EP13　Ｌｅｇｅｎｄｉｎｇ　作：ター坊

大和の父親―遊路が自分の名を告げた瞬間、会場の空気が変わった。

三羽烏は―
「か、風峰遊路ってあの！？」
「デュエリンピック史上初のＶ２達成の他にも最年少１８歳でヨーロッパ･アメリカ･アジア･アフリカのリーグを制覇した…！」
「あ、ありえねぇ…なんだってこんな所に…」
幽霊でも見たように顔がみるみると青ざめガタガタと震え―

会場のチビッ子達は―
「すっげぇ！ほんものだぁ！」
「かぜみねプロがんばれー！」
「がんばれー！」
さっきまでの怯えようが嘘のように喝采と応援の嵐が巻き起こる―
当然、遊季都達とて例外ではない。
「そんな…あんな伝説のデュエリストが…」
「今も伝説を作り続ける…Ｌｅｇｅｎｄｉｎｇデュエリスト…そんな御方が目の前に…」
「あぁ…」
雑誌やテレビでこそ見たことがある伝説のデュエリストを前にして３人はその存在感に圧倒されるばかりである。
遊路は対峙する斉藤に話し掛ける。
「どうした？」
「お、おい。せ、世界チャンプがただの高校生を苛めて良いのかよ…」
「ん？勝負を吹っ掛けて来たのはお前じゃないか」
「い、いや…それはその…」
「全く。それじゃあ俺が悪役みたいじゃないか…」
怯える斉藤に困る遊路だが、少し考えて、ある提案をする。
「…よし。じゃあこうしよう。もしお前が勝てば今回の騒ぎは不問にする、というのはどうだ？それに１０００万くらいの小切手も付けよう」
「い、１０００万！？」
高校生には破格の賞金を聞いて斉藤の目の色も変わる。
「け、けどよ…チャンピオンとただの高校生がやるってならハンデとかよぉ…」
「ハンデか…。どのくらいだ？」
「俺のライフが２倍の１６０００、あんたが１００っていうのはどうだ？」
斉藤が提案するＬＰでのハンデはあんまりだった。これには会場からもチビッ子のズルいズルいコールが起こる。
「そんな…ライフ差がそんなにあったら、いくら風峰プロでも」
「どこまでも卑劣ですわ！」
デュエルモンスターズはライフが多ければ絶対有利という訳ではないが、さすがにそこまで差があると話が違ってくる。経過を見守る遊季都達も斉藤のハンデに呆れ果てるが遊路は違った。
「…少ないな」
「あん？さすがにチャンピオンでも無理か？」
「いや、お前のライフがな」
「何！？」
「２倍なんて遠慮するな。そうだな…運に任せてみるか？」
そう言って遊路はポケットから何か小さいものを取り出す。
「ほら」ﾋｭﾝ
「ん？サイコロ？」ﾊﾟｼｯ
「そのサイコロを振って目の数に１加えて１万を掛けたライフでどうだ？最低の１でもお前の要求のライフよりも多くなるぞ？」
「よし、後悔すんなよ？おりゃ」
斉藤がサイコロを投げた。

ｺﾛｺﾛｺﾛ…４！

「つまり５万って事か。こんだけありゃあ余裕だろ」
「よし。じゃあ俺が勝ったら買い占めたカードを店に戻す事。いいな」
「ああ。守ってやるぜ」
「よし、じゃあ始めようか」


「「デュエル！！」」
こうして他人から見れば無謀とも言える５００倍差ライフの賭けデュエルが始まった。

先攻:斉藤

「俺のターン、俺は『ライオウ』を召喚！さらに永続魔法『強者の苦痛』を発動し、カードを２枚セットしてターンエンドだ！」
斉藤の布陣はかなり手堅く、厄介なカードばかりである。それは遊季都達にも分かっている。
「『ライオウ』でサーチは封じられてるし、『強者の苦痛』で戦闘破壊するのも難しい」
「それにセットカードによる妨害もあるでしょうし…あんなのでもデュエル甲子園常連校…。やはり手強いですわ」
しかし、遊路は特に動じる事もなく自分のターンを始めようとした時だった。
「あっ、そうだ。店員さん！」
「は、はい！」
「俺、結構コイントス判定とダイスロール判定あるんでお願いできますか？それとマイクも貸して頂けるとありがたいんですが」
「はい！ただいま！」
店員は急いでステージに上がってマイクを遊路に渡し、審判としての位置に着く。
「じゃあ、改めて俺のターン、ドr」
「アンタのドローフェイズでドローする直前！罠カード『仕込みマシンガン』を発動！これでアンタの手札の枚数×２００、つまり１０００ダメージを受けて俺の勝ちだぁぁ！」
斉藤のフィールドに無数のマシンガンがせり出し、一斉掃射を行う。
「ああっ！」
「かぜみねプロ…まけちゃったの？」

