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4話・《邂逅》 作:Holic
シャロック「心せよ。あなたの眼前に再び死神が降臨するだろう。
そしてその時、決闘は終焉を迎える!
さあ、ラストターンだ!」
シャロック「メインフェイズ1開始時に罠発動!《影依の接合術 (シャドールート) 》!効果で墓地のミドラーシュを復活させる。再臨せよ、我が同胞よ!」
戦場(フィールド)に再び現れた少女。フィールドは岩石に身を包んだ巨竜が占拠しているが、そんな中でも少女の美しさは健在だ。
《影依の接合術(シャドールート)》
通常罠
このカードを発動したターン、自分は「シャドール」モンスターしか特殊召喚できない。
①自分の墓地の「シャドール」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
ハリー「ふん。確かに宣言通りに死神を復活させたな。しかしそんな低攻撃力なモンスター1体で何が出来るのかね?」
シャロック「喧(やかま)しいな。死に急ぐのも程々にしたらどうだい?
僕は手札から装備魔法《影依の誅殺剣 (シャドールパー・ダ) 》」をミドラーシュを対象に装備する!
ミドラーシュの腕には紫色の刀身が美しい細剣が握られた。一振りすると、まるで空気を両断しているような子気味良い音がした。しかし肝心のステータスは何も変化していない。
一体どのような方法で巨竜を倒そうというのだろうか。
ハリー「全くもって馬鹿馬鹿しい!せっかく私が攻撃しないでおいてやったというのに、所詮は青二才のハッタリか!」
シャロック「言っても分からないのかな?死に急ぐのも程々にしたらと言ったはずだよ。そして馬鹿馬鹿しいのはあなたの方だ。
このままバトルフェイズ!
僕は《エルシャドール・ミドラーシュ》で《ギガロック・ドラゴン》に攻撃!」
ーーーこの一撃で終わらせる!
【 偶像破戒・誅殺(イコノクラスム・スパーダ) 】!!!ーーー
剣を巨竜に向け、ミドラーシュが特攻する。
ウィンダ「やあああァァァッッッ!!!」
ハリー「所詮は青二才か!返り討ちにせよ《ギガロック・ドラゴン》!!」
グルルルアァァァ!!!
巨竜はハリーに合わせ大きな咆哮を上げた。このままでは全く勝ち目が無いシャロックだが・・・
当の本人はとても冷静だった。
シャロック「確かに、僕のデッキの切り札である《エルシャドール・ミドラーシュ》もといウィンダは、効果こそ優秀だがレベル5とあってステータスは低めだ。
しかしそこを補ってくれるのが《影依の誅殺剣 (シャドールパー・ダ) 》なのさ。」
ハリー「何を今更。
ん?
ステータスの低さ・・・
低・・・。
馬鹿な!まさかそんな事が!!
いかん、攻撃をやめろギガロック!!!」
シャロック「忘れたのか耄碌爺。そいつには強制的に攻撃させる効果があっただろう?
もう終わったのさ。」
《影糸の誅殺剣(シャドールパー・ダ) 》
装備魔法
「シャドール」モンスターにのみ装備可能。
①装備モンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。
②墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。自分の墓地から「エルシャドール」融合モンスター1体を特殊召喚する。
もう遅い。
華奢な少女と岩石の巨竜が激突する。
巨竜は巨大な岩の弾丸を無数に発射し、少女を追い詰める。しかし少女は難なく避け続け、ついには巨竜の懐にもぐり込んだ。
巨竜は少女を振り落とそうと巨躯を振り動かし続けたが、少女が剣を心臓部に突き刺した瞬間、巨竜の体の隙間という隙間から紫色の鋭い針が無数に飛び出し、巨竜はそのまま動かなくなってしまった。
ハリー「ば、馬鹿な!
なぜ私がぁぁぁ!!!」
LP4000→0
WINNER シャロック
シャロックは圧倒的なデュエルタクティクスでベテラン決闘者のハリーを下した。ハリーは未だに負けたことが受け入れられず、膝をついて項垂れていた。
そんなハリーを見下しながらシャロックは「経験云々で決闘は勝敗は決まらない。運と実力、そして信頼出来る同胞がいてこそ、始めて決闘に勝てる条件が整うのさ。」
と言い放った。
ハリー「こんな小僧に負けるとはな・・・。
さあ私を殺せ!こんな小僧に負けた事実を受け入れる位なら死んだ方が良いわ!」
シャロックは項垂れているハリーの元へ歩み寄ると、腹部に蹴りをいれ吹き飛ばした。
ハリー「うっ、ぐううう、、、!
なぜ殺さん!さっさとひと思いに・・・」
シャロック「駄目だね。あなたは僕のようなちっぽけな小僧の精霊使いに負けたという事実に苦しみながら生きながらえるんだね。」
ハリー「くッ、貴様卑怯だぞ!」
シャロックはハリーを無視して村へ歩いて行った。シャロックの頭の中は先程の決闘の事なんて頭になく、これから大虐殺する事しか頭にないのだ。
シャロック「やっとだ!この時を待っていた!
永続罠《 影依の原核(シャドールーツ) 》を発動!さあ征け原核たちよ!
生けるもの全てを地獄(リンボ)に送りこめ!阿鼻叫喚の嵐を巻き起こせ!!」
グアアア!!!
グァルルル!!!
キシャアアア!!!
原核は猛スピードで村を襲った。
口元から血液や肉片をだらしなく零しながら、嵐のように精霊や亜人を襲った。
ハリー「ふう、危なかった。何とか演技をして誤魔化せたわ。このまま逃げきれば他の街のギルドへのコネで何とか・・・
ガハッ!貴様、よくも、、、! 」
ハリーが逃げようとするが、ウィンダがそれを許す事はなかった。
誅殺剣で心臓を一突きした。
ハリーは「ーーー!!」とうめき声を上げ、口から血を吐きながら死んだ。
ウィンダ「私が嫌う生き物は2種類です。
一つは大した信念もなく、ウソだらけの薄っぺらな生き物。
もう一つはマスターの障害になりうる生き物です。
あなたは残念ながら、その条件をクリアしてしまいました。苦しんで逝きなさい。」
ウィンダは無表情でハリーを見下しながら呟いた。その後、ウィンダはシャロックの元へ歩いて行った。
シャロック「あいつ、始末した?」
ウィンダ「つくづく屑な決闘者でした。自分だけ無事に生き残ろうなんて図々しいにも程があります。大体マスターに楯突こうとは・・・」
シャロック「まあまあウィンダ、そんなにピリピリしないの。ごめんね、いつも君の手を汚させるような仕事ばかり任せちゃって。」ナデナデ
ウィンダ「ちょ、マスター、、、はうう・・・」
シャロックはウィンダの頭を撫でてあげた。ウィンダに汚れ仕事を任せた後は、いつもこうしている。
シャロック「あんまり切り詰めすぎても駄目だよ。たまにはリフレッシュしないと。」
ウィンダ「 (ま、マスターに頭撫でてもらっちゃった、、、!今日はついてるかも。しかもぎこちない手つきが可愛くて最高!
