【完結】虹彩竜と歩むもの【お知らせあり】/第64話:結束 作:光芒







(……わかってはいたが、俺たちは即席のチーム。故に仲間の絆ではあちらに劣るか)

 遊大たちがチーム・セントラルとしての結束を再確認しているのと同じ頃、チーム・ユニオンの面々は同じように控室で交流戦開始の時を待っていた。
 しかし、その控室ではほとんど会話はない。いつの間にかチームのまとめ役になりつつあった遊誉はこのチームの結成からの日の浅さを兼ねてより危惧していた。
遊大たちチーム・セントラルは入学から3か月近くを同じ屋根の下で過ごしており、また仁と礼が兄妹ということもあってか、男女と性別は異なりながらも日々一緒にいるのが当たり前のことになりつつあった。
 だが、四校からそれぞれ選抜されたチーム・ユニオンは北日本、東海、西日本、南日本と学び舎が非常に離れている。そのため日常的に会うこともなく、遊大たちと違って絆や結束を育むことができなかったのだ。

「風見君」
「風見さん……」
「深山、羽々斬……」

 それでも皆が皆非協力的なわけではない。チームの一員として、今一番大事なことは何かを理解している者は遊誉だけではなかった。
 チームとは、皆が志を同じくし、同じ方向を向いて初めてチームたり得るもの。志を共にしないチームとは、チームではない。それは烏合の衆に過ぎない、ということを若葉と涼夏は理解していた。

「私たちは個々の腕では負けていない。けど、意志が統一できていないと勝てるデュエルも勝てない……」
「ああ。だが、この状況をどうまとめるか。流石の俺でも思いつかない」
「皆さん目指すべきところは同じはずなのに……」
「全くだ。俺たちの目的は……そうだ。そうだった」

 涼夏の一言を受けて遊誉は何かを思いつく。彼は咳払い一つすると、部屋の真ん中に立った。突然部屋の真ん中に立った遊誉に対する個々の反応はまちまちだった。
 琥太郎はそんな彼を不満そうに睨みつけ、青葉はスケッチをするペンを止め、彩奈は何か面白そうなものを見るように見つめる。刃弥に至っては興味すら示していないようであったが、何処か聞き耳を立てている。そんな様子だった。

「皆、いいか。俺の話を聞いて欲しい」
「なんだお前。いつからリーダー気取ってんだ? サウス校の代表さんよ?」
「一文字君……!」
「ああ。こうして皆をまとめようと動く俺はもしかしたらただリーダーを気取りたいだけなのかもしれないな。それでも言わせてもらう。この交流戦―――俺たちは負ける」

 負ける、という言葉に反応する琥太郎と刃弥。女性陣に比べてやはり男性陣の方が勝ち負けに対する感情は熱いようだ。しかし、聞き分けの良さそうな女性陣に比べて非協力的な姿勢を見せていたこの二人が動いたことは遊誉にとっては好都合だった。

「……負けるだと? 俺たちが?」
「ふざけんな、なんでお前にそんなことを言われなきゃいけねーんだよ!!」
「俺だってそんなことを断言したくはない。だが、これはチームのデュエルだ。向いている方向がバラバラである以上勝ちはない」

 交流戦のデュエルは基本的に一対一であり、フィールドや墓地、ライフなど前のデュエルのものを引き継ぐということはない。それでも7戦して勝ち星の多いチームがチームとしての勝利を収めるため、「自分が負けても仲間が敵を討ってくれる」という気持ちを持てるかどうかが大事になるのだ。
 チーム内の結束が薄弱であるならば、仲間に対してそんな気持ちを持つことができるだろうか。「負けた仲間のために戦う」「仲間の勝ちを無駄にしない」という気持ちを持った上で戦いに臨めるだろうか。デュエルはそう易しいものではない。
 
「皆は理解していると思うが、俺たちはあちらさんと比べると過ごした時間が違う。単純な絆ではあっちに勝てない」
「じゃあどうすりゃいいんだよ。俺たちは戦う前から負け犬でいろってのか」
「誰もそんなことは言っていない。戦う前から負けることしかを考えていない奴はそもそもデュエリストに向いていないからな。過ごした時間ではあっちには勝てない。ならば俺たちは別で勝負する」
「別?」
「俺たちは出身地や価値観は異なる。だが、目指す目的地は同じだ。俺たちが目指すのはなんだ? 俺たちに共通しているのは……セントラルに勝つ、ということだ」

