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HOME > 遊戯王SS一覧 >  第二話 惑わせ!幻惑の魔術師

第二話 惑わせ!幻惑の魔術師 作:でんでん

「ほーう」

 残忍さを隠しきれぬいやらしい声で男は呟く。遊李はだらんと両腕を垂らしながらも両足でしっかりと立っている。彼の特徴的な赤髪が熱気を孕んでいるかのように震えていた。その色彩も、どことなく鮮やかに、色濃いように思われた。

「お前がデュエル、なあ。だが俺はこいつのカードを手に入れて更に強くなったんだぜ。倒せるかなあ?」

 男はそう言うと口の端を醜く歪めた。遊李は黙ってしゃがむと、倒れている少年のカードケースからカードを取り出す。

「カード……これか……?」
「なっ……いつのまに!?」

 男は自分のカードケースを弄ると、少年から奪い取ったカードがなくなっていることに気がついた。しかし、遊李は一指とて男のケースに触れていない。

「なにもんだ、てめえ」
「何者? そんなことはどうでもいいよ。 さあ、僕とデュエルだ」
「ちっ……人格の安定しない奴め。蹴られておかしくなったか? しょうがねえなあ、してやろうか……」

 彼はそう言いながら遊李に近づく。しかし、デュエルディスクを展開するため手を掛けたと見せて、その豪腕を本気で遊李の顔面に向かって振るう。
「なーんてするかよバカヤロー!」
 その俊敏な殴打は彼の頬を的確に――捉えなかった。男が眼を話した一瞬の間に、遊李はフィールドのデュエリストゾーンに立っていた。

(なんだあいつ……ただものじゃねえ……)

 男がそう感じたのは、決して不気味な現象のためだけではない。真夏のアスファルトから立ち上る暑気のように揺れる彼の赤い髪、適度に力の抜けた体、その背後に漂う怪しげな威圧感。それは、通常の人間とも、デュエリストとも違う気迫であった。

「いいだろう。おい、お前なんて言う。俺の名は暴虎だ」
「……遊李」

 それだけ言って遊李はデュエルディスクを展開する。暴虎もデュエリストゾーンに向かい、ディスクを展開した。デュエル開始を探知したソリットビジョンが、うっすらと光の線を描きながら彼らの後方上空に巨大な扉を映し出す。

「いくぜェ。ま、俺の勝ちだろうがな。フィールド・オープン……ゲート・セット!」

「「スタンディングデュエル・リ・ブート!!」」

伯浪遊李 手札5 LP4000
暴虎   手札5 LP4000

「先行は貰おうか。俺のターン、ドロー! 俺は手札から、《ヘル・タイラント》を特殊召喚! こいつはフィールドにモンスターがいない時に召喚が可能、相手にバーンダメージを与えるッ!喰らえっ!」(5)


《ヘル・タイラント》
効果モンスター
星3/闇属性/悪魔族/攻1700/守0
このカードは通常召喚できない。
フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードは手札から特殊召喚ができる。
(1):この効果で特殊召喚したとき、相手に1000ポイントのダメージを与える。


 バットを手に持ったゴブリンのような小悪魔が、口からレーザーのようなものを発して遊李を攻撃する。それが遊李に着した途端、爆発が起こり衝撃波が発生する。ソリット・ビジョンによるまやかしの爆風や塵ではない。正真正銘、現実に発生した衝撃である。

 伯浪遊李 LP4000→3000

「……!!」
「ヒィーアハハハハハ! おいおい、自分で聞いといて忘れたのかァ? 俺はなあ、お前の推察どおり……サイコデュエリストなんだよぉっ!」

 気違いじみた笑い声を上げながら手札を振り回す。
 しかし、この異常な昂奮は、単なるサイコデュエルの快感によるものではなかった。

(なんだ!? あいつとデュエルした途端、いつもよりずっと強い力が流れ込んできたッ! たった1000ポイントのバーンで……この圧倒的快感、通常の約10倍! なんて……暴力はなんて気持いんだぁッ!)