って、駄目駄目!少しはお姉ちゃんらしい所見せなきゃ・・・) 」
シャロック「どうしたの?ぼうっとしちゃってさ。」
ウィンダ「はうっ!?申し訳ありませんマスター。すぐにでも村人を抹殺しましょう。」
シャロック「それなら大丈夫だよ。さっき原核を放ったばかりだから。」
ウィンダ「あら、そうなのですか?なら後はゆっくり待つだけですね。特に障害がなければいいのですが・・・」
シャロック「おそらく大丈夫だよ。今まで目立った妨害もなかったし。
ウィンダ、早く行こ?」
ウィンダ「はい、マスター!」
シャロックは楽しそうに笑顔を浮かべながら、ウィンダはシャロックの笑顔を見て嬉しそうに手を繋いで仲良さげに歩いていた。
ピリカ「な、なんなの・・・?これ。」
ラム「キュウ・・・!(マジかよ・・・!) 」
ちょうどウィンダがハリーを始末した頃、ピリカとラムは地獄の中にいた。
さっき自分たちを追ってきた男たちが無残にも食い千切られるのを見るのは、あまりにも辛い事だった。
ピリカはラムを抱えて逃げようとするが、遠くから聞こえてくる叫び声や、咀嚼音を聞いてしまうと足がすくんで立てなくなってしまう。
しかしピリカが最も恐れている事はラムの死だ。ラムはピリカを守るために残り少ない力を使ってしまい、自力で動くこともままならない。自分を助けてくれたラムのためにも、ここは勇気を振り絞って立ち上がらなければならない。
しかし、10歳の少女にはとても辛いどころの話ではない。言葉には表しがたい恐怖が足をすくませる。
ピリカ「こ、こわいよぉ・・・。
ねえラム、わたしたちここで死んじゃうのかな?
ぐすっ、うえええん!!こわいよぉぉぉ!!」
ラム「キュウ!キュウウウ・・・。(バカ言え!こんな所で安々と死んでたまるかよ・・・。) 」
恐怖で泣き出してしまったピリカを慰めるラム。しかし内心ラムを諦めていた。こんな絶望的状況のなかで、一体誰が希望を持てるのだろうか。
ピリカ「きゃあああ!!化け物が、こっちに来る!!!」
2人が立ち止まっているなか、原核口から肉片を零しながらこちらを向いてきた。原核にはマスターとシャドール以外目に映るもの全てが餌に過ぎないので、襲わない理由がない。
原核はぐんぐんスピードをあげ、ピリカたちに襲いかかる。
ピリカ「いやぁぁぁ!!!」
ラム「キュウウウ!!!(ピリカに近寄るなアアア!!!) 」
2人は全てを悟り目をつぶった。しかし原核は口を開けたままこちらには近づかない。むしろうなり声をあげ、警戒しているようにも見える。
ピリカ「あれ、わたしたちぶじなの?」
ラム「キュウウ。キュウ!キュウウウ!(何とか生きているようだな。それはそうと、これはチャンスだ!今のうちに早くこの村を出よう!) 」
ピリカは安心感からかちゃんと立てるようになり、ラムを抱えて走りだした。元々ラムを休ませてもらうために村へ向かったのに、結局村では休ませてもらえず、足の痛みも全く引いていない。
いつものピリカならゆっくりと歩いているが、今は命の危機だ。足の痛みを気にすることは出来ない。
ピリカは痛む足を全身全霊で動かし、ラムを抱えて村を出た。
ピリカ「ラム、なんとか村を出られたよ。安心してね?」
ラム「キュウ。キュウウ・・・(そうだな。とりあえずもうすこ離れたら一休みして・・・) 」
ラムの視線の先には謎の青年がいた。しかもまるでこちらに来るのを待っていたかのように。
シャロック「なぜだ。なぜ生きている?原核のやつは見逃したのか?」
声色こそ落ち着いているが、この場で一番焦っているのはシャロックだ。今まで原核は1度たりとも殺し損ねた事はないし、見逃した事もない。
ピリカ「あ、あなたはだれ?
おなまえを・・・きゃっ!」
シャロックは問答無用で影糸を使いピリカとラムを近くの木に縛り付けた。
ピリカ「なにするのさ!はなしてよ!」
ラム「キュウ! (離せよちくしょう!) 」
シャロック「黙っていてくれ。
なぜ君たちが生きているのかは知らないが、この現場を見てしまったからには生かしておく事はできない。
本来ならここですぐにでも始末しておきたいけど、相手は子供の精霊と小さな獣の精霊だ。
少しチャンスをあげる。僕は今から決闘盤からカードを引くけど、気に入っているカードを引けたら生かして帰してあげる。でも、気に入ったカードが引けなかったらその場で斬首だ。」
シャロックは決闘盤に手を置き、カードを引いた。しかし、シャロックの表情は険しい。
シャロック「 (なんだこのカードは!?《神の現し身との接触》?僕はこの場で創造をしてしまったのか!しかもこのカードには山吹色の鬣(たてがみ)を持った獅子の隣に、あの緑髪の少女がいる。
これは、何かの啓示なのか?) 」
ピリカ「ねえ、お気に入りのカードは引けた?」
シャロック「いいや、どちらでもない。だから君たちを解放するよ。」
そう言いながらシャロックが指を鳴らすと、ピリカ達を縛っていた糸が消えた。
ラム「キュウ?(お前、どういう風の吹き回しだ?) 」
ラムは疑問に思いシャロックに問いかけたが、シャロックはキョトンとした顔をしていた。ラムの言っていることが言語的に理解できないのだろう。
ウィンダ「マスター。あの鳥は(どういう風の吹き回しだ?)と聞いております。」
シャロック「そうか、君はなぜが鳥との意思疎通が得意だったね。ありがとう。
ただ(気に入ったカード)でもなく、(気に入らないカード)でもなかっただけさ。
さあ、僕の気が変わらないうちにさっさとどこかへ行くが良いさ。」
ラム「 (ふぅ~。さっさと行こうぜ!) 」
ピリカ「・・・」
ウィンダ「せっかくマスターが見逃してくださったのだから、早くどこかへ行きなさい。」
ピリカ「あのさ、せっかくだし、おたがいに自己しょうかいしてからわかれない?」
シャロック・ウィンダ・ラム
「???」
シャロックは思わずずっこけてしまった。ウィンダは呆れてため息を吐き、ラムに関しては開いた口が塞がっていない。
初めてあった人と自己紹介をする事は良いことだが、相手を間違っている。相手は先程自分たちを殺しかけているのだ。
シャロック「やれやれ仕方あるまい。
僕の名前はシャロック。16歳だ。
見ての通りだけど、精霊使いをしている。訳あって旅をしているけど、それ以外は何も教えないよ。」
ピリカ「ありがとねシャロックさん!
