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第44話 不穏 作:白金 将
※更新が遅れてすいません。そろそろ書き始めるかー
フラワリングタウンから少し離れた所にある廃墟ビル。その地下に彼らの拠点はあった。
ボロボロになっているビルの見た目からは想像できないほどのハイテク設備に囲まれながら、その団体の上位職に就いていた男、通称エージェント・ブルーは部下からの書類に目を通す。
「ふむ……何としてでも開催させるみたいですね」
「我々としては出来る策を講じているのですが……」
「気に入らないのはこの小娘たちだ。何故我々精鋭部隊が女一人に勝てない?」
「それは――」
「ああ、もういい。今のは私に返って来る言葉だ……クソッ!」
ブルーの脳裏に浮かんでいたのは、かつて動物保護協会の支援に向かった際にその行く手を阻んできた二人の女。一人の女は本当に実力があったことを認めざるを得ないが、少女の方は理解が出来ない謎の力でブルーとオレンジを退けたのである。
計画に際してはその多くがブルーが担当していたが、ほぼすべての計画は女性らによって阻まれている。そして、デュエルに強い女性の集まっている組織、となると、今までの記録を集めた結果一つしか残らない。
「アルストロメリア……絶対にあの組織は潰さなければなりません。我々の十年来の目標の為に」
「はっ」
「政治部の方に関しては、仕方ないでしょう。一度決まった事ですから開催は避けられません」
しばらく間を置いた後、ブルーは拳を硬く握りながら言葉を吐いた。
「大会が始まれば確実に『奴』はその力を誇示しにやって来る……時間を稼ぎなさい。開催が先か、我々の『兵器』が完成するのが先か……」
「それは――」
「言葉は不要。我々『リナリア』の誇りと存在意義が懸かっているんですよ」
ブルーの前に立っていた部下の額から汗が流れた。
フラワリングタウン政治部。町長室ではさくらがぼんやりと宙を見つめていた。同じ部屋に桔梗もいたが、さくらはまるでそこに桔梗がいることに気付いていないかのように動かない。
「あのさぁ……そろそろ現実見てくれない?」
「見てるよ……? でも面倒くさくなっちゃったなぁって」
さくらを悩ませているのは、開催を約数か月後に控えたフラワリングカップについてのアクシデントであった。
開催にあたって予定地を確保することは前々から出来ていたのだが、相変わらず開催反対派の活動がしぶとく、立ち入り禁止の張り紙がされている区域に入り込んでまで座り込みの活動を始めたのであった。終いにはテントが乱立する始末であり、これでは会場の設営に取り掛かることが出来ないのだ。
元からある施設をフル活用してはいたが、それでも足りないものはある。遠方から来てくれる人たちの為に提供される居住スペースだ。会場近くのホテルなどをあたってはみたが限界があり、どうしても新しい建物を建てなければいけない中、用地での座り込みのニュースが飛んできたのである。
「一応法的にはこっちに分があるよ。悪いのは奴らだし、ちゃちゃっと片づけちゃえばいいじゃん」
「そう出来ればいいんだけど……ごめんなさい、ちょっと考えさせて」
「ま、いろいろ町長として思う所はあるかな。私は待つよ。さくらの言う事なら何でも聞くから」
「ありがとう。桔梗ちゃん」
しばらく考えた後、さくらは桔梗の顔を見た。その顔は普段の優しげな顔ではない。
「桔梗ちゃん、やるよ」
「お、やる気になった感じ?」
「まずは彼らを無理やりにでもどかせて。向こうが裁判を起こしたら、大会の後で全部引き受ける」
「その時はまた私に任せてくれよ。よし、いっちょ派手にやりますか」
――不本意かもしれないけど一人では仕事ができないからお休みになるわね。
