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20:ルームメイトは女の子!? 作:天
「ようこそレッド寮へ、武藤ユーイくん。歓迎するのニャ~」
糸目の男がにこやかな笑顔でユーイを迎え入れた。
入学式後の騒動も終わり、ユーイ達寮生組は入寮することになった。
オシリス・レッド所属のユーイはレッド寮への入寮だ。同じくラー・イエローのケンザンはイエロー寮へ、リュウアとリュウカはブルー寮へ入寮するらしい。
レッド寮は普通の宿屋と同じ造りの建物だった。一階は食堂などの共有スペースで、二階にそれぞれが寝泊まりする部屋がいくつか設けられている。
「私はこのレッド寮で寮長を務めている『大徳寺』といいますニャ。これから3年間よろしくですニャ」
大徳寺は痩せた男だった。背は高いが肌は白く、細い目にかけられた眼鏡の印象も相まっていかにも研究者肌の人物に見える。伸ばしていると言うより伸びっぱなしと言った感じの長髪で、彼の容姿への無頓着ぶりが分かるというものだ。
それにしてもクローディアにしろケンザンにしろ語尾で自己主張するのが最近の流行りなのだろうか。
「今年の入寮生は俺だけなんですか?」
レッド寮にはユーイ以外の生徒が見当たらない。自分が早く来すぎたか遅すぎたかでない限り、入寮者はユーイ一人ということになる。
「そうですニャ。レッド寮は他の寮に比べて少し手狭で、他の生徒さん達からは敬遠されてしまったようですニャ。あ、と言ってもそれ以外に他の寮と大した差はありませんのニャ。昔はオシリス・レッドをドロップアウト寸前の吹き溜まりと呼んでいた時代もあったそうですが、現在はそのような差別はないのニャ。現に生徒会メンバーの十六夜アキラさんや丸藤カケルくんもオシリス・レッドですニャ」
言われても思い出してみれば、確かに先ほど会ったとき生徒会メンバーの中にも赤い制服の人が数人いた。どうやら各チームは成績に応じた階層などというわけではなく、純粋な縦割りであるらしい。
「そういうわけなので部屋が余っているわけもなく、武藤くんも他の生徒さんと相部屋になってもらいますニャ。大丈夫ですニャ?」
タダで寝泊まりさせてもらえるのだ、どうしても個室がいいなんて我が儘が言える立場ではないし、むしろルームメイトがいる方が楽しそうだ。
ユーイは即座にそれを了承する。
「良かったですニャ。では部屋は二階の10号室ですニャ。今夜は寮生全員で歓迎会をする予定なので、それまでは自由に過ごしてもらって構いませんのニャ」
大徳寺に促されてユーイは二階に上がった。
これから3年間生活することになる10号室は一番端の部屋だ。
ノックをするが反応はない。一応「失礼しま―――」と声をかけながらドアを開いて、しかし「えッ」と固まった。
部屋の中には先人がいた。
青みがかった黒髪を大きめのリボンで結ったポニーテール。ネコ科の動物を思わせるややつり上がりぎみの目。オシリス・レッドのジャケットを羽織り、黒のTシャツとショートパンツという姿。ショートパンツから伸びた足はすらりと健康的な脚線美。
その『彼女』が椅子に腰掛けて、ぽりぽりと何かお菓子のようなものを食べている。
(女の子・・・だよな、どう見ても。なんで俺の部屋に女の子がいるんだ)
部屋を間違えたかと思い、一旦廊下に出て部屋番号を確認するが、確かに大徳寺に聞いた10号室だ。まさか大徳寺が言い間違えたのだろうか。
いや、そもそもここに女子がいること自体がおかしいだろう。
(そう言えば大徳寺先生がルームメイトがいるって言っていたけど、まさかとは思うがこの子が『そう』なのか・・・?)
「そんなとこに突っ立ってないで、入ったら?」
戸惑うユーイに彼女が声をかける。
「・・・・」
ユーイはおずおずと部屋に入った。
部屋は八畳くらいの面積に机が二つ、二段ベッドが一つ、そして小さなタンスが二つあるだけのシンプルな造り。少々手狭ではあるが、元々そう物持ちの多い方ではないユーイにとっては生活するのに苦はなさそうだ。
(しかし――――)と二段ベッドの下段に腰かけユーイは彼女を見る。
(女の子と相部屋となれば話は別だぞ。どう生活しろって言うんだ)
珍しくユーイは落ち着かない様子。
しかし当の彼女はまるで動じていない。スッと持っている菓子の袋を差し出す。
「食べる?なんでも王都の銘菓らしいわよ。まぁ、ぶっちゃけただのビスケットだけど」
「いや、いい・・・です」
ユーイの混乱はビスケットどころではない。
今年の新入生でこのレッド寮に入る生徒はユーイ以外いないとのことなので、彼女は先輩ということになる。一応、敬語で断りを入れる。
しかし先輩にしては彼女の制服は真新しいように見える。もちろん制服は新調することもできるであろうから、何の基準にもならないが。
そこでユーイはある可能性に気がつく。
(もしかして女子に見えるってだけで、実は男子なんじゃあないか)
丸藤カケルやリュウアなんかも、黙っていれば女子と間違われかねない容姿をしていた。もしかしたら彼女―――いや、彼もそうなのかもしれない、とユーイは考えたのだ。
「んーーー、お腹一杯になったら少し眠たくなった」
そう言って体を反らす彼女の胸元には確かに二つの膨らみがあった。
(やっぱり女の子だーーーーッ!!)