わたしの名前はピリカ!10さいの(せいれい)だよ!そしてこの子はラム。わたしのかぞくなの!」
ラム「キュウ。(よろしく。とは言わねえな。お前怪しいし。) 」
ピリカ「もうラムったら!そういうふうにすぐうたがっちゃだめ!
だってこの人こんなにやさしそうじゃん!」
シャロックは呆気にとられていた。
「どうやって会話しているのだろう。」
としか思えないのだ。誰だってそう思うだろう。
挙げ句「優しそう」と抜かしたのだ。
シャロック「あの~、お話中失礼します。
君たちさあ、それで会話成立しているの?」
ピリカ「うん!だってわたしが赤ちゃんだったころからずっと一緒だもん!
ねえー、ラム♪」スリスリ
ラム「キュウ♡キュウ~♪(あぁ~♡ピリカのほっぺマシュマロみたいで柔らけえ~。最高♪) 」
ラムはピリカに頬ずりをされながら天国にいるような心地よさを体感していた。
ウィンダ「マスター、私もマスターにほっぺすりすりしたいです。いいでしょうか?」
シャロック「残念ながら却下。僕はそういうの苦手で・・・」
ウィンダは念願の初頬ずりができなかったため、悲しそうな表情になってしまった。
ピリカ「ねえ、そこの悲しそうなおねえちゃんはなんて言う名前なの?教えて、教えて♪」
好奇心旺盛なピリカはウィンダにも自己紹介を求める。
ウィンダ「結構です。私はあくまでもマスターであるシャロック君に付き従う下僕です。名前なんて教える必要はないし、あなたの名前も覚える必要はありません。」
ピリカ「そっかぁー。
じゃあぜんしんタイツのおっ○いおねえちゃん。
りゃくしておっ○いタイツでいいよね?」
ウィンダ「はあ!?いい訳ないでしょこのお馬鹿さん!
全く仕方ありませんね・・・。私の名はウィンダ。お願いだからその残念なあだ名はやめてください。」
まるでどこぞの師匠のようなあだ名をもらったウィンダ。当然許すわけがなく、とうとう名前を教える羽目になってしまった。
ウィンダ「マスター、私あの子苦手です。恥ずかしがる事なく破廉恥なあだ名をつけるなんて、、、!」ヒソヒソ
シャロック「まあまあ落ち着いてウィンダ。僕たちばかり次の村へ向かわないと。
さあピリカ、僕たちはここでお別れだ。」
シャロックは原核をカードに封印し、ウィンダと共に歩き出した。
しかし・・・
ピリカ「あ、あの、わたしもいっしょにつれて行ってください!」
ラム「キュウウ!?(おい、何言ってんだ!?) 」
シャロック「?なぜ君を?」
ピリカ「それはその、とくにりゆうはないんだけど、いちおう、わたしたちを助けてくれたからっていうか・・・」
シャロック「そういうのはやめておいた方がいい。君と僕とでは性別だって価値観だって目的だって、色々なところが根本的に違う。」
当然シャロックは拒んだ。自分の目的の邪魔に過ぎないし、自分のために他者を巻き込むのは気分がよくないからである。
シャロック「それに僕は精霊使いだ。だから・・・」
ピリカ「そういうのはいいもん!わたし、とにかくあなたについて行きたいの!あなたから色んなことを学びたいの!」
シャロック「待て待て、そういう君の目的はなんだい?」
ピリカ「わたしは、おとうさんをさがしてるの!あなたなら霧の谷(ミストバレー)の場所だって知ってるはず!」
シャロック「霧の谷(ミストバレー)だって?まさか君は父親を探すために実在しているかもわからない場所を目指しているのか?」
ピリカ「きっとあるもん!おとうさんをさがすためなら、行ってみせるんだから!」
ピリカは旅の目的を告げた。それは失踪した父親を探す事であった。
本来ガスタ族は霧の谷(ミストバレー)で生まれ暮らす者だったが、過去の大戦で膨大な被害を負ってからは、禁足地に認定されてしまい、今は自然が豊富な別の土地でひっそりと暮らしている。しかも霧の谷(ミストバレー)自体も地図から消されてしまったので、もう存在すら幻に近い伝説の地と化している。
それ故にピリカは今まで祖先の生まれ故郷を知らずに生きてきた。父親はピリカが3歳の頃に失踪しており、それからは血の繋がりのない里親に預けられ育った。
父親の存在を知ったのはつい2年前の事である。どうしても父親を探して会いたかったピリカは里親と相談をして旅に出ることとなり、相棒のラムと一緒に父親が最後にいたと言われている霧の谷(ミストバレー)を目指し旅をしていたのだ。
シャロック「そうだったのか。
じゃあここで残酷な質問をさせてもらおうかな。
仮に君はこの世界を全て回りきり、それでも父親が見つからなかったらその時はどうする?」
それはピリカにとってはとても重い質問だった。今まできっとどこかで元気にしていると思っていたから、どこかで平和に暮らしていると思っていたから、前向きに旅を楽しんできた。父親がいなかったらなんて考えた事がなかった。
ピリカの決断は・・・
ピリカ「わたしは、それでもさがしつづける!たとえどこかでおとうさんが死んじゃってても、おはかをたててあげるの!
わたしはずっとあきらめないし、おとうさんはきっとどこかにいる!」
即答だった。
もう少女は決断を済ませた眼をしていた。
恐らく彼女の覚悟を曲げることは誰であろうとできないだろう。
シャロック「そうか、わかった・・・。
じゃあ僕についてくるといい。ただし僕の邪魔をしないっていう条件付きでね。」
ピリカ「い、いいの?」
シャロック「ああ。」
ピリカ「やったぁぁ!
やったよラム!!」
ピリカはラムを抱えながら嬉しそうに飛び跳ねた。
ラム「キュウ!キュウウウ?(よかったなピリカ!