葵は伽藍からそう告げられ、遊乃が見つかるまでの間、アルストロメリアの仕事が回ってこないようになった。なにも組織全体で葵を迫害しようとしているわけではなく、二人一組が主となるここにおいて、自身のパートナーを失ったまま仕事にあたるのはリスクが大きい、というためであった。代わりの人とペアを組むことも出来るには出来るが、普段の仲間ではない人とペアを組んだ所でいつも通りの力を出せるかと言えば答えは自明である。
そんな葵は暇つぶしがてら街へ出ていた。本部にいても伽藍たちは仕事をしているため、彼女たちの邪魔にならないようにと外で暮らすことを決めていた。本来ならば休日は遊乃と共にカードショップを回ったり、カフェで一服したり、普段行かないような場所に行ってみたりと出来るのだが、今の葵にはその遊乃がいない。
(一人は慣れっこだと思っていたんだが……堪えるな)
行方不明の遊乃のことを考えていても仕方ない、と葵は適当なカードショップに入る。ガラスケースの中に入っているカードをぼんやりと見ている彼女だったが、どのカードもいまいち魅力的に映らない。彼女の使っているデッキに入りそうな物でさえも色のついた紙程度にしか葵の頭には入ってこなかった。
(まずい、このままだと、いつか自分が壊れちまう)
葵の中で遊乃の存在は非常に大きかった。そのことを身をもって体感していた。ペアが欠けたことによる精神状態の変化は徐々に葵を蝕んでいく。
「外だ……とにかく外に出よう」
誰も答える相手がいない中、葵は何度も何度も口を開いては言葉を紡ぐ。街の中心から離れ、郊外に出て、ふと気が付くとそこは広い敷地だった。このような場所には来たことがない。
「フラワリングカップ大会予定地……ああ、ここでやるのか」
遊乃の置いていった封筒に書いてあったフラワリングカップ。その会場の建設予定地らしいが、周辺の様子がどうもおかしい。敷地内には数々のテントが乱立しており、広い道の両脇には老人たちが座り込み、赤やオレンジ色で「開催反対」と書かれた旗が何本も立っている。
「何が起きてるんだ……」
そう葵が呟いたのに老人の一人が気が付いた。すると、その人は突然葵に向かって歩いてきては罵声のようなものを浴びせかけ始める。
「何だお前は! 用がないならさっさと出てけ!」
「すまん、ここはどうなって……」
「政治部の回し者だな!? 出てけ! 貴様みたいなやつはここから出てけ!」
最初は一人だった罵声が徐々に増えていく。路上に立っていた老人たちが葵の元へ集まり始め、メガホンを近くに押し付けながら訳の分からないことを口々に叫んでいく。
「開催反対! 開催反対!」
「出てけ! 出てけ!」
「私たちは動きません!」
「何をしに来た!」
数々の罵声を受けた葵の心に生まれたのは、不条理による底なしの恐怖。遊乃がいないことで不安定になっていた葵の心がぐらついた。そして、彼女に眠っていた破滅をもたらす怒りが爆発する。
「黙れ……黙れ黙れ黙れええええぇぇぇぇ!」
葵の目が赤に濁る。彼女の声圧は周囲の空気を震わせ、先程までどよめきあっていた群衆がぴたりと動きを止めた。葵の左腕にデュエルディスクが装備され、誰もがひれ伏す孤高の覇者――帝王の姿を彷彿とさせる程のオーラを纏い始めた。
〈Real Solid Vision System…Stand by…?〉
濁った機械音と共に葵はデッキからカードを5枚引く。先程まで葵の周囲にいた老人たちが後ずさりを始めた。次第にその身体を震わせながら走って逃げだす者も現れ、口々に「隊長」と叫びながら蜘蛛の子を散らすように離れていく。
「私は手札から〈天帝家臣イデア〉を通常召喚して効果発動! デッキから〈冥帝家臣エイドス〉を守備表示で特殊召喚、そして2体のモンスターをリリース、アドバンス召喚!」
――降臨せよ、冥帝エレボス!
