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第19話 それはアイスのように甘く 作:氷色
城之内とのデュエルから数日後の放課後のことだ。
遊緋は部活棟にいた。
手にはスマホ。部活棟の入口辺りに腰を下ろし、ピコピコとオンラインゲームに勤しんでいる。
D・ゲームのプレイヤーとなったからといって、遊緋の手が他のゲームから遠退くなんてことはあり得ない。彼は今も複数のゲームを同時に進めていたし、睡眠時間を削ってゲームに熱中していることに変わりはない。
それにしてもーーーと画面から顔を上げる。
その脇を部活終わりの女子生徒が素知らぬ顔で通りすぎていった。
以前なら、こんな人通りの多いところでゲームなんかしていたら、他の生徒に絡まれたり白い目で見られたりヒソヒソと陰口を言われたりしたものだが、ここのところそんなことはぐっと減った。遊緋にはそれがどうにも不思議でならなかったのだが、それは彼を取り巻く環境の変化に端を発したものだった。
先のデュエルで友人となった城之内と本田は、事あるごとに遊緋の教室へとやってきた。そしていつも他愛のない馬鹿話をしていく。
ゲームオタクとして周りから馬鹿にされている遊緋と、元不良ということで敬遠されている城之内達。どうやら他に友達がいないのはお互い様だったらしい。
それにD・ゲーム仲間というのも三人が一緒にいることのメリットの一つとなっている。一つのゲームについて複数人で色々話し合えるというのは、情報を得るという意味でも単に楽しいという意味でも有意義なものだ。
そうして遊緋と城之内、本田は急速に親密になっていった。
そしてその人目を憚らない親しさは周りの人間の見方を変えていった。つまり今まで馬鹿にしていたゲームオタクが、中学時代悪名を轟かせていた城之内や本田の仲間になったように見えているのだ。無論実際には両者は同じゲームで凌ぎを削るライバルであり友人であって不良仲間というわけではないのだが、それでも周りの遊緋を見る目はもう最底辺の存在ではなく、学校のパワーバランスを見極める上で重要なポジションの存在になっていたのだ。
当の遊緋はそんなことになっていることなど知るよしもないのだが。
首を捻りながら遊緋が再びゲーム画面に視線を下ろした丁度その時、彼の名前を呼ぶ声がかかった。
振り返るとそこには杏里。
「ごめん、待った?」
よく見れば彼女の制服はどことなく普段より雑に着られている感じがした。
おそらく遊緋を待たせることを悪いと考えて急いで着替えたのだろう。実に杏里らしい。
「うん、待った」
だからこそ遊緋は意地悪くそう答えた。
杏里は一瞬「うっ」と詰まったが、逆に照れ臭そう少し微笑んだ。
一体いつぶりだろうか、学校内で杏里とこうした幼なじみらしいやり取りをしたのは。
部活が終わるまで待っていて欲しいーーー。
そう言い出したのは杏里の方だった。
杏里は学校ではダンス部に所属している。
この学校のダンス部は別に強豪校というわけではないが、現在の部員は皆熱意を持って部活に励んでおり、練習は毎日行われている。杏里はその中でもホープであり先輩方も期待を寄せているらしく、彼女自身ももっと上手くなりたいという向上心を持って活動しているらしい。
そういうわけで、杏里はただでさえ明るく気立てが良い上にかなりイケているルックスなのだが、その上更にダンス部期待のルーキーという箔まで加わり、とても遊緋と釣り合う立場ではなかったのだ。少なくとも今までは。
それが今ではこうして一緒に下校できるまでになったのは、やはり遊緋のポジションが変わったせいなのだろう。
その事実に杏里が気付いたことにより、彼女がこれまで抑えていた『遊緋と一緒に下校したい』という想いが叶ったのである。無論、そんなことには遊緋は気付いていないし、杏里もそれを遊緋に伝えるつもりなどなかったが。
「それじゃ、帰ろ」
杏里が浮かれたように足を弾ませる。
部活で疲れてるだろうに元気なやつーーーと遊緋はとんちんかんなことを思いつつも、彼女に続いて歩き出した。
「そうだ、コンビニ寄ろう?新作のアイスが出たんだ~」
杏里が遊緋を覗き込むようにして言う。
その顔の近さに遊緋はたじろぐ。
杏里の茶色の瞳は大きい。見ていると吸い込まれそうだ。
