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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第5話:魔法陣、起動

第5話:魔法陣、起動 作:青き眼の凡人

「そーっと…そーっと…!大丈夫、落ち着くのよあたし…!今まで何度も失敗したけど今度こそは大丈夫…!」

前回と同じ轍を踏まぬように一歩一歩確実に紅茶を運ぶアマンダ。前回はユーリの優しさで許してもらえたが、さすがに今回までは許してもらえないだろう。そう思ったアマンダの足取りはある意味重い。だが、そんなアマンダに悲劇が襲いかかる!


ピーンポーン!!


なんと突然普段鳴ることのない玄関のインターホンが鳴ったのだ。突然の大音量にびっくりしてしまったアマンダはそのままバランスを崩し…

「あー!」


紅茶を床にぶちまけた。ここまで来ると見事と言うべきか。


「どうしよう、どうしよう〜!!」


こういう光景が見られるあたり、今日もアリストクラシー家は平和です。


さて、所変わってアルフレッドはインターホンを鳴らした客を迎えるべく、玄関に向かった。(その途中でアマンダに説教した。)

アルフレッドが玄関を開けると…

「こんちわー!!」

扉の前にいた女が思いっきり元気な挨拶をした。アルフレッドの耳が痛くなるくらいに。



「……それで?名前とここにきた用件は?」

とりあえず女を客間のソファに座らせ、アルフレッドが応対する。何故このような対応をしたのかというと、その女の格好が見るからにみすぼらしいからであった。服は所々ほつれているし、髪は整ってないの何の。それでいて目をぱちくりさせている背が低いこの女は十中八九『闇人(ダーク)』だろう。最近、ナイトドミノでは『貴人(ロード)』を標的にしたダークの犯罪が多くなっている。もし、この女が悪意をもって目が見えないユーリに近づいたらひとたまりもない。それの対策でもあるのだ。

「名前は『才刄 麟(さいば りん)』!あたいをここで働かせてください!」

全く言いよどまない。直球の返答だ。失礼だがこの女に悪意を持つ可能性はないだろう。

「…それは別にいいが許可書は発行してもらったのか?」
「…キョカショ?何それ?」

先程も説明したが、ナイトドミノではロードを標的としたダークの犯罪が増加している。故に「この人は雇用しても大丈夫ですよ〜」という書類、ここでいう許可書を警察組織、セキュリティに発行してもらわなければならない。
この女…いや麟はそれを知らないときたのでアルフレッドは頭を抱えてしまった。


「…だったら、帰ってもらうしかないんだが…」
「えー!?やだよそんなの!!せっかくここまできたのに!」
「わがままを言うな。大体君子供だろう?両親はどうしたんだ?いくら何でも君くらいの歳の子を両親の同意無しに雇うことはできないんだが…」

アルフレッドはあくまで麟を心配していった一言だった。だが、その一言を聞いた途端、急に麟の顔に影が差す。

「…おとうさんとおかあさんなんて、いないもん。あたいは、ずーっと孤児院暮らし。」
「あっ…すまない。」
「ううん、いいよ。そんなに気にしてないし。」

そういった麟はニコッと笑う。それと同時にアルフレッドの良心に罪悪感がのしかかる。

(どうする?そうとなればなかなか追い返すわけにはいかないぞ…全く、仕事にドライになりきれないとは、執事失格だな…)
「だったらデュエルで決めればよろしいのでは?」

いつの間にか入って来たユーリが提案する。

「お嬢様!?どうやってこちらに?」
「ルーシャスのオートパイロット機能ですよ、それで麟さんでしたっけ?」
「え、ええ。」

麟も若干困惑している。無理も無い、いきなり目に包帯を巻いて車椅子に乗ったこの家の主人がデュエルで決めろと提案するのだから。

「あなたとアルフレッドがデュエルして、あなたが勝てば正式に雇用。勝てなかったら残念。というのは?」
「お嬢様!?何をおっしゃるんです?」
「それでいいわ!デュエルモード!」
「おい君!?」
(ほら、あんなにやる気になっていますよ?受けるのが道理では無いですか?)
(…どうなっても知りませんよ?)
「デュエルモード!」