葵の相手無き戦いが始まる。実体を持ったエレボスは、周囲の空気を震わせながらその巨体を地に下した。そして、誰もが逃げていく中、葵の前に一人の男が立った。開催予定地の反対活動を指揮していた若い男性、その腕にはデュエルディスクが装着されている。
「隊長! 変な女がこっちに!」
「これは大変なことになってる……よし、ここは私が相手しよう!」
「ですが隊長、それでは隊長が危険です!」
「所詮相手は女だ! 女一人のせいで我らの活動を止められてなるものか!」
泣きわめくような声が四方八方から飛んでいる中、葵はその口を開く。
「全員潰してやる……まずは貴様からだ」
― ― ― ― ― ― ― ―
葵 8000
隊長 8000
リアルソリッドビジョンシステム使用
― ― ― ― ― ― ― ―
一方、もりのようかんの一室で横になっていた遊乃はなかなか目を覚まさなかった。ユーノが先程からそばにいて面倒を見てあげてはいるが、彼女が起き上がらないことにとうとうしびれを切らしたらしく、すっと立ち上がる。その腕には、以前彼女が拾った自分のデュエルディスクが装着されていた。
「遊乃ちゃん……大丈夫。戻ってくるから」
そう言ってユーノは部屋を出る。ひとりであることの恐怖を堪えながら、薄暗いようかんの中をろうそくの明かりで進んでいく。タレイアが塞いでいた道を通り、しばらく進むと大きな広間に出た。
部屋には3つの扉があり、その中央には空の花瓶が4つ並んだ祭壇のような物があった。覗いてみると水は入っているようだが、肝心の花がそこにはない。
「花のない花瓶……あれ、これってもしかして」
ユーノは一応持ってきていた桜の枝――以前タレイアに勝利したときに得た物を花瓶の一つに差し込む。すると、部屋に合った3つのドアのうちの一つからカチャリと何かが外れるような音がした。
「花を四本差せば、何が起きるんだろ」
好奇心と恐怖の狭間に立ちながら、ユーノは恐る恐るそのドアへと近づき、手をかける。そっと開けると、そこには一体のモンスターが立っていた。
地面から生えた大きな花の中に君臨する一人の女性。黄色を纏ったその姿は、まさに夏の象徴だ。
「私の名前はマリーナ……あなたの力を見せてもらおうかしら」
フラワリングタウンから少し離れた所にある廃墟ビル。その地下に彼らの拠点はあった。
ボロボロになっているビルの見た目からは想像できないほどのハイテク設備に囲まれながら、その団体の上位職に就いていた男、通称エージェント・ブルーは部下からの書類に目を通す。
「ふむ……何としてでも開催させるみたいですね」
「我々としては出来る策を講じているのですが……」
「気に入らないのはこの小娘たちだ。何故我々精鋭部隊が女一人に勝てない?」
「それは――」
「ああ、もういい。今のは私に返って来る言葉だ……クソッ!」
ブルーの脳裏に浮かんでいたのは、かつて動物保護協会の支援に向かった際にその行く手を阻んできた二人の女。一人の女は本当に実力があったことを認めざるを得ないが、少女の方は理解が出来ない謎の力でブルーとオレンジを退けたのである。
計画に際してはその多くがブルーが担当していたが、ほぼすべての計画は女性らによって阻まれている。そして、デュエルに強い女性の集まっている組織、となると、今までの記録を集めた結果一つしか残らない。
「アルストロメリア……絶対にあの組織は潰さなければなりません。我々の十年来の目標の為に」
「はっ」
「政治部の方に関しては、仕方ないでしょう。一度決まった事ですから開催は避けられません」
しばらく間を置いた後、ブルーは拳を硬く握りながら言葉を吐いた。
「大会が始まれば確実に『奴』はその力を誇示しにやって来る……時間を稼ぎなさい。開催が先か、我々の『兵器』が完成するのが先か……」
「それは――」
「言葉は不要。我々『リナリア』の誇りと存在意義が懸かっているんですよ」
ブルーの前に立っていた部下の額から汗が流れた。
フラワリングタウン政治部。町長室ではさくらがぼんやりと宙を見つめていた。同じ部屋に桔梗もいたが、さくらはまるでそこに桔梗がいることに気付いていないかのように動かない。