「ヒィハハハハハハ!アハハハハハァ! 俺はカードを二枚伏せ、ターンエンドだぁっ!」(3)
「……」
「どうしたぁ? さっさとゲートを開け」

 挑発的な口調でゲートのオープンを促しながら、イヤラシイを笑みを浮かべ続ける暴虎。遊李は俯いたまま、手をすっと上に伸ばし、呟く。

「エクストラゲート、オープン」

 上空に浮かぶ扉が重厚な音を立てて開いた。このターンから、互いにエクストラデッキからの召喚が可能となる。 

「俺のターンだ、ドロー。俺は手札から、《見習いエスパー》を守備表示で召喚」

 手札からフィールドにカードをセットすると、ソリットビジョンが反応し、フィールドにモンスターが出現する。擦り切れた布のような服をまとい、目を爛々と輝かせる十歳ほどの少年のモンスターである。

「サイキックデッキか……へっ! そんな雑魚カードをどうしようっていうんだァ?」
「このカードは召喚した際、攻撃力を500下げることで相手フィールド上の魔法と罠カードを一枚破壊する」
「何ィ!?ちっ、めんどうくせェやろうだ。俺は《見習いエスパー》の効果にチェーンして、選択された罠カード《犯罪予備軍》を発動! 自分フィールドの悪魔族一体を選択し、このターンそいつの攻撃力を倍にする。更に俺は罠カード、《メンチ・ブレイド》を発動だ!


《見習いエスパー》
効果モンスター
星3/闇属性/サイキック族/攻1000/守2000
(1):このカードが召喚・反転召喚に成功したときに発動できる。このカードの攻撃力を500ダウンし、相手フィールド上の魔法と罠を1枚選択し、そのカードを破壊する。



《犯罪予備軍》
通常罠
(1):このカードは相手ターンのメインフェイズにのみ発動ができる。
(2):自分フィールドの悪魔族モンスター一体を選択する。選択したモンスターの攻撃力はこのターンのエンドフェイズまで、元々の攻撃力分アップする



《メンチ・ブレイド》
通常罠
(1):相手フィールド上のモンスターを1体選択する。このターン、選択されたモンスターは攻撃表示となり、必ずアタックしなければならない。


《ヘル・タイラント》 ATK 1700→3200

「選択されたモンスターはこのターン、相手モンスターに攻撃しなければならない! もうすでに召喚はできねえから、逃げることはできねえぞォ!」
 勝ち誇ったような声で彼は叫ぶ。《ヘル・タイラント》の攻撃力3200に自爆特攻を仕掛ければ、2700もの大ダメージを食らうことになる。元よりうなだれた姿勢を保ち続ける遊李であったが、この時の暴虎の眼にはそれが、敗北を覚悟した人間特有の哀切漂う絶望の姿勢に思われた。遊李は、負ける。
 
 否。無論、否である。
「俺のフィールドには、レベル3のモンスター一体……条件は、満たされている」
「ハァ? 何を言って……」
「俺は《見習いエスパー》を手札に戻して、こいつを特殊召喚する」
 
 見習いエスパーが突然光りに包まれたかと思うと、その体がどんどんと浮き上がっていき、火の玉のような形状になって手札へ戻っていく。それを見て、暴虎は驚きのあまり顔を歪めた、

「まさかそいつは!?」
「スイッチ召喚、いでよ、《ボックス・マジシャン》!」

 手札へと帰還した《見習いエスパー》の光の軌跡を辿り、光に包まれた新たなモンスターがフィールドに君臨する。独特の長く黒い帽子、左手には杖、右手には小さな匣、鋭く冷たい瞳が刃先のように輝いた。