杏里はこうして時々男女の距離感を無視して近寄ってくることがある。幼なじみならではの遠慮のなさというやつなのかもしれないが、遊緋としてはどこか落ち着かない記文になるので慎んでもらいたい。
「別にいいけど」
視線を杏里からそむけ、ぶっきらぼうに遊緋が答える。
杏里はそんな遊緋の心中を知ってか知らずか目を輝かせて「それじゃあ決定~!」と手を挙げた。
こうして二人は近くのコンビニに行くことになった。
☆
コンビニ前に設置されたベンチに二人は一人分のスペースを空けて並んで座った。
買ったアイスは遊緋がストロベリーチョコ、杏里がベリーミント。小さなスプーンで口に運ぶと、広がる甘みが舌をとろけさせる。
「なんかホント久しぶりだね、こういうの」
杏里が感慨深げにぽつりと言った。
確かに何年ぶりだろうか、こうして杏里と並んで
アイスを食べたのは。
小学生の低学年頃はよく学校の近くでこうしてアイスを買って食べながら帰ったものだ。しかし何か特別理由となる出来事があったわけではないが、成長するに従い次第にそういうことはなくなっていった。
このコンビニで買ったアイスはもちろん当時食べていたものとは別のものなのだが、なんだか懐かしい味がした。
「あ、綺麗な子」
杏里の言葉にその視線を追うと、遊緋達から少し離れたところに一台のバイクが止まっていた。
純白にカラーリングされたそれは駐車場の黒いアスファルトの上に立ち上るようによく映えた。しかし杏里が見つめていたのはバイクではない。その傍らに立つ一人の女性だった。
白いライダースーツに身を包んだ彼女は、それに負けないくらい白い肌をしていた。髪は城之内のように染めたものではありえないくらい綺麗な金髪。瞳の色は青。一目でコーカソイドと分かるルックスではあったが、どこか日本人的な柔らかさを持っているところを見るとハーフなのかもしれない。
身長は杏里くらいだろうか。ぴったりとボディにフィットしたライダースーツから、彼女のプロポーションの良さは一目瞭然だった。スラッと伸びた手足、メリハリのある起伏に富んだ肢体。確かに『綺麗』と表現するに相応しい外見だ。
遊緋達が見ていることなど気にも止めず、彼女は店内へと入っていった。
「遊緋、いくら綺麗な子だからって、見すぎ。やらしいの」
隣の杏里がじと目でこちらを睨む。
「そっちが言い出したんじゃないか」と遊緋が反論する。全く言いがかりも甚だしい。
「遊緋は好きだよね、あーゆー綺麗な感じの人。例えば響先輩とか」
しかし尚も杏里はこちらをチクリと刺すように言う。
遊緋にしてみれば、紅羽は別格にしてもさっきの女性と杏里に少なくとも外見的な遜色はないと思うのだが、彼女としてはそうではないらしい。杏里の言う『綺麗な感じの人』には、彼女自身は含まれないようだ。
もし花に例えるならば、杏里は向日葵のようだ。
いつも元気にしゃんと立っていて陽の光を浴びて輝いている。
紅羽は大輪の薔薇。人を惹き付ける美しさと妖艶な魅力を持ち、凛とした棘のような強さがある。
先程の女性は百合だろうか。彼女の白く輝くその姿には邪なものを寄せ付けない潔さと優美さを感じた。
それぞれ持つ魅力は違えども各々が人を魅了する花であることに違いはない。それでいいんじゃないかと遊緋は思うのだが、そう言ったところで当人は納得すまい。
それに杏里がこういう難癖のようなことを言い出す場合は、決まって他に魂胆があるのだ。
「分かったよ、で今回はなに?」
遊緋は仕方なくハンズアップ。
しかしその言葉に杏里は頬を膨らます。
「なによぅその言い方。まるで私が難癖つけて、それを許す代わりにお願いを聞いてもらおうとしてるみたいじゃない」
全くその通りでそれ以外の何物でもないのだが、こうなった杏里は頑なにそれを認めようとしないのも長い付き合いで分かっている。
まぁこういう時の杏里のお願いはそう大したわがままではない。しかし妙に気恥ずかしい思いをすることがしばしばだ。
そしてそれは今回も。
「今度の日曜日、買い物に付き合ってよ」
「買い物?」
買い物など別に遊緋に頼まなくてもいいお願いだ。他の友達と行くとか、荷物持ちが欲しいのならそれこそ他の男子に頼めば断る者などいないだろう。わざわざ人が多くいる場所が苦手な遊緋に頼まなければならないことではない。
しかし杏里はそんなことお構い無しに話を続ける。
「ほら、この前大きなショッピングモールがリニューアルオープンしたじゃない。あそこに行きたいの」
