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遊戯王 HEROS ―リ・ブート― /第五話・Mとサイコデュエリスト 作:でんでん

  遊李は以前の言葉を想起しながら、何故自分はこんな問題に巻き込まれているのだろうか、そもそもMってなんなんなのだろうか、いちいち呼ぶのが恥ずかしいじゃないか、いやもうその呼び名が恥ずかしいじゃないか、というような身もふたもないことを夢うつつのようにぼんやりとした頭で考えていた。頬杖をつきながらぼんやり彼が黒板を見つめていると、如月がばん、と机に書類を叩きつける。

「……なんだこれは」
「Mの資料よ。貰ってきた」
「なんで、やる気満々なんだお前は」
「まあいいじゃない。面白そうだし、わくわくするわ」
「……お前、そういえばミステリー好きだったな」

 そう、如月はミステリーの大ファンなのである。「デュエルドームの事件~三万五千人の目撃者」や「ドロー探偵・コウヤの事件簿二十七回~VSタイミングを逃れた犯人~」、更には「青眼の匣」など、怪しいような面白いような、微妙な範囲のキワモノドラマを特に好んでいた。

「で、目当てはついたのか」
「なーし……と云いたいけど、そうでもないんだな。これ、容疑者リスト」
 容疑者リスト、と云うどこから入手したのか判らない判が押された紙を、机の資料の上に重ねた。

「デュエル・レコードの戦績表と成績を比較して、明らかに差のある人間をリストにしたものよ。まず、仮説としてMは身を隠す手段としてランクの下位から中位に位置していて、疑いを避けるよう企ててると考えた。でもMはプライドが高く支配欲の強い性格だと予想されている。だから成績だけでも実力を誇示していると思うから、成績が良く戦績の悪い人間を並べたのよ」
「安直過ぎないか。もし成績も低くしていたらどうする」
「まああり得るけど、取りあえずはこの仮説を元に犯人を探った方が良いわ。いずれにせよ、Mは完璧に証拠を隠しているから探しようがない。あてもなく無闇に探すよりは、こういう風にある程度絞った方が楽だもの」「一理あるな。で? その差っていうのはみんな同じくらいなのか?」
「まあ筆記だけレベル高いって人は多いしね。でも金が足りないとかカードが足りないって可能性はないと思ってる。この前のデュエルでわかったでしょ、レンタルデッキは強いのよ。優秀なタクティクスを持つ人物なら、上位を狙えるほどに。だから容疑者の中でも、タクティクスとカード知識が抽んでている人物を探したら……当てはまる人物は、こいつだけ」

 もったいぶったようにそう告げて如月が指した場所には、「河原秋彦」と書いてあった。一応個人情報は秘匿されているようで、成績と戦績の差を百点満点で評価しており、彼の数値は……94点。適当に見積もっても、成績はトップ10、デュエル・ランキングではワースト30位くらいの違いがあるだろう。

「あやしっ」
「だから言ったでしょ。しかも一年よ? 一年でこの成績よ。ありえないでしょ。デュエルに慣れてないような人間も混じってる一年でこの差」
「まあすごく怪しいな。どうするんだ」
「もちろんデュエリストなら、直接アタックよ」
「うまくねえよ」
 ばかばかしい会話を交わしている時、「ゆうりー」と言う声がした。振り返ると、遊李を訪ねる者がいる、とクラスメイトが言った。誰だろう、と訝しみながら入り口に近づく。そこに立っていたのは……。

「あ、この前デュエルドームで倒れてた……」
「どうも、先輩! 俺、滝沢天満(たきざわ てんまん)です!」

「せ、先輩? 俺は一年だよ」
「俺、飛び級なんですよ! でもやっぱり実力的にはまだまだで……あの不良に新しいタクティクスのデモンストレーションをするから俺とデュエルしろ、って言われて着いていったらあのザマ……情けないです」
「そりゃ災難だったな。で、どうしてここに来たんだ」
「もちろん、お礼ですよ。それに、あいにく気絶していてデュエルの様子を見られなかったので、俺とデュエルしていただきたいな、と……」

 遊李は実に困った、というような表情をした。こういうすぐにデュエルに走るデュエル至上主義的な人物は、「体育会系」と呼ばれる。

「わ、悪いが今忙しいんだ。ちょっと人を探しててな」
「誰ですか? 俺で良ければ協力しますよ!」
「えっと、河原秋彦ってやつ」
「ああ、秋彦ですか」
「えっ、知ってるの?」
「アカデミアには特待生枠が三つあるじゃないですか。筆記試験の優秀者、デュエルの優秀者、両方の優秀者、それぞれが任意でアカデミアに一年早く入れるんですよ。俺はデュエル、秋彦は筆記の優秀者なんです」
「な、なるほど……」
「でも、合わないほうが良いですね。あいつ、とってもイヤミな性格で、自分の知能を鼻に掛けた、傲慢な野郎なんですよ。そのくせ先生の前では勤勉を気取ってて」
「嫌われそうだなそいつ。まあとにかく、紹介してくれないか」
「いいですよ。じゃあ明日の放課後、どうですか? ついでに、俺ともデュエルを!」
「デュエルはともかく、明日の放課後、そうだな、お前の教室まで行くよ」