才刄 LP4000 手札5枚
デッキ35枚

アルフレッド LP4000 手札5枚
デッキ55枚

二人のデュエルディスクに「ALFRED」の文字が表示された。

「先攻は俺だ…悪いが手加減は無しだぞ?」
「当然!勝負の世界だもの!」
(物分かりが良くて助かる。)

「ところで、あなたのデッキ厚いのね。何で?」
「それは…こうするためだ!」
「俺は手札から『隣の芝刈り』発動!君のデッキの枚数と同じになるようにデッキトップからカードを墓地に送る!これによって20枚を墓地に送る!」
「うわ〜。ずいぶん送ったね〜。」
(あら?あんなカード、アルフレッドは使ってたかしら?)
(お嬢様と何度も対戦して調整したこのデッキの初陣になるわけか…できれば他の相手に使いたかったが…)

(さて、墓地に送られたカードは…ん?)
(このカード…よし、試験にはもってこいだな。)
「俺は『クリバンデット』を召喚!」

クリバンデット ATK1000

「俺はこれでターンエンド…そしてエンドフェイズ時に効果発動!このカードをリリースし、デッキからカードを5枚めくる!その中から魔法、罠カードを一枚選んで手札に加え、残りのカードを墓地に送る。俺がめくったのはこの5枚。」

『インフェルノイド・リリス』
『インフェルノイド・ネヘモス』
『法の聖典』
『モンスターゲート』
『暴走魔法陣』

「…『暴走魔法陣』を手札に加え、その他は墓地へ。」
「…さて、試験だ。この布陣を突破しろ。」

「…!?」

麟はこの言葉の意味がわからなかった。何せフィールドにカードが何も無い状態なのに布陣といっていることが何よりも不可解だ。

(子供だと思ってバカにしてるな〜!許さない!あたいの融合を見て驚け!)

「あたいのターン!あたいは手札から『プロト・サイバー・ドラゴン』を召喚!このカードはフィールド上に存在する時、『サイバー・ドラゴン』としても扱うよ!」

「そして『パワー・ボンド』発動!手札の『サイバー・ドラゴン』とフィールドの『サイバー・ドラゴン』扱いの『プロト・サイバー・ドラゴン』を融合!」

「駆動する機械の生命たちよ、一つになって、あたいに力を貸して!」

融合召喚!

「『サイバー・ツイン・ドラゴン』!!」

サイバー・ツイン・ドラゴン
ATK2800→5600

「バトル!『サイバー・ツイン・ドラゴン』でダイレクトアタック!エヴォリューション・ツイン・バースト!」

「…臆さず攻撃を仕掛けてきたのは評価点だな。だが、あまりにも無警戒すぎる!」
「墓地の『超電磁タートル』の効果を発動!このカードを除外し、バトルフェイズを終了させる!」

「…!?そんなカードいつの間に…あっ!?」
「気づいたようだな?そう、最初の『隣の芝刈り』の効果で送っていたのさ!」

「…あたいはカードを一枚セットしてターンエンド…そして『パワー・ボンド』の効果で2800のダメージを受ける…!」

才刄
LP4000→1200

「…俺のターン。まずは『暴走魔法陣』を発動!このカードの発動処理として『召喚師アレイスター』を手札に加える。そしてアレイスターをそのまま召喚!」

召喚師アレイスター
ATK1000

「アレイスターの効果でデッキから『召喚魔術』を手札に加え、そのまま発動!フィールドの『召喚師アレイスター』と君の墓地の『サイバー・ドラゴン』を除外し、融合!」
「あたいの墓地の『サイバー・ドラゴン』を!?」

「光の魂よ、魔法陣へと姿を変えて、異界の魔を召喚せよ!」

融合召喚!

「今こそ我が僕となれ!『召喚獣メルカバー』!!」

召喚獣メルカバー ATK2500

「させないわ!罠発動!奈落の…」

麟は罠カードを発動しようとしたが、デュエルディスクに「ERROR」の文字が表示され、それを阻まれてしまう。

「なっ、何で!?」
「フィールドゾーンに存在している『暴走魔法陣』の効果だ。このカードがフィールドゾーンに存在する限り、融合モンスターを融合召喚する効果を含む効果を自分が発動した場合、その発動は無効化されず、その融合召喚成功時に相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない!」
「そ、そんな…」
「…続けるぞ。手札から、『星喰みの煉獄』発動!」