 四校から代表が選ばれる、ということを聞いてから一月ほどが経つ。当初は歴史も実績もあるセントラル校に新設校の自分たちが勝てるのか、という気持ちがあった。それでも代表に選ばれた自分たちに仲間たちは「セントラル校に勝ってくれ」「俺たちの強さを見せてやれ」という激励の言葉だった。チーム・ユニオンとして召集をかけられた自分たちにできるのはそんな仲間たちの気持ちに応えること。

「ここでジャイアントキリングを決めるというのは……漫画だと編集からダメ出しを食らいそうですね。でも、これは漫画じゃなくてリアルですから。ジャイアントキリングを決めてはいけない、ということはないですよね?」
「せっかく愛知からここまで来たんだから、勝ちたいわよね。勝たないと何も手に入らないし」
(そう、私はどうしても勝たなければならないの。勝って―――女の子の柔らかいお胸も手に入れる! ムフフ……)
(……なんでしょうか、瀬戸さんからなんか邪気を感じるんですが)

 内に秘めたものは何であれ、我が道を行くといったスタンスを貫いていた青葉と彩奈が同調してくれたのは大きかった。日本人とはそういう人種なのか、周りの人間に合わせる傾向がある。それは琥太郎と言えども例外とは言えないようであった。

「目指すのは勝利、か。わかったよ、お前の熱弁に乗ってやる。セントラルのいけ好かないエリート様をぶっ潰してやるよ」
「……俺はチームの勝利になど興味はない。だが、チームとして勝たなければ俺はより上に行けない。俺が目指すのは頂点ただ一つだ」

 完全無欠のものではない。むしろ急造の結束など最も危ういものであると言っていいだろう。それでもこの七人の少年少女たちは今一つに繋がることができた。

(今はこれが限界か。だが、この交流戦俺たちにはまだ頼もしい味方がいる。全員でぶつかっていくぞ)



―――まもなく時間となります。両チームの代表選手は入場口へとお集まりください。



 そして迎える決戦の時。チーム・セントラルそしてチーム・ユニオン。二つのチームはそれぞれの思いと誓いを胸に戦場へと向かう。自分たちの勝利を追い求めて若い戦士たちは立ち上がる。













 特設のスタジアムは両校の生徒や一般観覧希望の観客によって満員御礼となっていた。そんな戦場を灯していた照明が落ち、オーロラビジョンの光だけがぼんやりと輝く。静まったスタジアムには海外のロックバンドのヒットソングのイントロが流れ始めた。


『さあこれよりそれぞれの学校の誇りを胸に代表選手たちが入場します! 皆さん手拍子で迎え入れましょう! Clap the hands!!』


 実況DJの掛け声と共に会場中から手拍子が鳴り響く。オーロラビジョンには『We are Duelist』の文字と共に両校の代表選手がポーズを決めたりカードをドローする姿が映像となって流れ始める。
 思えばこの交流戦を行うにあたって遊大たちは宣材写真を撮るという名目で長時間拘束されたことがあった。写真に撮られるという経験が少なかった彼らはカメラマンに言われるがままレンズに収められていたのだが、この時ポーズを取っている映像を撮影されていたのだ。
 この時撮影された映像が編集され、オーロラビジョンに流されることとなったのだ。当然元々の性格や気性でそれに対する反応は変化する。留奈や陸、林檎や彩奈、青葉のような明るい性格の持ち主は音楽に合わせてノリノリで入場すれば、美鈴や若葉はやや気恥ずかしそうに照れながら入場する。
 そして遊大、仁、礼、刃弥、琥太郎、遊誉の六人は時折声援に応えながらも緊迫した表情を崩さなかった。彼らの頭の中は既にデュエルのことでいっぱいだったのだ。拍手と歓声が響く中、両チームの選手たちは互いに向かい合って並ぶ。そんな彼らの前には竜司をはじめ、各校の校長たちが並んだ。

「みんな緊張しているようだね。デュエルはデュエルだが、変に力を入れ過ぎないことだ」
「はい」
「……勿論」
「我々はこのデュエルで皆に一人のデュエリストとして成長してくれることを望んでいる。デュエリストとしての道は決して楽なものではない。きっといつか、歩みを止めてしまいたくなる時はやってくるだろう。だからこそ、ここで仲間と共に戦うという経験が大きくなる。どうかこのデュエルを悔いなきものにしてくれ。以上だ」