会場のチビッ子達がどよめく中、掃射の砂塵が晴れていくと…

「おっと…。お楽しみはこれからだ。簡単に終わらせるなよ？」

遊路:LP 100→900

「ば、馬鹿な！？」
「俺はお前の『仕込みマシンガン』にチェーンして『護法の救世者(メシア)-ゴールド・ゴーレム∞(インフィニオン)』を捨てさせてもらった。これによって俺は８００ライフを回復し、このターンお互いに発生するダメージは０になるのさ」
「くっ！だがまだチャンスが…！」
「さぁ、あるかな？俺はフィールドにモンスターがいないことで『勇気の救世者-シグナム∞』を特殊召喚」
白い鎧を身に纏った聖剣士がフィールドに舞い降りる。
「『ライオウ』を使うか？」
「いや、スルーだ」
「そうか。ならシグナムの効果を発動。コイントスを行い…店員さん、お願いします」
「は、はい！」
店員はコインを投げる。

ﾁﾘｰﾝ…裏！

「裏が出た事で魔法・罠カードを１枚破壊する。そのセットカードを破壊」
「くっ、『魔法の筒』が！」
「さらに自分フィールドに救世者が存在する事でチューナーモンスター『誠実の救世者-タリス』を特殊召喚。コイントス効果を発動」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「１５００ダメージを与える効果だが、ゴールド・ゴーレムの効果で０になる」
「ふぅ…」
「安心するのは早いぞ？自分ライフが相手ライフの数値以下の場合、魔法カード『交差する運命(クロスオーバー･フューチャー)』を発動！このターンの通常召喚を放棄する代わりにシグナムとチューナーのタリスで融合とシンクロを同時に行う！」
「なっ！？」
シンクロの星の輪と融合の光の渦が重なり、オーロラのような輝きが発せられる。
「融合召喚、『叡智の真救世者-ユグドランＺ(ゼウス)』、シンクロ召喚、『運命の真救世者-ギアフェイト・Ｘ(クロス)・ドラゴン』！！」
１体は樹齢何千年と重ねた巨木の木龍、もう１体は機械の鎧や翼で武装した竜だった。チャンピオンが繰り出すエースモンスター軍団に会場のテンションは鰻登りである。
「うおぉぉ！スゲー！」
「テレビよりカッコイイ！」
「いけいけー！」
遊季都達はチビッ子達程キャーキャー騒がないが、生で見るチャンピオンのプレイングに興奮していた。
「あの一撃を凌いでここまで形勢を逆転するなんて…」
「それに先程まで怯えていた子供たちもこんなに笑顔に…。プレイングの的確さだけではなく、魅せ方も凄いですわ…」
会場の盛り上がりに遊路も声を上げる。
「さぁ会場のみんなー！このデュエルで出来るだけ俺のエースモンスターを出してやるからな！！ユグドランＺが融合召喚に成功した時、ターン終了時までフィールドのこのカード以外のモンスターの攻撃力は０になる」
ユグドランＺの木の葉から黄色の光の粒が柔らかくフィールドに降り注ぐ。
「さらにユグドランＺの効果発動。デッキをシャッフルし、デッキトップをチェック」

ﾋﾟﾗｯ『信念の救世者-ベルネッタ∞』

「モンスターカードの場合、その攻撃力の半分だけライフを回復」

遊路:LP 900→1600

「俺は『黄薔薇の救世者-フレンディー∞』をペンデュラムゾーンにセットし、１０００ＬＰを払って効果発動！」

遊路:LP 1600→600

「フレンディーを破壊し、デッキからスケール９の『赤薔薇の救世者-ラブリー∞』とスケール３の『白薔薇の救世者-ピュアリー∞』をペンデュラムゾーンにセッティング！揺れろ、未来を描く軌跡！俺を勝利に導け！ペンデュラム召喚！！」
天空に虹色の輪が現れ、そこから光の球となってフィールドにモンスターが降臨する。
「再び現れろ、シグナム、タリス！！シグナムの効果発動」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「これで『ライオウ』を墓地に送る。さらにタリスの効果」