しかし本当に奴を信用していいのか?) 」
ウィンダ「心配には及びませんよラムさん。マスターは嘘をつかない良い子です。信用していいんですよ。」
夕陽がさす丘で、小さな物語が始まろうとしていた。
一人は冷酷な精霊使い
もう一人は無垢な精霊
ついに駒はそろった。
ピリカ「それじゃあ早く行こうよシャロックさん!」
シャロック「あの~。
それはいいんだけどさ、まずはちゃんと服を着ないと。あとラムをぐったりしてるから2、3日は休ませてあげないと。」
ピリカ「そうだった!ラムを元気に・・・
って、きゃあああ!もう、早く言ってよ、シャロックさんのばかー!!!」
もう遅い。
ボスの追っ手から逃げる際にナイフだの何だので衣服がボロボロで、特にまだ膨らみかけの胸とか胸とかがはだけているのだ。
それからシャロックは食料と医療品を探すために、ピリカは衣服とラムを休ませる場所を探すために村を物色しているなか、ウィンダはシャロックの召喚した精霊たちと村の周辺の見張りをしており、ちょうど休憩中だった。
ウィンダ「はぁ~。全く、お荷物が増えてしまいました。」
少女「お荷物って言い方はないでしょ~。あたし、あの子と気が合うかも!」
ウィンダ「ウェンは気楽でいいですね。私なんていきなり破廉恥なあだ名をつけられてしまったんだから。」
少女→ウェン「仕方ないわよ。無理して人形から精霊っぽい見た目にしたら緑ポニテの全身紫タイツの巨乳になっちゃったんだから。エロいあだ名つけられることなんて覚悟しておかないと。」
ウィンダ「あなたねぇ・・・。
というか、あなたも少しは話したらどうです?エグリスタ。あなたが黙りこくるなんて病気にでもかかったのですか?」
グレゴリオ「あのなぁ、確かにオレの本名はエグリスタだ。でもオレ決闘以外ではグレゴリオって呼んでくれって言ったはずなんだが。
いい加減学べこの童顔巨乳女。」
ウィンダ「よく言いますよこの全身鎧のセ○ハラオヤジが。」
何だか仲が悪そうだが、この3人がシャロックの精霊である。
ウィンダはは普段からシャロックのもとに限界しており、シャロックの補佐をしている。
ウェンとグレゴリオは、普段は限界していないが、シャロックの召喚に応じて現れている。
ウェン「それにしても、また大きくなったんじゃないその胸。
少し確かめさせてよ~♪」モミモミ
ウィンダ「ひゃあああン!もう、ウェンったら何するのよ!」
ウェン「もう、こんなにやらしい胸しちゃって!いい加減その巨乳でマスターの事襲ったら?」
ウィンダ「襲うわけないでしょ!
あなたが言うことなんて基本R18的なことなんだから・・・。あとしゃべりながら胸を揉むのはどうかと思いますけど!」
ウェン「あんたねぇ、2つのことを同時にこなすっていうのは案外難しいのよ?っていうか、あんた何のための全身タイツよ!?そのタイツはあんたのパーフェクトボディをくっきり出すためのアイテムでしょ!
ほら、想像なさい!あんたの大好きなマスターにその胸揉まれる姿を・・・」
ウィンダ「そんな馬鹿なこと・・・
いやぁ、ああん!そんなに強く揉まれると、感じちゃう、、、!
ああ、もう限界ですマスター、、、」
シャロック「3人ともお疲れさま。
っ!?あ、なんかごめんなさい・・・。」
そこには胸を揉んでいるウェンと、胸を揉みしだかれてもろに感じているウィンダと、気まずそうに2人から視線を逸らしているグレゴリオがいた。
グレゴリオ「あらま、あんたやらかしたなマスター。」
ウェン「あ、ごめ~ん☆」
ウィンダ「もう、マスターの、みんなの馬鹿~!!」
シャロック「何だか今日はよくばか馬鹿言われる日だな。
ちょっとショックだなー・・・。」
自分には何の罪もないのに1日に2度も馬鹿と言われ、内心ショックなシャロックであった。
その後、ピリカを含めた5人で遅めの昼食を取ったが、シャロックのテンションがいつにも増して低かったので、ウィンダが心配してくれたらしい。
かくして物語は本格的に始まる。
もう運命の歯車は止まらない。
「ちっと風が生臭くなった。己(おれ)の勘が正しけりゃ、噂に聞く影の精霊使いか?」
「きっとそうに違いありません。拙者らも急がねば。」
勇ましき武士風の精霊使いは、急いでいた。
「影の精霊使い・・・!
私、嫌な予感がします。神星樹の守りを固めてください。」
「了解いたしました、マスター。」
心優しき騎士の精霊使いは、住処を守るために決意を固めていた。
「ねえ魔術師さん、今凶星が見えた。これから一波乱起きるのかな?」
「さあな。影の精霊使いが何をしようが、知ったことではない。」
無限の可能性を持つ魔術師見習いの精霊使いは、恐怖を感じていた。
「たった今、大きな精霊の反応を感知しました!」
「恐らく影の精霊使いだ。そろそろ僕たちも動くべきかな。」
正義を束ねる少年の精霊使いは、動き始めようとしていた。
「これから俺たちは、一体どうすればいいのだろうか。」
「大丈夫ですよマスター。星々の加護がある限り、我々は安全です。」
気高き英雄の精霊使いは、悩んでいた。
「マスター、あんたの予想通り影の精霊使いだ!」
「そうか、ならば来るべき時に備えねばな。
さあ、貴様はどうする。影の精霊よ。」
冷静な語り部の精霊使いは、来るべき時を待っている。
「早く来い影の精霊使いよ!オレは貴様と殺り合いたくてウズウズしてるんだ!」
「ねえマスター、影の精霊使いって強い?」
狂った爆炎の精霊使いは、まだ見ぬ相手に戦慄する。
シャロック「もう2日間たったけど、ラムは大丈夫?」
ラム「キュ、キュウ。(ああ、問題ないぜ。) 」
ピリカ「それじゃあそろそろ出発だね!
あらためてよろしくね、シャロックさん、ウィンダさん!」
ウィンダ「こちらこそよろしくお願い致します。」
影の精霊使いたちは、幻の地を目指して歩み始めた。
次回予告
「返事が早くて何よりだ。」
「このモヤシみたいなマスターと乳デカ女の兄貴分だ!よろしくな!」
「もう仲間の死は、味わいたくないですから・・・。」
「つまり、何が言いてぇ・・・!」
「さあ少年よ、その怒りを解き放つ覚悟はあるかい?」
次回「風民と異徒の物語」
5話・《摩天楼の襲撃》
そしてその時、決闘は終焉を迎える!