「あのさぁ……そろそろ現実見てくれない?」
「見てるよ……? でも面倒くさくなっちゃったなぁって」
さくらを悩ませているのは、開催を約数か月後に控えたフラワリングカップについてのアクシデントであった。
開催にあたって予定地を確保することは前々から出来ていたのだが、相変わらず開催反対派の活動がしぶとく、立ち入り禁止の張り紙がされている区域に入り込んでまで座り込みの活動を始めたのであった。終いにはテントが乱立する始末であり、これでは会場の設営に取り掛かることが出来ないのだ。
元からある施設をフル活用してはいたが、それでも足りないものはある。遠方から来てくれる人たちの為に提供される居住スペースだ。会場近くのホテルなどをあたってはみたが限界があり、どうしても新しい建物を建てなければいけない中、用地での座り込みのニュースが飛んできたのである。
「一応法的にはこっちに分があるよ。悪いのは奴らだし、ちゃちゃっと片づけちゃえばいいじゃん」
「そう出来ればいいんだけど……ごめんなさい、ちょっと考えさせて」
「ま、いろいろ町長として思う所はあるかな。私は待つよ。さくらの言う事なら何でも聞くから」
「ありがとう。桔梗ちゃん」
しばらく考えた後、さくらは桔梗の顔を見た。その顔は普段の優しげな顔ではない。
「桔梗ちゃん、やるよ」
「お、やる気になった感じ?」
「まずは彼らを無理やりにでもどかせて。向こうが裁判を起こしたら、大会の後で全部引き受ける」
「その時はまた私に任せてくれよ。よし、いっちょ派手にやりますか」
――不本意かもしれないけど一人では仕事ができないからお休みになるわね。
葵は伽藍からそう告げられ、遊乃が見つかるまでの間、アルストロメリアの仕事が回ってこないようになった。なにも組織全体で葵を迫害しようとしているわけではなく、二人一組が主となるここにおいて、自身のパートナーを失ったまま仕事にあたるのはリスクが大きい、というためであった。代わりの人とペアを組むことも出来るには出来るが、普段の仲間ではない人とペアを組んだ所でいつも通りの力を出せるかと言えば答えは自明である。
そんな葵は暇つぶしがてら街へ出ていた。本部にいても伽藍たちは仕事をしているため、彼女たちの邪魔にならないようにと外で暮らすことを決めていた。本来ならば休日は遊乃と共にカードショップを回ったり、カフェで一服したり、普段行かないような場所に行ってみたりと出来るのだが、今の葵にはその遊乃がいない。
(一人は慣れっこだと思っていたんだが……堪えるな)
行方不明の遊乃のことを考えていても仕方ない、と葵は適当なカードショップに入る。ガラスケースの中に入っているカードをぼんやりと見ている彼女だったが、どのカードもいまいち魅力的に映らない。彼女の使っているデッキに入りそうな物でさえも色のついた紙程度にしか葵の頭には入ってこなかった。
(まずい、このままだと、いつか自分が壊れちまう)
葵の中で遊乃の存在は非常に大きかった。そのことを身をもって体感していた。ペアが欠けたことによる精神状態の変化は徐々に葵を蝕んでいく。
「外だ……とにかく外に出よう」
誰も答える相手がいない中、葵は何度も何度も口を開いては言葉を紡ぐ。街の中心から離れ、郊外に出て、ふと気が付くとそこは広い敷地だった。このような場所には来たことがない。
「フラワリングカップ大会予定地……ああ、ここでやるのか」
遊乃の置いていった封筒に書いてあったフラワリングカップ。その会場の建設予定地らしいが、周辺の様子がどうもおかしい。敷地内には数々のテントが乱立しており、広い道の両脇には老人たちが座り込み、赤やオレンジ色で「開催反対」と書かれた旗が何本も立っている。
「何が起きてるんだ……」
そう葵が呟いたのに老人の一人が気が付いた。すると、その人は突然葵に向かって歩いてきては罵声のようなものを浴びせかけ始める。
「何だお前は! 用がないならさっさと出てけ!」
「すまん、ここはどうなって……」
「政治部の回し者だな!? 出てけ! 貴様みたいなやつはここから出てけ!」