確かにその様な宣伝を目にしたことはあった。例に漏れずレオ・コーポレーション関連の大型ショッピングモールで、広報もかなり大々的に展開しているので、童実野区在住の人なら知らない者は少ないだろう。
「……めちゃくちゃ混みそうじゃないか」
リニューアルオープン当初の大型ショッピングモールなど、人が流れるプールのように渦を巻いているに違いない。正直、気乗りはしない。
「いいじゃない、行こうよ!」
もはや杏里に体裁などない。強引に遊緋の服を掴んで揺する。
それでも「んー」と煮え切らない遊緋に、今度はパンッと手を合わせた。
「お願いッ!ね、この通りッ!」
拝むように手を合わせ、こちらを甘えた瞳で見る。
杏里の瞳の中で光が揺れる。まさに熱視線てやつ。男の心なんてアイスみたいに簡単に溶かされてしまう。
こういうときの女の子ってホント最強だよね。論理的な辻褄なんて関係ない。ネゴシエーターも真っ青の力技。
遊緋は観念して盛大なため息。
「分かったよ。今度の日曜日だね」
結局遊緋も溶かされてしまった。
遊緋はすっかり溶けてしまったストロベリーチョコアイスを一口すくって口に運ぶ。
口に広がるこの甘みも、女の子の甘さの持つ力には遠く及ばない。
☆
そんな二人の前に、不意に男が三人現れた。
遊緋は部活棟にいた。
手にはスマホ。部活棟の入口辺りに腰を下ろし、ピコピコとオンラインゲームに勤しんでいる。
D・ゲームのプレイヤーとなったからといって、遊緋の手が他のゲームから遠退くなんてことはあり得ない。彼は今も複数のゲームを同時に進めていたし、睡眠時間を削ってゲームに熱中していることに変わりはない。
それにしてもーーーと画面から顔を上げる。
その脇を部活終わりの女子生徒が素知らぬ顔で通りすぎていった。
以前なら、こんな人通りの多いところでゲームなんかしていたら、他の生徒に絡まれたり白い目で見られたりヒソヒソと陰口を言われたりしたものだが、ここのところそんなことはぐっと減った。遊緋にはそれがどうにも不思議でならなかったのだが、それは彼を取り巻く環境の変化に端を発したものだった。
先のデュエルで友人となった城之内と本田は、事あるごとに遊緋の教室へとやってきた。そしていつも他愛のない馬鹿話をしていく。
ゲームオタクとして周りから馬鹿にされている遊緋と、元不良ということで敬遠されている城之内達。どうやら他に友達がいないのはお互い様だったらしい。
それにD・ゲーム仲間というのも三人が一緒にいることのメリットの一つとなっている。一つのゲームについて複数人で色々話し合えるというのは、情報を得るという意味でも単に楽しいという意味でも有意義なものだ。
そうして遊緋と城之内、本田は急速に親密になっていった。
そしてその人目を憚らない親しさは周りの人間の見方を変えていった。つまり今まで馬鹿にしていたゲームオタクが、中学時代悪名を轟かせていた城之内や本田の仲間になったように見えているのだ。無論実際には両者は同じゲームで凌ぎを削るライバルであり友人であって不良仲間というわけではないのだが、それでも周りの遊緋を見る目はもう最底辺の存在ではなく、学校のパワーバランスを見極める上で重要なポジションの存在になっていたのだ。
当の遊緋はそんなことになっていることなど知るよしもないのだが。
首を捻りながら遊緋が再びゲーム画面に視線を下ろした丁度その時、彼の名前を呼ぶ声がかかった。
振り返るとそこには杏里。
「ごめん、待った?」
よく見れば彼女の制服はどことなく普段より雑に着られている感じがした。
おそらく遊緋を待たせることを悪いと考えて急いで着替えたのだろう。実に杏里らしい。
「うん、待った」
だからこそ遊緋は意地悪くそう答えた。
杏里は一瞬「うっ」と詰まったが、逆に照れ臭そう少し微笑んだ。
一体いつぶりだろうか、学校内で杏里とこうした幼なじみらしいやり取りをしたのは。
部活が終わるまで待っていて欲しいーーー。
そう言い出したのは杏里の方だった。
杏里は学校ではダンス部に所属している。
この学校のダンス部は別に強豪校というわけではないが、現在の部員は皆熱意を持って部活に励んでおり、練習は毎日行われている。杏里はその中でもホープであり先輩方も期待を寄せているらしく、彼女自身ももっと上手くなりたいという向上心を持って活動しているらしい。