「くそっ、スイッチ召喚だなんて生意気な」
「さらに、手札から魔法カード、《イリュージョン・クリアリー》を発動する。《ヘル・タイラント》の攻撃力は0だ」
「なに!? お、俺の《ヘル・タイラント》の攻撃力が0になっただと!?」
「《ボックス・マジシャン》で攻撃。ダガーヘッド・ボックス!」

 《ボックス・マジシャン》が右手の匣を投擲すると、たちまち数倍の大きさに膨らみ三つに分裂する。防ごうとする《ヘル・タイラント》の頭、胴、下半身を匣が捉え、次の瞬間それぞれの匣が左右にずれた。三つに分断された《ヘル・タイラント》は叫喚しながら光の粒となって弾ける。

「《ボックス・マジシャン》の攻撃力分、ATK1300のダメージを受けてもらう」
「ぐ、い、痛えェッ! これが、ダメージかッ!」

 サイコデュエリストの特徴――ダメージが現実と化すのは、サイコデュエリストと対峙する者のみ。しかし、今ダメージを食らっているのは暴虎である。彼は自分が振るってきた暴力の痛苦を実感し、その経験したこともない異質な感覚に悶ていた。

「た、耐えられねえっ! 俺は、手札から《闇医者 キリウ》を捨てる! 《闇医者 キリウ》は、自分のモンスターが破壊された時手札から捨てることで、攻撃力分のライフポイントを回復する!
 こいつの攻撃力……900を俺は回復するぜッ!」

 暴虎 LP 4000→2700→3600


《イリュージョン・クリアリー》
速攻魔法
(1):自分フィールド上に魔法族がいる場合のみ発動できる。このターンのエンドフェイズ時まで、
攻撃力・守備力のアップ・ダウンの効果は逆になる。



《闇医者 キリウ》
効果モンスター
星3/闇属性/悪魔族/攻900/守100
(1):自分フィールド上の悪魔族モンスターが戦闘で破壊されたときに、手札から捨てて発動する。
このカードの元々の攻撃力分ライフポイントを回復する。


「……ターンエンド」(3)
「はぁ……はぁ…てめぇ、許さねえ……」

 暴虎は初めて普段の歪んだ嗜虐心とは違う、ふつふつと湧き上がる憤怒に駆られていた。初めて自分に痛みを与えた者、しかも自らが権力と崇め無茶苦茶に振り回す『暴力』を用いて。自分に対する挑戦であるとともに、彼が心の奥深くで密かに保っていたアイデンティティを破壊するという危険性も孕んでいた。
 即ち、暴虎は相手を傷つけるためではなく、己を守るために怒っていたのである。

「俺のターン、ドロー! 俺は手札から《ヘル・シーフ》を召喚! こいつは墓地からレベル3以下の悪魔族モンスター1体を、効果を無効にし守備表示で蘇生できる!」(3)
「……無意味だ」
「ヒッヒ、よくわかってるじゃねェか。そう、《ヘル・シーフ》はエンドフェイズ時、特殊召喚されたモンスターと自分を除外してしまう」


《ヘル・シーフ》
効果モンスター
星2/闇属性/悪魔族/攻1300/守0
(1):このカードが召喚・反転召喚に成功したとき発動できる。自分の墓地に存在する、レベル3以下の悪魔族モンスター1体を、
守備表示で特殊召喚する。
 特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズ時このカードを特殊召喚されたモンスターを除外する。


「だが、俺の目的は壁にすることでも、効果を発動することでもねえ」

 彼は不気味に笑うと、手札から一枚のカードを天井へ向けて高く突き上げる。そのカードの背しか確認は出来ないが、埃っぽい光を浴びて怪しく輝いていた。

「俺は悪魔族モンスター2体をリリース、手札から《バイオレンス・ジャイアント》を召喚だぁ!
このカードの攻撃力はリリースしたモンスター2体の攻撃力分アップするゥ! ヒィーアハハハハハ!!」