自らの甘い考えを悔やみながら、ユーイは全力で視線を逸らす。
嫌な汗が噴き出るようだ。
「自己紹介させてもらうわね。私は『セリナ・ムーク』。よろしく」
「『ムーク』?」
「そう。七星侯が一角、ムーク家の当主『カミラ・ムーク』の娘。と言っても養子だから血縁はないのだけど」
ムーク家。
先ほど、三沢ダイキが七星侯について説明したときの話に出てきた名前だ。確か、昔は吸血鬼だと言われていた呪法使いの一族。
ユーイはこの七星侯というやつに何やら因縁でもあるのかもしれない。
シクス・タイタンから始まって、生徒会メンバーの天上院家と万城目家の二人、そしておそらく先ほど会った大徳寺先生も大徳寺家所縁の人だろう。彼女があのムーク家の一員と言うのなら、これでこの王都にやってきてからユーイが出会った五人目の七星侯関係者ということになる。
国中の有力な決闘者が集まるデュエル・アカデミアとは言え、これだけ立て続けに七星侯に出会えば、半ば運命的な何かがあるのではないかと疑ってしまうというものだ。
「俺は・・・」
「知ってる。武藤ユーイ・・・でしょ、キミ」
ユーイも自己紹介を返そうとしたのだが、どうやらセリナは既に知っていたようだ。
「キミ、有名だもの。私も見てたわよ、キミのデュエル。リンク召喚―――『首飾りの国』独自の召喚法。噂には聞いていたけど、まさかクローディア先生に勝つほどなんてね。私、キミに興味があるの」
その言葉に思わずドキリとする。
ユーイも年頃の男子だ、可愛い女の子に『興味がある』と言われて意識しないわけがない。
しかし続けて放たれた彼女の言葉に、ユーイはさらに鼓動を早くする。
「リンク召喚にも確かに興味があるのだけど、もっと教えてもらいたいのは、『デュエル中にキミに起こった変化』についてね」
「・・・なんだって?」
聞き返すユーイに、セリナは瞳を妖しく光らせる。
「言ったでしょう、キミのデュエルを見ていたって。私は見ていたわ。クローディア先生とのデュエルも、『影丸ユウリとのデュエル』もね」
今度は彼女が何を言っているのかだけは分かった。
彼女は見ていたのだ、あの夜の美少女決闘者とのデュエルを。しかも美少女決闘者の正体が影丸ユウリだということにも気付いている。
だが、おかしい。あの時、ユーイは気配を隠して近付いてきたユウリの存在に気付く察知能力を見せた。にも関わらず彼女の存在には全く気付いていなかった。つまりセリナはユウリ以上の穏形能力を持っているということになる。
(何なんだ、こいつ!ただのルームメイトなんかじゃあないぞッ!)
途端に、今まで普通に会話していた相手が得体の知れない何かへと変わった。
バッと素早く彼女から距離を取る。
「あんた、何者だ?」
「もしかして、あのデュエルで自分が変化していたことに気付いていないの?『記憶がない』のか、それとも『認識できないようにされている』のか、どちらなのか・・・」
「質問に答えろッ!!あんた、一体・・・ッ!」
ユーイの剣幕に動揺したわけではないだろうが、セリナが椅子から立ち上がる。
その左腕にはいつの間にかデュエルディスクが装着されていた。
「何かを得たいのならデュエルで勝ち取るのが私達決闘者でしょう。それにこれも言ったわよね、私はキミに興味があると。キミとデュエルするためにこうして寮に忍び込んでキミを待っていたんだから。まさか私をルームメイトか何かだと思っていたわけじゃあないわよね?」
「・・・・ッ」
(忍び込んだだって?ここは二階だぞ・・・!こいつが何者なのか分からないが、逃げて逃げられる相手じゃあなさそうだ・・・!なら、倒してその目的を聞き出すしかないッ!)
