第２０話　間に合え　作：提馬風

クロ「俺のターン、ドロー」ﾋﾞｯ

COUNTDOWN 14

クロ「……はぁ」

クロ「俺はこれで、ターンエンド。
　　　エンドフェイズ、くず鉄の懐中時計の効果で、次の俺のスタンバイフェイズをスキップする」

遊陽「私のターン……！」ﾋﾞｼｯ

COUNTDOWN 13

遊陽（これなら……！）

遊陽「私は永続トラップ、杜の化身-バルサム・バレットを再び発動！
　　　このセットカードを破壊します！」

クロ「無駄だってのよ……俺は」

遊陽「私は――、杜の化身の木霊を破壊！！」

セン「自分のトラップを破壊した！？」

クロ「ほう……」

バルサム・バレット ☆2 DEF400

遊陽「さらに杜の化身の木霊を除外し、除外されている杜の化身の萌芽を手札に戻します！」

遊陽「そして、ワン・フォー・ワンで、手札のダンディライオンを捨ててデッキからスポーアを特殊召喚！」

スポーア「ポン！」☆1 ATK400

遊陽「さらに、ダンディライオンの効果で綿毛トークンを生成！」

綿毛トークン ☆1 DEF0
綿毛トークン ☆1 DEF0

遊陽「邪魔は全て消し去ります。
　　　私はレベル4のマンジュ・ゴッドとレベル2の杜の化身-バルサム・バレットに、レベル1のスポーアをチューニング！
　　　冷たい炎が世界の全てを包み込む。漆黒の花よ、開け！
　　　シンクロ召喚！ 咲き乱れよ、レベル7！ ブラック・ローズ・ドラゴン！」

ブラック・ローズ・ドラゴン「グアァァ！！」☆7 ATK2400

セン「出たか……ブラック・ローズ！」

遊陽「シンクロ召喚に成功したブラック・ローズの効果は発動しません。」

遊陽「そして手札から儀式魔法、杜の化身の萌芽を発動し、ブラック・ローズ・ドラゴンをリリース！
　　　立ちはだかる者も、かつて立ちはだかった者も、全て吸い上げ糧とせよ！
　　　儀式召喚！ 降臨せよ、レベル7！ 『杜の化身-マタン・ゴーレム！」

マタン・ゴーレム「グオォォ！」☆7 DEF2000

遊陽「綿毛トークンを2体リリースし、マタン・ゴーレムの効果発動！
　　　相手の墓地のモンスターを除外し、このカードのコントロールを渡します！
　　　除外したモンスターは3体、マタン・ゴーレムの守備力が1500アップ！」

マタン・ゴーレム DEF3500

クリム「アイツ……あんな壁を渡してどうする気だ？」

遊陽「さらに、墓地の杜の化身の萌芽を除外し、手札から『杜の化身-アネモフィリア』をセットし、発動！」

杜の化身-アネモフィリア　永続罠
このカード名の②の効果は１ターンに１度しか使用できない。①：フィールドの植物族モンスター１体を対象として発動できる。そのモンスターと同じレベルの植物族モンスター１体をデッキから手札に加える。このカードは発動後、通常モンスター（植物族・地・星２・攻２００／守８００）となり、モンスターゾーンに特殊召喚する。このカードは罠カードとしても扱う。このターンのエンドフェイズに、自分はフィールドの植物族モンスターのレベル・ランクの合計×200ダメージを受ける。②：このカードがフィールドから墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。デッキから「杜の化身」魔法・罠カード１枚を自分フィールドにセットする。

アネモフィリア ☆2 DEF800

小さな花のおしべから、7つの光が遊陽のデッキに飛んでいく。

遊陽「この効果で、マタン・ゴーレムと同じレベル7の大いなる記憶の樹をサーチ。
　　　そしてそれを捨てて、手札から『死者転生』を発動。
　　　墓地のブラック・ローズ・ドラゴンをエクストラデッキに戻します！」

遊陽「そして、墓地のブルーム・ヴルムを除外し、墓地のスポーアをレベル5にして特殊召喚！」

スポーア「ポン！」☆1→5 DEF800

遊陽「レベル2の杜の化身-アネモフィリアにレベル5のスポーアをチューニング！
　　　シンクロ召喚！ ブラック・ローズ・ドラゴン！！」

ブラック・ローズ・ドラゴン「グアァァ！！」☆7 ATK2400

遊陽「ブラック・ローズ・ドラゴンの第2の効果発動！
　　　墓地の大いなる記憶の樹を除外し、マタン・ゴーレムを攻撃表示、攻撃力を0にする！
　　　『ローズ・リストリクション』！！」

マタン・ゴーレム ATK0

遊陽「バトルフェイズ。ブラック・ローズ・ドラゴンでマタン・ゴーレムを攻撃！
　　　『ブラック・ローズ・フレア』！！」

セン「攻撃しても、時計守の古龍の効果でダメージは与えられない……」

クロ「……狙いは、プロセス」

遊陽「破壊されたレベル7の杜の化身-マタン・ゴーレムの魂が昇華する！
　　　我らの世界の聲に耳を澄ませ。その大いなる樹は、果てしない記憶の語り手となる！
　　　プロセス召喚！ 現れろ、レベル7！ 大いなる記憶の樹！！」