ﾁﾘｰﾝ…裏！

「その手札を墓地へ！」
「『オネスト』が…！」
これで斉藤のフィールド・手札は『強者の苦痛』以外に何もない更地となった。
「そしてシグナム･タリスでオーバレイ！！２体の救世者でオーバレイネットワークを構築！エクシーズ召喚！！『闘魂の真救世者-ダイブレード・グレートＭＡＸ』！！」
エクシーズの光の渦から剣を携えた巨大なロボットが現れる。先程の展開から会場のテンションは上がりっぱなしである。

「すげぇ！かぜみねプロすげえ！！」
「メシアってカッコイイ！」
「ととさまー！！」

「バトルフェイズ！ギアフェイト・Ｘ・ドラゴンで直接攻撃！」
「おいおい。このターンアンタのゴールド・ゴーレムの効果でお互いのダメージは０じゃねぇのか？」

運命の真救世者-ギアフェイト・Ｘ・ドラゴン ATK 0　直接攻撃

「いや、意味はあるさ。続いてダイブレード・グレートＭＡＸで攻撃。その攻撃宣言時にオーバーレイユニットを１つ使って効果発動。デッキから１枚ドロー」
「だがダメージは０だ」

闘魂の真救世者-ダイブレード・グレートＭＡＸ ATK 2600　直接攻撃

「バトルフェイズ終了時、攻撃を行っても戦闘ダメージを与えられなかったギアフェイト・Ｘ・ドラゴンの効果をＬＰを半分払って発動」

遊路:LP 600→300

「これによりデッキをシャッフルした後にデッキトップ５枚をめくり、その中に救世者モンスターが３枚以上あれば次の相手ターンをスキップする」
「何！？」
ターン飛ばしという効果もさることながら、会場が驚かされたのはその直後の遊路の行動だった。
「さぁ！この中で俺の代わりにデッキをシャッフルしてめくってくれる子はいるかなー！？」
マイクで拡声されたその遊路の一言にチビッ子は我先に我先にと手を挙げ、声を張り上げる。
「うーん、じゃあ、そこのカッコイイヒーローのシャツを着た元気な男の子！お母さんと来てくれるかな？」
遊路が指名したのはギャラリーの端の方にいた親子だった。その親子はステージに上がって、遊路はしゃがんで男の子にマイクを向ける。
「こんにちはー」
「こ…こんにちは…」
男の子は遊路の顔を見て緊張しているのか、元気さはなりを潜めてしまっていた。
「お名前はなんて言うのかな？」
「けんと…」
「けんと君かぁ。じゃあシャッフルお願いね」
遊路はデュエルディスクからデッキを外し、けんと君に差し出すが
「… / / / 」ﾋｭｲ
母親の後ろに隠れてしまった。
「あれ？緊張しちゃったのかな？…じゃあ、申し訳ありませんがお母さん。シャッフルと５枚めくりお願いできますか？」
「えっ、は、はい…」
あくまでもデュエル中、あまり時間は割けないので遊路はけんと君の母親にデッキを渡す。母親はデュエルモンスターズには不慣れなのか、シャッフルの手付きがぎこちない。
「それではデッキの上から５枚お願いします」
遊路に促されてけんと君の母親がデッキをめくる。

『輝翼の救世者-プラチナ・ペガサス∞』
『救世の聖火』
『救世の鎮魂歌』
『決意の救世者-ラドー∞』
『青薔薇の救世者-ウェンダー∞』

「ありがとうございました。…さて、３枚含まれている為、次の相手ターンをスキップさせてもらう」
「だ…だけど、まだＬＰは５万もあるからよぉ…」
「そうだな。じゃあ俺はとりあいずこれでターンエンド。相手ターンをスキップして再び俺のターン、ドロー」
斉藤はターンを丸々スキップされた為、反撃はおろか一時凌ぎの一手のカードをドローすることすら許されない。
「…来たか。俺はセッティング済みのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚！」
先程と似た虹色の輪が現れるが、輝きはより大きくなっていた。
「手札より『奏笛の救世者-アルル∞』、そして顕現せよ俺が最強と信じるエース、『未来の真救世者-スキュルート Eternal Ace』！！」
天空から現れた虹色の翼を持つ女神。それは全てを包むような優しい微笑みを浮かべる。まるで遊路の勇姿を見守るかのように。
「エクストラデッキのフレンディーをデッキに戻して発動。コイントスを３回行う。店員さん、頼みます」
「はい！」
遊路に促されて店員は慌ててコイントス判定を行う。

