寄り道編01. 気持ち交換記念日の悲劇　作：くちなし

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本日朝6時30分。
僕、観月悠里はいつもの様にアカデミアに居た。

今日、2月14日、皆さんは何の日かご存じだろうか。
【普通の人】ならば「バレンタインデー」という甘い様な、苦虫を齧る様なイベントが行われる日なのである。
女性が男性に甘い想いをそれとなく伝える日。ロマン溢れる男子は、大いに興奮するが、多くの男性諸君が、
何も起きずに儚く散ってゆく、そう言う日だ。
そうそう、このアカデミア、入学式は1月という変な学校なのである。
入学して1か月。人にあげるとすれば、友チョコ、感謝チョコくらいな物だろう。

この日にのんきにお菓子を渡しているのなんて日本くらいな所である。
遠く離れた仏国では、「恋人達のお祭りの日」と呼ばれ、男性から女性に当日、花屋で「貴女を愛します」という
花言葉を持つ真っ赤なバラの花を贈るのが一般的である。

台湾もバラの花を贈るが、1本なら「貴女だけを愛している」、11本なら「一番好き」、99本なら「一生好き」、
108本なら「結婚して」と本数で意味が決まっている。抱えきれない程の薔薇の花と告白するという、
ロマンチックなイベントなのだ。

米国では、男性が女性に気持ちを伝える大チャンスの日とされていて、カード、アクセサリー、ジュエリー、
花束、ハート形のバルーン、豪華ディナーとプレゼントも様々だ。


人に話せば、負け惜しみ的な感じに取らわれるが、これが現実なのだ(英国は論外)。
僕は、生まれてこの方、他人から何かを貰った事が無いし、このイベントを誰よりも忌み嫌う理由があった。


ｰｰｰ回想①

時に中学校3年生。
中学校でも、クラスのはぐれ者になっていた僕。
そんな僕には、好きな人が居た。仮にS、としよう。先に行っておくが、桜花ではない。

そんな僕は、教室の掃除当番を1人で黙々と行っていた時の事である。
【クラスメイトの奴、、出てかねぇなぁ、、】と思いながらやっていた。
吐き掃除、黒板掃除が終り、ゴミ捨てで教室を出る。

「掃除か?頑張ってるねぇ」
「なんだよ、ウミキヨ。馬鹿にしに来たのか？」
「ごめんって。もうすぐ掃除終わるんでしょ？一緒に帰ろうぜ♪」
「ああ」

ゴミ捨てが終わり、海清とともに、教室へ戻る。まだいたのか、クラスメイトよ。いつになったら帰るんだろな。

教室のドアをガラ、、開けたら、そこにはあり得ん光景。
いきなり目隠しをされ、どこかへ引っ張られる。
海清は隠れていた。
視界が開けると、目の前には恋していた女子。周りには帰り支度が出来たクラスメイトが囲んでいた。

「これ、、あげるよ」
「へぇ、、ありがと。なんで？」
「いつも、掃除頑張ってるし、、優しいし、、」
「そうか。ありがと。」

Sから小さな箱を貰った僕は、帰ろうと、教室を出ようとする。帰り際。こう言ってやった。

「お前のなんかいらねぇよ！！」

クラスメイトは騒然。その場にいた先生も騒然。

「てめぇ、何してるんだ！」
「うッわ、ひでぇ、、!」

S、号泣。
クラスメイトからの怒声、罵声、泣き崩れる女子などなど。
批判も当然受ける。
先生は、

「ちょっと、観月君！どういう事なの！説明しなさい！」

当然怒る。しかし、耳の片隅にも置かずに、僕は黙って帰った。

ｰｰｰ回想①終

こんな事があったわけで、貰うのはお断り状態になりつつある。

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いつもの様に学校生活を終え、家に帰った夜の事。
夜ご飯を買いに、行きつけの店へ寄り、帰る所。
誰かに腕を引っ張られる。

安楽々だ。

「みーづーきーくん♪」
「何。用？」
「これ」
「チョコレート？」

チョコレート、、まさか自分に来るとはな。だがごめんよ、食べれないんだ。なぜかって？私はね、
【チョコレートを見ると体調不良引き起こす症候群】(自称)なんだ。
丁重にお断りしようと思ったとき。

