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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第十三話・復活の万丈目!対抗デュエル前編

第十三話・復活の万丈目!対抗デュエル前編 作:鈴木颯手

「…今日はこれを入れてみるか」

ノース校との対抗デュエル大会の日となった。龍吾は自室でデッキの調整を行っていた。龍吾は校長の鮫島から「必ず勝つように」と鬼気迫る勢いで言われており念には念を入れて準備を怠っていなかった。

デッキの調整を終えた龍吾は時計を確認した。時間はノース校の代表団が来る予定時間の少し前となっていた。龍吾はデッキを持つと部屋を出てノース校の代表団を出迎えるために港へと向かった。





☆★☆★☆
「一ノ瀬校長。よくいらっしゃった」

「うちの生徒がご迷惑をお掛けします」

「いえいえ、こちらこそ」

龍吾が港に着くと既に代表団は到着していたらしく校長の鮫島とノース校の校長と思われる人と握手をしていた。

「ところで…、トメさんはお元気ですかな?」

「ええ、勿論ですとも。トメさんはこの対抗試合に欠かせない人ですから」

「鮫島校長。少し遅れました」

龍吾は校長の所まで行くと声をかけた。…校長の鮫島とノース校の校長が握手しているがかなり力が籠っているように見えるのは気のせいだと龍吾は思う事にしたがそれは完全なる余談である。

「おお!黒崎君。大丈夫だとも彼らも今着いたばかりだからな」

「鮫島校長。彼は?」

「一ノ瀬校長、彼は黒崎龍吾君。今年の対抗デュエルの代表です」

「ほう、君が黒崎君か。噂を耳にしているよ」

「初めまして黒崎龍吾です。貴方はノース校の校長ですか?」

「その通りだ。よろしく頼むよ」

一ノ瀬校長はそう言うと右手を差し出した。別に握手をしない理由がないため龍吾は快く応じた。

「…それで。俺の相手は?」

「俺だ」

龍吾が一ノ瀬校長に聞くとその後ろから声が聞こえた。その声に龍吾は心当たりがあり一ノ瀬校長の後ろを見る。そこには

「久しぶりだな、黒崎龍吾」

「…万丈目」

退学し島を出ていったはずの万丈目の姿があった。そしてその万丈目を囲むようにごついノース校の生徒が守っていた。

「…あの時の礼を今日はきっちり返してやるから覚悟しろ!」

「…そうk、!?」

龍吾が返事をしようとした時であった。突然突風が吹き荒れ港に風が起こる。それと同時にプロペラ音が聞こえ龍吾は上を見ると二台のヘリの姿があった。そのヘリには丸の中に万が描かれたマークがあった。