最初は一人だった罵声が徐々に増えていく。路上に立っていた老人たちが葵の元へ集まり始め、メガホンを近くに押し付けながら訳の分からないことを口々に叫んでいく。
「開催反対! 開催反対!」
「出てけ! 出てけ!」
「私たちは動きません!」
「何をしに来た!」
数々の罵声を受けた葵の心に生まれたのは、不条理による底なしの恐怖。遊乃がいないことで不安定になっていた葵の心がぐらついた。そして、彼女に眠っていた破滅をもたらす怒りが爆発する。
「黙れ……黙れ黙れ黙れええええぇぇぇぇ!」
葵の目が赤に濁る。彼女の声圧は周囲の空気を震わせ、先程までどよめきあっていた群衆がぴたりと動きを止めた。葵の左腕にデュエルディスクが装備され、誰もがひれ伏す孤高の覇者――帝王の姿を彷彿とさせる程のオーラを纏い始めた。
〈Real Solid Vision System…Stand by…?〉
濁った機械音と共に葵はデッキからカードを5枚引く。先程まで葵の周囲にいた老人たちが後ずさりを始めた。次第にその身体を震わせながら走って逃げだす者も現れ、口々に「隊長」と叫びながら蜘蛛の子を散らすように離れていく。
「私は手札から〈天帝家臣イデア〉を通常召喚して効果発動! デッキから〈冥帝家臣エイドス〉を守備表示で特殊召喚、そして2体のモンスターをリリース、アドバンス召喚!」
――降臨せよ、冥帝エレボス!
葵の相手無き戦いが始まる。実体を持ったエレボスは、周囲の空気を震わせながらその巨体を地に下した。そして、誰もが逃げていく中、葵の前に一人の男が立った。開催予定地の反対活動を指揮していた若い男性、その腕にはデュエルディスクが装着されている。
「隊長! 変な女がこっちに!」
「これは大変なことになってる……よし、ここは私が相手しよう!」
「ですが隊長、それでは隊長が危険です!」
「所詮相手は女だ! 女一人のせいで我らの活動を止められてなるものか!」
泣きわめくような声が四方八方から飛んでいる中、葵はその口を開く。
「全員潰してやる……まずは貴様からだ」
― ― ― ― ― ― ― ―
葵 8000
隊長 8000
リアルソリッドビジョンシステム使用
― ― ― ― ― ― ― ―
一方、もりのようかんの一室で横になっていた遊乃はなかなか目を覚まさなかった。ユーノが先程からそばにいて面倒を見てあげてはいるが、彼女が起き上がらないことにとうとうしびれを切らしたらしく、すっと立ち上がる。その腕には、以前彼女が拾った自分のデュエルディスクが装着されていた。
「遊乃ちゃん……大丈夫。戻ってくるから」
そう言ってユーノは部屋を出る。ひとりであることの恐怖を堪えながら、薄暗いようかんの中をろうそくの明かりで進んでいく。タレイアが塞いでいた道を通り、しばらく進むと大きな広間に出た。
部屋には3つの扉があり、その中央には空の花瓶が4つ並んだ祭壇のような物があった。覗いてみると水は入っているようだが、肝心の花がそこにはない。
「花のない花瓶……あれ、これってもしかして」
ユーノは一応持ってきていた桜の枝――以前タレイアに勝利したときに得た物を花瓶の一つに差し込む。すると、部屋に合った3つのドアのうちの一つからカチャリと何かが外れるような音がした。
「花を四本差せば、何が起きるんだろ」
好奇心と恐怖の狭間に立ちながら、ユーノは恐る恐るそのドアへと近づき、手をかける。そっと開けると、そこには一体のモンスターが立っていた。
地面から生えた大きな花の中に君臨する一人の女性。黄色を纏ったその姿は、まさに夏の象徴だ。
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120 | 第58話 前哨戦(△) | 846 | 5 | 2017-11-09 | - | |
126 | 第59話 混沌を制す者(△) | 1039 | 2 | 2017-11-12 | - | |
52 | 第60話 侵略者の領域 | 903 | 4 | 2018-02-20 | - | |
107 | 【報告】現状と暗い見通し【更新できねぇ】 | 1129 | 0 | 2018-05-31 | - |
更新情報 - NEW -