そういうわけで、杏里はただでさえ明るく気立てが良い上にかなりイケているルックスなのだが、その上更にダンス部期待のルーキーという箔まで加わり、とても遊緋と釣り合う立場ではなかったのだ。少なくとも今までは。
それが今ではこうして一緒に下校できるまでになったのは、やはり遊緋のポジションが変わったせいなのだろう。
その事実に杏里が気付いたことにより、彼女がこれまで抑えていた『遊緋と一緒に下校したい』という想いが叶ったのである。無論、そんなことには遊緋は気付いていないし、杏里もそれを遊緋に伝えるつもりなどなかったが。
「それじゃ、帰ろ」
杏里が浮かれたように足を弾ませる。
部活で疲れてるだろうに元気なやつーーーと遊緋はとんちんかんなことを思いつつも、彼女に続いて歩き出した。
「そうだ、コンビニ寄ろう?新作のアイスが出たんだ~」
杏里が遊緋を覗き込むようにして言う。
その顔の近さに遊緋はたじろぐ。
杏里の茶色の瞳は大きい。見ていると吸い込まれそうだ。
杏里はこうして時々男女の距離感を無視して近寄ってくることがある。幼なじみならではの遠慮のなさというやつなのかもしれないが、遊緋としてはどこか落ち着かない記文になるので慎んでもらいたい。
「別にいいけど」
視線を杏里からそむけ、ぶっきらぼうに遊緋が答える。
杏里はそんな遊緋の心中を知ってか知らずか目を輝かせて「それじゃあ決定~!」と手を挙げた。
こうして二人は近くのコンビニに行くことになった。
☆
コンビニ前に設置されたベンチに二人は一人分のスペースを空けて並んで座った。
買ったアイスは遊緋がストロベリーチョコ、杏里がベリーミント。小さなスプーンで口に運ぶと、広がる甘みが舌をとろけさせる。
「なんかホント久しぶりだね、こういうの」
杏里が感慨深げにぽつりと言った。
確かに何年ぶりだろうか、こうして杏里と並んで
アイスを食べたのは。
小学生の低学年頃はよく学校の近くでこうしてアイスを買って食べながら帰ったものだ。しかし何か特別理由となる出来事があったわけではないが、成長するに従い次第にそういうことはなくなっていった。
このコンビニで買ったアイスはもちろん当時食べていたものとは別のものなのだが、なんだか懐かしい味がした。
「あ、綺麗な子」
杏里の言葉にその視線を追うと、遊緋達から少し離れたところに一台のバイクが止まっていた。
純白にカラーリングされたそれは駐車場の黒いアスファルトの上に立ち上るようによく映えた。しかし杏里が見つめていたのはバイクではない。その傍らに立つ一人の女性だった。
白いライダースーツに身を包んだ彼女は、それに負けないくらい白い肌をしていた。髪は城之内のように染めたものではありえないくらい綺麗な金髪。瞳の色は青。一目でコーカソイドと分かるルックスではあったが、どこか日本人的な柔らかさを持っているところを見るとハーフなのかもしれない。
身長は杏里くらいだろうか。ぴったりとボディにフィットしたライダースーツから、彼女のプロポーションの良さは一目瞭然だった。スラッと伸びた手足、メリハリのある起伏に富んだ肢体。確かに『綺麗』と表現するに相応しい外見だ。
遊緋達が見ていることなど気にも止めず、彼女は店内へと入っていった。
「遊緋、いくら綺麗な子だからって、見すぎ。やらしいの」
隣の杏里がじと目でこちらを睨む。
「そっちが言い出したんじゃないか」と遊緋が反論する。全く言いがかりも甚だしい。
「遊緋は好きだよね、あーゆー綺麗な感じの人。例えば響先輩とか」
しかし尚も杏里はこちらをチクリと刺すように言う。
遊緋にしてみれば、紅羽は別格にしてもさっきの女性と杏里に少なくとも外見的な遜色はないと思うのだが、彼女としてはそうではないらしい。杏里の言う『綺麗な感じの人』には、彼女自身は含まれないようだ。
もし花に例えるならば、杏里は向日葵のようだ。
いつも元気にしゃんと立っていて陽の光を浴びて輝いている。
紅羽は大輪の薔薇。人を惹き付ける美しさと妖艶な魅力を持ち、凛とした棘のような強さがある。
先程の女性は百合だろうか。彼女の白く輝くその姿には邪なものを寄せ付けない潔さと優美さを感じた。
それぞれ持つ魅力は違えども各々が人を魅了する花であることに違いはない。それでいいんじゃないかと遊緋は思うのだが、そう言ったところで当人は納得すまい。
それに杏里がこういう難癖のようなことを言い出す場合は、決まって他に魂胆があるのだ。
「分かったよ、で今回はなに?」