「このデュエル、受けて立つぜッ!」
ユーイもデュエルディスクを取り出し、腕に着ける。
「そう来なくちゃ」
セリナは瞳に妖しい光を湛えながら、にやりと笑った。
・
・
・
・
「お待たせしちゃってゴメンねぇ~!ボクがキミのルームメイトの――――って、あれ?」
丸藤カケルが勢いよく10号室のドアを開けて入ってくるが、部屋の中はもぬけの殻だった。
「なんだ武藤くん、何処かに出掛けちゃったのか。あ、ボクの机でお菓子食べてる!」
部屋に誰かがいた形跡は、カケルの机の上に残されているビスケットの袋だけだ。
「食べかけのお菓子の袋をそのままにして出掛けちゃうなんて、案外武藤くんズボラなんだな」
カケルはこれからの生活に一抹の不安を抱きつつ、窓の外の晴れ渡った空を見るのだった。
・
・
・
・
カケルにそんなあらぬ疑いをかけられていることなど露知らず、ユーイはセリナと対峙していた。
場所は寮の裏手。ここならば建物の影になり周りの人目を気にすることなくデュエルに集中できる。とは言え寮内からは丸見えなのだが、ユウリとのデュエル同様セリナによる『人払いの呪法』がかけられているため、その心配もない。
「俺が勝ったら、あんたの目的を明かしてもらうぜ」
ユーイは鋭い視線をセリナに向ける。
それを心地よげに受けて、セリナは頷く。
「私が勝ったら、そうね、しばらくは響先生に会わないってのはどう?」
セリナはよく分からない条件を出してくる。
「それに何の意味があるんだ?」
首を傾げるユーイだが、セリナは「さぁね」と煙に巻く。今どれだけ問い詰めたところで意味はなさそうだ。
「まぁ良いさ。勝てばいいんだからな!」
二人の間で緊張感が高まる。
互いの魔力が膨らみ、体がオーラを帯びた。
「「デュエル!!」」
二人ともかけ声とともに初手をデッキから引き抜く。
「先攻は俺だッ!」
まずはユーイのターン。
手札からモンスターを選び、フィールドに召喚する。
「《勇気の剣士 ルイーズ》を召喚!」
ユーイのフィールドに鎧を着たネズミの剣士が召喚された。
勇気の剣士 ルイーズ(星4/ATK1200)
「《勇気の剣士 ルイーズ》が召喚に成功した時、デッキから攻撃力1200のモンスター1体を手札に加えることができる!俺はデッキから《闘志の剣獣 サイガー》を手札に加える!そしてカードを1枚伏せてターンエンド!」
《勇気の剣士 ルイーズ》はその勇気で仲間を呼び寄せる効果を持っている。
手に持つ小さな剣を空に突き上げ『チュー!!』と鳴くと、それに合わせてユーイがデッキからモンスターをサーチする。
さらにユーイはカードを伏せ、それで彼のターンは終了となった。
「そんなネズミ1匹で私の攻撃に耐えられるかな!私のターン、ドロー!」
セリナがデッキからカードを引き抜く。
その表情は闘志に溢れてはいるものの、いま引いたカードについての一喜一憂は表れない。
「最初から飛ばしていくわ!私は手札から《融合》を発動!手札の《月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)》と《月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)》を融合ッ!!」
セリナの上に、青い毛並みを持つ猫を思わせる少女と紫の羽の蝶を思わせる少女が現れる。
そして《融合》の効果でそれらの二人は渦となり混ざり合う。
「蒼き闇を徘徊する猫よ!紫の毒持つ蝶よ!月の引力に渦巻きて、新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!!」
セリナが両手を組む。
渦の中から新たなモンスターが飛び出してきた。
「現れ出でよ!月明かりに舞い踊る美しき野獣!レベル7《月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)》!!」
《月光舞猫姫》はアラビアの踊り子風の衣装を纏った女性型モンスターだ。露出はそこまで多くはないが、薄い布に包まれた起伏に富んだ肢体はかなり扇情的。だが両手に持つナイフが妖艶さの中にある殺意を現して鈍く光る。
月光舞猫姫(星7/ATK2400)
「レベル7の融合モンスターか・・・」
さすがはデュエル・アカデミアの生徒だ。最上級モンスターも簡単に操る。
その魔力の豊富さはユーイにしてみれば羨ましいことだ。
「さらに墓地の《月光紫蝶》の効果発動!このカードを墓地から除外することで、手札から【月光】モンスター1体を特殊召喚できる!私はこの効果で手札から2体目の《月光蒼猫》を特殊召喚!」
先ほどと同じ青い猫娘がセリナのフィールドに降り立つ。
月光蒼猫(星4/ATK1600)
「特殊召喚された《月光蒼猫》の効果!このカードが特殊召喚に成功した場合、フィールドの【月光】モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで倍にする!」
「なッ・・・!倍だと!?」
「攻撃力を倍加させるのは、当然《月光舞猫姫》!」
《月光蒼猫》がしゃなりしゃなりと舞うと、みるみる間に《月光舞猫姫》の纏うオーラが高まっていく。
月光舞猫姫(ATK2400→4800)
これで《月光舞猫姫》の攻撃力は4800に到達。これはほとんど戦闘では無敵に近い数値だ。
「さらに《月光舞猫姫》のモンスター効果を発動!フィールドの《月光蒼猫》をリリースし、キミのモンスターに1度の戦闘破壊耐性を与え、このターン《月光舞猫姫》は全ての相手モンスターに2回攻撃を行うことができる!!」
「なにィ!?」
ユーイは即座にこの効果の意味を理解する。
(こいつはつまり《月光舞猫姫》は全てのモンスターに攻撃が可能なだけじゃあなく、その全てのダメージが倍になるってことじゃあないか!こんな攻撃をまともに食らえばLPなんて一瞬で消し飛ぶぞ!)