さあ、ラストターンだ!」
シャロック「メインフェイズ1開始時に罠発動!《影依の接合術 (シャドールート) 》!効果で墓地のミドラーシュを復活させる。再臨せよ、我が同胞よ!」
戦場(フィールド)に再び現れた少女。フィールドは岩石に身を包んだ巨竜が占拠しているが、そんな中でも少女の美しさは健在だ。
《影依の接合術(シャドールート)》
通常罠
このカードを発動したターン、自分は「シャドール」モンスターしか特殊召喚できない。
①自分の墓地の「シャドール」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
ハリー「ふん。確かに宣言通りに死神を復活させたな。しかしそんな低攻撃力なモンスター1体で何が出来るのかね?」
シャロック「喧(やかま)しいな。死に急ぐのも程々にしたらどうだい?
僕は手札から装備魔法《影依の誅殺剣 (シャドールパー・ダ) 》」をミドラーシュを対象に装備する!
ミドラーシュの腕には紫色の刀身が美しい細剣が握られた。一振りすると、まるで空気を両断しているような子気味良い音がした。しかし肝心のステータスは何も変化していない。
一体どのような方法で巨竜を倒そうというのだろうか。
ハリー「全くもって馬鹿馬鹿しい!せっかく私が攻撃しないでおいてやったというのに、所詮は青二才のハッタリか!」
シャロック「言っても分からないのかな?死に急ぐのも程々にしたらと言ったはずだよ。そして馬鹿馬鹿しいのはあなたの方だ。
このままバトルフェイズ!
僕は《エルシャドール・ミドラーシュ》で《ギガロック・ドラゴン》に攻撃!」
ーーーこの一撃で終わらせる!
【 偶像破戒・誅殺(イコノクラスム・スパーダ) 】!!!ーーー
剣を巨竜に向け、ミドラーシュが特攻する。
ウィンダ「やあああァァァッッッ!!!」
ハリー「所詮は青二才か!返り討ちにせよ《ギガロック・ドラゴン》!!」
グルルルアァァァ!!!
巨竜はハリーに合わせ大きな咆哮を上げた。このままでは全く勝ち目が無いシャロックだが・・・
当の本人はとても冷静だった。
シャロック「確かに、僕のデッキの切り札である《エルシャドール・ミドラーシュ》もといウィンダは、効果こそ優秀だがレベル5とあってステータスは低めだ。
しかしそこを補ってくれるのが《影依の誅殺剣 (シャドールパー・ダ) 》なのさ。」
ハリー「何を今更。
ん?
ステータスの低さ・・・
低・・・。
馬鹿な!まさかそんな事が!!
いかん、攻撃をやめろギガロック!!!」
シャロック「忘れたのか耄碌爺。そいつには強制的に攻撃させる効果があっただろう?
もう終わったのさ。」
《影糸の誅殺剣(シャドールパー・ダ) 》
装備魔法
「シャドール」モンスターにのみ装備可能。
①装備モンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。
②墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。自分の墓地から「エルシャドール」融合モンスター1体を特殊召喚する。
もう遅い。
華奢な少女と岩石の巨竜が激突する。
巨竜は巨大な岩の弾丸を無数に発射し、少女を追い詰める。しかし少女は難なく避け続け、ついには巨竜の懐にもぐり込んだ。
巨竜は少女を振り落とそうと巨躯を振り動かし続けたが、少女が剣を心臓部に突き刺した瞬間、巨竜の体の隙間という隙間から紫色の鋭い針が無数に飛び出し、巨竜はそのまま動かなくなってしまった。
ハリー「ば、馬鹿な!
なぜ私がぁぁぁ!!!」
LP4000→0
WINNER シャロック
シャロックは圧倒的なデュエルタクティクスでベテラン決闘者のハリーを下した。ハリーは未だに負けたことが受け入れられず、膝をついて項垂れていた。
そんなハリーを見下しながらシャロックは「経験云々で決闘は勝敗は決まらない。運と実力、そして信頼出来る同胞がいてこそ、始めて決闘に勝てる条件が整うのさ。」
と言い放った。
ハリー「こんな小僧に負けるとはな・・・。
さあ私を殺せ!こんな小僧に負けた事実を受け入れる位なら死んだ方が良いわ!」
シャロックは項垂れているハリーの元へ歩み寄ると、腹部に蹴りをいれ吹き飛ばした。
ハリー「うっ、ぐううう、、、!
なぜ殺さん!さっさとひと思いに・・・」
シャロック「駄目だね。あなたは僕のようなちっぽけな小僧の精霊使いに負けたという事実に苦しみながら生きながらえるんだね。」
ハリー「くッ、貴様卑怯だぞ!」
シャロックはハリーを無視して村へ歩いて行った。シャロックの頭の中は先程の決闘の事なんて頭になく、これから大虐殺する事しか頭にないのだ。
シャロック「やっとだ!この時を待っていた!
永続罠《 影依の原核(シャドールーツ) 》を発動!さあ征け原核たちよ!
生けるもの全てを地獄(リンボ)に送りこめ!阿鼻叫喚の嵐を巻き起こせ!!」
グアアア!!!
グァルルル!!!
キシャアアア!!!
原核は猛スピードで村を襲った。
口元から血液や肉片をだらしなく零しながら、嵐のように精霊や亜人を襲った。
ハリー「ふう、危なかった。何とか演技をして誤魔化せたわ。このまま逃げきれば他の街のギルドへのコネで何とか・・・
ガハッ!貴様、よくも、、、! 」
ハリーが逃げようとするが、ウィンダがそれを許す事はなかった。
誅殺剣で心臓を一突きした。
ハリーは「ーーー!!」とうめき声を上げ、口から血を吐きながら死んだ。
ウィンダ「私が嫌う生き物は2種類です。
一つは大した信念もなく、ウソだらけの薄っぺらな生き物。
もう一つはマスターの障害になりうる生き物です。
あなたは残念ながら、その条件をクリアしてしまいました。苦しんで逝きなさい。」
ウィンダは無表情でハリーを見下しながら呟いた。その後、ウィンダはシャロックの元へ歩いて行った。
シャロック「あいつ、始末した?」
ウィンダ「つくづく屑な決闘者でした。自分だけ無事に生き残ろうなんて図々しいにも程があります。大体マスターに楯突こうとは・・・」
シャロック「まあまあウィンダ、そんなにピリピリしないの。ごめんね、いつも君の手を汚させるような仕事ばかり任せちゃって。」ナデナデ
ウィンダ「ちょ、マスター、、、はうう・・・」
シャロックはウィンダの頭を撫でてあげた。ウィンダに汚れ仕事を任せた後は、いつもこうしている。
シャロック「あんまり切り詰めすぎても駄目だよ。たまにはリフレッシュしないと。」
ウィンダ「 (ま、マスターに頭撫でてもらっちゃった、、、!今日はついてるかも。しかもぎこちない手つきが可愛くて最高!
