HOME > 遊戯王SS一覧 > 遊戯王 Hedgehog Flowers > 第42話 桜姫降臨

遊戯王 Hedgehog Flowers/第42話 桜姫降臨 作:白金 将


「私のターン、ドロー! 私は手札から〈フォトン・スラッシャー〉を攻撃表示で特殊召喚! さらに手札から〈星因子 ベガ〉を通常召喚してベガの効果発動! 手札から〈星因子 デネブ〉を守備表示で特殊召喚します! デネブの効果で私はデッキから〈星因子 アルタイル〉を手札に加え、そして、三体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 遊乃とタレイアの間で三体の戦士族モンスターが光となって一つの戦士を象る。それは遊乃を支え続けている彼女のデッキのエースモンスター。星の力を司りし光の戦士。

「大三角のもとに集いし光よ、今ここに合わさりて一筋の希望となれ! エクシーズ召喚! お願いします、〈星輝士 デルタテロス〉!」
「エクシーズ……ほう」
「私はデルタテロスのオーバーレイユニットを一つ使って効果発動! 〈桜姫の侍女ツツジ〉を破壊します! そしてバトルフェイズ! 私はデルタテロスで〈桜姫の侍女ハナミズキ〉を攻撃!」

 デルタテロスの攻撃によってタレイアの目の前のフィールドは全てがら空きになった。ダメージこそ通っていないが、フィールドを離れた時にテラナイトにアクセスすることのできるデルタテロスがいることで盤上のアドバンテージは遊乃が若干勝っている。だが、それでもタレイアは不敵な笑みを隠さない。油断が出来ないのは遊乃も承知であった。

「私はカードを2枚セットしてターンエンド!」
「エンドフェイズに伏せていた〈ツインツイスター〉を発動。手札の〈フェニキシアン・クラスター・アマリリス〉を墓地へ送ってその2枚を破壊する」
「うっ……」

 遊乃の伏せていた〈デモンズ・チェーン〉と〈神聖なる因子〉が破壊されてしまう。どちらも【テラナイト】においては非常に大きな役割を持つカードだ。だが、これでも盤上のカードは一対一。手札も遊乃が二枚、タレイアが一枚と一枚差である。

「我のターン、ドロー。我のフィールドにモンスターがいないため、手札から前のターンに加えた〈桜姫の侍女ハナミズキ〉を守備表示で特殊召喚。ハナミズキの効果でデッキから〈桜姫の侍女ツツジ〉を攻撃表示で特殊召喚。特殊召喚に成功したツツジの効果でデッキから3枚目の〈桜姫の侍女ハナミズキ〉を手札に加える。さらに我は手札から〈ローン・ファイア・ブロッサム〉を通常召喚!」
「〈ローン・ファイア・ブロッサム〉……私は手札から〈増殖するG〉を発動します!」
「構わん。我は〈ローン・ファイア・ブロッサム〉をリリースして効果発動!」

 それと同時にタレイアの身体が輝きを放つ。一瞬の閃光に遊乃とユーノが目をつむった後、目を開いた先にはさらに存在感を増したタレイアの姿があった。先程よりもはっきりとそこにいるのが分かる。

「フィールドに、我、〈桜姫タレイア〉降臨!」
「この気迫……何……」
「負けちゃ駄目、頑張って!」

 デッキからカードをドローしながら遊乃は、自分でも知らないうちに半歩退いてしまっていたことに気が付く。二人の侍女を連れてそびえるタレイアはそこにいるだけで遊乃とユーノを圧倒していた。後ろからのユーノの応援を聞いて遊乃はもう一度自分を奮い立たせる。

「そして我は〈死者蘇生〉を発動。もう一度現れろ〈ローン・ファイア・ブロッサム〉! そしてその効果をもう一度発動する。現れろ、我が眷属〈桜姫の侍女カタクリ〉! カタクリが場に存在している間、相手は我を倒さなければ我が眷属に手を出すことが出来ない!」

 タレイアたちの並びに現れたのは新たな眷属、カタクリ。遊乃の手の甲に汗が浮く。三人の侍女とその中央に存在する姫の光景を見て、何度も何度も立て直していた心へひびが入った。〈増殖するG〉の効果で現在までに3ドローを得ているが、それでも一度圧倒されてしまった精神が立ち直るのには時間がかかってしまう。

「バトルフェイズだ。我はデルタテロスに攻撃! 我の攻撃力は3200……700のダメージを受けてもらおう!」
「きゃっ……!」


― ― ― ― ― ― ―
遊乃   手札6枚 伏せ0枚 6300
タレイア 手札1枚 伏せ1枚 8000 ハナミズキ守 カタクリ攻 ツツジ守 タレイア攻
― ― ― ― ― ― ―


「で、でも、フィールドを離れたデルタテロスの効果発動! 墓地から〈星因子 アルタイル〉を守備表示で特殊召喚! そして、アルタイルの効果で墓地の〈星因子 デネブ〉を攻撃表示で特殊召喚! さらにデネブの効果でデッキから〈星因子 ベガ〉を手札に……!」

 遊乃の手札に、前のターンにサーチしたアルタイルとベガが揃った。これがあれば彼女のデッキは一応エクシーズモンスターを立てることが出来る。だが、決して何もかも一筋縄ではいかない。
 そして、侍女の方から再び種子のような物が飛んでくる。先ほどよりやや多めのダメージを受けながら、遊乃は自分の手札7枚をじっと見ていた。

