いまからよびだしたりゆうをいうからな! かくごはいいか?」

 ただ何かを言うだけでどうしてここまで勿体ぶる必要があるのだろうか。陸は疑念を抱いたまま、彼女に促されるがまま隣に座る。再び沈黙が流れ、響くのは運動部所属の生徒たちの掛け声や野鳥のさえずりだけになっている。そんな静寂を切り裂くように、留奈は陸に思いのたけを言い放った。




「陸!」
「?」





―――おまえのことがすきだ!! わたしの……かれしになってくれ!!―――





「へっ?」

 いつにも増して間の抜けた声を出してしまった陸。だが、無理もない。何の前触れもなく留奈から告白を受けたのだから。

「留奈ちゃん、ちょっといい?」
「……なんだ」
「今のは俺のことを好きってことでいいのかな?」
「……ほかになんのいみがある。さあ、わたしはゆうきをふりしぼったぞ! おまえのこたえをきかせろ!」
「その前にちょっと聞いていいかな?」

 異性から告白されたということは男性としてはとても誇らしいことである。それだけ自分に好意を持ってくれているということの表しになるのだから。だが、陸は何故留奈から告白されたのかがわからなかった。
 陸は身長が高く、顔も比較的にイケメンの部類に入っている。しかし、その見た目の割に貞操観念はしっかりとしており、サッカー部という女子に人気の出る部活に入っていながらあまり目立たないゴールキーパーというポジションにあるからか女子から注目を浴びることが少なく、故にこの年齢でも女性との交際経験はない。そのため何故留奈が自分に対してこのような想いを抱くに至ったのかがわからなかったのである。

「どうして俺なの? ほら、イケメンなら他にも遊大とか仁とかもいるし」
「……仁はちょっとこわいぞ。それに礼がにちじょうてきにわるぐちをいってるからな」

 女子たちがどんな話をしているか、ということはわからないが礼が仁の悪口を日常的に言っている姿は容易に想像できてしまった。

「遊大はイケメンというよりもかわいいけいだろう? なんかナヨナヨしてるし、もやしやカイワレダイコンみたいなもんじゃないか」

 下手な女子より女性の姿が似合う遊大が可愛い系に該当する理由もわかる。だからと言ってもやしやカイワレダイコンに例えられてしまうのは友人ながら不憫だと思ってしまった。最も留奈が遊大に対して興味を示さないということについてはもっと別の理由があるのだが、それを知るのは彼女のみである。

「はなしがそれてしまったが……このあいだのデュエルのときもそうだが、おまえといっしょにいるとこころがおちつくんだ」
「落ち着く?」
「……そうだ。めいきゅうでのデュエルのときもそうだ、おまえはわたしをけなすことなくはげましてくれた。こうりゅうせんのときもそうだ。まけたわたしをなぐさめてくれた。おまえはいつもわたしをうけいれてくれる」

 留奈の家は大企業であり、そんな家の娘である留奈は所謂お嬢様に分類される。一般的にお嬢様というのは資産に恵まれており、良い服を着て良いものを食べることができる。それだけを見るととても羨ましがられるのだが、生まれながらの令嬢である留奈は何故羨ましがられるのかがわからなかった。
 そもそもこの間の出来事がそうだ。地下迷宮でのデュエルやら五校交流デュエルで留奈は結果を残すことができず、それを重く見た留奈の両親はダンを遣わせて彼女がアカデミアの相応しいのかどうか見極めさせた。上流家庭というものはどうにも年長者の意見が強くなるもので、留奈は自分自身の人生を自分で決めることができないのである。
 そういった意味で、留奈からしてみれば手放しで自分のことを認めてくれる陸の存在はとても意外なことであり、彼女の心を惹き付けたのも陸という人間が持つ人間性であったのだ。

「陸、はずかしいけどもういっかいだけいうからな! わたしはおまえがすきだ! おまえとともにあゆみたい!」
「……えっと、まずは勇気を出して告白してくれてありがとう。正直留奈ちゃんみたいな可愛い子に告白されるなんて思っていなかったからさ。頭の中真っ白だわ」