ﾁﾘｰﾝ…裏！表！裏！

「表が出た回数だけ相手フィールドのカードをデッキに戻し、フィールドから離れた枚数分ドローする。『強者の苦痛』を戻して１枚ドロー」
斉藤は文字通りノーガードとなる。
「ユグドランＺの効果発動。デッキトップチェック」

ﾍﾟﾗｯ『無限の可能性(アンリミデッド・フューチャー』

「魔法カードの場合、それを手札に加える。そして、融合･シンクロ･エクシーズの救世者モンスターの効果によって手札にカードが加わった事でドライヴ条件を達成！！」
ユグドランＺが金色の魔法陣の光に包まれていく。
「これが風峰プロのドライヴ…」
遊季都だけでなく全員が遊路のドライヴ召喚に息を飲む。何と言っても遊路こそドライヴ召喚の発案者なのだ。
「ドライヴ召喚。『創造の真救世者(クリエイト・トゥルーメシア)-ハーモニクス・ドラフィニオン』」
ドライヴ召喚されたのは∞のマークのような翼を持つ巨大なドラゴンである。細身で一見女神とも捉えられる。
「ハーモニクス・ドラフィニオンの効果。このカードがモンスターゾーンに存在する限り、俺のフィールドの救世者モンスター全てに《自分モンスターゾーンの救世者モンスターの攻撃力・守備力は自分フィールドの救世者カードの枚数×１００アップする》効果を与える」
「そんな効果じゃ俺のＬＰは半分も削れないぜ」
「それはどうかな？」
「えっ？」
「確かに１００アップと見れば小さいかも知れない。だがしかし、それが複数回適用されるとしたらどうだ？」
「えっ…はっ！」
まず１体分で考えれば遊路のフィールドには救世者カードはモンスター５体とペンデュラムゾーンのラブリーとピュアリーの計７枚存在する。これで７００アップとなる。この全体強化効果が５体全てに備わっているのだ。
「よって俺のフィールドの救世者の攻撃力・守備力はトータル３５００アップ」
「えっ！？ちょ」
「さらに装備魔法『救世の十字架(ロザリオ)』をギアフェイト・Ｘ・ドラゴンに装備。アリアの効果発動、コイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…裏！

「このターン、俺は救世者を２回召喚出来るようになった。それと同時にアリアでドライヴ条件を達成！」
「何！？」
ドライヴ召喚は通常召喚のため、本来は１ターンに１度だが、一部の効果で召喚権を増やすことが出来れば連続ドライヴも可能なのだ。
「ドライヴ召喚を１ターンで２回も…」
「これが…私達が目指す頂のデュエル…」
絶体絶命の一撃のガード、融合･シンクロ同時召喚、ターン飛ばし、そして連続ドライヴ召喚と、ミラクルプレイの連発で会場の歓声が途切れる事はない。
「ドライヴ召喚、『純愛の真救世者(ラブハート・トゥルーメシア)-メルティエル』。メルティエルが天使族をドライヴ素材にしてドライヴ召喚に成功した事で効果発動。２回サイコロを振る」

ｺﾛｺﾛｺﾛ…３！５！

「サイコロ目の差分、よって２枚ドロー。当然メルティエルにもハーモニクス・ドラフィニオンの効果を適用。さぁ、バトルフェイズ！ダイレクトアタック！」

純愛の真救世者-メルティエル ATK 5900 + 未来の真救世者-スキュルート Eternal Ace ATK 6000 + 創造の真救世者-ハーモニクス・ドラフィニオン ATK 7000　直接攻撃

斉藤:LP 50000→31100

「のわぁぁ！」
「続いてギアフェイト・Ｘ・ドラゴンで攻撃するが、装備されている『救世の十字架』の効果で相手に与えるダメージは０になる」
「え！？」

運命の真救世者-ギアフェイト・Ｘ・ドラゴン ATK 6400　直接攻撃(ダメージは０)

「じゃあ…」
「ああバトルフェイズが終わればまたターンスキップの判定だ。その前にダイブレード・グレートＭＡＸでの攻撃宣言時にオーバーレイユニットを１つ使って効果発動。デッキから１枚ドロー」