って、駄目駄目!少しはお姉ちゃんらしい所見せなきゃ・・・) 」
シャロック「どうしたの?ぼうっとしちゃってさ。」
ウィンダ「はうっ!?申し訳ありませんマスター。すぐにでも村人を抹殺しましょう。」
シャロック「それなら大丈夫だよ。さっき原核を放ったばかりだから。」
ウィンダ「あら、そうなのですか?なら後はゆっくり待つだけですね。特に障害がなければいいのですが・・・」
シャロック「おそらく大丈夫だよ。今まで目立った妨害もなかったし。
ウィンダ、早く行こ?」
ウィンダ「はい、マスター!」
シャロックは楽しそうに笑顔を浮かべながら、ウィンダはシャロックの笑顔を見て嬉しそうに手を繋いで仲良さげに歩いていた。
ピリカ「な、なんなの・・・?これ。」
ラム「キュウ・・・!(マジかよ・・・!) 」
ちょうどウィンダがハリーを始末した頃、ピリカとラムは地獄の中にいた。
さっき自分たちを追ってきた男たちが無残にも食い千切られるのを見るのは、あまりにも辛い事だった。
ピリカはラムを抱えて逃げようとするが、遠くから聞こえてくる叫び声や、咀嚼音を聞いてしまうと足がすくんで立てなくなってしまう。
しかしピリカが最も恐れている事はラムの死だ。ラムはピリカを守るために残り少ない力を使ってしまい、自力で動くこともままならない。自分を助けてくれたラムのためにも、ここは勇気を振り絞って立ち上がらなければならない。
しかし、10歳の少女にはとても辛いどころの話ではない。言葉には表しがたい恐怖が足をすくませる。
ピリカ「こ、こわいよぉ・・・。
ねえラム、わたしたちここで死んじゃうのかな?
ぐすっ、うえええん!!こわいよぉぉぉ!!」
ラム「キュウ!キュウウウ・・・。(バカ言え!こんな所で安々と死んでたまるかよ・・・。) 」
恐怖で泣き出してしまったピリカを慰めるラム。しかし内心ラムを諦めていた。こんな絶望的状況のなかで、一体誰が希望を持てるのだろうか。
ピリカ「きゃあああ!!化け物が、こっちに来る!!!」
2人が立ち止まっているなか、原核口から肉片を零しながらこちらを向いてきた。原核にはマスターとシャドール以外目に映るもの全てが餌に過ぎないので、襲わない理由がない。
原核はぐんぐんスピードをあげ、ピリカたちに襲いかかる。
ピリカ「いやぁぁぁ!!!」
ラム「キュウウウ!!!(ピリカに近寄るなアアア!!!) 」
2人は全てを悟り目をつぶった。しかし原核は口を開けたままこちらには近づかない。むしろうなり声をあげ、警戒しているようにも見える。
ピリカ「あれ、わたしたちぶじなの?」
ラム「キュウウ。キュウ!キュウウウ!(何とか生きているようだな。それはそうと、これはチャンスだ!今のうちに早くこの村を出よう!) 」
ピリカは安心感からかちゃんと立てるようになり、ラムを抱えて走りだした。元々ラムを休ませてもらうために村へ向かったのに、結局村では休ませてもらえず、足の痛みも全く引いていない。
いつものピリカならゆっくりと歩いているが、今は命の危機だ。足の痛みを気にすることは出来ない。
ピリカは痛む足を全身全霊で動かし、ラムを抱えて村を出た。
ピリカ「ラム、なんとか村を出られたよ。安心してね?」
ラム「キュウ。キュウウ・・・(そうだな。とりあえずもうすこ離れたら一休みして・・・) 」
ラムの視線の先には謎の青年がいた。しかもまるでこちらに来るのを待っていたかのように。
シャロック「なぜだ。なぜ生きている?原核のやつは見逃したのか?」
声色こそ落ち着いているが、この場で一番焦っているのはシャロックだ。今まで原核は1度たりとも殺し損ねた事はないし、見逃した事もない。
ピリカ「あ、あなたはだれ?
おなまえを・・・きゃっ!」
シャロックは問答無用で影糸を使いピリカとラムを近くの木に縛り付けた。
ピリカ「なにするのさ!はなしてよ!」
ラム「キュウ! (離せよちくしょう!) 」
シャロック「黙っていてくれ。
なぜ君たちが生きているのかは知らないが、この現場を見てしまったからには生かしておく事はできない。
本来ならここですぐにでも始末しておきたいけど、相手は子供の精霊と小さな獣の精霊だ。
少しチャンスをあげる。僕は今から決闘盤からカードを引くけど、気に入っているカードを引けたら生かして帰してあげる。でも、気に入ったカードが引けなかったらその場で斬首だ。」
シャロックは決闘盤に手を置き、カードを引いた。しかし、シャロックの表情は険しい。
シャロック「 (なんだこのカードは!?《神の現し身との接触》?僕はこの場で創造をしてしまったのか!しかもこのカードには山吹色の鬣(たてがみ)を持った獅子の隣に、あの緑髪の少女がいる。
これは、何かの啓示なのか?) 」
ピリカ「ねえ、お気に入りのカードは引けた?」
シャロック「いいや、どちらでもない。だから君たちを解放するよ。」
そう言いながらシャロックが指を鳴らすと、ピリカ達を縛っていた糸が消えた。
ラム「キュウ?(お前、どういう風の吹き回しだ?) 」
ラムは疑問に思いシャロックに問いかけたが、シャロックはキョトンとした顔をしていた。ラムの言っていることが言語的に理解できないのだろう。
ウィンダ「マスター。あの鳥は(どういう風の吹き回しだ?)と聞いております。」
シャロック「そうか、君はなぜが鳥との意思疎通が得意だったね。ありがとう。
ただ(気に入ったカード)でもなく、(気に入らないカード)でもなかっただけさ。
さあ、僕の気が変わらないうちにさっさとどこかへ行くが良いさ。」
ラム「 (ふぅ~。さっさと行こうぜ!) 」
ピリカ「・・・」
ウィンダ「せっかくマスターが見逃してくださったのだから、早くどこかへ行きなさい。」
ピリカ「あのさ、せっかくだし、おたがいに自己しょうかいしてからわかれない?」
シャロック・ウィンダ・ラム
「???」
シャロックは思わずずっこけてしまった。ウィンダは呆れてため息を吐き、ラムに関しては開いた口が塞がっていない。
初めてあった人と自己紹介をする事は良いことだが、相手を間違っている。相手は先程自分たちを殺しかけているのだ。
シャロック「やれやれ仕方あるまい。
僕の名前はシャロック。16歳だ。
見ての通りだけど、精霊使いをしている。訳あって旅をしているけど、それ以外は何も教えないよ。」
ピリカ「ありがとねシャロックさん!
