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虹彩竜と歩むもの/第59話:来訪 作:光芒







―――天が真紅に染まる。その紅は夕焼けのような綺麗なものではない。青々とした森、雄大な山は灼熱の炎によって焼き焦がされ、多くの命が灰燼となって消えていく。
 そんな荒れ果てた世界に、漆黒の龍はいた。空を覆い隠すかのように巨大な龍はその巨体に似合わない悲しげな咆哮を挙げる。そんな龍には、地上から放たれた数千、数万の弓矢が雨のように降り注ぐ。龍は天を仰ぎながら、力なく地上へと堕ちていった。





















「っ!?」

 時間にして朝5時過ぎといった頃だろうか。遊大は飛び起きるようにして目覚めた。今遊大が見ていた光景はなんだったのであろうか。何もかもがわからぬまま周囲を見回すと、陸と仁はまだ眠っているようで彼らの寝息と時計の針の音だけが朝の自室に響いていた。

(……夢? それにしても訳が分からない夢だった。でもなんでだろう……凄く悲しかったのは)

 寝ぼけ眼のままベッドから降りた遊大は二人を起こさないようにそっとカーテンを開ける。初夏の暖かい日差しが寝起きの身体に降り注いだ。
 鈴音がセントラル校を去って約2週間が経とうとしていた頃。遊大たちはセントラル校と地方分校四校の連合チームによるデュエル交流戦が行われることを知った。そしてそのデュエル交流戦に参加する生徒が遊大、陸、仁、礼、留奈、林檎、美鈴の七人であるということも。
 先に行われた迷宮デュエルで遊万のところに辿り着き、彼と激戦を演じたこと。そして鈴音の躍進に彼らが一枚噛んでいることが選出理由であった。

「……そういや今日だっけ。他校の生徒たちが来るのって」

 一度決まればすぐに行動に移すのがデュエルアカデミアという学校の校風である。参加者である遊大はあまり関わらせては貰えなかったが、遊希ら生徒会の人間たちは運営側の人間であるため、この数週間はずっとその段取りに追われていた。
 ノース、イースト、ウエスト、サウスの四校から応援団も含めて何人ほどの生徒がやって来るのか、それらの生徒たちの衣食住をどう賄うのか。デュエリストとしては一人前な遊希たちであっても、そのような手続きは不慣れ極まりなかったのである。最もそんな手続きを生徒たちだけにさせるわけもなく、竜司やミハエルら教師たちの計らいでそれらの問題は無事解決したのであるが。

「ノース校とサウス校の人たちが飛行機で、イースト校とウエスト校の人たちは新幹線。空港と駅に大型の観光バスが各校四台ずつ……どれだけの費用が掛かっているんだろう」
「何朝から金の話をしてるんだお前は」
「うわっ!」

 窓から外を眺めながらぶつぶつとつぶやく遊大の後ろには同じように寝ぼけ眼の仁が立っていた。元々この部屋では朝に強い方ではあるが、普段は冷静な仁であってもいきなり学校の代表に選ばれたことにはさすがに堪えたようで、ここ数日は少しばかり疲れた様子を見せていた。
 もちろんただ他校の生徒とデュエルをするだけならばここまで気疲れすることはなかった。しかし、今回ばかりは事の大きさが違う。仁たちはセントラル校を代表してデュエルを行うのであり、彼らの勝敗がそのままセントラル校の、そしてセントラル校に籍を置くすべての生徒の評価へと繋がるのである。自分だけではなく他者の学校生活も変えかねないこの選出にプレッシャーを感じないものはいなかった。

「起きているなら声かけてよ」
「今声をかけたじゃないか。それで驚いたのはどこのどいつだ。ったく、それでも俺たちの大将か?」
「……言っておくけど俺はそのポジションに納得してないからね」

 このデュエル交流戦はチーム戦で行われるのだが、基本的なルールとしては1対1のデュエルをそれぞれ各一人ずつ計七戦行い、勝利数の多いチームが勝つという至ってシンプルなものであるといえる。
 しかし、柔道や剣道の試合と同じように一戦目にデュエルを行うものが「先鋒」となり、七戦目にデュエルを行うものが「大将」に宛がわれる。遊大はこの度セントラル校の代表こと『チーム・セントラル』の大将に遊大を除く六人の推挙で抜擢されたのだ。