「エンドフェイズにハナミズキ・カタクリ・ツツジのバーンダメージ、1500を受けてもらおう。さらに墓地の〈フェニキシアン・クラスター・アマリリス〉の効果を発動! このカードは墓地の〈桜姫の侍女ツツジ〉を除外し、我がエンドフェイズに墓地から蘇る!」

 タレイアの目の前のフィールドが埋まってしまった。壁モンスターを立てたには立てたが、この状況を打開するのはそう容易ではない。遊乃の後ろで見ていたユーノも、この様子には何一つ言葉が出ないようだった。


― ― ― ― ― ― ―
遊乃   手札7枚 伏せ0枚 4800 アルタイル守 デネブ攻
タレイア 手札2枚 伏せ1枚 8000 ハナミズキ守 カタクリ攻 ツツジ守 アマリリス攻 タレイア攻
― ― ― ― ― ― ―


― ― ― ― ― ― ―
桜姫の侍女カタクリ ※オリカ

効果モンスター
星3/水属性/植物族/攻1200/守1000
①自分フィールド上にレベル5以上の植物族モンスターが存在する場合、相手はレベル4以下のモンスターに攻撃することが出来ない。
②自分エンドフェイズに発動する。相手ライフに500ポイントダメージを与える。

― ― ― ― ― ― ―
桜姫タレイア

効果モンスター
星8/水属性/植物族/攻2800/守1200
このカードの攻撃力は、自分フィールド上の植物族モンスターの数×100ポイントアップする。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカード以外のお互いのフィールド上の植物族モンスターはカードの効果では破壊されない。

― ― ― ― ― ― ―







 アルストロメリア本部、葵の自室。戻ってきた彼女はベッドの上で横になったまま、特に眠りにつくようなことなくずっと暗い天井を眺めていた。時刻は午後十一時。既に普段の彼女なら眠りについているはずだった。大体三十分ほど、こうして考え事をして過ごしている。

(洋館は子供っぽい人しか入れないというが、それなら遊乃が入れた理由も分からないでもない……ただ、本来は私が遊乃を支えていないといけない。あいつは何より孤独が苦手なんだ)

 葵の脳裏に、かつて動物保護協会の現場を押さえたあの夜が蘇る。遊乃は「一人」というワードを嫌った。

(誰かが支えてやれればいいんだが……クソ、こんな時に何も出来ない自分が……)

 とりあえずベッドから起き上がったが、今の葵に出来ることはない。テーブルに視線を向けた時、そこに茶封筒が一つ置いてあるのが見えた。遊乃が朝、この部屋に来た際に忘れていった物だろうか。手に取って表裏を確認すると、それには夏に開催される大会の申込書が入っているらしい。フラワリングタウンの政治部からだ。

(勝手に中を見るのは気が引けるが、まあいいだろ。どうせあいつは怒らない)

 封筒の中を覗くとそこには三つ折りになった紙が入ってある。取り出して広げると案の定、大会の申込書だった。何も書いてなく、まっさらであった。もしかしたら遊乃は何か聞こうとしていたのかもしれない。
 そんな事を考えていると喉が渇いてきた。今日はここに戻って来てから何も飲み食いをしていなかった。

「大会か……さて、出るとしても何のデッキを使えばいいのか」

 部屋を出て談話室に足を運ぶと、いつもの窓際の席で翌檜が本を読んでいた。葵が来たことに気が付くと彼女は読んでいた本にしおりを挟めて閉じる。

「起きた……?」
「ちょっと早めに寝たせいか変な時間に起きちまってな」
「気分、どう?」
「どうって……」

 翌檜の言葉に葵はしばらく考える。だが、それほど答えを出すのにはかからなかった。

「遊乃がいないのは気になるが、まあ、あいつなら平気だろ」
「……?」
「そう簡単に折れるような奴じゃない、と信じているんだけどな」

 葵の言葉を聞いた彼女はそれを聞いて微かに笑う。

「……何か、飲む?」
「ああ、それじゃあ何か貰うか。物は任せる」

 翌檜が立ち上がって飲み物を入れに行っている間、葵は先程翌檜が座っていた席の向かいに座り、そこから外の様子を見る。今宵は満月だった。







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光芒
そう言えばタレイアの効果は自己強化でしたね……タレイアを倒さなければ彼女の眷属たる侍女たちは倒せず、侍女たちを放置すればバーンダメージがライフをじわじわと削っていく。まさに植物のように養分を奪っていくかのような戦い方ですね。嫌らしいですが、堅実なデュエルだと思います。
テラナイトは展開能力に優れますが、その反面やや火力が低めというところがあるので、タレイアのこの布陣をどのように突破するのか……

そして遊乃の帰りを待つことしかできない葵の心中。心配するだけではなく、遊乃に対する信頼が現れていますね。すっかり姉妹のようです。
(2017-02-15 00:31)
白金 将
<<光芒 さん
今回のタレイアのデッキ【桜姫】はロックバーン寄りの構成になりました。この布陣で【桜姫】の基本戦術は完成したと言えますね。しかしまだ一撃必殺級の切り札が残ってますよ……?
テラナイトだと火力が届かない所がありますが、そこを遊乃がどうするかは次をお楽しみに。

待つことしか出来ないのはかなり辛い事ですが、今までのことから遊乃がただでは倒れない人だという事を葵は知っています。しかし弱い部分も分かっているからそこが心配……という気持ち。もう「仕事仲間」というだけの関係ではありませんね。 (2017-02-15 05:11)

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