05. 超制圧効果　作：くちなし

★☆★☆

学校を飛び出して20分。ようやく海が見えてきた。
あ、あれを使えばよかったじゃないか、、

『魔法カード、緊急テレポート発動』

一旦、自宅へ戻る。このワープは家までしか繋がっていないが、家に帰れば、自転車がある。
ガシャン、とスタンドをあげ、時速40kmで飛ばしていく。
時速40Kmはかなり早い方だ。

家の前の道路を進むと坂道があり、坂道から海が見える。
すると、ある事に気が付く。

「、、！おいぃぃ、、！」

コンテナが、船に積まれている。既に20個も。
こんな時に、天は味方してくれたようで、周りは時間が止まったように静かで、人の気配すら感じない。
おかげで、思い切りすっ飛ばして走れる。
走行しているうちに、着いた。船は、ちょうど動き出した所だ。
しかし、僕は自転車を止める気なんてない。そして、タイミング良く自転車を浮かせると、、

「ちょっと！君！危ないよ！って、飛んだァァ！」

誰かが言った言葉も気にせず、ギリギリのところで着地、何とか海に落ちずに済んだ。

「えっと、、あのカードは、、」

9面ファイルを開き、あるカードを探す。ああ、あった。

『魔法カード、魔法解除！』

トラックの鍵はこれで開くはず。しかし、どのトラックに居るんだ、
すると、何やら、声がする。

「そこか、、」

そのコンテナをこじ開ける。開けて、中に入った先には、意外な光景があった。

「あ、2人ともいたわ、、ってウミキヨ！？」

僕の幼馴染、ウミキヨ。つい1時間位前に話していたウミキヨが何故此処に！しかも、デュエル真っ最中！

「なんでいるんだよ！しかもここに！」
「これ、置いて行ったじゃん」

出したのは、2つの封筒。

「これ見て、すぐにピンときたよ。だから、僕も飛んできた。悠里が走っている所を見た時は滑稽だったよ」

むかつく。なんかムカついてくる。すると、猛々しい声で、

「話はそこまでだ！ダイレクトアタック！」

「ウミキヨ！」

その瞬間、、デュエルディスク、起動。

ｰLPペナルティ、5000ポイントｰ　

IN　悠里 LP5000

「！？」
「悠里、、！」

デュエルディスクが起動した。とにかく、今は、、！

「手札からバトルフェーダーを特殊召喚し、効果発動！その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる！」


バトルフェーダー　闇属性、悪魔族、☆1、効果モンスター
①相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にし、このカードを特殊召喚する。
その後、バトルフェイズを終了する。


「悠里、、助かった、、」
「ったく。来なかったら死んでたじゃねーか」
「まーまー。とにかく、話は後」

今はどうやら第6ターンらしい。


Turn07　TP 悠里　手札4→5

久しぶりだな、この感じ。何でデュエルなんかしてるんだろう。デュエルなんかしたくないのに。あの2人は、
ただのクラスメイトなのに、、なんでだろう、、？
悠里がデュエルを拒む理由。それは過去のトラウマである。
時に幼少時代、小学校6年生の時に遡る。


ｰｰｰ回想①始

此処は、年に1度開催される、デュエル大会の会場の大ホールである。
行きつけの店の親父さんに勧められ、トーナメントに行ったのだった。

「、、ダイレクトアタック」
「、、でダイレクトアタック」
「、、、でダイレクトアタック」

その日の結果は8戦やって全勝、見事優勝を飾り、全国大会の切符を手にしていた。優勝賞品も貰った。
しかし、その日の帰り道、事件が起こった。
電車に乗って帰ろうと改札を通った時、誰かに引っ張られた。前に進めず、いきなり目を隠される。
視界が開けた時、そこには複数の人影。自分より背が高く、此方をにらみつけている。しかし、別に驚きは
しなかった。全員、悠里とのデュエルで負けた人達だったからだ。所詮、報復戦だろう。

「おい」
「ん、、？」
「もう一度、やろうぜ。7対1で」
「それなりにハンデがあれば別にいいけど」
「馬鹿か。ハンデなんかある訳無いだろ。テメーに決定権も優先権もないんだよ！」

強制デュエルモード、7対1．

こういう場合、何かしらハンデがある筈。しかし、、

「な、、！」

そこに示されたのは、、

ハンデモード、観月悠里LP1、初期手札3 VS 7人LP8000、初期手札7

「LPが、、1、、？いくらなんでも無茶苦茶だ！このデュエルは受けない！」
「無駄だ！バトルロイヤルモードだからな！辞退したら負けになる！」
「汚いマネしやがって、、」
「いまここで、優勝賞品を貰う！」