「何故だ。皆がお前を大将に相応しいと認めたんだぞ? 舞原だってそうだったじゃないか」
「舞原さんは単に自分は一番早くデュエルをしたいだけだよね、それって」

 ちなみにデュエルの腕に自信を持っている留奈は自ら先鋒を買って出た。自分で自分のデュエルの腕を褒め称える彼女なら大将をやりたがると思っていただけにこれには誰もが驚いた。最もその実情は遊大の言う通り、単に自分が一番早くデュエルを慕いだけだったのだが。

「細かいことは気にするな。お前は大将なんだからどんと構えていろ。第一俺たちが先に四勝すれば俺たちの勝ちで決まるじゃないか」
「……そうだけどさー」
「まあ、相手の実力やデッキがわからない以上そんな大それたことなど言えないけどな。少なくとも浜部と同等、それ以上の相手が来るのは確実だろう」

 正直言ってしまえば、他校の生徒たちの実力は遊大たちにとっては未知数と言っていいだろう。もちろんセントラル校に比べて他の四校は今年度に開校したばかりであるために遊希たちのような強者の上級生がいない。そのため他校の一期生たる生徒たちは上級生に師事できず教師のアドバイスと自分たちの努力がそれだけ求められるのだ。
 だが、その過酷な状況がデュエリストたちを鍛えるのであれば。セントラル校に負けてたまるかという反骨心が彼らを強くする。そしてその反骨心こそが遊大たちが最も侮ってはいけないものであった。
 しかし、相手が強いことを恐れるデュエリストはこのアカデミアという学校にはいない。強ければ強い相手と戦えることそれ自体が自分たちにとってはプラスになるのである。

「でも、楽しみだね」
「ああ、そうだな。しかし……」

 仁の目線は気持ちよさそうに大口を開けて眠っている陸へと向いた。遊大や仁がこうして起きて朝の陽射しを浴びているにも関わらず一向に目覚める気配はない。それどころか普段の爽やかイケメンな彼の面持ちはその寝顔にはなかった。

「こんな状況で不細工に眠っていられるあたり、こいつが一番大物なのかもしれんな」
「そうかもね」

 そんな陸を余所に、遊大と仁は呆れたように笑うのであった。












 夏の太陽が昇り切った頃。竜司、ミハエルを代表した教師陣と詩織や綾香を中心とした生徒会のメンバーたちが待っていたセントラル校の入口に次々と大型の観光バスが乗り入れてくる。そして乗り入れたバスからは次々と各校を表す制服を来た生徒たちが降りてきた。
 北の大地こと北海道に拠点を置くノース校の制服は雪や雲の白色を基調としたものとなっている。そんな白い制服を纏った生徒たちの先頭に立ったのは何から何までが真逆な二人の生徒であった。
 一人は黒縁の眼鏡をかけた黒髪ショートヘアーの小柄な少女であり、一見すると地味な見た目ではあるが、その黒い瞳はまるで全てを見通すかのようにキラリと澄んでいる印象を見る者に与えている。
 そしてその少女の隣に立つのは右目が隠れるほど長い前髪が特徴的な男子生徒。緑色の美しい瞳を包む双眸はまるで猛獣のように鋭く、その奥にはまるで竜司らセントラル校の生徒たちに対する敵愾心が伺える。金髪や着崩した制服も相まっていわゆる「不良」のレッテルを貼られかねないような見てくれをしていた。
 最もこうして前に立つということは、この二人はノース校から選ばれた優秀なデュエリストであることには変わりなく、見た目こそ一般的な学生のそれとはかけ離れていてもデュエリストとしての実力には関係ないことなのである。

(……対照的ね)
(しかし、全然怖さを感じません)

 ノース校に続いてバスから降りて整列したのは紺寄りの黒色を基調とした制服を纏うイースト校の生徒たちだった。ノース校と同じように代表に選ばれたと思われる二人の生徒が前に立つ。
 遊希たちから見て左側に立っているのは遊希よりもわずかに身長が高いモデル体型の少女であり、艶のある美しい黒髪をフリフリのリボンで結んでツインテールにしている。幼さの残る髪型と大人っぽい出で立ちのギャップが際立っていた。
 そんな少女の横に立つのは赤茶色の髪に切れ長の瞳をしたどこか気だるそうな雰囲気を纏った少年。本来纏うべき制服を纏わず、赤い外套のようなジャケットを纏ったその姿はやはり異様であると言えた。イースト校は新設校であるため、生徒を集める必要がある。そのためデュエルで優秀な成績を残した生徒には一部校則が緩和されるという特典があった。彼はその恩恵を甘受しているのだろう。