《月光舞猫姫》の攻撃力は4800。対してユーイの《勇気の剣士 ルイーズ》の攻撃力は1200。普段ならば、その差額は3600でこの攻撃を食らってもまだLPは400残る。だが、この効果で《月光舞猫姫》はもう一度《勇気の剣士 ルイーズ》に攻撃できるため、総ダメージは7200となりワンターンキルが成立する。
「こんな話を聞いたことはある?『猫は獲物を捕らえてもすぐには殺さない。痛ぶって弄んでから殺す』。私の【月光(ムーンライト)】は猫のその無邪気な残酷さを体現するデッキ!キミにこの攻撃、耐えられるかしら!?」
セリナの言葉をバトルフェイズへの移行と捉えたのか《月光舞猫姫》がにやりと笑い、両手のナイフを構える。
「行け!《月光舞猫姫》!《勇気の剣士 ルイーズ》を八つ裂きになさい!!」
セリナの命令に《月光舞猫姫》が飛び出そうとして――――しかし、その体ががくんと止まる。
「――――何ッ!?」
見ると《月光舞猫姫》の足に光るロープのようなものが絡まり、走り出すのを邪魔していた。
よく見ると、それは何本もの光の糸で編まれた紐だった。
「こ、これは――――魔力の糸!?魔力の糸を束ねてロープを編み、それをすでに私の《月光舞猫姫》の足元に潜ませていたの!?」
セリナの推測に我が意を得たりとユーイが頷く。
「その通り!こちとら、あんたらみたいに強力なモンスターをぽんぽん出せないんでな!姑息にも罠を張らせてもらってたのさ!それ、そいつはすぐに《月光舞猫姫》の全身を締め上げるぜ!」
ユーイの言葉通り、ロープは次々に現れては《月光舞猫姫》を襲い、その体をがんじがらめに縛ってしまった。
ロープの先を握っているのは《勇気の剣士 ルイーズ》だ。それが力任せにロープを引っ張ると、まるでロープマジックのようにロープが締め付けられ《月光舞猫姫》が苦悶の声を上げる。
「《マジカル・バインド―糸の結界》の罠!こいつに捕らわれたモンスターは守備表示となる!いくら攻撃力が倍加しようが、全体攻撃できようが、守備表示になってしまえば意味はないよなァ!」
「くッ・・・やってくれる・・・ッ!」
二撃必殺のワンターンキルを阻まれたセリナが歯を噛む。
それをしてやったりとユーイは笑む。
「『窮鼠、猫を噛む』っつー言葉があるが・・・この場合は『窮鼠、猫を縛る』・・・かな!」
ババーン!!
ー ー ー ー ー ー ー ー
使用カード
《勇気の剣士 ルイーズ》
効果モンスター
星4/地属性/獣戦士族/攻1200/守1500
(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキから攻撃力1200のモンスター1体を選んで手札に加える。
(2):??
《融合》
通常魔法
(1):自分の手札・フィールドから、 融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
《月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)》
効果モンスター
星4/闇属性/獣戦士族/攻1600/守1200
「月光蒼猫」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、「月光蒼猫」以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで元々の攻撃力の倍になる。
(2):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。デッキから「ムーンライト」モンスター1体を特殊召喚する。
《月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)》
効果モンスター
星3/闇属性/獣戦士族/攻1000/守1000
「月光紫蝶」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の手札・フィールドのこのカードを墓地へ送り、自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1000アップする。
(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。 手札から「ムーンライト」モンスター1体を特殊召喚する。
《月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)》
融合・効果モンスター
星7/闇属性/獣戦士族/攻2400/守2000
「ムーンライト」モンスター×2
(1):このカードは戦闘では破壊されない。 (2):1ターンに1度、自分メインフェイズ1に このカード以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体をリリースして発動できる。 このターン、相手モンスターはそれぞれ1度だけ戦闘では破壊されず、このカードは全ての相手モンスターに2回ずつ攻撃できる。
(3):このカードの攻撃宣言時に発動する。 相手に100ダメージを与える。
《マジカル・バインド―糸の結界》
永続罠