 陸の言葉に顔がゆで蛸のように真っ赤になる留奈。しかし、陸の表情は何処か暗かった。

「でもさ、俺は留奈ちゃんが言うほど立派な人間じゃないんだよね? ほら、こういう時にテンパっちゃって上手いことの一つも言えないからさ」
「……」
「留奈ちゃんはお金持ちで、俺とは価値観とかも違うし、住む世界が一緒っていうのはないと思う。だからさ……俺、留奈ちゃんに相応しい人間になる。まだ色々と足りないけどさ―――えっと、その、よろしくお願いします」











「……なるほど、それが事の顛末か」

 無事恋人同士という関係になって戻ってきた二人を出迎えたのは他ならぬ遊大たちだった。女子たちから留奈が陸に告白する、ということを聞いた遊大と仁は陸にバレないようにパーティーの準備を急ピッチで進めていた。
 告白が成功した場合はカップル誕生を祝うパーティーであり、失敗した場合は留奈の退学回避を祝うパーティーとして行うために。最初はハラハラしていた五人であったが、無事想いが成就したことを知るとほっと胸を撫で降ろす反面、どうやってその経緯になったのかが気になるのもまた若人ならではだった。

「あー、もう甘々すぎてたまんないわ! 留奈のガチガチな告白し方もそうだし、国広君の初心な返しもキュンキュンしちゃう!」
「まるで日本の少女漫画のような告白ですね……留奈さん、陸さん。おめでとうございます」
「国広君と付き合って留奈が少しは大人しくなってくれると良いんだけど」
「おい礼、それはどういういみだ!」
「言ってるそばから……ほら、留奈ちゃん。食べかすついてるよ」

 陸から指摘を受けた留奈は目をつぶって陸の方に口元を寄せた。やれやれ、といった様子の陸はナプキンで留奈の顔についた食べかすを拭く。その光景に林檎と美鈴は「きゃー!」と羨まし気に甘い声援を送る。

「バカップルとはよく言ったものだな」
「ええ。二つの意味でバカップルよね」
「えっ、礼ちゃんそれは酷くない?」
「そうだぞ! わたしも陸もあたまはよくないが、バカよばわりはさすがにきずつくぞ!」

 双子ならではの連携でさらりと二人を小馬鹿にする仁と礼。それに傷つく陸とフォローになっていないフォローを入れる留奈。部屋中に笑いが溢れる中、遊大は一人そんな光景をにこやかに見つめていた。

(想いを告げた舞原さん、そしてそれに応えた陸。立派だなぁ……)

 遊大の脳裏には無意識のうちに一人の女性の姿が浮かんでいた。仮に自分がその女性を相手に今日の留奈のようなことをしても相手にしてもらえるかどうか、ということを考えてしまう。留奈のように一歩を踏み出せるだけの勇気もなければ、拒絶されてしまったらどうしよう、という弱さを隠すことができなかった。

(……俺はもっと強くならなきゃ)

 親友の恋路を祝う一方で、また別の決意を固める遊大であった。











○後書き
リア充末永く爆発しろ
次回更新から第二章最後の短編が始まります。





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から揚げ
留奈ちゃんと陸くんの馴れ初めの経緯が聞けて良かったです!欲を言えば、留奈ちゃんが今日は暑いなと言った時に服を脱いで薄着になって陸くんをドギマギさせてほしかったですね!

遊大くんも恋にデュエルにと頑張ってほしいです!特にデュエルの方は省略無しで勝てる場面が増えれば、今より更にカッコ良くなると思います! (2018-06-12 08:16)
光芒
から揚げさん
そういえば、季節は夏ですから薄着になって誘惑するという手段がありましたね。でも夏ならそれこそ夏服でしょうし、それ以上脱いだらそれはそれで対象年齢が……(殴

>遊大くんも恋にデュエルにと頑張ってほしいです!特にデュエルの方は省略無しで勝てる場面が増えれば、今より更にカッコ良くなると思います!
主人公は今後主だったデュエルは省略されない、予定です。まあ遊大のデュエルの戦果が微妙なのにも色々と理由があるのでそれも追々明かしていければ。
(2018-06-12 11:25)

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