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破壊剣の揺籃 作:プレミメイカー

「バスタブレエエエエドッ!破壊剣 一 ・ 閃!!」
剣から放たれた光が視界を真一文字に切り裂く。

「やはり、マスターブレイダー直系の血筋であれば扱うことができるようだな。
だが、まだ未熟だねぇ」
竜が腕を軽く薙いだだけで、剣閃は水面に漂う泡沫のようにかき消されてしまった。

「そん、な。」もはや力なく、剣を支えに片膝をつくので精いっぱいだった。

「ふん、すばらしい力だ。ま、切り裂く道具が剣から、爪に変わったと考えればいいか。それにこの姿なら、いろんな種族の強いやつと気兼ねなく殺し合える!もともと里の人間を竜化させたのも、より強い竜と闘うためだったわけだしなぁ!」

「竜化、『させた』だと……?しかも、そんなことのために!」

「言っただろ?これが『邪なる竜の正体だ』と、
まぁ実際にゃ、俺が追ってたオリジナルは既に倒した。や、相打ちかな?ありゃあ、
死闘だったぜぇ、ホントに三日三晩かかったんだからよぉ!
その闘いの末、俺はやつの首切り落とした。するとどうだ、
切り口から奴の骸がどんどん黒い煙に変わっていき、
それが満身創痍だった俺を包み込み体内にまで入ってきた。
竜の力かお陰で傷は癒えたが、常に竜の怨嗟の声が聞こえるようになってよ。
俺の精神を飲み込もうとしてきやがる。常人なら耐えらんねぇだろうなぁ!
が、俺は邪竜の怨念を屈服し、力の1つとして取り込んだ。
後は俺がお前らに伝えた町を訪れ、竜の瘴気をばらまき竜化させる。
住民と変わらない数の竜が暴れるんだ、どんなにでかかろうが、一晩で滅んで当然だろ?
強ぇ奴ほど竜化に時間はかかるが、その分、竜になったときは手ごわくてな、
国の騎士長クラスをあいてにするのは、なかなか楽しかったぜ……」
竜は今までの所業を喜々として語っていく、これは本当に自分の知っているおじさん、
ダンディ・ブレイダーだったのだろうか。ようやく、必死の戦闘で昂ぶった精神が落ち着きを取り戻し始めたせいで、目の前の竜が元は自分の肉親であった事実を受け止めきれなくなった。
「そんな、おじさんは……。」

「俺は最初から強者との戦いしか見ちゃいねぇ。里の守りを固めさせたのは、1度に里の奴らを竜化させるため、貴様らに親しくしてやったのは、兄貴からの信頼を得、宝剣の在処を聞き出すためでしかない。4年前、邪竜出現のきっかけを作ったのも俺なんだからよ!兄貴と殺しあってみたかったが、もう見た目じゃわかんねぇだろうなぁ。
さて、まだこの武器(すがた)にも馴れねぇし、ここはお前の頑張りに免じて引いてやろう。
伸びしろもありそうだしなぁ。狩られる側ってのも緊張感があって悪くない。
ま、楽しかったぜぇ、お前らとの家族ごっこぉ!」

竜はそう言いうと、大山を震わすほどの雄叫びをあげ、どこかへ飛び去ってしまった。
しばらくの間は、茫然としてその場を動く気力すら湧かなかった。伝説の実在、肉親の裏切り、里の壊滅……俺は、あまりにも無力だ……。なにができる?なにをすればいい?なんのためにすればいい?なんのために生きればいい?……。
気づけば空は暗雲に覆われ、ビー玉のように大粒の雨がそこら中の地面叩きつけられては弾けていた。
俺は、いったい……。

『おにいちゃん!』
「!?」今のは?自分の声すら掻き消えそうな雨音のなか、妹の声がはっきりと聞こえた。
「リトル?リトルなのか!?まさか、自力で里から逃げて……。」
しかし、姿は見当たらない。

「……まだ、間に合うかもしれない!」
あれはただ、崩壊寸前だった自身の精神を保つための幻聴だったのかもしれない。だが、あの時の俺が正気を取り戻すには十分だった。里の人間はもともと竜の力に免疫のある一族だ。もしかしたら、まだ……俺は力の限り山を駆け下りた。

だいぶ日が傾いてきたが、もうすぐ里だ。近づくにつれ、しだいに雨もあがり、竜の被害がはっきり見てとれるようになってきた。木々は倒され焼かれ、食いちぎられた生き物の残骸も見て取れる。共食いでもしたのだろうか、引きちぎられたような竜の羽まで散らばっている。手に取ってみると、その羽は黒い煤のようなものを出しながら少しずつ崩壊しているのがわかる。

「……開けた!」

ここは破壊剣士の里、だった場所。焼かれ、倒され、潰され、抉られ。面影すらも残らないほど見るも無残に破壊しつくされていた。
間に合わなかった……。

『おにいちゃん!!』
まただ!、さっきより鮮明に聞こえる!リトルは生きているのか?
「リトル!リトル!俺はここだ!いるなら返事を…?」

……あれは?

木洩れ陽にあてられ、まるで残紅のように横たわる影。近づいてみると、それはだいぶ泥にまみれてはいるが、真っ白い毛に覆われた見たこともない生き物だった。スースーと寝息をたてている。
「白い……犬?」

……いや、違った。その生き物にはなんと足が6本あった。
「竜の仔だ!里の子供が竜になった姿なのか……?」
その寝顔を見ているとなんだか他人には思えなくて、つい頭をなでてしまった。
気持ちがいいのか、表情を少しほころばせ、体をくねらせた。
「こうしてると本当に犬みたいだな。」
人にあったわけでもないのに、不思議と緊張の糸がほぐれ、少しだけいつもの自分を取り戻せた様なきがした。

が、そのせいで背後に迫る竜の存在にギリギリまで気づくことができなかった。
カッ!竜の口から火球が放たれる。
咄嗟に振り返り、バスターブレードでそれを薙ぎ払う。
「くっ!油断した。4体目の竜……これも里の人間が……」
竜が鎌首をもたげ再び攻撃の姿勢に入る。
……ここでこの竜を斬ってしまえば、俺はあいつと……
「なら、」と仔竜を抱え里の奥に向かって全速力で逃げ出した。
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