(1):1ターンに1度、相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。そのモンスターを守備表示にする。
(2):自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊される時、代わりに墓地のこのカードを除外できる。
糸目の男がにこやかな笑顔でユーイを迎え入れた。
入学式後の騒動も終わり、ユーイ達寮生組は入寮することになった。
オシリス・レッド所属のユーイはレッド寮への入寮だ。同じくラー・イエローのケンザンはイエロー寮へ、リュウアとリュウカはブルー寮へ入寮するらしい。
レッド寮は普通の宿屋と同じ造りの建物だった。一階は食堂などの共有スペースで、二階にそれぞれが寝泊まりする部屋がいくつか設けられている。
「私はこのレッド寮で寮長を務めている『大徳寺』といいますニャ。これから3年間よろしくですニャ」
大徳寺は痩せた男だった。背は高いが肌は白く、細い目にかけられた眼鏡の印象も相まっていかにも研究者肌の人物に見える。伸ばしていると言うより伸びっぱなしと言った感じの長髪で、彼の容姿への無頓着ぶりが分かるというものだ。
それにしてもクローディアにしろケンザンにしろ語尾で自己主張するのが最近の流行りなのだろうか。
「今年の入寮生は俺だけなんですか?」
レッド寮にはユーイ以外の生徒が見当たらない。自分が早く来すぎたか遅すぎたかでない限り、入寮者はユーイ一人ということになる。
「そうですニャ。レッド寮は他の寮に比べて少し手狭で、他の生徒さん達からは敬遠されてしまったようですニャ。あ、と言ってもそれ以外に他の寮と大した差はありませんのニャ。昔はオシリス・レッドをドロップアウト寸前の吹き溜まりと呼んでいた時代もあったそうですが、現在はそのような差別はないのニャ。現に生徒会メンバーの十六夜アキラさんや丸藤カケルくんもオシリス・レッドですニャ」
言われても思い出してみれば、確かに先ほど会ったとき生徒会メンバーの中にも赤い制服の人が数人いた。どうやら各チームは成績に応じた階層などというわけではなく、純粋な縦割りであるらしい。
「そういうわけなので部屋が余っているわけもなく、武藤くんも他の生徒さんと相部屋になってもらいますニャ。大丈夫ですニャ?」
タダで寝泊まりさせてもらえるのだ、どうしても個室がいいなんて我が儘が言える立場ではないし、むしろルームメイトがいる方が楽しそうだ。
ユーイは即座にそれを了承する。
「良かったですニャ。では部屋は二階の10号室ですニャ。今夜は寮生全員で歓迎会をする予定なので、それまでは自由に過ごしてもらって構いませんのニャ」
大徳寺に促されてユーイは二階に上がった。
これから3年間生活することになる10号室は一番端の部屋だ。
ノックをするが反応はない。一応「失礼しま―――」と声をかけながらドアを開いて、しかし「えッ」と固まった。
部屋の中には先人がいた。
青みがかった黒髪を大きめのリボンで結ったポニーテール。ネコ科の動物を思わせるややつり上がりぎみの目。オシリス・レッドのジャケットを羽織り、黒のTシャツとショートパンツという姿。ショートパンツから伸びた足はすらりと健康的な脚線美。
その『彼女』が椅子に腰掛けて、ぽりぽりと何かお菓子のようなものを食べている。
(女の子・・・だよな、どう見ても。なんで俺の部屋に女の子がいるんだ)
部屋を間違えたかと思い、一旦廊下に出て部屋番号を確認するが、確かに大徳寺に聞いた10号室だ。まさか大徳寺が言い間違えたのだろうか。
いや、そもそもここに女子がいること自体がおかしいだろう。
(そう言えば大徳寺先生がルームメイトがいるって言っていたけど、まさかとは思うがこの子が『そう』なのか・・・?)
「そんなとこに突っ立ってないで、入ったら?」
戸惑うユーイに彼女が声をかける。
「・・・・」
ユーイはおずおずと部屋に入った。
部屋は八畳くらいの面積に机が二つ、二段ベッドが一つ、そして小さなタンスが二つあるだけのシンプルな造り。少々手狭ではあるが、元々そう物持ちの多い方ではないユーイにとっては生活するのに苦はなさそうだ。
(しかし――――)と二段ベッドの下段に腰かけユーイは彼女を見る。
(女の子と相部屋となれば話は別だぞ。どう生活しろって言うんだ)
珍しくユーイは落ち着かない様子。
しかし当の彼女はまるで動じていない。スッと持っている菓子の袋を差し出す。
「食べる?なんでも王都の銘菓らしいわよ。まぁ、ぶっちゃけただのビスケットだけど」
「いや、いい・・・です」
ユーイの混乱はビスケットどころではない。
今年の新入生でこのレッド寮に入る生徒はユーイ以外いないとのことなので、彼女は先輩ということになる。一応、敬語で断りを入れる。
しかし先輩にしては彼女の制服は真新しいように見える。もちろん制服は新調することもできるであろうから、何の基準にもならないが。
そこでユーイはある可能性に気がつく。
(もしかして女子に見えるってだけで、実は男子なんじゃあないか)
丸藤カケルやリュウアなんかも、黙っていれば女子と間違われかねない容姿をしていた。もしかしたら彼女―――いや、彼もそうなのかもしれない、とユーイは考えたのだ。
「んーーー、お腹一杯になったら少し眠たくなった」
そう言って体を反らす彼女の胸元には確かに二つの膨らみがあった。
(やっぱり女の子だーーーーッ!!)