《バイオレンス・ジャイアント》
効果モンスター
星6/闇属性/悪魔族/攻0/守0
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上に存在するレベル3以下の悪魔族モンスター2体をリリースした場合に特殊召喚できる。
(1):このカードの攻撃力は、リリースしたモンスターの攻撃力分アップする。
(2):このモンスターが戦闘で破壊されたとき、破壊した相手モンスターは墓地へ送られる。
次のターンのスタンバイフェイズ、墓地へ送られたモンスターとこのカードは互いのフィールド上に特殊召喚される。


《バイオレンス・ジャイアント》 ATK 0→3000

 傷だらけの凶悪な面をした巨人が、スタジアムを揺らしそうなほどの音を立てて召喚された。2体のモンスターの力を得て、更に巨大化し肌の紫をいっそう深め、鼻息荒く辺りを見渡している。今にも何かを手にとって蹂躙しそうな威圧感を漂わせていた。

「さらにィ! 俺は魔法カード《暴虐の権威》を発動! 相手モンスターの攻撃力はこのターン1000ポイント下がり、攻撃を防ぎきれなくなる! さあ、《バイオレンス・ジャイアント》! こうゥゥゥげきィィィィッ!!」

《バイオレンス・ジャイアント》の岩の如きけわしい拳が、《ボックス・マジシャン》を粉砕する。

 遊李 LP 3000→300


《暴虐の権威》
通常魔法
(1):自分フィールド上に攻撃力2000以上のモンスターが存在するとき、相手モンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターは攻撃表示となり、攻撃力が1000ダウンする。


「……ターン、エンド」(0)

(決まったッ! サイコデュエルの3000ダメージは、並の人間なら気を失うほどの衝撃! さっきのいけすかねえ奴も、2000のダメージを食らって気絶寸前、デュエルなんてまともに出来ない状況に持ち込んでから、俺の本領が発揮される。
 暴力最高ッ!)

 《バイオレンス・ジャイアント》の攻撃による塵風が次第に薄らぎ、遊李のシルエットが明瞭になっていく。彼は先程まで自分を追い詰めた人間がすっかりボロ雑巾のように傷ついていること、結局『暴力』に於いて自分こそが最も強く、権力ある存在なのだということに、半ば狂気に近い昂奮を得る。もはや彼の笑みは人間のそれと思えないほど崩れ、くしゃくしゃに歪んだ表情になりながらも、情や徳の欠片もない残忍な眼ばかりが、遊李の姿を捉えようと必死に働いていた。
 こいつが負けた後、デッキを目の前で破り捨ててやる。思い切り蹴って、殴って、死ぬ寸前まで追い詰めてやる。勝ったんだ、彼の確信は――

 それこそ、ボロ雑巾のようであった。

「……この程度でサイコデュエリスト? ひどい話だなあ」
「なっ!?」

 遊李は倒れていなかった。むしろ余裕の姿勢を取って、そこに悠然と立ち構えていた。

「な、何故だっ! 貴様、何者だぁッ! サイコデュエルの力が増幅したり、3000近いダメージを食らって平然としていたり……そう言えば、《ヘル・タイラント》の1000ダメージでも、一切傷ついて……」
「うるさい、黙れ」

 彼の威圧感は、《バイオレンス・ジャイアント》を遥かに凌駕するものであった。いや、その本質は全く別のものである。相手をねじ伏せ、制圧し、殺そうという低次元の威圧感に対し、勝てない、敵わない、戦うことさえ許されない、そんな圧倒的な力が自ずと放つ、謂わば『強者の威圧』が発されていた。

「……ターンエンド、なんだな」

 遊李は一息つき、言葉を続ける。

「……二つ、教える。一つ、俺もサイコデュエリストだ。二つ、このターンお前は、負ける。」

 澱みなき勝利宣言、ただそれだけで暴虎は負けを確信しかける。しかし、首を振るうと突然自分の頭を殴って無理やり正気に引き戻した。敗北を認めること、ましてや勝利を予告されたというそれだけで。到底彼には受け入れられないものであった。しかし、遊李の手は勝利へ向かって容赦なく動き出す。

