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HOME > 遊戯王SS一覧 > 乙女外伝~心愛編~伝えたい気持ち

乙女外伝~心愛編~伝えたい気持ち 作:ター坊




私は何でも捨てられたみたいです。

秋の冷え込んだ朝、かごに入れられて、孤児院の前に置かれていたそうです。

私は孤児院の院長と同じ苗字の魅空を貰い、心から誰でも愛し誰からも愛される温かい子に育つように心愛(ここあ)と名付けられました。

両親の顔を知らないおかげで寂しくはありませんでした。院長先生や他の先生がお父さん・お母さん・お兄さん・お姉さんみたいで心地良かったです。



時は流れて私が小学6年生の時のクリスマスの夜。全てを失う日が来てしまいました。

孤児院を焼き尽くす火事

一緒に遊んでいた友達も

優しかった先生も

育ててくれた院長先生も

みんな消えてしまいました。


私は孤児院をよく訪れていたサニーアップ事務所と言う場所に引き取られました。
でもなにもかも失った私は人形みたいに固まって、誰とも話したくありませんでした。今考えたらすごい迷惑を掛けちゃったと思います。

誰とも話さず、部屋の隅っこで膝を抱えていると誰かが紙をパサッと置いたのに気付きました。紙を広げると

《お話 しよ。お話したくないなら お手紙でもいいよ 

遊路 美羽》

紙の隅っこには可愛い女の子のキャラクターが描いてあって、少しだけ口が綻んだのを覚えてます。


その後、こうした手紙のやり取りを通して私は元気になっていきました。



中学校の入学式。後ろには保護者がたくさん来ていました。でも何もかも無くした私には誰もいない。

そう思ってました。

けど後ろに目をやると保護者の席には遊路さんと美羽さん、遊月さんがいました。後々の参観日も体育祭も文化祭も、学校の行事は毎回来てくれました。

私が中学に上がると遊路さんはデュエルモンスターズを教えてくれるようになりました。
「一番手っ取り早く強くなれる方法、それでいてとても楽しい事だ」
って笑いながら。この頃から先生って呼ぶようになりました。





先生と過ごして1年。私のイケナイ心ははち切れそうでした。
最初は兄のような存在でした。けど一緒に過ごして色んな先生を見ていくうちに、兄から男の人に変わって、お世話をしてくれた恩義やデュエリストとしての憧れも異性に対するソレに変わって…。
でも先生には綺麗な美羽さんと遊月さんがいて、私なんかじゃ敵わないって塞ぎこんで…、でも気持ちが溢れそうで…。

そんな状態だと上の空になるのか、ある日の事、デュエルの午前練習中にボーッとして1つ上の詩音先輩に呼び出されて怒られました。
「ふざけんじゃねぇよ!」
「す、すいませんでした…」
「ったく。あのク ズコーチ、何が良くてこんなトロい奴をトップチームの候補にいれてるんだか」
その時、私自身でも不思議な事が起きました。
「先生の…先生の悪口は止めて下さい!!」
「っ!?」
こうまで叫んだのは生まれて初めてかも知れませんでした。詩音先輩もビックリしてました。
「なにマジになってんの。…もしかして、あのコーチに惚れてんの?」
「ふぇっ!?その… / / / 」
詩音先輩の一言に動揺しまくりました。
「ふーん…」
「あぅ…」
「アタシには関係ねぇし。勝手に告るなり好きにすれば?」
「でも…、先生には…彼女さんが二人も…。それに娘さんだって…」
「二人の時点でおかしいだろ!どういう神経してるのか知らないけど、アイツにしたら女が二人いようが三人いようが変わらないんじゃないの?」
「…」
「ちっ!アイツの事話しただけで気分悪い。アタシもう行くから。次の練習中にボーッとしたら蹴り飛ばすから!」
詩音先輩はそう吐き捨ててドスドス離れて行きました。
「…二人いても、三人いても…」




お昼休みの食堂で一番気まずい人と顔を合わせることになりました。
「ここの席いい?」
「失礼致します」
「…はい、どうぞ」
美羽さんと遊月さんです。断る理由もなく、相席になって二人は向かいに座りました。
「…」
先程の詩音先輩の言葉のせいで二人の事を余計に意識してしまう。この人達は先生と恋人なんだ。私なんか敵わないんだ、って。
「…そう言えば心愛さんって遊路の事、どう思ってる?」
「ブフォッ!」
美羽さんの突然の問いかけに蕎麦を啜ってた私はむせ返りました。
「大丈夫ですか?」
「けほっ、けほっ…。すいません」
「…」
「…」
美羽さんと遊月さんが目を合わせたような気がした。
「心愛様」
「?」
「心愛様も遊路様をお慕いしているんですね」
「えっ?」
その一言に私の体温が高まっていく気がしました。
「そ、そんな滅相もないでひゅ!」
思わず噛むくらい取り乱しました。
「あはは。心愛さん、それじゃ好きですって言ってるのと変わらないよ」
「へぅっ!あぅ…」
「私達は何も心愛様を咎める気はありません。むしろ、応援したいんです」
「え?それってどういう事ですか…?」
「なんだか昔の私達と似てるなって思って」
「昔の美羽さん達…ですか?」
「はい。その当時、私と美羽様は同時に遊路様に好いてしまいました。遊路様に迷惑を掛けるかもしれない、けど、この気持ちは諦めたくない、と…」
「私達のワガママな気持ち。でも遊路はそれを受け入れてくれて私と遊月さんを彼女にしてくれたの…」
「だから心愛様も私達の事を気にせず、ご自身の正直な気持ちに従って下さい」
「私の…正直な気持ち…」




