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第四話 小さな一歩 作:ぬる
リュウガ LP2900 デッキ:20 手札:1 モンスター: 魔法・罠:(セットカード) 墓地:9 除外:9
??? LP2400 デッキ:23
手札:2 モンスター:『クリボー』『サクリボー』『ジャンクリボー』『クリアクリボー』 魔法・罠: 墓地:8 除外:3
TURN08
少女「私のターン」手札2→3
少女「私は、『クリボー』、『サクリボー』、『クリアクリボー』の三体をリリースし、神を召喚する」
リュウガ「3体目の神!」
少女「現れよ! 『ラーの翼神竜』!!」
王城の遥か彼方。眩しく二人を照らす太陽から飛来する輝きが一つ。しかし、その姿はオブジェのような球体形で、おおよそ生命としての息吹を感じさせない。異質な姿であった。
ラーの翼神竜 ATK0
少女「『サクリボー』の効果により、カードを1枚ドロー」手札2→3
リュウガ(また手札を……)
少女「更に、私は『貪欲な壺』を発動。墓地の『クリボー』、『クリアクリボー』、『リチュアル・クリボー』、『オシリスの天空竜』、『オベリスクの巨神兵』の5体をデッキに戻し、カードを2枚ドロー」手札2→4
リュウガ(……何を引いた……?)
少女「私はラーの隠されし能力を発動。手札の『オベリスクの巨神兵』を墓地に送り、ラーよ、その力を得よ!」
リュウガ「何!?」
ラーに太陽の輝きが灯る。オブジェのような形態から隼のような、不死鳥のような姿に変形し、猛々しい翼をはためかせる。
ラーの翼神竜 ATK0→4000
リュウガ(……ラーにこんな能力があったとは……)
少女「バトル! ゆけ、『ラーの翼神竜』!」
リュウガ(……セットカードは『闇次元の解放』。これにより前のターンに除外した『トゥーン・ブラック・マジシャン』を帰還させれば……。いや、ラーにはモンスターを確実に除去する効果がある。その効果には『トゥーン・キングダム』でも対抗できない……)
クリボー「クリクリ―!」
リュウガ「……そうだな。ようやくお前の出番だ。頼む、相棒!」手札1→0 墓地9→10
トゥーン・クリボー「クリ!!」
少女「クリボー……しかし、神は止められない」
リュウガ「いいや、そうでもない。『トゥーン・クリボー』は『トゥーン・ワールド』が発動している場合、バトルフェイズを強制終了させる!」
太陽に雲が陰る。ラーはその輝きを失い、沈黙する。
少女「……よくぞ神の攻撃を凌ぎました。私はカードを1枚セットし、ターンを――」
リュウガ「リバースカードオープン! 『闇次元の解放』。除外されている『トゥーン・ブラック・マジシャン』を特殊召喚する」
トゥーン・ブラック・マジシャン「はっ!」ATK2500
少女「……ターン終了です」
心なしか、少女の顔に、愉悦――そういった感情が垣間見えたような気がした。
TURN09
リュウガ(……こんなに手強い相手と、しかも、神と戦えるなんて……。久しぶりだ、こんなに楽しいデュエルは……)
リュウガ(状況は絶望的、か。だが……絶対に勝つ! 決闘者として!)
リュウガ「俺のターン!」手札0→1
リュウガ(来た、最高のカード!)