ﾍﾟﾗｯ『友愛の救世者-エミュリン∞』

「ドローしたカードがモンスターだった場合、そのカードを見せることでその攻撃力を加える」

闘魂の真救世者-ダイブレード・グレートＭＡＸ ATK 7600　直接攻撃

斉藤:LP 31100→23500

「そしてバトルフェイズ終了時。ギアフェイト・Ｘ・ドラゴンの効果発動」

遊路:LP 300→150

遊路はマイクで話しながら会場を見渡す。
「じゃあ次は…そこの女の子！」
遊路が指差したのは遊季都達の二人程隣の女の子だった。その女の子とその姉と思われる女子高生くらいの女の子がやって来た。ステージに上がって来た女の子に遊路はマイクを向ける。
「お名前はなんて言うんですか？」
「たなか かなで です」
「かなでちゃんか。じゃあよろしくね」
遊路がかなでちゃんにデッキを渡すと
「あの…」
「お姉さん、どうしました？」
「あの…握手」
「ん？むしろ握手で良いのかな？」
「えっ、じ、じゃあ…その…ツーショットをインスタに…」
「いいよ」
「え」
そう言って遊路は肩を寄せるように近づく。
「ヒャアッ！」
「ほら撮るなら撮る」
「は、はい」
かなでちゃんのお姉さんは緊張で震えながらもスマホのカメラでパシャリと遊路とのツーショットを収める。
「ヤバイ、ヤバイ！ありがとうございました」
「じゃあ、今日のイベント、楽しんでいってね」
「はい！」
「かぜみねプロ~。できた~」
「あ、はーい。それじゃあそのまま５枚捲ってね」
かなで ちゃんは拙いながらもカードを捲っていく。

『護法の救世者-ゴールド・ゴーレム∞』
『金環の救世者-シエラ∞』
『銀麗の救世者-ミスリル・メイド∞』

３枚捲った時点で効果が確定してしまった。
「ありがとうね~。…よって次の相手ターンをスキップ！」
「ひっ…！チ、チャンピオンが一般人いたぶっていいのかよ…」
「デュエルモンスターズは誰もが楽しめるゲームだ。そこにチャンピオンだとかの立場は関係ないさ」
「あ、あ…」
「俺のターンはこれで終了。ターンスキップでまた俺のターン、ドロー。これでＴｈｅ Ｅｎｄだ。全てのモンスターでダイレクトアタック！」

純愛の真救世者-メルティエル ATK 5900 + 未来の真救世者-スキュルート Eternal Ace ATK 6000 + 闘魂の真救世者-ダイブレード・グレートＭＡＸ ATK 6100 + 創造の真救世者-ハーモニクス・ドラフィニオン ATK 7000　直接攻撃

斉藤:LP 23500→0

遊路の勝利に拍手と歓声が建物が割れんばかりに鳴り響く。
「ホントに５００倍差を覆しただ…」
「まさに伝説ですわ…」
「凄い…」
その圧巻のデュエルに遊季都達の手は震えていた。
「さて、じゃあ買い占めたカードを返してもr」
「ふざけんな！」
斉藤が逃げ出そうとした時だった。
「こら！」
「うわっ！」
「いってー！」
「ぎゃっ！」
三羽烏は警備員に取り抑えられてしまった。
「ありがとうございました」
「いえいえ、これが我々の仕事ですので」
「ど、どうなってんだ？」
「ちゃんと反省したら金を払って買い占めたカードを返してもらおうと思ってたが…逃げ出そうとしたから実力行使させてもらった、という訳だ」
遊路はそう言って懐から手帳なような物を出して開いて見せる。
「ＷＤＯ(世界デュエル機関の略)日本支部特別顧問の権限によって斉藤他２名をデュエルモンスターズのイベント･店舗の活動妨害及び暴行未遂の容疑で拘束する。…あと、今後こんな事が起きないように他への見せしめとして輝筑波高校のデュエル甲子園の出場資格を剥奪するよう委員会に進言するから、覚悟しろよ？」
「そんな…」
「そんな、じゃないだろ。デュエルはマナーを守って楽しくやる、この会場に来てる小さい子どもだって知ってる事を忘れたお前らの自業自得だ」
「くっ！」
「じゃあ警備員さん。一旦然るべき場所に」
「はい」
警備員がぞろぞろと三羽烏を連行する。
「それでは皆様、お騒がせしましたが、本来予定されていた子どもデュエル大会を再開したいと思います。今日は思いっきり楽しんでいきましょう！！」
遊路の高らかな大会再開宣言に会場が沸いたのは言うまでもない。