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風に誘われ流されて/第2話:関わりの誕生 作:風邪


俺は今どこにいるのだろうか。辺りを見渡しても木、木、木。…それは森じゃないかって?
そんな事分かってる。違うそうじゃない。「ここはどこの森なんだ」って俺は言っているんだ。

「俺は確か自分の部屋で眠ってそれで…」

そこからが思い出せない。何故俺は森にいる?意味が本当にわからない。携帯で位置情報を確認したかったが当たり前というかなんというか、圏外だった。

「誰かー!誰かいないかー!」

大きな声を出すも返事はない。俺は徐々に心配になる。そんな中、俺は何かの音を聞き取った。いや音ではない。それは声だった。

「…か…!た…け……!」
「…!誰かいるのか!?」

場所が遠いのだろうか、よく聞き取れない。俺は声が聞こえた方へ向かった。

「誰か…!助けて!」
「あ?…!?!?」

俺は声の元にたどり着いた。いやその言葉は語弊があるか。近くに着いただけだ。声の元は「動いている」。助けを求めてる少女を見て、俺は戦慄した。

「なんだよ…あれ!?」

声を上げている少女が化け物みたいな顔だって?なら多分100倍マシだろう。走っている少女の後ろには巨大なサソリにような化け物が後を追いかけているのである。

「…はっ!オイオイオイ、やべー奴だわこいつ…!」

我に帰った俺は、恐怖を打ち殺し化け物一直線に走り出した。

「嫌…!嫌ぁ…!!」
「キシャアアア!」

ハサミで器用に少女を挟み、口へ運ぼうとする化け物。完全に無防備になったその一瞬、俺はそいつの腹部を蹴った。だがその化け物は硬く、蹴った俺の方が痛かった。

「ーーー!痛っーーー!!」
「きゃ!」

いきなりの攻撃に驚いたのだろう。挟んでいた少女を地に落とした。それと同時に化け物はこちらを向く。

「…あ、ども…。いやいやいや悪意はないんです悪意は!」

人間の言葉なんて伝わらないだろうに、焦りまくった俺は何を思ったか弁明を始めた。

「キシャァァァ!!」
「ちょちょちょ待ってください!お願いします!待って助けて!待って!!うわあぁ!!」

終わった…食べられる。そう思った。その時だった。

「天の風、今ここに舞い降り全てを切り裂け!!速攻魔法!サイクロン!!!」

急に強烈な風が化け物を纏ったかと思うと、たちまち化け物の甲殻に傷がついた。

「キシャァ!」

化け物は一度叫ぶと、素早くそこから逃げ出した。

「はっ…はっ…助かった…?」
「あの、怪我はしてないですか?」

先程の少女が心配そうにこちらを見ている。特に怪我はないと伝えると安心した顔になった。

「よかった…!あの、助けてくれてありがとうございます!」
「いやいいよ。それにしてもあの化け物は一体…?」

俺が化け物について聞くと、少女は語り始めた。

「あれは聖獣セルケト。本来は王家の神殿を護る聖なる者の筈なんですが…。どういう事か王家の神殿から遠く離れたこの地で暴れていたんです。どうにか鎮めようとコンタクトを試みたら…あの様に追われてしまって…」

正直聖獣セルケトがなんなのかは分からないが、とりあえず何故追われていたかは分かった。

「…まぁ、食べられなくて良かったな。…あぁ、そうだ。ここってどこなんだ?」
「…」

少女は黙っていた。俺はその様子を見て疑問を抱いた。

「なんで黙ってるんだ?」
「…いずれ分かる事です。これで関わりができました。また後で会いましょう、風村遊さん…」
「!?おい待て!なんで俺の名をー」

そこで俺の視界は真っ白になった。気がつけば俺は自分の部屋にいた。否、今のはただの夢だったのだ。

「…。夢オチなんてサイテーってか?ハハ…」

独り言を呟き、ベットから起き上がろうとする。すると足に激痛が走った。それだけじゃない。眠っていた筈なのに体がとても疲れていた。

「…?」

激痛が走った部分を見る。どういう事か、足の甲が青くなっていた。奇しくもそこはあのセルケトを蹴った所と一致している。俺は恐ろしい気分になった。背筋が凍る様な感覚を覚えた。俺は急いで朝飯を食べ、家から出た。