「俺のターン、ドロー! 手札から速攻魔法、《緊急テレポート》を発動! デッキからレベル3以下のサイキック族を特殊召喚する。《クレアボヤンス・キッズ》を召喚。そして次は……スイッチ召喚」
「なにっ」
「わからないかい。《ボックス・マジシャン》含めスイッチ・モンスターの特性。指定さえされていれば、手札からでも、墓地からでも、スイッチが可能。モンスターによる変幻なテレポーテーション……それが、スイッチ召喚だ」

 フィールドに現れた《クレアボヤンス・キッズ》を再び光の輪が包む。その輪は帯となって遊李の墓地へと送られる……帯はモンスター同士をつなげる道となり、スイッチ召喚のゲートとなってフィールドに君臨する。

「俺は、《ボックス・マジシャン》を召喚。 更に効果を発動する。《ボックス・マジシャン》がスイッチ召喚に成功した時、スイッチ元以外からレベル2以下のモンスター1体を、特殊召喚できる。俺の手札にはもう一枚……《クレアボヤンス・キッズ》だ」
「なにぃっ!?」


《緊急テレポート》(OCG)
速攻魔法(制限カード)
(1):手札・デッキからレベル3以下の
サイキック族モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、
このターンのエンドフェイズに除外される。



《ボックス・マジシャン》
スイッチ・効果モンスター
レベル4/光属性/魔法使い族/攻1300/守800
手札・墓地:フィールド:レベル3以下のモンスター
(1):このカードがスイッチ召喚に成功した時、発動できる。スイッチ元以外の場所から、レベル2以下のモンスター1体を特殊召喚できる。
(2):このカードが攻撃されたときに発動できる。自分は手札に存在する条件を満たしたモンスター1体と、
このカードをスイッチすることができる。



《クレアボヤンス・キッズ》
効果・ケミカルモンスター
レベル2/光属性/サイキック族/攻800/守800
1ターンに1度、発動できる。このカードをエンドフェイズまで除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。


「だ、だが2体とも攻撃力1500以下。お前はかて……ケ、ケミカルゥ!?!?」
「……忘れたのかい。エクストラ・ゲートはすでに、開いている」
「ッ!! 嘘だッ!」
「その眼で確かめな。俺は《ボックス・マジシャン》、《クレアボヤンス・キッズ》を魔法&罠へ送り、《ボックス・マジシャン》をアレロケミカルに!」

 強大なモンスターたちの異界へと繋がる扉が開き、遊李の声と力に反応して、光の玉が降りてくる。《ボックス・マジシャン》と《クレア・ボヤンス》の2体はモンスターを包む光に重なって、青く透明な色へ変化していった。不確かな線に変わり行く2体のモンスターは、次第に光の中へと吸収されていき、恰も光を剥がすかのような赤い火の粉を上げていく。
 
「二つの虚像が交わるとき、幽玄なる奇術の元に、新たな像が結ばれる! いでよ、幻惑の使者――《ミスティック・マジシャン》!」

 光が完全に剥がれると、そこから黒い光を放ちながら流星のように飛び上がったものがあった。遊李のパトスモンスター、《ミスティック・マジシャン》である。

「お、同じ種族2体以上を装備させることで特殊召喚できるモンスター……パトスモンスター! だが……」
「だが、ケミカルモンスターは種族の代用ができる。
 そもそも、《ミスティック・マジシャン》の種族は魔法使い族だが、サイキック族もケミカル素材にできる。」
「二つの種族を使用できるパトスモンスターだと!?」