当然の如くそのデュエルには負け、優勝賞品を奪われた。不幸中の幸いか、貴重品はコインロッカーに
あったので、無事だった。

それ以来、人そのものが信じられなくなった悠里は、大会に出ること自体を止めた。全国大会も蹴り飛ばした。
勿論、店にも行かなくなった。周囲の人々は悠里を非難したが、耳も傾けなかった。言いたきゃ言え。
そう思うようになった。

ｰｰｰ回想①終


「なあ悠里」
「ん？」
「デュエルしてるところ見るの、久しぶりだな」
「そうだな」

ホントに久しぶりなのだ。その期間、約5年。その間、悠里は1戦もデュエルすることなく過ごしてきたのだ。

「悠里の戦い、見せてくれよ！もう1度！フェーダーが居るってことは、あのデッキだろ？」
「あの、、デッキ、、？」

奥に居る安楽木が呟く。あ、そこに居たのか。無様なもんだな。

「ああ、あの時に使ってた、EXデッキが1枚だけの紅蓮の悪魔のデッキを！」

期待してるのか？あんまり期待されたくはないのだがな。ま、しょうがない。この状況、やるしかない。

「でも、あのカードがある限り、どうにもできない、、！」
「あのカード？」
「ああ、盤面を超制圧してくる、超制圧効果を持ったカード、、」
「ハハハ！！そうだ、このカードがある限り、俺は敗けない！」

ん？

「スタンバイフェイズ、このカードを特殊召喚！」

≪現れろ！怒濤制圧皇ーゼクスブライトー！！≫

怒濤制圧皇ーゼクスブライト―　ATK5000

「あのカード！！」
「てめぇだったのか、、！」
「久しぶりだな、観月悠里！あの時は惨めだったなぁ！」

そう、あのカードは悠里が貰った優勝賞品のカード。そして、今の相手は、不平等デュエルで奪った奴。
あのカードは名前からして、制圧に長けているカードであり、とんでもない効果を秘めている。

「悠里、一度手にした君は、あのカードの効果、知ってるでしょ？」
「ああ、状況最悪だ、、」
「どんな効果なんだい？」
「除去が、、できないかーどだ、、」
「ちょっと！除去できないって、どういうこと？」

頼む、城ヶ崎。少し黙っててくれ。

「ゼクスブライトは、、相手ターンのスタンバイに特殊召喚できるカードだよ、そんでもって、相手のカード効果
を受けず、効果破壊されないうえ、リリースも出来ないんだ！」
「じゃあ、とにかく展開して、、」
「展開できない！僕らは1ターンに1枚ずつ、計2枚しかカード効果を使えない！」
「じゃあ、何とかして除去を、、」
「いや、、場を離れた時、サンダーボルトをぶちかました後、墓地、除外ゾーンから、手札に戻っちまう！」
「んな、、！！」


怒濤制圧皇ーゼクスブライトー　闇属性、戦士族、☆12、効果モンスター
このカードは、このカードの効果でのみ特殊召喚できる。
①相手のスタンバイフェイズ、このカードは手札から攻撃表示で特殊召喚できる。
②このカードは相手の効果を受けず、効果では破壊されない。また、リリース、裏側表示にも出来ない。
③このカードが表側表示で存在する限り、相手は通常召喚、特殊召喚、反転召喚をいずれか1回しか行うことが出来ず、カードのセットも出来ない。
④相手はモンスター効果及び、魔法・罠カードを1ターンに1枚ずつしか発動できない。
⑤(不明)


サンダーボルト、というのは、現在禁止カードに指定されている1枚であり、相手のカードを全破壊する超強力な
魔法カードである。別の言い方をするなら、「ブラック・ホール+ハーピィの羽根箒」だ。
つまり、その能力をも取り込んでいるゼクスブライトを等式に表すなら、下のようになるだろうと思う。

ゼクスブライト＝ハーピィの羽根箒＋ブラック・ホール＋マジェスペクター＋無条件特殊召喚＋ダーク・シムルグ

「なんだよ、そのてんこ盛り効果！」
「だから、考えてるんだ！どう対処するかを！」
「ウミキヨ、手、貸して」
「OK！いつでもいいよ」

フィールドは、、？

【盤面】
悠里　LP5000　手札5
バトルフェーダー　ATK0

海清　LP3000　手札1
伏せカード3枚
墓地13枚、残りデッキ総数23枚

相手　LP6000　手札6
怒濤制圧皇ーゼクスブライトー　ATK5000
墓地20枚　残りデッキ総数14枚


墓地もそこそこ、、か、、手札も、まあいい。「あそこ」を突く他無いな、、
よし！準備OK！
作戦開始！