42.茅原香織の心化 Ⅰ　作：くちなし

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なんだ、この脱ぎ散らかしてある服は。

「観月～！」
「なんだよ、城ヶ崎、、そんな慌てて、、」
「昨日の子と巫女服の子が、、」

ーーー

「ああ！もう！なんなのよ！！」

瑞穂と香織が入ってくる。香織は今にも泣きだしそうな顔である。

「なにやってんだよ、、」
「なにって、ビラ配りよ。校門でやってたの」
「なにもメイド服着る必要ないだろ」
「印象よ！印象！第一印象って大事でしょ？？」

ああ、そうだな。これで、瑞穂はヤバイ奴、というお札がつくことだろう。

「あー！私は職員室行きだし、香織はしょげたまま固まってるし！んもー最悪！！」

さぞかし担任は素っ頓狂な顔をしていたことだろう。

「今日は終わり！出てけ！！」

追い出されて廊下によりかかる悠里。

「ほら！さっさと着替えなさい！！」
「ちょ、、やめてくださ、、！いやぁ！」
「ぐずぐずしないの！」
「じ、！自分でできますぅ！！」
「いいから！！」
「＃＄％＠＝！？！」

何が起こってるんだ。

ーーー

数十分して、部長さんの叫び声が止まり、ドアの施錠が外れる。
鍵を解いたのは瑞穂で、出ていくなり足早に去っていった。
瑞穂が視界から消えたことを確認して、室内に入る。そこには体育座りの香織がいた。

「だ、大丈夫か、、」
「大丈夫じゃないです、、わたしお嫁に行けませんよ、、、」

背中を丸めて泣きじゃくる部長さん。散々でしたね、、
どうか元気を出して、という意味合いもかねて背中をさすってやる。

「手、、あったかいです、、」
「そうか」
「何のビラ撒いてたんだ？」
「これ、、」

えっとなになに、、？
WRGP出場につき応援願いたいぃ？
日時、時間、場所、、いろいろ書いてある。
そこには名前も。

「おいおい、、」

ーーー

翌日。

「ちょっと悠里！どういうことなの！？」
「なんでうちらの名前まで載ってるん！？」
「知らない、、まだ名前だけでよかったじゃないか、、ボクはメアド書かれてんだ」
「あ、ほんとだ、、」
「あーあ、、とうとう稲垣と愉快なお友達に属したのか？」

話しかけてきたのは新藤。新藤大輔といい、カノジョ持ちのイケイケ男子である。

「何か知ってるのか？てか、なんだその愉快なお友達っていうのは」
「なんだって、知り合いじゃないのか？」
「まだ顔を合わせて3日だ」
「へえ。。っていうか、稲垣の奴、また派手にやらかしてくれたなぁ、、」
「このビラ、、勝手に名前載せられたし、、」
「瑞穂について何か知ってるのか」
「知ってるも何も、中学3年間同じ組だったからな。ほんと何考えてるかわかんないぜ？」
「、、で、どんな子なん？」
「一言でいうなら奇想天外、だな。夜中の学校に忍び込んで砂場の砂を全部掘り起こしたり、黒板に謎の文字書いたり。総理官邸に電話しかけたこともあったらしいぜ」
「総理官邸って、、」

殴りこみにでも行こうとしたのか？

「あとは体育祭の応援にナース服やら、メイド服やら、バニー着てきたこともあったな」

へえ。コスプレ好きなのか？

「聞いてみたら、『アンタには関係ない！』で教えてくれなかったよ。昨日の放課後も騒ぎになってたな。もう一人って、、茅原香織だろ？可哀想なこった」

それには共感だな。

「とにかく、あいつに気があるなら止めとけ。悪いことは言わないぜ」
「気があるって、、」
「あいつ、成績もトップクラスだし、黙ってりゃいい女なのにな。あいつこそ真の変人にして超人だ」
「成績、そんなにいいのか」
「常に学年トップ。しかも全部の部活に体験入部して、運動部から引っ張りだこなのに、結局全部断ってどこにも入ってないしな」

文芸部には来てないぞ。ま、そんなことはいい。

「まあ、あいつとWRGPに出るんだったらせいぜい頑張りな」

ーーー

その日、部長さんは欠席したそうだ。羞恥心が平常心を上回ったんだろう。
代わり、というのも変だが、有希が部室にいた。

「悠里、、」
「有希か。来るの早いな」
「一応メンバーだから、、」
「そうか、、」
「あのさ、今日は帰るわ」
「、、？、、うん、、」
「うん、じゃーな」

ーーー

通学路。駅の近くの店で土産でも買ってくか。

「、、さてと」

なぜ土産を買うか。香織の見舞いに行くためである。
家は、、割と近いようだな。

ピンポーン、、インターホンを鳴らしてみる。

「ど、どなた、、？」
「ボクだ」
「え？え、、？ちょ、、！ちょっと待っててください！」

バタバタと家の中で音がする。
階段を駆け下りているのか。はたまた、何か物でも動かしているのか。

「えっと、、お待たせしましたぁ、、」

数分経って、玄関が開いて、香織が顔を出した。

「昨日は、、ご愁傷様、、とでも言っておくか」
「うっ、、その話は、、」
「悪い悪い。差し入れ持ってきたぞ」
「あ、ありがとう、、上がっていって、、」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうとするか」

初めての香織宅。
内装はとてもきれいで、香織が階段を上るところを見ると、香織の部屋は2階にあるようだ。

「ちょっと待ってて、、」

ここが部長さんの部屋か。。
榊の枝が飾ってあるのを見ると、どことなく神聖っぽい雰囲気はする。
よく見ると、お神酒もある。毎日お供えしてるのか？

「お待たせ、、」

小盆を持って香織が入ってくる。わざわざありがとうございます、どうも、、

「こちらこそわざわざ来てくれてありがとう、、差し入れまで、、」
「食べるか？」

箱を開けさせる。チーズケーキやエクレア、シューアイスなど、冷たい物を買ってきたのだ。

「お、、おいしそう、、いただきます、、！」

シューアイスに手を伸ばし、口に入れるなり頬をほんのり染める香織。

「んふふ、、！おいしいです、、」
「そりゃよかった」
「お礼と言ってはなんですが、、」
「ん？なんだ」
「家に、、泊まっていきませんか、、？」

な、なんですとー！？

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