 竜司の言葉を受けて遊大たちと刃弥たちはそれぞれの待機場所に戻る。この交流戦デュエルは七対七のデュエルであり、先に四勝したチームがその時点で勝利となる。最も勝敗が決まっても全てのデュエリストがデュエルをするまで戦いは続く。
 それでも勝ち負けが決まってしまえば双方ともにモチベーションを維持するのは難しいだろう。そんな優勢または劣勢の中でも自分のデュエルができるかどうかを鍛えるのもこのデュエルに込められた意図でもあるのだが。そして早くも決戦の火蓋が切って落とされる。両チームの先鋒同士による大事なデュエルの火蓋が。
 オーロラビジョンには二人の少女の顔写真が映し出された。セントラルの先鋒である留奈とユニオンの先鋒であるノース校の若葉。奇しくも面識があり、そして友達となった者同士のデュエルとなったのだ。


「舞原さん、先鋒は任せたよ」
「うむ! まかされたぞ! わたしがセントラルにしょうりをとどけてやるからな!」


「深山。リラックスだ」
「うん。頑張るね」


 スタジアム中央に位置するデュエルリングにて対峙する留奈と若葉。共に同じくらいの身長である小柄な二人の少女の背にはそれぞれのチームの勝利を願う皆の希望がのしかかる。それでも二人はその圧に圧し潰されることなく、まさに戦士の目をして見つめ合っていた。

「まさかおまえがあいてだとはな。しかしうんがわるかったな!」
「えっ?」
「わたしはセントラルさいきょうのデュエリストだ! そんなわたしをあいてにしてしまう。それはすなわちおまえにかちはないということだ!」
「……確かにあなたは強いかもしれません。ですが、慢心は身を滅ぼしますよ」
「まんしんせずしてなにがつわものか! まんしんごとわたしはおまえをたおしてやる!」

 互いに言葉を交わし合った留奈と若葉がデュエルの態勢を整え終わったその瞬間である。チーム・ユニオン側の応援席からは大きな四つの旗が掲げられた。それは各校の校章をあしらった大団旗であり、屈強な男子生徒たちが遊大たちセントラル校の生徒を威圧するがごとくその旗を振り始めたのだ。
 そしてその旗が上がると同時にユニオン側の応援席からは太鼓やラッパなど鳴り物の音が響き始めた。遊誉の言う「頼もしい味方」とは、ユニオン側の応援団であったのだ。デュエルが行われるセントラル校はユニオンにとってはアウェーであり、ユニオンはビジターチームに該当する。
 地の利を得られないデメリットを、チーム・ユニオンは野球やサッカーなどのプロスポーツに使われる“応援”の力によって覆そうとしていたのだ。



―――絶対勝つぞ、ユ・ニ・オ・ン! 絶対勝つぞ、ユ・ニ・オ・ン!



「……凄い応援。地鳴りのようだね」
「いつからこの交流戦はプロ野球の方の交流戦になったのかしら」
「応援は力を与える。それはスポーツでもデュエルでも同じということか……気を引き締めないとな」



―――ララララー ララララ ラーラー ラララー



―――我らの希望 ユニオン 闘え誇りを胸に



―――我らの希望 ユニオン 今こそ打ち破れ



―――セントラル倒せ! 絶対勝つぞユニオン!



「むー……なんだこれは、うるさいぞ!」
(……これが応援の力。なんだろう、今までこういうの無かったから不思議な気分。でも、皆が応援してくれるというのは悪くないかも)
「舞原さん、私は負けません!」
「……いいめをしているな。ならばわたしもそれにこたえるまでだ!」



―――デュエル!!―――



先攻:深山 若葉(チーム・ユニオン/ノース校) 後攻:舞原 留奈(チーム・セントラル)



若葉 LP8000 手札5枚
デッキ:35 モンスター:0 魔法・罠:0 墓地:0 Pゾーン:青/赤 除外:0 エクストラ:3(0)
留奈 LP8000 手札5枚
デッキ:35 モンスター:0 魔法・罠:0 墓地:0 Pゾーン:青/赤 除外:0 エクストラ:15(0)



☆TURN01(若葉)


「先攻は私です」

 第一戦目の先攻は自動的にアウェーチームであるユニオンの選手、すなわち若葉のものとなる。先攻はドローができないというデメリットがあるが、先攻でフィールドを固めて相手を封殺することもできる。最も若葉のデッキは場を固めて封殺するタイプのデッキではないのだが。

(……いきなりそう良い手札は来てくれないよね)
「私は“クロスソード・ハンター”を召喚します」


※クロスソード・ハンター
効果モンスター
星4/風属性/昆虫族/攻1800/守1200
自分フィールド上にこのカード以外の昆虫族モンスターが存在する場合、自分フィールド上に存在する昆虫族モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。


「私はカードを2枚セット。そして永続魔法“一族の結束”を発動してターンエンドです」


※一族の結束
永続魔法
(1):自分の墓地の全てのモンスターの元々の種族が同じ場合、自分フィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800アップする。


