第68話 解決への道　作：ヒラーズ

祭壇の下には、よく見ずともわかる、大人3人くらいの隠し扉があった。その扉の向こうには階段があり、暗くて奥までは見えなかったが、それなりの長さがあるように見える。
「私は夜目なので、明かりが無くても大丈夫ですが？」
「きゅ・・・（そうか、じゃあどこまで続いているのかは見えるか？）」
ノイエは暗い道を見て、俺に言った。
「10メートルぐらいまっすぐ続いていますね・・・その先は行ってみないとわかりません」
「・・・（行くしかない。俺が先頭に立つから、ノイエは後ろを警戒しながら付いてきてくれ）」
ノイエは首を縦に振り、答える。
「任せてください。いざ教会の地下探索です！」
「・・・（慎重に行くぞ）」
「慎重かつ大胆ですね？わかりました！」
「ふきゅぅ・・・（あ、はい。もうそれでいい）」
クォーツを除く俺の味方ってこんな奴しかいないんだ？




「・・・予想以上に暗いですね」
「ふきゅ・・・（急な階段じゃないようだが、足元に気をつけろ）」
「わかってます。後ろは今のところ異常はないですよ、そのまま行きましょう」
そこからしばらく階段をおり、俺達は扉を見つける。
「・・・（ついたな。扉があるが）」
「鍵は？」
うーん・・・見たところ・・・ないな。開けるか？
「待ってください、その前に人の気配がないか探ります」
俺達は黙り込み、近くに人がいないかを探る。
ノイエは扉に耳を当て、聞き耳を立てているようだ。
「・・・大丈夫そうですね、開けましょう」
「ふきゅ・・・（ああ、気をつけろよ）」
ノイエが扉を開け、俺が辺りを確かめる。
どうやら、地下なのに窓がある、奇妙な廊下に出たのだった。
「きゅ・・・（・・・なんかいよいよって感じだ。こんなもの現実にあるものなのか？）」
「なんですかここは？地下なのに窓がありますね」
俺は窓を覗き、窓の外を見る、照明だ。恐らく、地下でも昼夜の感覚を失わないように、もしくは長い時間ここにいることになっても狂わないような工夫といった感じか。
「ふきゅ・・・（ただの照明だ、時間の流れの感覚を失わせないようにしただけだろう）」
「という事は、この仕掛けがあることを気づかずに警察は調査を断念したという訳ですか？」
そういう事だ、犯人の目的が少し分かった気がする。
なにせこんな仕掛けに地下空間、証拠を隠すのにはもってこいの場所だ。ここに何か見られてはまずいものがあるかもな。
「・・・進みましょう。ここまで来たら引き返せません」
「・・・（当たり前だ、そしたらまた行方不明者が出る。ここで犯人を捕らえればいいが）」




コツコツと、俺達の足音だけが廊下に響く。息苦しい静寂の中、俺達は神経をとがらせ、奇襲を警戒しながら進んでいく。どこまで続くのかと心配した頃、廊下の右側に鉄の扉が見えた。
「？・・・これは？」
「・・・（パッと見作りは頑丈だが、鍵は見当たらない・・・開けれると思えば簡単に開けれるのだろうか？）」
「「・・・」」
物音は聞こえない、鉄の扉だからか？
「随分頑丈そうな扉ですが、何の扉でしょう？」
「きゅ・・・（分からん。開けてみないとな）」
・・・調べてみるか。手がかりがあるかもしれない。
「ふきゅ・・・（中を調べてみよう、手がかりがある可能性がある）」
「ですね。けど十分に警戒してください。何も聞こえませんでしたが、何かが潜んでいる可能性は捨てきれません」
ノイエが扉に手をかけ、俺が拳を構えて扉を睨みつける。いつでも刀剣を取り出せるようにし、拳銃の弾も装填させた。完全な戦闘態勢をとって、扉が開かれるのを待ち構えた。・・・だが、その構えは扉が僅かに開かれただけで解かれる事になった。
「！？」
「っ！こ、これは―――！！」ｹﾞﾌｯ！
僅かに開かれた扉から襲いかかってきたのは、臭いだった。これまで経験したことのない強烈な臭い。一体何がこんな臭いを放っているのか、何があればこんな僅かな隙間から、強烈な臭いが漂ってくるのか。
「ふきゅ・・・（ノイエ、お前さんは下がってろ。俺が開ける、俺が調べてくる）」
「待て」
ん？口調が変わった、人格が強制変更されたか。
「きゅ・・・（大丈夫だ、たぶんここに生き物がいない）」
「分かっている、私も行くぞ」
「・・・（お前さんは残って、誰か来ないか見張っててくれ）」
それを拒否するかのようにノイエは答えを返す。
「駄目だ、確認しなければいけない事がある。私の力が必要であろう？」
「・・・（・・・後悔するなよ）」
ゆっくり。ゆっくりと、重い扉が開かれていく。扉の向こうには暗闇が広がる石造りの部屋だったが、俺の頭上の灯が照らしてるおかげで、俺達には鮮明に中の様子が見て取れた・・・。
「「！！」」
俺達が見たのは死 体の山だった。ある者は積まれ、ある者は無造作に打ち捨てられ、朽ち、腐敗し、白骨化したものまである。それらは迷うこと無く、人間の遺 体だった。ここには生命の存在はなく、辺り漂うのは腐敗し朽ちた遺 体の臭いだけだった。
「・・・なかなかの悪い趣味だ」
「・・・（ああ、全くだ）」
死 体が放つ悪臭が、俺達を包み込む。見回すまでもなく、この部屋に生命はなかった。
「百騎兵、あれをみろ・・・」
「！（この4人は！）」
まだ死後間もないであろう、4人の男性の遺 体。チームマシンエリートのメンバー全員だった。
「目立つ外傷は無い・・・いや、首の後ろに何か強く殴られたような痕がある」
「きゅ・・・（遺留品か何か証明になりそうなものはないか？）」
「今探してる・・・む？」
「もきゅ？」
ノイエがマシンエリートのメンバーのうち一人の手に握られてものを手に取る。
「・・・（これは？）」
「・・・カードだ、血でぬれているがな」
このカードを見て、俺達は黙る・・・そして。
「ふきゅ・・・（ノイエ・・・）」
「なんだ？」
「・・・（武器を取り出せ）」



次回　感情
※タイトルが変わる可能性があります。