「あ、あのマークは万丈目グループ!?」

「そうだ!」

「久しぶりだな準。元気でやっているか?」

ヘリからはこちらを見下ろす、と言うより万丈目を見ている二人の男がいた。恐らく万丈目の親族なのだろうと龍吾は予想する。

「長作兄さん!?正司兄さん!?何しに来たんだ!?」

万丈目は兄と呼んだ二人を若干怒気を含んだ声で言う。その眼は何時もより険しく見えた。

「勿論、お前の勝利を祝福するためにだ!」

「あまり心配をかけるなよ準」

ヘリから二人が下りるとそれを待っていたかのように何処からかカメラやマイクを持った人が現れて万丈目の兄たちを撮る。

「…これは何の騒ぎですか?」

一ノ瀬校長が聞く。どうやら一ノ瀬校長どころか鮫島校長すら知らないようで驚きの表情でカメラマンを見ていた。

「あれ?聞いていないんですか?今年はデュエルアカデミアの対抗デュエルを大々的にテレビで生放送するんですよ?」





☆★☆★☆
生放送を行うために予定より時間が少し遅れていた。その間龍吾は心を落ち着かせるためにアリーナにて瞑想していた。

「おーい、龍吾!」

そこへ十代達がやって来る。龍吾は目を開くと十代達の方を見る。

「…どうした?」

「まさかテレビ中継されるなんてな。お前知っていたか?」

「いいや。校長たちの反応を見る限り万丈目の兄たちの独断だろう」

「万丈目の兄たちって迎えの時にヘリで来た人達か?」

「ああ」

流石は海馬コーポレーションと並ぶグループだと龍吾は内心驚いていた。

「しかし…まさか万丈目がノース校にいたとはな…」

「これは転校という事でいいのか?」

「ええ。そうなる筈よ」

「いや~、楽しみだな~。龍吾、楽しいデュエルを期待しているぜ!」

「任せろ」

「テレビの準備が完了しました~。代表者はアリーナに来てください」

「…どうやらそろそろ始まるみたいだ」

「黒崎君。頑張ってくださいっスね」

「応援しているわ」

「まあ、負ける事は無いだろう」

「分からないぞ。万丈目がこの島を出た時から変わっていないなら代表には慣れなかっただろうからな」

「んじゃ、龍吾~!観客席から応援しているぜ~!」

十代達が観客席に行くのを見送った龍吾はデュエル場に上がる。

「ではここに!デュエルアカデミア本校」

「ノース校」

「「対抗デュエル大会の開催を宣言する!」」

「クロノス教諭。デュエリストの紹介を!」

両校の校長による開会の挨拶がされるとクロノス教諭に振られる。しかし、当のクロノス教諭はテレビに放送されていると言う事もありガッチガチに緊張していた。

「信じられないノーネ。私の姿~が、今、全国に流れているナン―テ!」

完全に固まりながら言っているせいか少し笑えるが龍吾は表情に出さず待機する。

「それでは!これヨーリ、デュエルアカデミア本校!ノース校!対抗デュエル始めるノーネ!」

その言葉に会場は一気に盛り上がる。

「まず紹介するはアカデミア本校代表!黒崎龍吾ぉ!」

瞬間アカデミア本校の生徒、特にオベリスクブルーから歓声が上がる。場所によっては龍吾の邪悪龍ダークドラグーンをイメージしたらしいお手製の旗を振っている者がいたが周りの邪魔になっており直ぐに降ろされていた。

「続いてノース校!」

「いらん!俺の名は俺が告げる」

クロノス教諭の言葉を遮ったのは万丈目であった。遮られたクロノス教諭はへ?と言った顔で万丈目を見る。

「黙って引っ込めと言ったんだおかっぱ野郎!」

万丈目は最初のころとは変わりクロノス教諭をおかっぱ呼ばわりするが実際そうなので特に反応を示さなかった。その隣ではマイクのコードに引っかかりデュエル場から落ちたクロノス教諭がいたか万丈目は無視すると叫ぶ。

「お前たち!この俺を覚えているか!この学園で俺が消えて清々したと思っている奴!俺の退学を自業自得だとほざいた奴!知らぬなら言って聞かせるぞ。その耳かっぽじってよく聞きやがれ!地獄の底から不死鳥のごとく復活してきた俺の名は!一!十!」

「「「「「百!千!」」」」」

「万丈目、さんだ!」

「「「「「わああぁぁぁぁっ!!!サンダー!サンダー!万丈目、サンダー!」」」」」

ある意味感心するほどのノース校の一体感に龍吾は軽く引く。一歩間違えれば危ない宗教に見えなくもない。龍吾がそう思っている間にも万丈目の名乗りは続いていく。

「俺は!」

「「「「「サンダー!」」」」」

「万丈目!」

「「「「「サンダー!」」」」」

「行くぞ龍吾!このデュエル負けるわけにはいかないからな!」

漸く龍吾の方を向いた万丈目からはとてつもなく思い覚悟が伝わってくる。それを感じた龍吾も真剣な表情になる。

「来い、万丈目!」

「万丈目さんだ!」

「「デュエル!」」





☆★☆★☆
「俺の先行!ドロー!」

万丈目
手札5枚→6枚

「俺は仮面竜(マスクドドラゴン)を守備表示で召喚!更にカードを一枚伏せてターンエンド!」


仮面竜
ATK1400 DEF1100

「「「「「わああぁぁぁぁっ!!!」」」」」

万丈目が行動する度に後ろのノース校の生徒が歓声を上げる。やり辛いと感じつつ龍吾は自分のターンに入る。

「俺のターン、ドロー」

「リバースカードオープン!はたき落とし!貴様の引いたそのカードを墓地に送ってもらおう!」

「何?…」

龍吾はいきなりのカードに驚きながら今引いたカード、融合を墓地に送る。

「俺は手札から死者転生を発動!手札のサイレントドラグーンを墓地に送り同じカードを手札に加える。そしてサイレントドラグーンの効果により特殊召喚する。現れろサイレントドラグーン!」