自らの甘い考えを悔やみながら、ユーイは全力で視線を逸らす。
嫌な汗が噴き出るようだ。
「自己紹介させてもらうわね。私は『セリナ・ムーク』。よろしく」
「『ムーク』?」
「そう。七星侯が一角、ムーク家の当主『カミラ・ムーク』の娘。と言っても養子だから血縁はないのだけど」
ムーク家。
先ほど、三沢ダイキが七星侯について説明したときの話に出てきた名前だ。確か、昔は吸血鬼だと言われていた呪法使いの一族。
ユーイはこの七星侯というやつに何やら因縁でもあるのかもしれない。
シクス・タイタンから始まって、生徒会メンバーの天上院家と万城目家の二人、そしておそらく先ほど会った大徳寺先生も大徳寺家所縁の人だろう。彼女があのムーク家の一員と言うのなら、これでこの王都にやってきてからユーイが出会った五人目の七星侯関係者ということになる。
国中の有力な決闘者が集まるデュエル・アカデミアとは言え、これだけ立て続けに七星侯に出会えば、半ば運命的な何かがあるのではないかと疑ってしまうというものだ。
「俺は・・・」
「知ってる。武藤ユーイ・・・でしょ、キミ」
ユーイも自己紹介を返そうとしたのだが、どうやらセリナは既に知っていたようだ。
「キミ、有名だもの。私も見てたわよ、キミのデュエル。リンク召喚―――『首飾りの国』独自の召喚法。噂には聞いていたけど、まさかクローディア先生に勝つほどなんてね。私、キミに興味があるの」
その言葉に思わずドキリとする。
ユーイも年頃の男子だ、可愛い女の子に『興味がある』と言われて意識しないわけがない。
しかし続けて放たれた彼女の言葉に、ユーイはさらに鼓動を早くする。
「リンク召喚にも確かに興味があるのだけど、もっと教えてもらいたいのは、『デュエル中にキミに起こった変化』についてね」
「・・・なんだって?」
聞き返すユーイに、セリナは瞳を妖しく光らせる。
「言ったでしょう、キミのデュエルを見ていたって。私は見ていたわ。クローディア先生とのデュエルも、『影丸ユウリとのデュエル』もね」
今度は彼女が何を言っているのかだけは分かった。
彼女は見ていたのだ、あの夜の美少女決闘者とのデュエルを。しかも美少女決闘者の正体が影丸ユウリだということにも気付いている。
だが、おかしい。あの時、ユーイは気配を隠して近付いてきたユウリの存在に気付く察知能力を見せた。にも関わらず彼女の存在には全く気付いていなかった。つまりセリナはユウリ以上の穏形能力を持っているということになる。
(何なんだ、こいつ!ただのルームメイトなんかじゃあないぞッ!)
途端に、今まで普通に会話していた相手が得体の知れない何かへと変わった。
バッと素早く彼女から距離を取る。
「あんた、何者だ?」
「もしかして、あのデュエルで自分が変化していたことに気付いていないの?『記憶がない』のか、それとも『認識できないようにされている』のか、どちらなのか・・・」
「質問に答えろッ!!あんた、一体・・・ッ!」
ユーイの剣幕に動揺したわけではないだろうが、セリナが椅子から立ち上がる。
その左腕にはいつの間にかデュエルディスクが装着されていた。
「何かを得たいのならデュエルで勝ち取るのが私達決闘者でしょう。それにこれも言ったわよね、私はキミに興味があると。キミとデュエルするためにこうして寮に忍び込んでキミを待っていたんだから。まさか私をルームメイトか何かだと思っていたわけじゃあないわよね?」
「・・・・ッ」
(忍び込んだだって?ここは二階だぞ・・・!こいつが何者なのか分からないが、逃げて逃げられる相手じゃあなさそうだ・・・!なら、倒してその目的を聞き出すしかないッ!)