- 2024/03/23 新商品 QUARTER CENTURY CHRONICLE side:PRIDE カードリスト 追加。
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- 03/29 06:27 評価 5点 《天空の聖域》「第3期に登場し、レギュラーパックのパック名にも…
- 03/29 06:19 評価 9点 《天空神騎士ロードパーシアス》「《天空の聖域》とその関連カード…
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- 03/29 06:02 評価 6点 《ハーピィ・コンダクター》「風属性モンスター2体でL召喚できる…
- 03/29 05:49 評価 8点 《ホップ・イヤー飛行隊》「相手のメインフェイズに自分の場のモン…
- 03/29 05:35 評価 10点 《RUM-幻影騎士団ラウンチ》「遠目で見ると窓の部分が怪物の…
- 03/29 05:27 評価 10点 《幻影騎士団ラスティ・バルディッシュ》「海外先行カードとして…
- 03/29 05:19 評価 3点 《ライトロード・パラディン ジェイン》「「ライトロード」の出席…
- 03/29 04:15 評価 9点 《アロメルスの蟲惑魔》「モデルは獲物を生きたまま磔にして食らう…
- 03/29 03:51 評価 10点 《オルターガイスト・マルウィスプ》「もっとこういう新規を増や…
- 03/29 03:49 評価 5点 《オルターガイスト・エミュレルフ》「さすがに今の環境にこれが入…
- 03/29 03:46 評価 7点 《オルターガイスト・ホーンデッドロック》「外国人のオルガ使いみ…
- 03/29 00:39 評価 7点 《時を裂く魔瞳》「効果が極端すぎてピンキリな評価になりやすいカ…
- 03/29 00:35 評価 10点 《外神アザトート》「 ぶっちゃけ92%《ラウンチ》が元凶な一…
- 03/29 00:27 評価 10点 《心変わり》「お馴染みのコントロール奪取の代表例にして最強格…
- 03/28 23:30 評価 4点 《スターダストン》「「スターダスト」モンスターのはみ出し者であ…
- 03/28 23:06 評価 1点 《キューブン》「《ライオウ》や《電光-雪花-》などから《同胞の…
- 03/28 22:59 評価 6点 《PSYフレームギア・ε》「《PSYフレームギア》の一体。 相…
- 03/28 22:56 評価 1点 《星屑の残光》「墓地の「スターダスト」モンスターを専門に蘇生す…
Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
一方で残り3つもようかんと同じく慌ただしい感じになっています。
だいぶ前に出てきて今回久しぶりに登場したブルーの所属する「リナリア」なる組織は何故アルストロメリアは敵視するのか、フラワリングタウンの町長たるさくらは大会の裏で何をもくろんでいるのか、そして明らかに某県の某国基地前に屯してそうな集団に絡まれて精神を乱してしまった葵はどうなってしまうのか……大会までに一気に物語の謎が解明されそう(?)ですね。
(2017-03-20 01:20)
そうですこれは季節順に全員出(ry
皆が皆尖ったデッキになっておりますのでお楽しみに……
大会開催までには割と多くの謎が解明される予定です。今までは特に大きな動きはありませんでしたが、そろそろ物語が動き始めます。リナリアとアルストロメリアの因縁、政治部の目論見、葵の秘密、ユーノの秘密と書かなきゃいけないことは盛り沢山なんですが頑張りますね(`・ω・´) (2017-03-20 16:19)
春の次は夏が登場(なんとなくそんな感じがしてました)。今回はユーノが戦う番ですね、どのような戦いを見せてくれるのでしょうか (2017-05-18 17:04)
夏担当のマリーナさんの相手はユーノですね。彼女の使うデッキが何かも含め、お楽しみください。 (2017-05-18 17:24)