 遊李は苦笑いをしてそう言うと、滝沢に別れを言って自分の席に戻った。
 特待生。彼はその言葉に嫌悪感を抱いていた。正確に言えば、特待生への嫉妬や恨みというよりも、特待という制度と自分の間にあった過去の事件を思い出して、不快さを感じている、と言った方が適当だった。かといって、特待生という存在自体に何も感じていないと言えば嘘になる。彼が特待生に対して感じているもの――それは、言うなれば負い目に近い類の感情である。

「なんでお前までついてくるんだ」
 遊李はそう言うと隣に居た如月の肩をとん、と小突いた。
「だって、私も依頼されたようなもんだもん! 書類渡されたってことはこの捜査に参加していいってことだろうし」
「はぁ……危ない目にあっても知らんぞ」
「危ない目?」
「あんな、Mって言うのは学校規則どころか、下手すりゃ法律に触れるギリギリの行為を行ってるんだぞ。デュエル法律第十二条、公的機関並びに教育機関に於いて、認知されないところで代行デュエルを行うことは禁止とす。代行デュエルは詐称罪にも等しいんだ」
「わかるけど……」
「そんなのを大胆にやる野郎なんざ、ほとんど犯罪者同然。何するかわからんぞ。もしかしたら裏社会の人間を引き連れているかもしれない……」
「や、やめてよ」

 不安げに見つめる如月を遊李は心底心配しつつ、溜息を付いて彼のクラスへ向かった。が、彼はどうやらデュエルドームに行ったようで、困り果ててそのまま彼はデュエルドームへ向かった。

「なんだか嫌な予感がするぞ……また倒れてるんじゃないだろうな」
「まさか」

 彼らがデュエルドームに到着すると、そこでは口論のような声が聞こえてきた。一人は少年らしい、明るく快活な声。滝沢である。もう一人は、陰湿で、厭味ったらしさが溢れている声。

「滝沢と……河原秋彦か?」

 せーの、と二人でデュエルドームの扉を開けると、そこには今にも喧嘩寸前、といった様子で滝沢と瓶底眼鏡を掛けた男が睨み合っていた。背は小学生ほどで縁の厚い丸メガネを掛けており、髪は緑のおかっぱで、気持ち悪いほど制服をきっちり着込んでいた。

「だーかーらー、先輩は……」
「ひょう……」
「おいおい、何やってんだ、やめろ」

 遊李が止めに入ると、滝沢が素早くこちらを向いて、顰め面をした。

「先輩。こいつ、先輩とデュエルさせてくれって言って聞かないんですよ」
「なんだそりゃ。それでなんで喧嘩になる」
「だって、先輩デュエルが目的じゃないでしょ。時間がないんだから、いちいちデュエルしてたらきりが……

 自分が言えた口か、と思いながら河原秋彦dを見る遊李。どうやら嫌味な性格というのは本当のようで、声もそうだが、顔からしていやみったらしい感じが漂っている。優等生、と思い込んでるのか微笑みを浮かべているが、どうも口角が引きつって嘲笑にしか見えない。

「……伯浪君ですっけ? 僕とデュエルをしてください」
「お、おい。滝沢の話を聞いてたか。今からするっていうのは……」
「探してるんでしょ、M」

 全員の顔が一斉にこわばった。如月が滝沢を鋭くねめつけるが、滝沢は知らない、といった様子で首を振る。

「やだなあ。そんな怖い顔しないでくださいよ。ただ、ちょっとしたツテがあってね」
「ツテ? どんなツテだ」
「言えないツテですよ。まあ僕はMなんて関係ないですからね。やましいことはないですが……ただ、伯浪君は確か……デュエルにまつわる不思議な力がある、と聞いて興味が湧いたんですよ」

 遊李の顔がいっそうこわばった。まさか、こいつは自分のことを知っているのか……そんな不安が脳裏をよぎる。いやみったらしい笑いを更に歪めながら、秋彦はふうとため息をつき、ふいに如月の方へ左手をかざした。

「取引をしましょう。僕とデュエルをすれば、先輩にMのことを教えてあげましょう。その代わり、デュエルを断ったり、僕に負けたりしたら……」

 彼が限りなく残酷な笑みを浮かべた瞬間のことだった。如月の体が突然中に浮き上がる。如月が悲鳴を上げ抵抗をする間もなく、彼女は空中に吊り下げられ、同時に滝沢の体はデュエルドームの壁際まで吹き飛ばされた。

「ッ!? おい、お前!」
「……伯浪、遊李。僕も、サイコデュエリスト、だよーん」

 河原がふざけたポーズで遊李を挑発する。しかし、遊李の視線は如月と滝沢の方にしか向いていない。と、次の瞬間、遊李の体がビクン、と大きく痙攣したかと思うと、彼の眼が徐々に白濁していき体から力が抜けていく。彼の独特の赤い髪が熱にあてられたようにかすかに震えだした。

「……お前もか、サイコデュエリスト。最近多いな」
「ヒャッヒャッヒャ、いろいろあるんですよ、僕らにも。さあ、はじめましょう。デュエルドームの電源は入れてあります」

 彼がそう言って人差し指を動かすと、ソリットビジョンが起動する

「さあ、はじめましょう。デュエルを……」

 河原は歯をむき出しにして笑う。そんな彼に対し、遊李は同じ人格とは思えないほど冷たい視線を向けながら、静かに懐からデッキを取り出していた。

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でんでん
申し訳ございません。こちらはテスト投稿となります。 (2017-10-09 17:15)
でんでん
テスト投稿終了いたしました。久しぶりの投稿となります。短いですが、お楽しみいただければ幸いです。 (2017-10-09 17:22)

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