ーーー

学校のチャイムがなる。それと同時に終わるテスト。出来は上々、多分いい点取れただろう。

「ふっふっふ…」
「どうした和也?」

和也が不敵な笑みを浮かべながらこちらに歩み寄ってくる。一体何をする気なのだろうか。和也が口を開いた。

「赤点、ゲットだぜ!」

和也の満面の笑みが、逆に虚しさを誘った。

「うぇーい!5問しか解けなかったぜ!」
「うぇーい!…じゃねーよ、何してんだよお前は」

こいつの気楽さにはいつも困っている。とはいえ、話のネタが尽きないので別に構わないのだが。

「部活行こうぜ〜!絶対次の大会はスタメンになるんだ〜!」
「…はぁ。無理だと思うんだがな…」
「にゃにおう!?自分はスタメンだからって調子乗るなよ!」
「いやポジションすら確立できてない奴が何言ってんの…」

そんな会話をしながら部室に向かう途中、背後から誰かが近づいてくるのに俺は気が付いた。

「…?」

俺は気になって後ろを振り向いた。その瞬間俺の目の前は真っ暗になった。

「…!?」
「だーれだ!」

女性の声だ。俺はこの声を知っている。あまりにも聞き慣れた声。なぜか?それは…

「オイ、美兎。今すぐ手を離せ」
「ヤダ、先輩怖〜い!」

こいつの名前は桜井美兎。俺の後輩であり、部活のマネージャーでもある。

「あのなぁお前なぁ俺はなぁー」
「先輩なんだぞっ!ですよね!」

腰まで伸びた髪を揺らしながらこちらを見つめる眼は綺麗な紅色をしている。こいつはいつもこうだ。人を小馬鹿にしている。

「わーお、遊君モテ期?」
「茶化してんならぶっ飛ばすぞ和也…」
「マジトーンでいうなよこえーよ」

こうして俺はもう一人増えたお荷物を抱えながら、部室へ向かった。

ーーー

「えー明日の練習だが、先生がいないのと来れるメンバーが数人しかいないのでやりません!以上!解散!」
「「「お疲れ様っしたー!」」」

部活も終わり、手早く帰る準備をする。そうしていると必ずやって来るのが和也と美兎である。

「おーい遊!帰りに飯食わね?」
「先輩も来ましょ?」

正直、めんどい。自分の作った飯の方がまぁまぁ美味しく感じるし、何より金払うのが面倒だ。

「えーやだ」
「んが!ノリ悪いぞお前!そこはな、私も連れてって下さい和也様〜だろ!?」
「…」
「和也さん?先輩黙っちゃいましたけど?」

仕方がない。ここは行くとしよう。

「しょうがねえから行ってやるよ。代わりにお前奢れよな」
「あぁ。…あぁ!?待て待て待て!」
「マジで!?奢ってくれんの!?ありがと〜!!」
「ちょい待て!…クソ〜、借りは返せよな!」

こうして俺らは近場のハンバーガーショップに向かった。

「…先輩」

突然美兎が話しかけて来た。しかもかなり真剣な様子。俺は返事をし、続きを待った。

「先輩に言うのは間違ってるかもしれませんけど、実は今日…すっごい変な夢を見たんです…」

変な夢…そう言われた時、俺は自分が今朝見た夢を思い出した。

「…奇遇だな。俺もだ」
「…やっぱりですか?」

俺は思わずおうむ返しした。やっぱり?どう言うことだ?何故こいつはそう言えるんだ?美兎は真剣なトーンで続けた。

「実はその夢の中に先輩が出てたんです。なんか…こう、でっかいサソリみたいな奴にケリを入れていたのを覚えています。もしかしてですけど、先輩の夢では…」
「あぁ。俺はそのサソリにケリを入れた。…どう言うことだこれは?」