リュウガ「俺は『強欲で貪欲な壺』を発動。デッキの上からカードを裏側表示で10枚除外し、カードを2枚ドロ―!」手札0→2 除外9→19
リュウガ「更に魔法カード『トゥーン・ネットワーク』! 墓地のモンスター、魔法、罠、3種類のトゥーンカードを除外することで、裏側表示で除外されているカードを全てデッキに戻し、2枚ドロー!」手札1→3
除外19→22→3 『トゥーン・エルフの剣士』『トゥーンのもくじ』『シャドー・トゥーン』
手札3 『トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール』『コミックハンド』『アメイジング・トゥーン』
リュウガ(……よし)
リュウガ「俺は『トゥーン・ブラック・マジシャン』の効果発動! 手札の『トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール』を墓地に送り、デッキから『トゥーン・オネスト』を特殊召喚!」手札3→2
トゥーン・ブラック・マジシャン「えいっ!」
トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール「バイバイシショー」
師匠が弟子に魔法をかける。「PON!」という軽い音がして白煙に包まれた後、天使へと変わっていた。
トゥーン・オネスト「ヨバレテトウジョウ!」
リュウガ「『トゥーン・オネスト』の効果により、自身を手札に戻す」手札2→3
リュウガ「更に装備魔法『コミックハンド』をお前のフィールドの『ジャンクリボー』に装備。その効果により『トゥーン・ジャンクリボー』としてそのコントロールを得る」
トゥーン・ジャンクリボー「クリッ!」DEF200
リュウガ「……バトル! 『トゥーン・ブラック・マジシャン』で『ラーの翼神竜』に攻撃!」
少女「……!」
リュウガ「手札の『トゥーン・オネスト』を墓地に送ることで、『トゥーン・ブラック・マジシャン』の攻撃力は『ラーの翼神竜』の攻撃力分上昇する!」
トゥーン・ブラック・マジシャン「はああっ!」ATK2500→6500
ラーの翼神竜 ATK4000
ブラック・マジシャンの魔法攻撃がラーに炸裂し、爆発。辺りは黒煙に包まれる。
煙が消え視界を取り戻したリュウガが見たのは、未だ健在の少女と太陽神の姿だった。
リュウガ「な……!」
少女「……攻撃宣言時に『クリボーを呼ぶ笛』を発動していました。その効果によりデッキから『クリボー』を手札に加え、戦闘ダメージを0にしたのです」
リュウガ「だが、ラーは破壊できたはず……! ――『サクリボー』――」
少女「そう。墓地から除外することで、モンスターの戦闘破壊を肩代わりする効果」
リュウガ「……『トゥーン・オネスト』は、わりと最後の策だったんだがな……」
リュウガ(後は次のターン次第、か)
リュウガ「……カードを1枚セットして、ターンエンド」手札1→0
TURN10
少女「私の、ターン」手札2→3
ハネクリボー「クリクリ」
少女(……もう終わりのようですね、マアトの羽根よ……)
ハネクリボー「……クリー」
リュウガ(……精霊? ハネクリボーか?)
少女「……『死者蘇生』。甦れ、『オベリスクの巨神兵』よ」
少女の呼び声に応じ、破壊神が復活を遂げる。
リュウガ「な……神が、2体……」
少女「そして、『真実の名』を発動」
リュウガ「なんだ、あのカードは……?」
少女「カード名を1つ宣言し、デッキの上からカードをめくり、宣言したカードであれば手札に加え、更にデッキから神1体を呼び出すカードです」
リュウガ(成功すれば神が3体――このターンで決着をつけるつもりか!)
少女(見せてくれるのですね、千年アイテム。そのカードを……)
少女(……いえ、これは……!)
少女「ぐっ――!」
リュウガ(なんだ!?)
クリボー「クリー!?」
少女「私の……私の名は……ぐ、ぐあああああぁあああああぉああああ!!!」
少女「真実の― ―名は ―― 」
ハネクリボー「クリーー!」
突如、空間が振動を始める。ゴゴゴゴ、と唸るような重低音が臓物を揺らす。
ピラミッドが、崩壊を始めていた。
モンスターたちの姿も靄のように消え、リュウガの視界に映ったのは、意識を失い床に横たわる少女の姿だった。
リュウガ「……おい!」