星喰みの煉獄(ほしはみのれんごく)※オリカ
通常魔法
(1)自分の墓地から「インフェルノイド」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを三種類まで除外し、その融合モンスター一体を融合召喚する。この効果で融合召喚したモンスターの攻撃力はエンドフェイズまで素材にしたレベル7以下のモンスターの攻撃力分アップする。

「俺は墓地の『インフェルノイド・ネヘモス』と『インフェルノイド・リリス』と『インフェルノイド・アシュメダイ』を除外し、融合!」

「業深き者を焼き尽くす煉獄の焔よ、今こそ一つになり、星全てを焦土に変えろ!」

融合召喚!

「現れろ!『インフェルノイド・ティエラ』!」

少女の、いや全人類の希望や夢など容易く打ち砕ける。そこまで思わせるかのような悪魔が降り立った。

インフェルノイド・ティエラ
ATK3400

「『星喰みの煉獄』の効果によってティエラの攻撃力にアシュメダイの攻撃力を加える!!」

インフェルノイド・ティエラ
ATK3400→5600

「そんな…このままじゃあたい…」
「許せ…。バトル!!『インフェルノイド・ティエラ』でサイバー・ツインを攻撃!滅亡の!煉獄割殺撃!!」

「…相討ち…でも…」
「『召喚獣メルカバー』でダイレクトアタック!!ブースト・チャリオッツ!」

「負…け…」

才刄 LP1200→0

(そん…な……せっかくここまで…来た…の…に…)










「…あれ?ここは?」
「あ、気がつきましたか〜?」
「やれやれ、ホントにアルフレッドの奴は手加減を知らねぇなあ?気絶するまでやるかよフツー?」

麟はいつの間にか気絶していたらしく、屋敷のメイド専用室のベッドに横になっていた。

「ちょっと、待っててくださいね〜、今アルフレッドさんが来ますから〜」
「え…?」

コンコンとメイド専用室の扉をノックする音が聞こえた。

「アマンダ、ゴードン、アルフレッドだ、入っていいか?」
「どうぞ〜、丁度麟ちゃんも丁度目を覚ましました〜。」

アマンダの返事を聞いたアルフレッドが入室する右手に何かの書類を持っているようだ。

「なら丁度いい。ほら、発行してもらったぞ。君の許可書だ、確認しろ。」
「え?…た、確かにあたいの名前…何で?あたい、負けたのに…」
「確かに君は勝負に負けた。だが、サイバー・ツインで攻撃を仕掛けた時の君の勇猛さに資質を感じたんだ。」
「え?え?」
「あの場面では無謀となってしまったが、デュエルモンスターズにおいて、あの勇猛さは大切な要素だ。…俺の持論だがな」
「ま、警戒しまくっても罠がどいてくれるわけじゃねえしな。たまには攻めて防御の手段を使わせることも大切…そう言いたいんだろ?アルフレッド。」
「そういうことだ。人間性にも問題は無いからここで働くには十分だ。…デュエルは時間さえあれば俺が教えてやれるしな。」
「わたしもいますよ、アルフレッド。」
「…と、ユーリお嬢様もおっしゃっている。…まあ、何だ。歓迎するぞ、才刄 麟。」

「…あ、あたい、本当にここで働いてもいいんですか?」
「だからそう言ってるだろう。」
「わたしも、賛成です。」
「よろしくね!麟ちゃん!」
「一人分作る料理が増えることくらい、どうってことはないさ。」


「…あ」
「あ…なんだ?」




「ありがとうございます!!!」
「ウッ!耳が…」
「大丈夫ですかアルフレッド?」
「はわ〜、おっきい声です〜」
「わあ!ごめんなさーい!!」
「ハッハッハ!!賑やかになるねえ!!」









---次回予告

アマンダ「新たに麟ちゃんが加わって賑やかになりました〜。」

麟「アマンダさん、こんな郵便物が届いたんだけど…」

アマンダ「ええとなになに…これって…」

次回、聖戦告知

アマンダ「ナイトドミノカップ…開催…」

ゴードン「…それをやるのは5年ぶりだな。」

麟「何だか面白そうな大会ね!」

アルフレッド「いかがなさいますか?お嬢様。」

ユーリ「それはもちろん…」
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