「このデュエル、受けて立つぜッ!」
ユーイもデュエルディスクを取り出し、腕に着ける。
「そう来なくちゃ」
セリナは瞳に妖しい光を湛えながら、にやりと笑った。
・
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・
・
「お待たせしちゃってゴメンねぇ~!ボクがキミのルームメイトの――――って、あれ?」
丸藤カケルが勢いよく10号室のドアを開けて入ってくるが、部屋の中はもぬけの殻だった。
「なんだ武藤くん、何処かに出掛けちゃったのか。あ、ボクの机でお菓子食べてる!」
部屋に誰かがいた形跡は、カケルの机の上に残されているビスケットの袋だけだ。
「食べかけのお菓子の袋をそのままにして出掛けちゃうなんて、案外武藤くんズボラなんだな」
カケルはこれからの生活に一抹の不安を抱きつつ、窓の外の晴れ渡った空を見るのだった。
・
・
・
・
カケルにそんなあらぬ疑いをかけられていることなど露知らず、ユーイはセリナと対峙していた。
場所は寮の裏手。ここならば建物の影になり周りの人目を気にすることなくデュエルに集中できる。とは言え寮内からは丸見えなのだが、ユウリとのデュエル同様セリナによる『人払いの呪法』がかけられているため、その心配もない。
「俺が勝ったら、あんたの目的を明かしてもらうぜ」
ユーイは鋭い視線をセリナに向ける。
それを心地よげに受けて、セリナは頷く。
「私が勝ったら、そうね、しばらくは響先生に会わないってのはどう?」
セリナはよく分からない条件を出してくる。
「それに何の意味があるんだ?」
首を傾げるユーイだが、セリナは「さぁね」と煙に巻く。今どれだけ問い詰めたところで意味はなさそうだ。
「まぁ良いさ。勝てばいいんだからな!」
二人の間で緊張感が高まる。
互いの魔力が膨らみ、体がオーラを帯びた。
「「デュエル!!」」
二人ともかけ声とともに初手をデッキから引き抜く。
「先攻は俺だッ!」
まずはユーイのターン。
手札からモンスターを選び、フィールドに召喚する。
「《勇気の剣士 ルイーズ》を召喚!」
ユーイのフィールドに鎧を着たネズミの剣士が召喚された。
勇気の剣士 ルイーズ(星4/ATK1200)
「《勇気の剣士 ルイーズ》が召喚に成功した時、デッキから攻撃力1200のモンスター1体を手札に加えることができる!俺はデッキから《闘志の剣獣 サイガー》を手札に加える!そしてカードを1枚伏せてターンエンド!」
《勇気の剣士 ルイーズ》はその勇気で仲間を呼び寄せる効果を持っている。
手に持つ小さな剣を空に突き上げ『チュー!!』と鳴くと、それに合わせてユーイがデッキからモンスターをサーチする。
さらにユーイはカードを伏せ、それで彼のターンは終了となった。
「そんなネズミ1匹で私の攻撃に耐えられるかな!私のターン、ドロー!」
セリナがデッキからカードを引き抜く。
その表情は闘志に溢れてはいるものの、いま引いたカードについての一喜一憂は表れない。
「最初から飛ばしていくわ!私は手札から《融合》を発動!手札の《月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)》と《月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)》を融合ッ!!」
セリナの上に、青い毛並みを持つ猫を思わせる少女と紫の羽の蝶を思わせる少女が現れる。
そして《融合》の効果でそれらの二人は渦となり混ざり合う。
「蒼き闇を徘徊する猫よ!紫の毒持つ蝶よ!月の引力に渦巻きて、新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!!」
セリナが両手を組む。
渦の中から新たなモンスターが飛び出してきた。
「現れ出でよ!月明かりに舞い踊る美しき野獣!レベル7《月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)》!!」
《月光舞猫姫》はアラビアの踊り子風の衣装を纏った女性型モンスターだ。露出はそこまで多くはないが、薄い布に包まれた起伏に富んだ肢体はかなり扇情的。だが両手に持つナイフが妖艶さの中にある殺意を現して鈍く光る。
月光舞猫姫(星7/ATK2400)
「レベル7の融合モンスターか・・・」
さすがはデュエル・アカデミアの生徒だ。最上級モンスターも簡単に操る。
その魔力の豊富さはユーイにしてみれば羨ましいことだ。
「さらに墓地の《月光紫蝶》の効果発動!このカードを墓地から除外することで、手札から【月光】モンスター1体を特殊召喚できる!私はこの効果で手札から2体目の《月光蒼猫》を特殊召喚!」
先ほどと同じ青い猫娘がセリナのフィールドに降り立つ。
月光蒼猫(星4/ATK1600)
「特殊召喚された《月光蒼猫》の効果!このカードが特殊召喚に成功した場合、フィールドの【月光】モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで倍にする!」
「なッ・・・!倍だと!?」
「攻撃力を倍加させるのは、当然《月光舞猫姫》!」
《月光蒼猫》がしゃなりしゃなりと舞うと、みるみる間に《月光舞猫姫》の纏うオーラが高まっていく。
月光舞猫姫(ATK2400→4800)
これで《月光舞猫姫》の攻撃力は4800に到達。これはほとんど戦闘では無敵に近い数値だ。
「さらに《月光舞猫姫》のモンスター効果を発動!フィールドの《月光蒼猫》をリリースし、キミのモンスターに1度の戦闘破壊耐性を与え、このターン《月光舞猫姫》は全ての相手モンスターに2回攻撃を行うことができる!!」
「なにィ!?」
ユーイは即座にこの効果の意味を理解する。
(こいつはつまり《月光舞猫姫》は全てのモンスターに攻撃が可能なだけじゃあなく、その全てのダメージが倍になるってことじゃあないか!こんな攻撃をまともに食らえばLPなんて一瞬で消し飛ぶぞ!)