天井が崩れ、ピラミッドを構造していた岩石が降る。床に激突し、砕け散った岩片が散乱する。ここは危険だ。
リュウガ「…………おい!!」
反応はない。
リュウガは細心の注意を払い彼女の元まで辿り着き、その小さな体を背負った。
リュウガ「いくぞ、相棒」
クリボー「クリ!」ビシッ
ハネクリボー「……クリー……」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
崩れた壁から祭壇場を出て、来た道を全速で引き返す一行。
ピラミッドの中を徘徊していたモンスターたちも、光の粒となって蒸発するように消えていく。
リュウガ(存在そのものが消えていってるのか……早く出ないと俺たちもまずい)
ハネクリボー「ク、クリー!」サー
クリボー「クリクリ!」サー
リュウガ「大丈夫か……って俺もか!」サー
見ると、足元から幽霊のように存在が希薄になっていくのがわかる。
リュウガ「……! 光だ!」
通路の先に小さな点のような光が見えたかと思うと、刹那その光に包まれて意識が消えた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
――ねえ、ねえ」
――――起きて、ねえ」
――――――起きてってば!」
リュウガ「……ここは」
視界いっぱいに、少女の顔。とても心配そうな面持ちだ。
リュウガ「……お前」
クリボー、ハネクリボー「クリー」
リュウガ「……そうか。助けてくれたんだな、お前らが」
クリボー、ハネクリボー「クリ!」
灼熱の太陽の下。天気は快晴。広がる景色は一面の砂漠――
リュウガ「……大丈夫か?」
少女「うん。あなたのおかげで」
リュウガ(……さっきまでと雰囲気が……)
少女「クリボーから聞いたよ、助けてくれたってこと。ありがとう」
そう言って、無邪気な笑顔を見せる少女。
リュウガ「……どういたしまして」
少女「……あなた、名前は?」
リュウガ「俺はリュウガだ。……君は?」
少女「わたし? わたしは……わからないの」
◆ ◇ ◆
少年「……わからない」
◆ ◇ ◆
少女「……わからない」
少女「なにも、なんにもわからない。なにも憶えてないの」
少女「ねえ。わたし、どうしたらいいの?」
リュウガ「……お前の、名前」
◆ ◇ ◆
少年「ぼくの名前?」
???「ああ。リュウガ。どうだ?」
◆ ◇ ◆
リュウガ「……アズハ。どうだ?」
少女「……アズハ?」
リュウガ「ああ。お前の髪が、綺麗なピンク色をしているから」
少女「……アズハ――わたしの名前――うん」
◆ ◇ ◆
少年「――うん。ありがとう、▂▂▆▆▂█▀▀██▄▄ 」
???「……」
記憶の中のその人は、優しく微笑んでくれた。
◆ ◇ ◆
リュウガ(なんて、名前だったっけ……)
少女「――ありがとう、リュウガ」
リュウガ「……俺と一緒に来るか?」
少女「うん。一緒に行く」
クリボー「クリー」
ハネクリボー「クリ……グリ……」ウルウル
リュウガ「……はあ。さて、」
リュウガ「……行くか」
アズハ「うん」
青い空の下。二人はゆっくりと歩きだした。
★ ☆ ★ ☆ ★
これにて(ようやく)プロローグ終了です。これから二人がどんな道を歩いていくのか、少しでも長くお付き合いいただければ幸いです。
??? LP2400 デッキ:23
手札:2 モンスター:『クリボー』『サクリボー』『ジャンクリボー』『クリアクリボー』 魔法・罠: 墓地:8 除外:3
TURN08
少女「私のターン」手札2→3
少女「私は、『クリボー』、『サクリボー』、『クリアクリボー』の三体をリリースし、神を召喚する」
リュウガ「3体目の神!」
少女「現れよ! 『ラーの翼神竜』!!」
王城の遥か彼方。眩しく二人を照らす太陽から飛来する輝きが一つ。しかし、その姿はオブジェのような球体形で、おおよそ生命としての息吹を感じさせない。異質な姿であった。
ラーの翼神竜 ATK0
少女「『サクリボー』の効果により、カードを1枚ドロー」手札2→3
リュウガ(また手札を……)
少女「更に、私は『貪欲な壺』を発動。墓地の『クリボー』、『クリアクリボー』、『リチュアル・クリボー』、『オシリスの天空竜』、『オベリスクの巨神兵』の5体をデッキに戻し、カードを2枚ドロー」手札2→4
リュウガ(……何を引いた……?)
