第17話:恐怖の予感　作：ドクダミ2号

太陽・フライペアLP4000

世良・恵ペアLP4000

「先攻は譲ってあげるわ！かかって来なさい！！」

世良が怒りの声をあげながら宣言する。どうやら本当に2vs2のデュエルをするつもりらしい。

「しょうがないっスね〜……。俺のターン！」

太陽→世良→フライ→恵 の順で回る。正直この手のデュエルは太陽は得意ではない。

「……俺は手札からフィールド魔法、水の都アトランティスを発動するっス。手札からカードを1枚伏せてターンエンド。」
「私のターン！私は手札から永続魔法、施しへの供物を発動するわ！」

施しへの供物
永続魔法
①:1ターンに1度、手札もしくはフィールド上のモンスター1体を選択して発動する。選択したカードを墓地に送り自分のデッキからカードを1枚ドローする。

世良が出して来たのは、ドローソースになるカードだ。フライは勿論、太陽も彼女にデッキをよく知らない。この場面で出てくるモンスターでデッキを見極めようとしたのだが……。

「そうは上手く行かないっスか……。」
「私はこのままターンエンドよ！」

次はフライの番だ。太陽にとって味方であるフライだが、その実太陽はフライのデッキを知らなかった。と言うより知る方法が無かったのだ。

「私のターンですね。うーん………ここはモンスターを伏せてターンエンドです。」

一向に動きのないデュエル。下手に回されてワンターンキルされるよりはマシだろうがこれはこれで辛いものがある。

「私のターン。私もモンスターを伏せてターンエンドです。」

非常にもどかしいプレイングが続く。太陽はもう少し動きがあると思っていた分、他3人よりももどかしく感じていた。

「俺のターンっスか……。このターンからはドローできるっスよ。ドロー！」

太陽がドローしたカードは深海のディーヴァ。太陽にとって早めに来て欲しいカードだった。

(やっと来たっスか！これで……いや。まだ早い。彼女達を鎮めるなら……むしろ！)
「ターン……エンドっス。」

意外にも、太陽はドローしてすぐにターンエンドしてしまった。世良は驚き戸惑ったが、すぐに我に戻りデュエルを続けた。

「……何もしなかったのは大きいわ。私にとって……貴方が動かなければやりたい放題だから！フィールド魔法、ワールドオブマジックを発動するわ！」

世良のセリフを聞いて太陽はしまったと思った。だが時すでに遅し。

「私は手札から魔法カード、メルトクリムゾンを発動よ！」

世良のデッキをよく知らないと言ったが、実際には見た事がないだけで噂では何回も聞いてきた。……魔法を使ったコンボで相手を跡形も残さず叩き潰す。それが彼女のデッキだ。

メルトクリムゾン
通常魔法
このカードは自分フィールド上に「ワールドオブマジックが存在しないとプレイできない。①:フィールド上に存在する2枚のカードを選択する。そのカードを破壊する。更に破壊したカードの種類によって以下の効果を発動できる。
●モンスターカード:相手のライフに2000ポイントダメージを与える。
●魔法カード:自分のデッキからカードを2枚ドローする。
●罠カード:自分の墓地のカードを全てデッキに戻す。

彼女が破壊に指定したのは、フィールドのアトランティスと伏せられたモンスター、マシュマロンだ。これによりメルトクリムゾンは２つの効果を発動できるようになる。

「私はメルトクリムゾンの追加効果で貴方達に2000ポイントのダメージを与えます！更にもう１つの効果でデッキから2枚ドロー！」

「ぐああ！」
「きゃああ！！」

太陽・フライペアLP4000→2000

非常に手痛いダメージを受けた。これで2人のLPは半分になってしまった。

「これで終わりじゃないわ！永続魔法、風のラプチャーを発動！」

風のラプチャー
永続魔法
このカードは自分フィールド上に「ワールドオブマジック」が存在しない場合プレイする事はできない。①:1ターンに1度自分の墓地の魔法カードを選択して発動する。そのカードを除外しデッキからカードを1枚ドローする。②:このカード以外の自分フィールド上に存在する永続魔法カードを選択して発動する。そのカードを手札に戻し、自分のデッキの上から3枚墓地に送る。

今度は永続魔法。彼女のハイマジックデッキの恐ろしいところは、手札さえあればそこからコンボが発生するところ。現在は最初のドローソースに加え、メルトクリムゾンで2枚ドローしているので余計恐ろしい状態になっている。

「……残念だけど、風のラプチャーは踏み台でしかないわ。風のラプチャーをリリースして手札から魔法カード、メテオレインを発動！」

メテオレイン
通常魔法
このカードは自分フィールド上に「ワールドオブマジック」が存在しない場合プレイできない。①:自分フィールド上の永続魔法1枚をリリースして発動する。相手のデッキのカードを上から5枚除外する。②:墓地に存在するこのカードをリリースして発動する。フィールドに存在するモンスター1体の攻撃力を2000ポイントアップする。

この効果によって、2人のデッキは5枚減ってしまった。ポジティブにデッキ圧縮と考えれば良いが、どうやらフライは引きたかったカードを除外されてしまったようで非常に苦しい表情をしている。

「私はカードを伏せてターンエンド！」
「私のターンです！ドロー！」

引いたカードを確認したフライが、またも苦しい表情を見せる。どうやらフライのデッキは少量のカードで回すデッキのようだ。引きたかったそのうちの一枚を除外され、面倒なことになっているらしい。

「……ターンエンドです。」
「私のターン！ドロー！」

今度は恵の番である。ドローしたカードを確認した恵は、笑みを浮かべている。

「なんか……嫌な予感がするっス………！」

ーーー

「え？1年生の教室が騒がしい？」

3年生の教室に情報が入る。たった今この情報を受け取ったのは風紀委員長、榊原 櫻だ。

「どういう事？もう放課後だし、普通なら部活に行くか帰ってるかのどっちかだと思うんだけど。」
「それは分かんないけど、なんか騒がしいって2年生が言ってた。見に行くか？」

同じ風紀委員に聞言われ悩む櫻。しばらく間を置き、見に行くわと答えた。

「どんな風に騒がしいの？」
「タッグデュエルしてる感じかな。ただ、片方のペアが明らかにブチギレてるんだよ。多分私怨によるデュエルだと思う。」

この学校では前にも言った通り採点制というものがある。私怨によるデュエルはそこまで重くないとはいえ、点数を引かれる要素になっている。

「ふーん。まぁ見に行かなきゃ分かんないか。さ、行くわよ。」

次回に続く