《月光舞猫姫》の攻撃力は4800。対してユーイの《勇気の剣士 ルイーズ》の攻撃力は1200。普段ならば、その差額は3600でこの攻撃を食らってもまだLPは400残る。だが、この効果で《月光舞猫姫》はもう一度《勇気の剣士 ルイーズ》に攻撃できるため、総ダメージは7200となりワンターンキルが成立する。
「こんな話を聞いたことはある?『猫は獲物を捕らえてもすぐには殺さない。痛ぶって弄んでから殺す』。私の【月光(ムーンライト)】は猫のその無邪気な残酷さを体現するデッキ!キミにこの攻撃、耐えられるかしら!?」
セリナの言葉をバトルフェイズへの移行と捉えたのか《月光舞猫姫》がにやりと笑い、両手のナイフを構える。
「行け!《月光舞猫姫》!《勇気の剣士 ルイーズ》を八つ裂きになさい!!」
セリナの命令に《月光舞猫姫》が飛び出そうとして――――しかし、その体ががくんと止まる。
「――――何ッ!?」
見ると《月光舞猫姫》の足に光るロープのようなものが絡まり、走り出すのを邪魔していた。
よく見ると、それは何本もの光の糸で編まれた紐だった。
「こ、これは――――魔力の糸!?魔力の糸を束ねてロープを編み、それをすでに私の《月光舞猫姫》の足元に潜ませていたの!?」
セリナの推測に我が意を得たりとユーイが頷く。
「その通り!こちとら、あんたらみたいに強力なモンスターをぽんぽん出せないんでな!姑息にも罠を張らせてもらってたのさ!それ、そいつはすぐに《月光舞猫姫》の全身を締め上げるぜ!」
ユーイの言葉通り、ロープは次々に現れては《月光舞猫姫》を襲い、その体をがんじがらめに縛ってしまった。
ロープの先を握っているのは《勇気の剣士 ルイーズ》だ。それが力任せにロープを引っ張ると、まるでロープマジックのようにロープが締め付けられ《月光舞猫姫》が苦悶の声を上げる。
「《マジカル・バインド―糸の結界》の罠!こいつに捕らわれたモンスターは守備表示となる!いくら攻撃力が倍加しようが、全体攻撃できようが、守備表示になってしまえば意味はないよなァ!」
「くッ・・・やってくれる・・・ッ!」
二撃必殺のワンターンキルを阻まれたセリナが歯を噛む。
それをしてやったりとユーイは笑む。
「『窮鼠、猫を噛む』っつー言葉があるが・・・この場合は『窮鼠、猫を縛る』・・・かな!」
ババーン!!
ー ー ー ー ー ー ー ー
使用カード
《勇気の剣士 ルイーズ》
効果モンスター
星4/地属性/獣戦士族/攻1200/守1500
(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキから攻撃力1200のモンスター1体を選んで手札に加える。
(2):??
《融合》
通常魔法
(1):自分の手札・フィールドから、 融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
《月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)》
効果モンスター
星4/闇属性/獣戦士族/攻1600/守1200
「月光蒼猫」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、「月光蒼猫」以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで元々の攻撃力の倍になる。
(2):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。デッキから「ムーンライト」モンスター1体を特殊召喚する。
《月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)》
効果モンスター
星3/闇属性/獣戦士族/攻1000/守1000
「月光紫蝶」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の手札・フィールドのこのカードを墓地へ送り、自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1000アップする。
(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。 手札から「ムーンライト」モンスター1体を特殊召喚する。
《月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)》
融合・効果モンスター
星7/闇属性/獣戦士族/攻2400/守2000
「ムーンライト」モンスター×2
(1):このカードは戦闘では破壊されない。 (2):1ターンに1度、自分メインフェイズ1に このカード以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体をリリースして発動できる。 このターン、相手モンスターはそれぞれ1度だけ戦闘では破壊されず、このカードは全ての相手モンスターに2回ずつ攻撃できる。
(3):このカードの攻撃宣言時に発動する。 相手に100ダメージを与える。
《マジカル・バインド―糸の結界》
永続罠
(1):1ターンに1度、相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。そのモンスターを守備表示にする。
(2):自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊される時、代わりに墓地のこのカードを除外できる。
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次回、遊戯王戦記第21話「小さな相棒」!
少年は、やがて王になる!
(2018-04-07 14:54)
自分は既存カードのリメイクが好きなんですがルイーズはどうしたもんかと思っていたところ、同じ攻撃力を持つ同士のサーチはなるほどと思いました。 (2018-04-08 09:27)
(2018-04-08 10:22)
ムークが何に由来するのか言い当てられるとは思いませんでした。ビックリしました。
小説ではオリジナルモンスターは描写力がないとどんな姿形なのか伝わり辛いのではと考えて、イラストのあるOCGカードかリメイクを多用しています(笑)ルイーズ個人的に好きなのでサーチ役にしました(笑) (2018-04-08 21:25)
上のいちごTさんもですが、こちらのちょっとしたネタみたいな意図に気付いてもらえると、なんか感心してしまいますね(笑)
セリナは確かに月と吸血鬼がイメージ近い気がしてムーク家入りさせました。これからユーイに深く関わっていく重要キャラです。 (2018-04-08 21:32)