「チョコレートじゃないよ」

え？

「その、、クッキー、、焼いたから、、チョコレート、食べれないみたいだから、、」

何故知ってるんだ。僕が【チョコレートry症候群】だという事を。それと、【今日】此処にいるか。

「その、、いつも話してる、男の子居るでしょ？」

ああ、ウミキヨか。安楽々、可哀想に。きっと学年中の女子が恨んでいるだろう。
なにせ、あの海清と少しでも話したのだから。

「その子に聞いてさ、、知ったんだ、、」

それはわざわざ、どうも。

「貰っておく。せっかく焼いてきてくれたんだしな」
「、、♪」
「ありがとな」
「うん、、！それだけ。じゃあね♪」

制服姿にマフラーと手袋をした安楽々は走って去っていった。

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その日の夜。
まだ少し、怖い。本当にクッキーなのか。
あの話には続きがある、

ｰｰｰ回想②始

翌日。
僕はある計画の為に午前中、行ったふりをして、学校をさぼった。
先生からの電話も入ったが、家には1人だけなので、電源を切っておいた。

ある計画を実行するために準備しておいたものを持って。

給食後、昼休み。学校に来た。
しかし、批判されるのを理解しているのに、教室へは行かない。僕は体育館へ向かった。

今日の5時間目は全校集会なのだ。
なぜかと言うと、【デュエル国際データベース教習会】通称DDKが開かれるからだ。
体育館はまだ無人。舞台裏、誰にも見えない死角の部分に隠れることにした。

時が来て、全生徒が入って来る。
因みに僕は、舞台裏からも見えない、部隊の吊り下げ幕の上に座っていた。
この時の身長は135cm。あと20cm高かったら、足が見えて、ばれてしまう所である。

「これから、教集会を始めます」

教習会が開かれる。内容はデュエルタクティクス、効果の違いなどなど、海外の遊戯王についても話していた。

此処で言っておこう。何故この日なのか。
早い方が良い、というのも理由のうちだが、教習会に来るある人物に聞いてもらうためにこの日を選んだ。

そして実行の時。
この学校では、無人体育館に誰も侵入し、悪戯が出来ない様に、鉄柵子が下ろされるという、物騒な所だ。

そして、その策が完全に降ろされ、終了アナウンスの時に時は来る。

「これで、デュエル国際データベース教習会を終了しま、、

「ちょっと待ったぁ！！」

うぃぃぃぃん、ガシャン。閉じかけた舞台幕が止まり、僕は誰もいない舞台へ吊り下げ幕から飛び降りる。
体育館に居た誰もが騒然とする。

特にクラスメイトを睨め付けてやった。

「あ、あ、この場を借りて言いたい事がある特に、全生徒に聞いてもらいたい事が」

堂々と言ってやった。
先生、生徒共、騒ぎ立てるが、

「良いだろう。ただし、この俺をつまらなくさせるような物だったら、覚悟しておけよ」
「良いでしょう！」
「よく言った。全生徒よ、黙って聞いてあげてくれ！」

ありがとうございます。講師さん。いや、『水無月咲夜』さん

「私がココに居る理由、それは、この場に居る全員に、私に起きた悲劇を伝えるため、、」

クラスメイトよ、貴様らはもう知っているよな。

「昨日の放課後、バレンタインという事もあって、私はある人から小さな箱を貰いました。しかし、私はそれを踏んづけて、ボロボロにしました。」

生徒によるブーイング多発。

「これだけでは、私が悪いでしょう。『これだけ』では！」

全員、一気に静かになる。

「この写真を見て下さい。講師さん、いや、水無月咲夜さん、貴方なら、これが何か分かりますよね」

スクリーンに写真を写す。

「1枚目。これは中身です。真っ赤に染まっているのが分かりますか？」

2枚目に移行。

「このデータは、このチョコレートの成分です。50％が唐辛子、そして10％の釘、画鋲、、」

『そして、インパクトパウダーが40％』

その瞬間、体育館中が騒然。

「皆さんご存知の通り、インパクトパウダーは危険物に指定されており、食べたら1分後に死ぬという劇薬です。これが、私の貰ったチョコレートに入っていました。つまり、湖のチョコを渡した人は私を殺そうとしたのです！！！」

どういう事だ、という生徒が出てきた。

「理由を説明します。はっきり言いましょう。私はクラスからいじめを受け、嫌われています。嫌いな人に送るチョコレートってへんじゃないですか？なにより、、」

『チョコレートに付いた指紋を採取すれば、その人が作ったという証拠が出ます！！』

「な！Sさんよぉ！！」

そいつは泣きじゃくっていて、先生が解放した。

「担任も、放任して、誰も助けてくれなかった！授業中は質問さえさせて貰えず、唯一貰った言葉は『貴方が虐められている事なんて知られたら、私の人生が狂うのよ！我慢なさい！』という言葉です！これは学級の担任として、子供を見る人としてどうでしょうか！」