少女「私はラーの隠されし能力を発動。手札の『オベリスクの巨神兵』を墓地に送り、ラーよ、その力を得よ!」
リュウガ「何!?」
ラーに太陽の輝きが灯る。オブジェのような形態から隼のような、不死鳥のような姿に変形し、猛々しい翼をはためかせる。
ラーの翼神竜 ATK0→4000
リュウガ(……ラーにこんな能力があったとは……)
少女「バトル! ゆけ、『ラーの翼神竜』!」
リュウガ(……セットカードは『闇次元の解放』。これにより前のターンに除外した『トゥーン・ブラック・マジシャン』を帰還させれば……。いや、ラーにはモンスターを確実に除去する効果がある。その効果には『トゥーン・キングダム』でも対抗できない……)
クリボー「クリクリ―!」
リュウガ「……そうだな。ようやくお前の出番だ。頼む、相棒!」手札1→0 墓地9→10
トゥーン・クリボー「クリ!!」
少女「クリボー……しかし、神は止められない」
リュウガ「いいや、そうでもない。『トゥーン・クリボー』は『トゥーン・ワールド』が発動している場合、バトルフェイズを強制終了させる!」
太陽に雲が陰る。ラーはその輝きを失い、沈黙する。
少女「……よくぞ神の攻撃を凌ぎました。私はカードを1枚セットし、ターンを――」
リュウガ「リバースカードオープン! 『闇次元の解放』。除外されている『トゥーン・ブラック・マジシャン』を特殊召喚する」
トゥーン・ブラック・マジシャン「はっ!」ATK2500
少女「……ターン終了です」
心なしか、少女の顔に、愉悦――そういった感情が垣間見えたような気がした。
TURN09
リュウガ(……こんなに手強い相手と、しかも、神と戦えるなんて……。久しぶりだ、こんなに楽しいデュエルは……)
リュウガ(状況は絶望的、か。だが……絶対に勝つ! 決闘者として!)
リュウガ「俺のターン!」手札0→1
リュウガ(来た、最高のカード!)
リュウガ「俺は『強欲で貪欲な壺』を発動。デッキの上からカードを裏側表示で10枚除外し、カードを2枚ドロ―!」手札0→2 除外9→19
リュウガ「更に魔法カード『トゥーン・ネットワーク』! 墓地のモンスター、魔法、罠、3種類のトゥーンカードを除外することで、裏側表示で除外されているカードを全てデッキに戻し、2枚ドロー!」手札1→3
除外19→22→3 『トゥーン・エルフの剣士』『トゥーンのもくじ』『シャドー・トゥーン』
手札3 『トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール』『コミックハンド』『アメイジング・トゥーン』
リュウガ(……よし)
リュウガ「俺は『トゥーン・ブラック・マジシャン』の効果発動! 手札の『トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール』を墓地に送り、デッキから『トゥーン・オネスト』を特殊召喚!」手札3→2
トゥーン・ブラック・マジシャン「えいっ!」
トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール「バイバイシショー」
師匠が弟子に魔法をかける。「PON!」という軽い音がして白煙に包まれた後、天使へと変わっていた。
トゥーン・オネスト「ヨバレテトウジョウ!」
リュウガ「『トゥーン・オネスト』の効果により、自身を手札に戻す」手札2→3
リュウガ「更に装備魔法『コミックハンド』をお前のフィールドの『ジャンクリボー』に装備。その効果により『トゥーン・ジャンクリボー』としてそのコントロールを得る」
トゥーン・ジャンクリボー「クリッ!」DEF200
リュウガ「……バトル! 『トゥーン・ブラック・マジシャン』で『ラーの翼神竜』に攻撃!」
少女「……!」
リュウガ「手札の『トゥーン・オネスト』を墓地に送ることで、『トゥーン・ブラック・マジシャン』の攻撃力は『ラーの翼神竜』の攻撃力分上昇する!」
トゥーン・ブラック・マジシャン「はああっ!」ATK2500→6500
ラーの翼神竜 ATK4000
ブラック・マジシャンの魔法攻撃がラーに炸裂し、爆発。辺りは黒煙に包まれる。
煙が消え視界を取り戻したリュウガが見たのは、未だ健在の少女と太陽神の姿だった。
リュウガ「な……!」
少女「……攻撃宣言時に『クリボーを呼ぶ笛』を発動していました。その効果によりデッキから『クリボー』を手札に加え、戦闘ダメージを0にしたのです」
リュウガ「だが、ラーは破壊できたはず……! ――『サクリボー』――」
少女「そう。墓地から除外することで、モンスターの戦闘破壊を肩代わりする効果」
リュウガ「……『トゥーン・オネスト』は、わりと最後の策だったんだがな……」
リュウガ(後は次のターン次第、か)
リュウガ「……カードを1枚セットして、ターンエンド」手札1→0
TURN10
少女「私の、ターン」手札2→3
ハネクリボー「クリクリ」
少女(……もう終わりのようですね、マアトの羽根よ……)
ハネクリボー「……クリー」
リュウガ(……精霊? ハネクリボーか?)