若葉 LP8000 手札1枚
デッキ:35 モンスター:1(クロスソード・ハンター)魔法・罠:3(一族の結束)墓地:0 Pゾーン:青/赤 除外:0 エクストラ:3(0)
留奈 LP8000 手札5枚
デッキ:35 モンスター:0 魔法・罠:0 墓地:0 Pゾーン:青/赤 除外:0 エクストラ:15(0)







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ター坊
全員バラバラながらもセントラルに勝つという共通の意思の元、纏まりましたな。
そして始まった先鋒戦。貫通持ちのクロスソードですが…先攻で一族の結束を張る意図は一体… (2017-10-02 06:46)
光芒
ター坊さん
仮に個々の実力が高くとも、チーム戦となると寄せ集めでは勝てませんからね。幸い目的が同じであったことがあって何とか結束を固めることはできました。

>そして始まった先鋒戦。貫通持ちのクロスソードですが…先攻で一族の結束を張る意図は一体…
一応明確な意図はありますね。そしてそれは次回で明らかになります。 (2017-10-03 16:25)
から揚げ
意思がバラバラだったチーム・ユニオンを一つに纏め上げた遊誉の手腕に脱帽しました!彼の様にまとめ役を担ってくれるキャラクターは本当に頼りになりますね!

交流戦は留奈ちゃんVS若葉ちゃんのデュエルの火蓋が切って落とされましたが、彼女達がどの様な敢闘を魅せてくれるのか、とても楽しみです!

序盤から一族の結束を発動したという事は、コンバット・トリックの感じがしますね!(直球)

もし宜しければ、私が書かせて頂いたこの感想について光芒さんのお考えを聞かせて頂ければ、幸いです! (2017-10-05 08:06)
光芒
から揚げさん
本当に集団においてまとめ役の有無は大きいですね。いるといないとではチームの結束も違うでしょうし……そんなまとめ役の下で纏まったユニオンと遊大たちセントラルのチームデュエルがどうなるかお楽しみ頂ければ幸いです。

>序盤から一族の結束を発動したという事は、コンバット・トリックの感じがしますね!(直球)
>もし宜しければ、私が書かせて頂いたこの感想について光芒さんのお考えを聞かせて頂ければ、幸いです!
それ言っちゃうとお話にならなくなっちゃうので(え
(2017-10-07 17:55)

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5 第121話:必然 155 2 2018-10-25 -
9 第122話:悲劇 174 2 2018-10-28 -
5 第123話:鬼気 146 2 2018-10-31 -
10 第124話:捕食 156 3 2018-11-02 -
11 第125話:一輪 157 2 2018-11-05 -
3 第126話:後悔 177 3 2018-11-07 -
5 第127話:神話 138 2 2018-11-10 -
12 第128話:仮説 171 3 2018-11-12 -
6 第129話:伝心 172 3 2018-11-14 -
10 第130話:対立 169 2 2018-11-16 -
10 第131話:残酷 165 3 2018-11-18 -
6 第132話:涙雨 150 3 2018-11-20 -
8 最終章予告 173 3 2018-11-21 -
11 番外編:歓喜 213 5 2018-11-22 -
8 第134話:決戦・1 175 2 2018-11-23 -
8 第135話:決戦・2 138 2 2018-11-25 -
7 第136話:決戦・3 156 2 2018-11-27 -
8 第137話:決戦・4 155 3 2018-11-28 -
8 第138話:決戦・5 189 3 2018-11-30 -
10 第139話:覇王 173 3 2018-12-02 -
11 第140話:精霊 154 3 2018-12-04 -
11 第141話:落涙 206 4 2018-12-05 -
13 第142話:命脈 193 3 2018-12-07 -
9 第143話:終焉 172 3 2018-12-08 -
6 第144話:帰還 166 3 2018-12-10 -
3 遊大たちが19年1月制限について喋ります 191 3 2018-12-11 -
6 第145話:三様 223 2 2018-12-12 -
8 第146話:光明 126 2 2018-12-15 -
7 第147話:竜星 164 3 2018-12-16 -
10 第148話:斬撃 131 3 2018-12-18 -
8 第149話:神竜 135 3 2018-12-20 -
3 第150話:新竜 141 3 2018-12-21 -
5 第151話:共鳴 128 3 2018-12-24 -
7 第152話:前夜 136 3 2018-12-25 -
6 第153話:星竜・1 134 3 2018-12-28 -
9 第154話:星竜・2 117 3 2018-12-29 -
11 第155話:星竜・3 134 3 2018-12-31 -
13 エピローグ:雪夜 198 6 2019-01-01 -