奇遇も奇遇。俺が見た夢をこいつは「別な視点」から見ていたのだ。俺はアレが本当に夢だったのか疑わしく思った。

「…先輩」
「気にすんな。どうせ夢だ夢。そう言うことだってあるさ」
「でも…。…やっぱりいいです。これ以上は言わないでおきます。先輩、そう言うの好きじゃないですもんね」
「まーな、超常現象とかそう言う類は嫌いだ」

別段理由があるわけではない、ただ嫌いなだけ。何故かは自分でも分からない。こう言うと大抵変な奴って言われるのだが、こいつらはそれを理解してくれている。そこだけは感謝している。

「…なぁ遊。」

今度は和也が声をかけて来た。

「何だ?」
「あれ…何…?」

和也が指した指を震わせながら聞いて来た。その指が指す方向には、今までに見た事の無いような生き物がいた。

「…は?」
「え…?」
「おい…」

その生き物が何をしているか。俺たちは一瞬で分かった。…分かってしまった。辺りに漂う血生臭い匂い。目の前には口から血が滴る生き物。尻尾が生え、翼が生えた生き物。昔調べたことがある。手が翼と一体化し2足で立つその姿はまさしく…

「ワイバーン…!?」

白と黒が輝くその飛竜は、こちらに顔をを向けた。こちらの存在を認識したらしく、威嚇している。

「は?ふざけんな!ワイバーン…というか竜なんてあくまで空想上の生き物だろうが!」
「あの見た目…俺知ってる!エクリプス・ワイバーンだよ!スゲー!」
「感心してる場合ですか!?あれ人食ってますよ!!私達…食べられるかも知れないんですよ!?」

そうこうしているうちに俺たちの目の前にそいつはやって来た。俺たちは恐怖で固まってしまった。

「グルルル…!」
「…はっ!逃げろ!!」

俺の声と同時に全員一斉に走り出した。和也は裏路地に、美兎は大通りに、俺は奴の股下を潜り抜けその先にある商店街に。それぞれが散会して逃げた。

「は…は…!クソ!何なんだよアレ!」

後ろを確認し、追ってきてないことを確認した俺はその場に座り、息を整えた。

「俺じゃないって事は…裏路地に逃げた和也が危ねえかもしれねえ…いや、あいつなら逃げ切れるだろう。運動神経は良くないが地理的有利はあいつにある。美兎は…大通りに逃げたのか!?あのバカ!被害を拡大するつもりか!?」

俺は急いで来た道を戻り、大通りに向かった。

「…?」

俺は大通りに出た。だがそこには美兎がいない。混乱する人々もいない。さっきのエクリプス・ワイバーンはこっちに来なかったのだろうか?

「美兎!?オイ美兎!!」

俺は美兎の名前を叫び、存在を確認する。返事がない。もう一度叫ぶ。それでも返事がない。
ふと、俺の肩に何か落ちて来ている事に気付いた。俺は上を見上げた。

「グルルル!ガゥ!」

そいつの口から血が滴っていた。先ほどのワイバーンだった。
そいつはビルの上からジャンプすると、俺の目の前に落ちて来た。いや、降りて来た。俺を食うために。

「…う!」

俺はそいつを見て戦慄した。そいつの口に挟まっているのは肉塊と化した見慣れた顔だった。
…美兎だ。逃げきれなかったのだろう。無残にも食われ、醜い姿へと変貌していた。

「そんな…嫌だ、死にたくない…待ってくれ…!」

必死に命乞いするも相手は竜。多分聞いてないだろう。

「グゥアァ!!」
「う、うわああ!!」

死んだ。そう思った。だが…

「ツインサイクロン!」
「ガウアァ!?」

どこかで聞いた声が、俺を助けた。

「…!?」
「お怪我はありませんか…遊さん」

この声は…夢で聞いた。それだけじゃない。昨日の夜、自分の部屋で聞いたあの声とも一致している。声の主はどこからともなく姿を現した。緑の髪、緑の眼、更に時代に合わない大きな杖を持った少女。どこかで見た。それは…

「風霊使い…ウィン…?」

次回に続く

ー次回予告ー

遊「次回!風村遊死す!デュエルスタンバイ!」
ウィン「死なないで下さい!!!ストーリー的にまずいです!!!」
遊「…」
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