 《ミスティック・マジシャン》はその名の通りどこか神秘的な奇妙さを有していた。マジシャンと名のつくモンスター独特の帽子をかぶっており、その色は銀色であった。纏っているローブも確かに魔法使い族特有のものであるが、その意匠、左手に持っている何故か機械が組み込まれた杖、光を放つ右手、坂だった髪の毛……サイキックと魔法使い族が合わさったような姿であった。

「さらに《ミスティック・マジシャン》はケミカル・アレロケミカルにいる魔法使い族とサイキック族の枚数×200、攻撃力がアップする」

《ミスティック・マジシャン》 ATK 2300→2700

「攻撃力……2700だと!? ま、まだだ! 攻撃力3000には及ばねェ!」
「魔法カード、《禁じられた聖杯》を発動! 《バイオレンス・ジャイアント》を指定する。攻撃力が400アップ!」
「な……なんだ……お、俺のモンスターの攻撃力を上げてくれるのか……? へへ、最後の最後でプレイングミスしやがって……へへへ……な、何ぃッ!」

 僅かに見えたかもしれぬ、勝ちへの希望。それは、《バイオレンス・ジャイアント》の下に記された攻撃力の数値によって潰えた。

《バイオレンス・ジャイアント》 ATK 3000→400

「……《禁じられた聖杯》は攻撃力を400上げ、効果を無効にする。《バイオレンス・ジャイアント》の効果が無効になったことで、攻撃力の上昇値はなくなる」


《禁じられた聖杯》
速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
ターン終了時までそのモンスターは、攻撃力が400アップし、効果は無効化される。


「バトルフェイズ。《ミスティック・マジシャン》で《バイオレンス・マジシャン》に攻撃。サイコ・イリュージョン!!」

 《ミスティック・マジシャン》の杖から黒い稲妻が、右手から白い稲妻が迸る。魔術と超能力……二つの力は互いにその速さと力を競いながら《バイオレンス・ジャイアント》の心臓を的確に穿つ。

暴虎 LP 3600→1300

「ぐああっ! い、いてえ……いでえええっ!」

 痛みにのたうち回る暴虎。しかし、彼の一方ならぬ勝利への執念は消えない。

「お、俺は《バイオレンス・ジャイアント》の効果を発動! 破壊したモンスター共々墓地へ送り、次のターンに復活させる! ハハハッ!どうだ、これで壁ができたぞっ!」

 《ミスティック・マジシャン》は《バイオレンス・ジャイアント》が死に際に放った光により、顔を歪めて弾ける。これで、自分はひとまず延命できた。次のカードでいくらでも逆転できる。立て直せる。バーンカード1枚でもいい、相手は所詮首の皮一枚でつながっているから、それを断つことなど容易……彼はそう思ってようやく笑顔を取り戻す。

 しかしその笑顔は遊李の怪しげな笑いによってすぐにかき消された。

「な、なんだ、なんだ」
「……いや、弱いなと思って。まるで勉強せず、イカサマにすらなっていない力技で勝ってきた……弱いなあと」
「ふざけるなァ! 次のターン、次のターンでお前を黙らせて――」


 暴虎の恐喝を鼻で笑い、遊李は言った。
「言ったろ、このターンで勝利すると。
 俺は、《ミスティック・マジシャン》の効果を発動する! このカードがフィールドから離れたとき、自分のアレロケミカルをフィールド上に効果を無効にして特殊召喚できる!」
「な……あ!?!?」


《ミスティック・マジシャン》
パトスモンスター
星8/闇属性/魔法族/攻2300/守1400
アレロケミカル+ケミカルモンスター1体以上
このカードはサイキック族をケミカル・アレロケミカルとして扱うこともできる。
(1):このカードの攻撃力は、ケミカル・アレロケミカルの魔法使い族とサイキック族1枚につき、200アップする。
(2):このカードがフィールドから離れたときに発動できる。このカードのアレロケミカルを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは、効果が無効化される。


「《ボックス・マジシャン》でダイレクトアタック!!」
「ぐあッ!!!」

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