少女「……『死者蘇生』。甦れ、『オベリスクの巨神兵』よ」
少女の呼び声に応じ、破壊神が復活を遂げる。
リュウガ「な……神が、2体……」
少女「そして、『真実の名』を発動」
リュウガ「なんだ、あのカードは……?」
少女「カード名を1つ宣言し、デッキの上からカードをめくり、宣言したカードであれば手札に加え、更にデッキから神1体を呼び出すカードです」
リュウガ(成功すれば神が3体――このターンで決着をつけるつもりか!)
少女(見せてくれるのですね、千年アイテム。そのカードを……)
少女(……いえ、これは……!)
少女「ぐっ――!」
リュウガ(なんだ!?)
クリボー「クリー!?」
少女「私の……私の名は……ぐ、ぐあああああぁあああああぉああああ!!!」
少女「真実の― ―名は ―― 」
ハネクリボー「クリーー!」
突如、空間が振動を始める。ゴゴゴゴ、と唸るような重低音が臓物を揺らす。
ピラミッドが、崩壊を始めていた。
モンスターたちの姿も靄のように消え、リュウガの視界に映ったのは、意識を失い床に横たわる少女の姿だった。
リュウガ「……おい!」
天井が崩れ、ピラミッドを構造していた岩石が降る。床に激突し、砕け散った岩片が散乱する。ここは危険だ。
リュウガ「…………おい!!」
反応はない。
リュウガは細心の注意を払い彼女の元まで辿り着き、その小さな体を背負った。
リュウガ「いくぞ、相棒」
クリボー「クリ!」ビシッ
ハネクリボー「……クリー……」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
崩れた壁から祭壇場を出て、来た道を全速で引き返す一行。
ピラミッドの中を徘徊していたモンスターたちも、光の粒となって蒸発するように消えていく。
リュウガ(存在そのものが消えていってるのか……早く出ないと俺たちもまずい)
ハネクリボー「ク、クリー!」サー
クリボー「クリクリ!」サー
リュウガ「大丈夫か……って俺もか!」サー
見ると、足元から幽霊のように存在が希薄になっていくのがわかる。
リュウガ「……! 光だ!」
通路の先に小さな点のような光が見えたかと思うと、刹那その光に包まれて意識が消えた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
――ねえ、ねえ」
――――起きて、ねえ」
――――――起きてってば!」
リュウガ「……ここは」
視界いっぱいに、少女の顔。とても心配そうな面持ちだ。
リュウガ「……お前」
クリボー、ハネクリボー「クリー」
リュウガ「……そうか。助けてくれたんだな、お前らが」
クリボー、ハネクリボー「クリ!」
灼熱の太陽の下。天気は快晴。広がる景色は一面の砂漠――
リュウガ「……大丈夫か?」
少女「うん。あなたのおかげで」
リュウガ(……さっきまでと雰囲気が……)
少女「クリボーから聞いたよ、助けてくれたってこと。ありがとう」
そう言って、無邪気な笑顔を見せる少女。
リュウガ「……どういたしまして」
少女「……あなた、名前は?」
リュウガ「俺はリュウガだ。……君は?」
少女「わたし? わたしは……わからないの」
◆ ◇ ◆
少年「……わからない」
◆ ◇ ◆
少女「……わからない」
少女「なにも、なんにもわからない。なにも憶えてないの」
少女「ねえ。わたし、どうしたらいいの?」
リュウガ「……お前の、名前」
◆ ◇ ◆
少年「ぼくの名前?」
???「ああ。リュウガ。どうだ?」
◆ ◇ ◆
リュウガ「……アズハ。どうだ?」
少女「……アズハ?」
リュウガ「ああ。お前の髪が、綺麗なピンク色をしているから」
少女「……アズハ――わたしの名前――うん」
◆ ◇ ◆
少年「――うん。ありがとう、▂▂▆▆▂█▀▀██▄▄ 」
???「……」
記憶の中のその人は、優しく微笑んでくれた。
◆ ◇ ◆
リュウガ(なんて、名前だったっけ……)
少女「――ありがとう、リュウガ」
リュウガ「……俺と一緒に来るか?」
少女「うん。一緒に行く」
クリボー「クリー」
ハネクリボー「クリ……グリ……」ウルウル
リュウガ「……はあ。さて、」
リュウガ「……行くか」
アズハ「うん」
青い空の下。二人はゆっくりと歩きだした。
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これにて(ようやく)プロローグ終了です。これから二人がどんな道を歩いていくのか、少しでも長くお付き合いいただければ幸いです。
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