わたしの名前はピリカ!10さいの(せいれい)だよ!そしてこの子はラム。わたしのかぞくなの!」
ラム「キュウ。(よろしく。とは言わねえな。お前怪しいし。) 」
ピリカ「もうラムったら!そういうふうにすぐうたがっちゃだめ!
だってこの人こんなにやさしそうじゃん!」
シャロックは呆気にとられていた。
「どうやって会話しているのだろう。」
としか思えないのだ。誰だってそう思うだろう。
挙げ句「優しそう」と抜かしたのだ。
シャロック「あの~、お話中失礼します。
君たちさあ、それで会話成立しているの?」
ピリカ「うん!だってわたしが赤ちゃんだったころからずっと一緒だもん!
ねえー、ラム♪」スリスリ
ラム「キュウ♡キュウ~♪(あぁ~♡ピリカのほっぺマシュマロみたいで柔らけえ~。最高♪) 」
ラムはピリカに頬ずりをされながら天国にいるような心地よさを体感していた。
ウィンダ「マスター、私もマスターにほっぺすりすりしたいです。いいでしょうか?」
シャロック「残念ながら却下。僕はそういうの苦手で・・・」
ウィンダは念願の初頬ずりができなかったため、悲しそうな表情になってしまった。
ピリカ「ねえ、そこの悲しそうなおねえちゃんはなんて言う名前なの?教えて、教えて♪」
好奇心旺盛なピリカはウィンダにも自己紹介を求める。
ウィンダ「結構です。私はあくまでもマスターであるシャロック君に付き従う下僕です。名前なんて教える必要はないし、あなたの名前も覚える必要はありません。」
ピリカ「そっかぁー。
じゃあぜんしんタイツのおっ○いおねえちゃん。
りゃくしておっ○いタイツでいいよね?」
ウィンダ「はあ!?いい訳ないでしょこのお馬鹿さん!
全く仕方ありませんね・・・。私の名はウィンダ。お願いだからその残念なあだ名はやめてください。」
まるでどこぞの師匠のようなあだ名をもらったウィンダ。当然許すわけがなく、とうとう名前を教える羽目になってしまった。
ウィンダ「マスター、私あの子苦手です。恥ずかしがる事なく破廉恥なあだ名をつけるなんて、、、!」ヒソヒソ
シャロック「まあまあ落ち着いてウィンダ。僕たちばかり次の村へ向かわないと。
さあピリカ、僕たちはここでお別れだ。」
シャロックは原核をカードに封印し、ウィンダと共に歩き出した。
しかし・・・
ピリカ「あ、あの、わたしもいっしょにつれて行ってください!」
ラム「キュウウ!?(おい、何言ってんだ!?) 」
シャロック「?なぜ君を?」
ピリカ「それはその、とくにりゆうはないんだけど、いちおう、わたしたちを助けてくれたからっていうか・・・」
シャロック「そういうのはやめておいた方がいい。君と僕とでは性別だって価値観だって目的だって、色々なところが根本的に違う。」
当然シャロックは拒んだ。自分の目的の邪魔に過ぎないし、自分のために他者を巻き込むのは気分がよくないからである。
シャロック「それに僕は精霊使いだ。だから・・・」
ピリカ「そういうのはいいもん!わたし、とにかくあなたについて行きたいの!あなたから色んなことを学びたいの!」
シャロック「待て待て、そういう君の目的はなんだい?」
ピリカ「わたしは、おとうさんをさがしてるの!あなたなら霧の谷(ミストバレー)の場所だって知ってるはず!」
シャロック「霧の谷(ミストバレー)だって?まさか君は父親を探すために実在しているかもわからない場所を目指しているのか?」
ピリカ「きっとあるもん!おとうさんをさがすためなら、行ってみせるんだから!」
ピリカは旅の目的を告げた。それは失踪した父親を探す事であった。
本来ガスタ族は霧の谷(ミストバレー)で生まれ暮らす者だったが、過去の大戦で膨大な被害を負ってからは、禁足地に認定されてしまい、今は自然が豊富な別の土地でひっそりと暮らしている。しかも霧の谷(ミストバレー)自体も地図から消されてしまったので、もう存在すら幻に近い伝説の地と化している。
それ故にピリカは今まで祖先の生まれ故郷を知らずに生きてきた。父親はピリカが3歳の頃に失踪しており、それからは血の繋がりのない里親に預けられ育った。
父親の存在を知ったのはつい2年前の事である。どうしても父親を探して会いたかったピリカは里親と相談をして旅に出ることとなり、相棒のラムと一緒に父親が最後にいたと言われている霧の谷(ミストバレー)を目指し旅をしていたのだ。
シャロック「そうだったのか。
じゃあここで残酷な質問をさせてもらおうかな。
仮に君はこの世界を全て回りきり、それでも父親が見つからなかったらその時はどうする?」
それはピリカにとってはとても重い質問だった。今まできっとどこかで元気にしていると思っていたから、どこかで平和に暮らしていると思っていたから、前向きに旅を楽しんできた。父親がいなかったらなんて考えた事がなかった。
ピリカの決断は・・・
ピリカ「わたしは、それでもさがしつづける!たとえどこかでおとうさんが死んじゃってても、おはかをたててあげるの!
わたしはずっとあきらめないし、おとうさんはきっとどこかにいる!」
即答だった。
もう少女は決断を済ませた眼をしていた。
恐らく彼女の覚悟を曲げることは誰であろうとできないだろう。
シャロック「そうか、わかった・・・。
じゃあ僕についてくるといい。ただし僕の邪魔をしないっていう条件付きでね。」
ピリカ「い、いいの?」
シャロック「ああ。」
ピリカ「やったぁぁ!
やったよラム!!」
ピリカはラムを抱えながら嬉しそうに飛び跳ねた。
ラム「キュウ!キュウウウ?(よかったなピリカ!