すると、耐えかねたのか、柵が上がる！

「ほう！都合の悪い事を言われたら中断させるのですか！最後に1つ言わせてもらう！いまここで、裁判官でもある水無月咲夜さんに、この罪の重さを判決して貰います！」

「もういい！！」

その言葉を放った瞬間、一斉に無音になった。沈黙の時が流れる。

「もういい。十分だ」

ｰｰｰ回想②終

この事件は、チョコレートに恐怖を抱き、食べられなくなったという心の傷で300万、と
Sは家裁送りに、担任は解雇と、永久追放になった。

「水無月さんの権力ってすげぇなぁ、、」
「そうだな」

話しているのは海清である。この事件の内部告発者。
たまたま話し合いにいたウミキヨが教えてくれたのだ。
その後、ウミキヨと2人で桜花の手作り料理を食べ、ウミキヨは泊まっていった。

今思うと、相当凄い事である。
僕は安楽々から貰った箱を開け、中身を見る。
ちゃんとクッキーが入っていた。よかった、、

1口食べる。
寂しいようで、優しい。その上に、温かい感じがする。

「聖ウァレンティヌス」　は キリスト教と大きく関係があり、269年、ローマ皇帝の迫害下で不法に結婚式を
執り行い処刑されたキリスト教の聖職者のウァレンティヌス司祭を指している。

時代は西暦3世紀のローマまで遡る。
これには、歴史的背景があり、当時、毎年2月15日にローマの農耕神ファウヌスと、ローマの建国者
ロームルスとレムスに捧げられた多神教儀式でもある豊饒祭ルペルカリア祭が行われていた。
ルペルカリア祭とは、豊穣祈願に加え、安産や多産をも目的として、当時別々に生活していた若い男性と女性が
唯一知り合う機会でもあり半裸の男性が女性を追っ掛け回し、女性を鞭で打ってまわる。
すると女性は子宝に恵まれるといった儀式である。

その2月15日ルペルカリア祭の前日、現在のバレンタインデーにあたる日は、家庭と結婚の神ユノの日として
祝日とされ、ルカペリア祭とも呼ばれていた。この日、未婚の娘たちは自分の名前を書いた札を壺の中に入れる
事になっており、その日1日、男達は壺から札を一枚選び、引いた札に書かれている娘と、祭りの間一緒に
居る事になっていたという。

当時のローマ皇帝クラウディウス２世ゴティクスは婚した兵士達が配偶者らと引き離され、士気が下がるのを
感じそして恐れ、家族への未練が出ない様にする為を理由に結婚禁止令を出した。

当時キリスト教が受け入れられ無かったローマでの結婚禁止令を非人道的だと考えたウァレンティヌスは
半ば秘密裡に愛する兵士と女性の結婚式を執り行ったのだった。しかし、当然、に見つかった結果、
彼は監獄に囚われの身になるのである

異教を排除したかった当時の市長は激怒した。
ウァレンティヌスには　酷い拷問を続けたうえ棒で撲殺という形で
269年2月14日ウァレンティヌスを処刑したのである。
処刑は、ユノの日をあえて選んで
ルペルカリア祭の生贄にしたとも言われている

さらに496年、法王ゲラシウス１世は、兵士達の風紀の乱れを食い止める為、ルペルカリア祭を廃止した。
しかし、この人気の祭りを廃止すると兵士の反発を生む為、兵士の結婚のためにウァレンティヌスが殉教した
2月14日に対し、キリスト教に関係するウァレンティヌス由来の祭りとして、別の内容でくじを使った祭を新たに
作り、当たり者には聖人扱いする優遇された権利を1年与えたという。

ついにルペルカリア祭は完全に廃止、2月14日を聖ウァレンティヌスの祝日とした。やがて中世になり、
各地でこの伝説が語り継がれていったといわれている。これがバレンタインデーの発祥の一説である。

ひどい話である。
私も同じ目に遭いそうな気がする、
さて、夜は何作ろうかな。












≪安楽々よ、ありがとう≫



























≪僕なんかに、わざわざ、クッキーを、、≫






























忘れられない思い出の1つになったよ、、


fin