48.切なる願い　作：くちなし

☆★☆★

「明日から夏休みね！」
「そうだね」
「やっと夏休みです、、ゆっくりできますね～」
「何言ってるのよ、、宿題やりなさいよ」
「、、、」
「あんた、夏休みだからといって怠けてちゃだめだからね！」
「分かってるって、、」
「あんたが一番心配なの！」

☆★☆★

明日から夏休みが始まる。
しかし、文芸部という名を被ったWRGP出場組は夏休みだろうが雨が降ろうが集まる時は集まるのである。

「ただいま」
「お帰り悠里～」

出迎えたのは義姉の桜花である。

夕食を済ませ、部屋に戻る。

「、、」

なんだこの倦怠感は。

「、、、」

勉強机に向かったボクは、手持ちのパソコンでSテーマのデッキをサクッと調べてみる。
ジャンド、リゾネーター、BF、氷結界、竜星、竜剣士、、今でも使われているものも多くあり、規制の都合で今は組めないデッキや、もともと規制されたカードがエラッタされたために、あまり使われなくなったデッキもあった。

「、、！？」

パソコンを眺めていた悠里はあるテーマに目を向ける。

「これなら、、これならワンチャンいけるか、、？」

ーーー

翌日。
悠里を起こしに行かなきゃ♬
朝ごはん作ったからね！

「悠里～朝ごはんよ～」

無音である。
ドアをたたいても、声をかけても、うんともすんとも反応がないのである。

「入るわよ～」

部屋に入る。すると、部屋はもぬけの殻で、1枚の便せんだけが机の上に置かれていた。

「悠里、、、」

☆★☆★

一方、瑞穂たちは文芸部に集まって、準備を着々と進めていた。
準備、と言っても、モデルデッキとデュエルをしているだけなのだが、これがまた大変重要なのである。

「よし！！今日はこれでやるわよ！」
「、、、ヴァレット」
「。。。」

ヴァレット。低レベルのモンスターが多く含まれたLINKテーマだが、S軸もあり、破壊された時になんらかの効果を起動する、という特徴がある。

「瑞穂さん、携帯なってますよ」
「え？あ、うん、ありがと」

携帯を見ると、通知が1件。

「悠里からね」
「、、内容は、？」
「、、、」

黙りこくる瑞穂。

「どうかしたんですか、、？」
「、、次元の問題じゃないわ、、」
「悠里がどうかしたん？」
「ふ、、、、じゃ、、ないわ、、！」
「瑞穂っち、、？」

そばにいた安楽木が呆然としている瑞穂の持っている携帯の画面を覗き見る

「、、！？」
「理沙、、どないしたん、、？、、私にも見せてくれへん、、？」

火憐も固まっている瑞穂が持っている携帯の画面を覗き見る。

ーーー

XXXX.○.● (水)
From 悠里
To 瑞穂
件 無題

少しの間休む。
探すな。
P.S 切なる願いに身を託して、、、

ーーー


「少しの間、、休む、、！？」
「WRGPまであと2週間切ってるのよ！？こんな時期に休むなんてあり得る！？」
「、、悠里、、」
「んあーっ！なんてことよ！」


☆★☆★

「悠里、、」

一方、桜花のほうは、悠里に連絡を試みるも、電話がつながらない。

「せめて何か言ってくれればいいのに、、」

桜花の所にも、瑞穂のメールと似たようなことが書いてあった。

「、、」

外を見ると、自転車と携帯、財布とデッキケースがない。

「悠里、、」

☆★☆★

一方、当の本人はというと、、

「瑞穂から返信来てるし、、」

返信内容は「ふざけるな」か。

「、、もう遅いな」

ボクはというと、今は隣の県まで来ている。
目分量で、自宅から50㎞、といったところか？
さておき、なんで50㎞も離れた隣県を自転車でこいでいるのか。
簡単である。自己鍛錬のためである。

「、、」

隣県まで来ると、外観も変わるもんだな。
電車の車窓からは果樹園が見える。あいにく、まだ果実は成っていないが。

「The next station is Misojiri. Please change here for JR Inonoi‐Line , Koito- Line、、、」

「乗り換えか、、」

御園尻駅。ここから猪ノ井線に乗り換える。
ここまで2時間半。家を出たのが朝の4時半。久しぶりの早起きはつらいなぁ、、眠いや。

「The next station is Toujou、、、」

東条駅。無人駅で閑散としている。
人っ子一人いなく、バス停があるにもかかわらず、バスは本日運休。
次元が違うな、、

「田舎だなぁ、、」

隣の駅から4キロ弱離れているだけあって、長旅だった。
ここからは自転車で道を行く。

「、、、」

この道は国道である。しかし、通称「酷道」である。
と、言うのも、アスファルトや縁石で整備などされていなく、誰も人が通らないせいか、荒れ果ててしまっている。

「、、」

ボクは強くなる！そのためにここに来た。みんなの足を引っ張りたくはないから。
そして、何より、ボクのレッド・デーモンのために。


「ここか、、」

冥通トンネルである。このトンネルは人が滅多に近寄らない場所である。

「え、、！？」

ふと後ろを向く。
はっと驚くのも無理はない。というのも、さっきまで誰もいなかったのに、後ろを振り向くと、女の子がぽつんと立っていたからである。

「誰だ、、！？お前、、！」

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次回(自壊)予告
何も告げずに山奥の某所へと行ってしまった悠里。
そして、悠里のもとにどこからともなく現れた謎の女の子。
悠里はこの場所で自分磨きの成果を出すことはできるのか。
そして、WRGPまであと2週間だというのに、一体どうなってしまうのか！？

次回！第49話　暗闇と炎の先に