しかし本当に奴を信用していいのか?) 」
ウィンダ「心配には及びませんよラムさん。マスターは嘘をつかない良い子です。信用していいんですよ。」
夕陽がさす丘で、小さな物語が始まろうとしていた。
一人は冷酷な精霊使い
もう一人は無垢な精霊
ついに駒はそろった。
ピリカ「それじゃあ早く行こうよシャロックさん!」
シャロック「あの~。
それはいいんだけどさ、まずはちゃんと服を着ないと。あとラムをぐったりしてるから2、3日は休ませてあげないと。」
ピリカ「そうだった!ラムを元気に・・・
って、きゃあああ!もう、早く言ってよ、シャロックさんのばかー!!!」
もう遅い。
ボスの追っ手から逃げる際にナイフだの何だので衣服がボロボロで、特にまだ膨らみかけの胸とか胸とかがはだけているのだ。
それからシャロックは食料と医療品を探すために、ピリカは衣服とラムを休ませる場所を探すために村を物色しているなか、ウィンダはシャロックの召喚した精霊たちと村の周辺の見張りをしており、ちょうど休憩中だった。
ウィンダ「はぁ~。全く、お荷物が増えてしまいました。」
少女「お荷物って言い方はないでしょ~。あたし、あの子と気が合うかも!」
ウィンダ「ウェンは気楽でいいですね。私なんていきなり破廉恥なあだ名をつけられてしまったんだから。」
少女→ウェン「仕方ないわよ。無理して人形から精霊っぽい見た目にしたら緑ポニテの全身紫タイツの巨乳になっちゃったんだから。エロいあだ名つけられることなんて覚悟しておかないと。」
ウィンダ「あなたねぇ・・・。
というか、あなたも少しは話したらどうです?エグリスタ。あなたが黙りこくるなんて病気にでもかかったのですか?」
グレゴリオ「あのなぁ、確かにオレの本名はエグリスタだ。でもオレ決闘以外ではグレゴリオって呼んでくれって言ったはずなんだが。
いい加減学べこの童顔巨乳女。」
ウィンダ「よく言いますよこの全身鎧のセ○ハラオヤジが。」
何だか仲が悪そうだが、この3人がシャロックの精霊である。
ウィンダはは普段からシャロックのもとに限界しており、シャロックの補佐をしている。
ウェンとグレゴリオは、普段は限界していないが、シャロックの召喚に応じて現れている。
ウェン「それにしても、また大きくなったんじゃないその胸。
少し確かめさせてよ~♪」モミモミ
ウィンダ「ひゃあああン!もう、ウェンったら何するのよ!」
ウェン「もう、こんなにやらしい胸しちゃって!いい加減その巨乳でマスターの事襲ったら?」
ウィンダ「襲うわけないでしょ!
あなたが言うことなんて基本R18的なことなんだから・・・。あとしゃべりながら胸を揉むのはどうかと思いますけど!」
ウェン「あんたねぇ、2つのことを同時にこなすっていうのは案外難しいのよ?っていうか、あんた何のための全身タイツよ!?そのタイツはあんたのパーフェクトボディをくっきり出すためのアイテムでしょ!
ほら、想像なさい!あんたの大好きなマスターにその胸揉まれる姿を・・・」
ウィンダ「そんな馬鹿なこと・・・
いやぁ、ああん!そんなに強く揉まれると、感じちゃう、、、!
ああ、もう限界ですマスター、、、」
シャロック「3人ともお疲れさま。
っ!?あ、なんかごめんなさい・・・。」
そこには胸を揉んでいるウェンと、胸を揉みしだかれてもろに感じているウィンダと、気まずそうに2人から視線を逸らしているグレゴリオがいた。
グレゴリオ「あらま、あんたやらかしたなマスター。」
ウェン「あ、ごめ~ん☆」
ウィンダ「もう、マスターの、みんなの馬鹿~!!」
シャロック「何だか今日はよくばか馬鹿言われる日だな。
ちょっとショックだなー・・・。」
自分には何の罪もないのに1日に2度も馬鹿と言われ、内心ショックなシャロックであった。
その後、ピリカを含めた5人で遅めの昼食を取ったが、シャロックのテンションがいつにも増して低かったので、ウィンダが心配してくれたらしい。
かくして物語は本格的に始まる。
もう運命の歯車は止まらない。
「ちっと風が生臭くなった。己(おれ)の勘が正しけりゃ、噂に聞く影の精霊使いか?」
「きっとそうに違いありません。拙者らも急がねば。」
勇ましき武士風の精霊使いは、急いでいた。
「影の精霊使い・・・!
私、嫌な予感がします。神星樹の守りを固めてください。」
「了解いたしました、マスター。」
心優しき騎士の精霊使いは、住処を守るために決意を固めていた。
「ねえ魔術師さん、今凶星が見えた。これから一波乱起きるのかな?」
「さあな。影の精霊使いが何をしようが、知ったことではない。」
無限の可能性を持つ魔術師見習いの精霊使いは、恐怖を感じていた。
「たった今、大きな精霊の反応を感知しました!」
「恐らく影の精霊使いだ。そろそろ僕たちも動くべきかな。」
正義を束ねる少年の精霊使いは、動き始めようとしていた。
「これから俺たちは、一体どうすればいいのだろうか。」
「大丈夫ですよマスター。星々の加護がある限り、我々は安全です。」
気高き英雄の精霊使いは、悩んでいた。
「マスター、あんたの予想通り影の精霊使いだ!」
「そうか、ならば来るべき時に備えねばな。
さあ、貴様はどうする。影の精霊よ。」
冷静な語り部の精霊使いは、来るべき時を待っている。
「早く来い影の精霊使いよ!オレは貴様と殺り合いたくてウズウズしてるんだ!」
「ねえマスター、影の精霊使いって強い?」
狂った爆炎の精霊使いは、まだ見ぬ相手に戦慄する。
シャロック「もう2日間たったけど、ラムは大丈夫?」
ラム「キュ、キュウ。(ああ、問題ないぜ。) 」
ピリカ「それじゃあそろそろ出発だね!
あらためてよろしくね、シャロックさん、ウィンダさん!」
ウィンダ「こちらこそよろしくお願い致します。」
影の精霊使いたちは、幻の地を目指して歩み始めた。
次回予告
「返事が早くて何よりだ。」
「このモヤシみたいなマスターと乳デカ女の兄貴分だ!よろしくな!」
「もう仲間の死は、味わいたくないですから・・・。」
「つまり、何が言いてぇ・・・!」
「さあ少年よ、その怒りを解き放つ覚悟はあるかい?」
次回「風民と異徒の物語」
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