サイレントドラグーン
ATK2000 DEF1700

「更にサイレントドラグーンを墓地に送りダーク・パワー・ドラゴンを召喚する!」

サイレントドラグーンに代わって表れたのは機械の龍で召喚されると咆哮を上げた。

ダーク・パワー・ドラゴン
ATK2300 DEF2500

「ふん!また新しいカードか」

「ダーク・パワー・ドラゴンの効果によりデッキから装備カードを一枚手札に加えることが出来る。俺は速すぎた埋葬を手札に加える。バトル。ダーク・パワー・ドラゴンで仮面竜を攻撃」

ダーク・パワー・ドラゴンによって呆気なく破壊されるが守備表示であったため万丈目にダメージはない。

「くっ!仮面竜の効果発動!このカードが戦闘では破壊された時デッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター一体特殊召喚出来る!俺はアームドドラゴンレベル3を特殊召喚!出でよ!レベル3!」

アームドドラゴンレベル3
ATK1200 DEF900

「レベルモンスター、だと?」

レベルモンスターは余りにも希少で絶対数が少なく使っている者を龍吾はこれまで見た事がなかった。レベルモンスターの籠城に本校は戸惑いノース校は歓声を上げていた。恐らくあれが万丈目の新しい切り札なのだろう、と龍吾は予想する。

「黒崎君!負けるな!負けてはならんぞぉ!」

そうしているとノース校の方に座った鮫島校長から激励の言葉が届く。龍吾はそれに頷くと自分のターンを進めていく。

「俺はカードを二枚伏せてターンエンド」

万丈目LP4000 手札4枚
モンスター
アームドドラゴンレベル3
魔法、罠
なし

黒崎龍吾LP4000 手札1枚
モンスター
ダーク・パワー・ドラゴン
魔法、罠
セット
セット

「俺のターン、ドロー!」

万丈目
手札4枚→5枚

「この瞬間、アームドドラゴンレベル3の効果発動!このカードを墓地に送り手札、デッキからアームドドラゴンレベル5を特殊召喚出来る!アームドドラゴンレベル3を生贄に出でよ!アームドドラゴンレベル5!」

アームドドラゴンレベル5
ATK2400 DEF1700

現れたのはアームドドラゴンレベル3よりも大きいドラゴンで全体的にごつくなった印象があった。

「「「「「わああぁぁぁぁっ!!!サンダー!サンダー!万丈目、サンダー!」」」」」

アームドドラゴンがレベルアップした事でノース校の生徒が再び騒ぎ出すが龍吾は完全に無視する事にした。

「更に速攻魔法サイクロン!俺から見て右側のセットカードを破壊する!」

万丈目から放たれたサイクロンにより破壊される龍吾のセットカード。破壊されたのは攻撃の無敵化。因みにもう一つはブラフの速すぎた埋葬である。万丈目は正解を当てたのである。

「行け!アームドドラゴンレベル5でダーク・パワー・ドラゴンを攻撃!アームド・バスター!」

アームドドラゴンレベル5が振り回した両腕によってダーク・パワー・ドラゴンは悲鳴を上げながら破壊される。

黒崎龍吾LP4000→3900

ダメージは微々たるものだがそれ以上に心に来る一撃であった。

「フハハハハハ!アームドドラゴンレベル5の効果発動!このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した時このカードを墓地に送りアームドドラゴンレベル7を特殊召喚する!」

アームドドラゴンレベル5が赤く光ったかと思うとヒカリが収まる頃には巨大なドラゴンがいた。そのドラゴンは大きく咆哮を上げると龍吾を睨みつける。

アームドドラゴンレベル7
ATK2800 DEF1000

「…2ターン目でこれか。かなりきついな」

「頑張れ黒崎君!負けるなぁ!」

「「「「「わああぁぁぁぁっ!!!サンダー!サンダー!万丈目、サンダー!」」」」」

鮫島校長が龍吾に激励の言葉を送るがノース校の生徒の声援により呆気なくかき消された。

「勝者は!」

「「「「「サンダー!万丈目、サンダー!」」」」」

狂ったように叫び続けるノース校の生徒に龍吾は少し恐怖を感じてしまう。ここまでの一体感はまるでではなくまんま宗教であると感じて思わず万丈目を憐れむような眼で見てしまう。

「何なんだぁ!その眼は!」

「…宗教を作るのは良いが迷惑はかけないようにな」

「だから一体何の話をしているんだぁ!」

万丈目はそう叫ぶのであった。
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