遊緋は仕方なくハンズアップ。
しかしその言葉に杏里は頬を膨らます。
「なによぅその言い方。まるで私が難癖つけて、それを許す代わりにお願いを聞いてもらおうとしてるみたいじゃない」
全くその通りでそれ以外の何物でもないのだが、こうなった杏里は頑なにそれを認めようとしないのも長い付き合いで分かっている。
まぁこういう時の杏里のお願いはそう大したわがままではない。しかし妙に気恥ずかしい思いをすることがしばしばだ。
そしてそれは今回も。
「今度の日曜日、買い物に付き合ってよ」
「買い物?」
買い物など別に遊緋に頼まなくてもいいお願いだ。他の友達と行くとか、荷物持ちが欲しいのならそれこそ他の男子に頼めば断る者などいないだろう。わざわざ人が多くいる場所が苦手な遊緋に頼まなければならないことではない。
しかし杏里はそんなことお構い無しに話を続ける。
「ほら、この前大きなショッピングモールがリニューアルオープンしたじゃない。あそこに行きたいの」
確かにその様な宣伝を目にしたことはあった。例に漏れずレオ・コーポレーション関連の大型ショッピングモールで、広報もかなり大々的に展開しているので、童実野区在住の人なら知らない者は少ないだろう。
「……めちゃくちゃ混みそうじゃないか」
リニューアルオープン当初の大型ショッピングモールなど、人が流れるプールのように渦を巻いているに違いない。正直、気乗りはしない。
「いいじゃない、行こうよ!」
もはや杏里に体裁などない。強引に遊緋の服を掴んで揺する。
それでも「んー」と煮え切らない遊緋に、今度はパンッと手を合わせた。
「お願いッ!ね、この通りッ!」
拝むように手を合わせ、こちらを甘えた瞳で見る。
杏里の瞳の中で光が揺れる。まさに熱視線てやつ。男の心なんてアイスみたいに簡単に溶かされてしまう。
こういうときの女の子ってホント最強だよね。論理的な辻褄なんて関係ない。ネゴシエーターも真っ青の力技。
遊緋は観念して盛大なため息。
「分かったよ。今度の日曜日だね」
結局遊緋も溶かされてしまった。
遊緋はすっかり溶けてしまったストロベリーチョコアイスを一口すくって口に運ぶ。
口に広がるこの甘みも、女の子の甘さの持つ力には遠く及ばない。
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久々に杏里がヒロインらしいことしt(殴
遊緋が知らないところで色々と世界が動き出しているようですが、そんなこととは露知らず、「へぇ、デートかよ」状態。そんな2人の前に現れた男達、何を企んでいるのか。
(2017-03-24 20:03)
さて次回は三戦目に突入しますよ、お楽しみに! (2017-03-24 23:27)
デュエルを通じて親睦を深めるのは本当に良いですよね。本田や城之内と仲良くなれただけでなく、遊緋を見る目が変わって杏里と一緒に下校出来る様になったとは、拝読させて頂いている私も嬉しくなりました!
遊緋にとっては紅羽先輩は正に女神ですね!紅羽先輩へのパイタッチも、とても眼福でした!ありがとうございます!
氷色さんが女性の魅力を花で表現されているのが、とてもセンスを感じました!
楽しそうに遊緋と一緒にアイスを食べていた杏里がとても可愛らしかったです!日曜日にショッピングデートに誘う際のやり取りも最高でした!
白いライダースーツに身を包んだきょぬーの女性キャラにも非常に惹かれました!彼女がどの様に遊緋たちと関わっていくのか、とても楽しみです!
それにしても、氷色さんのお書きになられている遊戯王英雄譚DGは、ストーリーが秀逸で面白いだけで無く、ヒロインの女の子が非常に魅力的で、とても惹かれますね!
是非とも、白いライダースーツの女性と杏里へのパイタッチを書いて頂ければ、幸いです!
(2017-04-02 21:16)
こちらこそいつもから揚げさんのコメントに励まされています。
作者をやる気にさせるよう書くのもたいへんでしょうが、いつもこちらが嬉しくなるコメントを書いていただけるのでそれも素晴らしい才能だと思います。
最近は更新が遅くて申し訳ない気持ちです。少しずつ時間をみつけて書き留めておりますので、末永く見守っていただけると幸いです。
Pタッチはそう期待せずに待っていて下さればその内また機会もあるかと思います笑 (2017-04-03 12:31)