夕方になり、その日の練習が終わってみんなが帰る中、私は先生にお願いして居残りで稽古をつけて貰いました。
「スキュルート Eternal Ace でダイレクトアタック」

心愛:LP 1300→0

「ありがとうございました」
「いいや。心愛は頑張り屋だから教え甲斐があっていいよ」
そう言って先生は私の頭をポンポンってする。
「…あの、先生!」
「どうした?」
「先生!私…!えっと…、その…」
あの言葉がなかなか口に出せない。ここまで来たのに…でも早く言わなきゃと焦る程、緊張して言葉が続かない。

ピロロロ!ピロロロ!

先生からスマホの着信音が聴こえる。
「…ごめんな」
先生はスマホを取り出して画面を確認すると

ブッ!

電話に出ず、そのまま電源を切ってしまいました。
「え?先生…?」
「あんな電話よりも今、目の前にいる心愛の話の方が大事だからな」
「先生…」
「…心愛。初めて話すきっかけになった手紙を覚えてるか?」
「…はい」
それは全部を失って閉ざされた心を開けてくれた、私の宝物。忘れる訳がありません。
「それと同じだよ。言葉でも文字でも、心愛のホントの気持ちが伝えられるなら、それが欲しい」
「…」
私は自分のポケットから手帳とペンを取り出して自分の思いを記す。




それはたった2文字の言葉。





けど、私が先生に伝えたい、



本当の気持ち。






《好き》


手帳の見開きに、ペンを震わせながら書いた2文字。
先生は私に目線を合わせて、手を私の頬に添えました。
「好きになってくれて…ありがとう」
「… …はい…」






想いを伝えてから少しして、私は思いきって先生を部屋に誘いました。待つ間、念入りに掃除してお風呂で体を綺麗にして。
そして先生が来ました。
「今日はありがとうな」
「いえ、先生もわざわざありがとうございます」
「何を言うんだ。恋人の用事が大事に決まってるだろ」
「ひゃっ!… / / / 」
恋人と改めて言われると照れてしまいます。
「…こちらです」
「ああ」
私は奥の部屋のベッドまで先生に通しました。
「心愛…」
私と先生がベッドに腰掛け向かい合い、先生の顔と私の顔が近づいて








「…ダメっ」
思わず先生の肩を押して止めてしまいました。この前、好きって言ったのに。先生に、男の人に色んな事されちゃうんだ、って考えたら急に恥ずかしさと恐さが込み上げて、咄嗟に拒んでしまったのです。
「先生…その…すいません…」
「…心愛」
絶対に嫌われた。そう思うと肩が震えずにはいられませんでした。
先生はちょっと困った顔をしたけど、すぐに穏やかな表情に戻りました。
「…焦らなくてもいいよ」
「え?」
「時間はたくさんあるんだ。心愛のペースでだんだん恋人になっていこう」
「先生…」
「そうだな…。横になって良いか?」
「は、はい」
先生は私に訊いた後、ベッドに横になり、手招きをして私にも横になるよう促した。一人用のベッドだから近い距離で寝そべる事になる。
「手は繋げそう?」
「はい…」
私は自分の手を先生の手の指と絡ませるように繋ぐ。
「…こうしてるだけでも、恋人っぽいかな?」
「はい… / / / 」
「じゃあ楽しい事でも話そう。デュエルの事とか、初めてのデートは何処に行きたいとか。心愛の想ってる事、たくさん聴かせてくれ」
「… / / / 」コクッ
見つめ合う目と目、絡まり合う指と指、紡ぎ合う言葉と言葉。ずっとドキドキが止まらなくて、でもいつまでも続いて欲しいと思いました。




しばらくして―
「あの…先生」
「どうした?」
「もう…このくらいなら恐くないです」
私がそっと目を閉じると―




チュッ

唇に温かくて柔らかい、似た形のものが重なる、愛しい感触がしました。


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ター坊
皆さん、少々遅くなりましたが新年明けましておめでとうございます。
2018年最初の投稿はコメント欄で軽く言ってた心愛と遊路のなりそめ回になりました。新年一発目はDevil Dliverのカオス回でも良かったのですが、爽やかに甘酸っぱいテイストの感じにしようと思い、急遽こんな話に。楽しんでいただけたら何よりです。

それでは今年もどうか、よろしくお願い致します。 (2018-01-06 18:10)
tres(トレス)
改めて今年もよろしくお願いします。心愛さん幼少期の頃から苦労してたんですね、サニーアップ事務所が引き取らなかったらどうなってたことか…
遊路君の余裕っぷりは流石ですね、1人増えても何の問題もないって感じです。 (2018-01-07 23:18)
ター坊
tresさん、コメントありがとうございます。
基本、遊路が抱いた女性はみんな重たい過去持ちですね。
遊月→戦国時代の姫
美羽→いじめられっ娘
心愛→孤児院出身
ルナテシア→殺し屋
千春→DV受けてた社長夫人
それらを受け入れられる遊路のような大きい器の持ち主になりたいものです。
ちなみにあくまでも女として抱いたのは上の5名だけで、可愛がったり世話したり仕事の関係など(例:娘姉妹・詩音・穂香など)の交流をした女性の数は世界規模でかなりいます。 (2018-01-08 00:49)

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