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森の番人 作:プレミメイカー

第8話 森の番人

四征竜。
それぞれ、地、水、火、風の四元素を司り、破竜の書にもその存在が記されている古の竜。長い年月をかけて自然エネルギーを吸収し、最期にはその力を暴走させ大災害を引き起こすとされる。

「彼らが1000年前、一斉に渓谷に現れ、地形が変わってしまうほどその環境を破壊しつくしたなんて……。」

ここは森羅の森深層。日の光届かぬ暗緑の森。地面一面、岩や枯れ木、いたるところで、苔やキノコが怪しく微かに灯り、遥か頭上では、石英をばら撒いたように弱弱しい木漏れ日が無数に閃いていた。まるで星空の中にいるようで、左右どころか上下の感覚まで失ってしまいそうだ。おまけにリトルが俺の頭にしがみついていて視界は最悪だ。
先頭を歩くストールの炎が唯一、進むべき道を示してくれる。

「けど、残ってるかもしれないんでしょ。渓谷。」

「はい。いくら征竜の力が強大とはいえ、星の裂け目と伝えられるほど広大な竜の渓谷を破壊しつくすことは難しいと思います。仙樹レギア様は渓谷滅亡以前からこの地におわし、森羅の森の礎を築かれた御方。必ずその所在を存じておられますわ。」

「しかし、サクヤ様まで来ていただくことはなかったのですが……。
見る限りこの森も相当危険なのでしょう?」

「だから、あなた方のような力ある戦士がいる今が最適なのですわ。わたくしだってレギア様には1度でいいからお会いしたかったのです……。」
上品に口元を隠しながらも、どこか無邪気さを含んだ笑顔だった。

「……あら?」
首をかしげバスターの肩をすかし、背後の暗がりへと姫芽宮は視線を移した。

「ぐるおおぉぉっ!」
体の芯まで響く雄叫びと共に、黄金の双眸と白金の牙が暗闇の中、見上げるような位置に浮かび上がる。
「あれは、恐らくは、森の番人……グリーンバブーンですわ!」
『く、この森は視界が悪すぎる!圧倒的に不利だ!走り抜けるぞ!』

「……そうはいかないみたいよ。」
目の前にはゆらゆらと金色の鬣が踊り、その持ち主の鋭い眼光がこちらを捕らえていた。
「エンシェント・クリムゾン・エイプまで……。」

「そんな、挟まれた!」
俺とレイナは互いに背中を預ける形でそれぞれに剣を向け、その中心にリトルたちを匿う。

「1人1頭、うまくやれるか……。」
森林での戦闘は慣れないな。
ドラゴン族は荒涼とした土地を好んで棲み処とするため、破壊剣士としてまだ若いバスターは、こうした見通しの悪い場所での戦闘経験が少ない。

「のぞむところよ。」
レイナは静かに力強く剣に力を込める。こんな状況でも動じない彼女の存在はとても心強く、心に差す不安の影を払う灯火のように思えた。


「おかしい……。」
膠着状態が続くいている。
時間にしたら僅か数分。しかし、不自然だ。状況が圧倒的に有利なのはあちらが一番理解しているはず。言語こそ持たないが、並の獣族よりも高い知能を持つはずの彼らがそれに気づかないはずはないのだ。つまり……
「……なにかを待っている?」
ふと、バブーンから視線を右に外した瞬間だった。
ゴオオッ!
凄まじい風切り音と共に、その先からなにかが迫ってくる。
「危ないッ!」
咄嗟に右へ素早く踏み込み、それを剣で受け止める。
「ぐ、う、あ……うわッ!」
ギィィン……
剣と衝突し、激しい火花をあげると共にバスターを吹き飛ばす。
「バスター!?」

それは、一本の巨大な矢だった。


「ウホッウホッ!」
番人たちは興奮気味に地団駄を踏む。

これを狙って……。
すぐに襲ってこなかったのは、俺たちを一箇所に留め、こいつで仕留めるためか!

「大丈夫です!生きてます!」
一先ず自身の生存を伝えるため力いっぱい叫ぶ。
くそっ!飛ばされ過ぎた!レイナさんたちが見えない!

ドゴオォン

「くあッ……!」

「きゃあぁっ!」

レイナさんとサクヤ様の声だ。まさか、分断したところを2頭で……

「くっ!破壊剣…… 一・閃!」
敵の胸部あたりであろう高さを狙い、音のした方へ斬撃を放つ。

ミシッ、ギギッ、ドゴゴォッ

「しまった……!」
切断した大木が数本、音を立てて崩れ落ちていく。
あの下にはリトルたちが!
彼女たちを斬撃に巻き込まないよう高い位置を狙ったのはいいが、視界の悪さもあり、完全に木の存在を失念していた。結果、彼女たちを危険に晒したほか、自身の合流さえ難しくしてしまった。

「リトル!レイナさん!サクヤ様!」
急いで倒した木のほうへ駆け寄る。
そこへ、ひと際大きな巨木がバスター目掛けて襲い掛かる。

「くッ」

あわてて倒れ重なった巨木の中へ避難した。

「ぐほほ?」
襲ってきた巨木の正体はバブーンの棍棒だった。
バブーンはそれをひょいと持ち上げ、獲物を仕留めたかどうか確認するようなそぶりを見せたあと、再び森の暗闇に身を潜めた。
「あんなものを軽々と……。みんなは無事なんだろうか。」

『いくら霊体化できるとはいえ、心配くらいしてくれてもいいのではないか?』

この声は、
「父さん!今どこに?」

『こっちだ、こっち。』
暗闇のなかで苔やキノコが発するものとは違い、点滅している光が目に入った。それを目指し、倒れた木々の中を進むと苔が倒れた大木を支えるように異様に盛り上がった箇所があり、その陰に皆隠れていた。
「よかった……みんな。」

「あなたのせいで死ぬところだった。」
こんなに冷ややか目をしたレイナは里で初めて会った時以来だ。

「いいではないですか、こうして身を隠せるところができたのですから。しかし、むやみに木を伐採するのは、森を治める者としては、いささか許しがたいことではございますが。」
目が笑っていない。

『サクヤさんがね!苔をモモモッて操って守ってくれたんだよ!』
リトルは元気に振舞って見せているが、目が泣いている。

「ぐ、ほんとうにすいませんでした……。」
自分の行動の短絡さにはほとほとあきれる。恥かしさと申し訳なさで俺は顔を上げることが出来なかった。

「……反省会は、あと。」

『そうだな。敵はあの2頭の他に弓を扱うものもいるようだ。矢の大きさからして、奴らと近似種のモンスターだろう。』

「けど、この暗闇の中でどう戦えば……。」
さっき切り倒すことのできた木は確かに巨木ではあるが、周囲と比べれば背が低かったため、それらがなくなったところで視界が悪いことに依然として変わりはなかった。

「……彼らを倒すことは難しくとも、撃退でしたら可能かもしれませんわ」
姫芽宮はバスターの方へこれまでとは違う、力のこもった目を向けた。

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