(熱くないのかしら?)
(私だったらあんな恰好できマセン)

 三番目に現れたのは灰色がかった黒に薄っすらと縦縞のような細い線が入っている制服を身につけたウエスト校の生徒たちだ。バスから出てきた直後は関西弁などの方言が飛び交っていたが、竜司や遊希たちを前にすればそれらの雑談もすぐに止む。生まれ育ちこそ違えど、デュエリストであれば竜司や遊希、エヴァはあこがれの存在であるからだ。
 緊迫した雰囲気の中、前に歩み出たのは二人の女子生徒である。一人は美しい黒髪が特徴の清楚な雰囲気を纏った女子生徒である。ウエスト校は関西地方のデュエリストが通っているため、先入観として典型的な関西人の生徒ばかりに思われるが、比較的富裕層の住まう地域もまた関西には多いため、その辺りの出身者も通っている。彼女は恐らくそういった層の生まれなのだろう。
 そしてもう一人は肩まで伸びた明るい茶髪に青いベレー帽を被っている少女。見慣れない場所に来て困惑しているのか、それとも興味津々なのか。カメラを片手にあちこちに見回していた。

(……関西の人ってもっとチャキチャキしてるのかと思ったわ)
(銃で撃ったらバーン、ウッみたいな関西人ばかりなわけないでしょ)

 そして最後に現れたのはサウス校の生徒たちだ。九州は福岡に本拠地を持つ学校であるが、その生徒数は四校のうち最も少ない。そのため代表となる生徒も一人だけであった。
 火の国、ならぬ温暖な気候を表している臙脂色の制服を身に纏っているサウス校の代表は眼鏡をかけた男子生徒。見た目こそ優等生のテンプレート的なものであるが、髪の色は桔梗の花のように美しい紫色をしており、また無駄な肉の無い締まった身体をしている。ごつくはないが、やはり一般的な九州男児らしい雰囲気であった。

「……皆さんお揃いですかな。改めまして、遠いところまでよく足を運んで頂きました。セントラル校校長、星乃 竜司です。我々は皆さんを歓迎します」

 竜司の挨拶と共にセントラル校側の関係者が一斉にお辞儀をする。その後はミハエルら教師陣に続いて生徒会の目メンバーが簡潔な自己紹介を行ったのだが、やはり遊希とエヴァの番になると集中した様子の四校の生徒たちにはどよめきが起こった。
 それでも決して敵対的な雰囲気にはないにしても、その空間には緊張感が走っていたのは言うまでもない。この一週間の滞在期間の間、彼らは己の意地とプライドを賭けて戦うのだから。







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から揚げ
遊大くんの見た夢の内容が何だか不穏ですね・・・。この状況は遊希ちゃんが超銀河眼を召喚した際にドラゴン達のイメージ映像を見た時と似たような雰囲気を感じます。今後遊大くん達の身に何が起こるのか、目が離せないですね!

そして遂に各校の代表生達がセントラル校に登場しましたね!これから彼らがどの様に遊希ちゃん達生徒会の面々や遊大くん達セントラル校の代表生達とどの様に交流し、どの様な熱い激闘を見せてくれるのか、とても楽しみです!

彩奈ちゃんの容姿を的確且つ魅力的に表して下さってありがとうございます!ギャップ萌えは本当に最高ですね! (2017-08-27 15:53)
ター坊
ドラゴンなどの夢はきっと暴走フラグ。覇王遊大爆誕も近いか?
さて、ようやく登場した我が息子(?)琥太郎くん。ええ感じのヤンキーっぽさを出して登場ですね。掲示板では仁と対戦するそうですが、どう絡むのか楽しみです。 (2017-08-27 16:49)
光芒
から揚げさん
仰る通りで、この夢は色々と今後のストーリーに関わってきますね。まあそれはまだかなーり先の話で……

やっと応募キャラの本格登場です。ちなみに次の話で彩奈がどんなキャラか一発でわかる描写があります。だいぶ凄いことになっていますが。

ター坊さん
やだなー、覇王遊大ってなんのことですかー?(棒)

そして琥太郎ですが、他のキャラ同様フラグを立てつつちょろっと次の話で出てきます。特にまだ絡みがあるわけではないですが…… (2017-08-28 22:11)

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