32.けじめ　作：くちなし

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翌日のことになる。
有希もアカデミアに行くことが知らない間に決定しており、有希のほうから「一緒に行こ」
と声をかけられ、断る理由がなかったボクは有希の家に寄ってからアカデミアへ向かった。
残念ながら、有希とはクラスが離れてしまって、一緒に歩けるのは昇降口までなのだが、
初めてアカデミアを歩く有希は教室の位置がわからないようで、有希の配属クラスまで
案内したのだが、途中の女子や男子に何か変な目で見られているような気がして、違和感、
というものを強く感じた気がした。
有希の様子は何かに竦んでいるような目をしている。まるで空白があるかのように。

、、少し飛んでボクのクラスのHR後のことになる。

「なぁ悠里、今日は来るのが遅かったな」

会話の相手はウミキヨこと、海清である。

「ま、ちょっとしたことがあってな」
「へえ、気になるね」

出てきたのは毎度お馴染み安楽木と城ヶ崎である。

「ちょっとしたことってなんや？」

なぜボクの取り巻きは気にしたことをすぐ聞きたがるのか。
でも、コイツらには話してもいいかもな。女子二人とはいつの間にか打ち解けているし。
ウミキヨとは昔ながらの付き合いだし。言っても何も損はなさそうだ。

「ん、、有希が、、来た」
「へぇ、、」
「、、」

絶句か。なんか意外だな。てっきり、「嘘！？」とか、「何組？何クラス？」なーんてことを
聞いてくるかとばかり思っていたが、転入生特有の質問は聞いてこなさそうだな。

「ま、仲良くしてあげましょ」
「なんか上から目線やな」
「そっか、有希も来たのか、、」

3人が感嘆していると、1時限始業の予鈴が鳴り、ボクら選抜と特進のウミキヨはそれぞれのクラスへと戻っていった。

「、、、むむむ、、、ほかの女子と仲良くしてるなんて、、」

その様子を眺めている女子が一人。

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放課後。玄関に行く。

「あ、悠里、、」
「有希か」
「その、、一緒に、、帰r」
「観月くーん！」

なんだなんだ。後ろから声をかけられ、後ろを振り返ると、、

「一緒に帰ろー」
「ちょ、、！！」

有希のほうを見る。しかし有希の姿は既になく、どこかへといってしまったようだ。

「、、、」
「ねえ、一緒に帰ろーってば」

手を引かれ、とりあえず歩き出す。歩く途中も突如来た女の子は話し出す。

「、、あの子、なんか気味悪くない？」
「、、、」
「どこから来たのかも教えてくれないんだよ？」
「、、、」
「なんか言いなさいよ、、空気重いじゃない、、」
「あのな、、」

しょうがないな、、口を開けというなら言わせてもらおうか。

「有希には有希の事情がある。誰にも言いたくないようなね。見た目で判断するもんじゃ
ないから、、まー、仲良くしてやってくれ」
「ふーん、、」

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一週間後。有希のクラスにて。

「、、ねえ」
「、、なに？」
「あなた政府施設から来たんでしょ？」

政府施設。それは大方の場合アルカディア・ムーヴメントの俗称である。

「ふーん。。！、、何読んでるの」
「あ、、！返して、、」

有希の机から本を取って中身を見ると、文字ばかり。

「変なの、、」

そうつぶやいて本を返すと踵を返して自席へと戻っていった。

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「め、、めがね、、返して！」
「へーん！自力で取り返してみろぉ」
「そーだそーだ！」

終学活前。クラスには先生もいる。有希はメガネを取られて右往左往している様子だ。

「、、、」

先生は黙ってその様子を見ていた。どうやら、有希のことは目どころか、髪の末端にすら
かけていないらしい。

「金城は教室に残るように」
「、、？」

それだけ言われた。

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「悠里～！」

安楽木か。せめて教室では呼ぶ頻度やTPOというのを考えてはくれないだろうか。
周りの目線が多少なりとも気になってしまうのだよ。

「そんなきついこと言わないでよ、、」
「男女が下の名前で呼んでたらそういう関係を誤解されかねないだろ」
「大丈夫！悠里はぜんっぜんタイプじゃないから」

グッサッ！！ボクの精神に99999⁺の大ダメージ。ワンショットキルだな。

「し、、辛辣、、」
「ごめんごめん、、今日は用事あるから。。じゃーねー」

安楽木が去ったことだし。帰ろうかな。

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「金城さん、入学してからどうだ？」
「え、、その、、」

返答に困る。
というのも、最近、ちょっかいという名の嫌がらせを受け始めていた。

「クラスには馴染めた？」
「、、一応、、」
「そうか」
「あ、あの、、」
「なんだ？」
「、、嫌がらせを受けてたの、、見てましたよね、、なんで止めてくれなかったんですか」

はあ、、と、ため息を1つはいて。

「しょうがないと思うわよ、、だってアルカディアでしょ？」
「え、、？」
「んなガラの悪い政府施設から来たって知ったら格好の的なのわかんない？」
「え？それは言わない約束でしたよね！」
「そんな約束したかしら」
「、、、」
「それじゃ、職員会議あるから話はおしまい。気を付けて帰りなさい」
「、、、はい、、」

先生は教室から電気を消して出て行った。

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数週間後。体育でバスケットボールの練習をしていた。

「ねえ！、、なんで平気なの？」
「、、」

ポンポンポン、、ボールの突く音が響く。周りでは他の生徒たちが練習している。

「平気も何も、、なんも関係ないから、、」

関係ないって、、どういうことなのよ！？嫌じゃないの！？

「別に関わる事なんてほとんど無いんだから。その度に沈んでたら、キリがないもの、、」

放ったボールはきれいにゴールへと吸い込まれるように入って、床に落ちた。

「だから、、別にいちいち反応はしない。だけど嫌なものは嫌。それだけ」

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有希への嫌がらせ、、それはもはやイジメへと発展していた。
ものを隠されたり、汚されたり。朝来たら机に落書きが施されていたり。それでも有希は
我慢し続け、一日たりとも休むことなく通い続けた。誰にも他言することもなかった。
しかし、ある日の出来事。

「何読んでるんだよー」
「あ、、その本！返して！」
「何強気になってるんだよーデュエルでもするか？」
「いいわよ。。その代わり、、後悔しても知らないわよ」
「ちょ、、！止めなよ！2人とも！」
「止めないで、、これは私に対してのケジメをつけたいから、、」

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「ブラック・ローズ・ドラゴンでダイレクトアタック、、」

デュエルは有希が勝った。しかし、相手はまともに立てないようだ。
静かに相手に歩み寄る。

「負けたからどう、、とは言わないわ」

あの子、カッコいい、、あんな根のまっすぐな子になりたい、、そう思った。

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西日が空を綺麗に焦がす夕方。

「、、」

ベエルゼ、、私の過去の記憶がつまっているカード。
でも、私は過去を恨んだりしない。だって、過去も私自身だから。
過去の闇は深いかもだけど、あの時のデュエルで悠里が私にくれた光の輝きも大きかった。
だから、闇に溺れたくはない。悠里がくれた光を、私も持てるように、、