大いなる記憶の樹 ☆7 ATK2000

遊陽「そして、プロセス召喚に成功した大いなる記憶の樹の効果発動！
　　　除外されている召喚の砂時計、時計守の古龍、SRタケトンボーグ、『アイアンコール』を相手の墓地へ戻し、
　　　このカードの攻守を倍にする！」

『大いなる記憶の樹』が禍々しい光を放ちながら、霧をみるみる吸収していく。

セン「そうか……！」

クリム「超電磁タートルは除外し、時計守の古龍は墓地に送った……これなら攻撃が通るな」

遊陽「そして、大いなる記憶の樹でプレイヤーにダイレクトアタック！
　　　『フルメモリー・ウィスパー』！！」

形容し難い色の光が、微かに残る霧を超えて、クロを照らす。
クロはキセルの先を左手で握り潰し、そしてそれを捨てた。

クロ「俺の期待し過ぎだったな。心に訴えかけるものもなければ、相手を圧倒する力もない。
　　　機械的な、単調な、つまらんデュエルだ」

怒り、憐れみ、退屈。
そんな眼差しを遊陽に向けて、クロは手札からゆっくりとカードを引き抜いた。

そして、それを乱暴なまでにディスクに叩きつける。

クロ「相手の直接攻撃宣言時、手札から『SRメンコート』を特殊召喚！
　　　さらに、相手モンスター全てを守備表示にする！！」

メンコート ☆4 ATK0
大いなる記憶の樹 DEF5000

遊陽「まだそんなカードが……」

クリム「あぁあ、あのオヤジ感情的になり始めやがったよ」

遊陽「私は、これでターンエンド……！」

遊陽「そしてエンドフェイズ、フィールドの植物族のレベル×200ダメージを受けます……」LP2600

遊陽「そしてバルサム・バレットとアネモフィリアの効果で、
　　　アイヴィ・ガードナーとグロウ・アースをセットします」

CLO LP2000 手札2 勝利まで13
YUHI LP4000 手札0

クロ「俺のターン……！」ﾋﾞｼｨｯ

クロ「俺は手札から『スピードリバース』を発動！
　　　墓地のタケトンボーグを特殊召喚する！」

タケトンボーグ ☆3 DEF1200

クロ「そしてタケトンボーグをリリースし、効果発動！
　　　デッキからチューナーモンスター、『SR三つ目のダイス』を特殊召喚する！」

三つ目のダイス ☆3 DEF1500

クロ「手札から『タンホイザーゲート』！
　　　三つ目のダイスとメンコートのレベルを7にする！」

遊陽「レベル7のモンスターが2体……！」

クロ「俺はレベル7のSR三つ目のダイスとSRタケトンボーグでオーバレイ！
　　　全てが吹き飛ぶ時は、容赦なく近付く。
　　　エクシーズ召喚！ 起動せよ、ランク7！ 『時限時計-ソニックロック』！！」

ソニックロック「カチッ……」★7 DEF3000

時限時計-ソニックロック　ランク7　風
機械族／エクシーズ／効果
レベル７モンスター×2
①：自分エンドフェイズに発動する。このカードのX素材を１つ取り除く。このカードのX素材が無い場合、代わりにフィールドのカードを全て持ち主の手札に戻す。②：このカードが相手によって破壊された場合に発動する。フィールドのカードを全て持ち主の手札に戻す。
攻撃力 0　守備力 3000

大きな時限爆弾が、クロの前に出現する。

遊陽「全体バウンスカード……」

クロ「プロセスは手札に戻しちまえばこっちのもんだ。
　　　プロセスに依存した戦術がいかに愚かか……じきに分かる。俺はこれでターンエンド！！」

遊陽「私のデュエルは、そんなのじゃない。
　　　まだ、新たな局面を切り開くことだって……！」

遊陽は震える手で、デッキトップを掴む。

遊陽「私の、私の……」


我らのターン。

―――

ぱきりぱきりと続く音。
ボクは何度も聞いている。

こういうとき、大自然は悲鳴を上げる。
ボクは何度も聞いている。


でも、こんなに長い割れる音を。
大自然が悲鳴さえ上げず轟くのを。

聞くのは今日で、2回目だ。

シル「いいタイミングだよ……『エルストロームの喰らうもの Alu』」

アル「ウゥ……」

のっぺらぼうの顔の骨。
筋肉質の身体。
4本の腕。
太いミミズの大群のように蠢く下半身の触手。
まさにアルの血族の究極体。

シル「私の腕と、相棒を奪った……忘れえぬ化け物」ｼﾞｬｷｯ

その、かつて力及ばなかったことも忘れ、シルはディスクを構える。

シル「うああぁぁぁあああ！！！」

―――

遊陽「……アアアァァァアアア！！！」

我らのターン。

我らとなれ。
我らであれ。

遊陽「アアア……う……る……さいっ！！」

遊陽は思い切り、ディスクの画面を叩いた。
そこに手を置くことは、サレンダーの証。

SURRENDER
WINNER CLO

クロ「フン……遂に気が狂って逃げるか」

遊陽「いいえ……先に止めるべきカウントダウンがあります。
　　　きっとエルストロームが、大きな動きを始めました。
　　　我らのターン、だと」ﾀﾞｯ

遊陽は独り、テントを駆け出した。