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第2話 船上の挑戦者 作:いちごT
前回までのあらすじ!
この春デュエルアカデミアに入学する少女「ちよ」は入学式の朝、タチの悪い不良に絡まれデッキを奪われてしまう!しかし同じくデュエルアカデミアの新入生の少年、「伴 遊飛」があらわれ不良とデュエル。見事勝利しデッキを取り戻すのだった。
ー港ー
カモメが飛び交う空の下、港には様々な船が並んでいる。その中でひときわ大きな客船が目を惹く。船体にはでかでかとデュエルアカデミアの文字が書かれており入り口付近には受付が設置されて隣にはいかつい男性が仁王立ちしている。
男性「デュエルアカデミア行き、間も無く出航する!!もう乗る者はいないか!!?」
受付スタッフ「二名を除き、編入組の新入生は乗船しております。」
デュエルアカデミアは中等部、高等部とある。中等部からのエスカレーター組はすでにアカデミア島にいるため、今日この船に乗るのは編入生だけなのだ。
男性「まだ来てない奴がいたか……しかし間も無く時間となる。受付撤収の後、出航だ!!」
???「待ってくれえ!!!」
男性「む?」
男性が船に乗り込もうとしたその時、背後から間の抜けた叫び声が響く。大きなリュックを前後にかけて険しい顔で走ってくる伴遊飛の姿がそこにはあった。
遊飛「俺らもアカデミアの………新入生………だあ!!」
男性「バカもんがっ!時間ギリギリに来るとは何事かあっ!!!」
遊飛「うおっ!? あんた先生? 色々あってさ……遅れてごめんなさい!」
久城「私はアカデミア講師の久城甚平(くじょう じんぺい)! 講師に向かってあんたとはどういうつもりだあ!!」
遊飛「ひっ! ごめんな…」
久城「んん!?」
遊飛「………申し訳ございません。」
久城「ま、よかろう……受付をしなさい。しかし先ほど俺らと言っていたがもう一人いるのか?リュックも二つあるようだが…」
遊飛「そうなんだよ! まだ一人一緒に来てたんだけど……あっ!」
ちよ「はあッ……はあッ……待ってください〜」
ちよ「うち……もうはしれ………なひぃ…」
息も絶え絶えでふらふらと走ってくるちよ。しかし受付に着く前にその場にへたり込んでしまう。
久城「お、おい……大丈夫か?」
遊飛「ちよ! しっかりしろ! 受付はすぐそこだぞ?」
ちよ「あ……はぃぃぃ…」
ちよは笑っているが焦点が合っていない。よほど無理をしていたのだろう。
受付スタッフ「今来た子も顔写真が受付を行っていない生徒と一致しますね。どうします?」
久城「うーむ……仕方ない! 二人とも先に乗れい! 受付は後でやってもらう。」
ー船内ー
船の通路に設置されているベンチに座るちよ。空いたスペースにはリュックが二つ置いてある。
遊飛「お茶持って来たぞー。最近の船ってドリンクバーあるんだな!……そろそろ平気か?」
ちよ「あ、ありがとうございます。だいぶ元気になりました。荷物までもっていただいて…」
ちよはお茶を受け取るとコクンと一口飲む。ベンチにどかっと腰を下ろした遊飛はぐびぐび飲み干す。
遊飛「ぷはあ! そりゃ良かった! にしてもその敬語、なんとかならない?」
ちよ「へっ? 私言葉遣いなってませんか? すみません!」
遊飛「あ、悪い、そうじゃなくてさ。タメに敬語使われるのむず痒くってさあ。」
ちよ「あっ、そういうことでしたか。」
遊飛「ああ、敬語なし!さん付けなし! それで頼むぜ?」
ちよ「分かりま……わ、分かった。」
遊飛「よろしく頼むぜ!ちよ。」
ちよ「はい……じゃなくて…うん。よろしくね、伴くん。」
座って話す二人にいかつい男性講師、久城甚平が近づいてくる。
久城「気分はどうだ?」
ちよ「あ、先生。おかげさまでこの通り元気です。」
久城「そいつは結構。なら二人ともこれに記入してくれ。」
二人は渡された用紙に名前や受験番号を記入し久城に渡し返す。
久城「確かに受け取った。改めてアカデミアシップにようこそ。二人ともオシリスレッドだな。」
遊飛「お尻スウェット?何だそれ?」
ちよ「………デュ、デュエルアカデミアの入学案内見てないの?入学通知にも書いてあったはずだよ。」
遊飛「そういえば書いてあったような……そうでないような……」
久城「そんなことも知らんで入学するとはたるんどるっ!!」
遊飛「ごめ……申し訳ございません。」
久城「全く! いいか?デュエルアカデミアでは入学試験の成績によって上からオベリスクブルー、ラーイエロー、オシリスレッドという風に三段階にランク付けされるのだ。」
ちよ「昔は女子はみんなオベリスクブルーだったんだけど、デュエリスト人口の増加とかでラーイエローとオシリスレッドにも女子寮が出来たみたい。」
遊飛「ヘェ〜、そうだったんだ……って俺ら一番下のランクじゃん!? 俺入試のデュエル勝ったぜ?」
ちよ「うちもギリギリ勝ったけど……筆記の方が多分あんまり…」
久城「そう、ランク付けは筆記と実技の評価を総合して決まるものだ。試験デュエルも勝敗だけでなく内容も重視されるため、勝てば良いというものでもない。」
久城「………ということにはなっているがな。実際問題オベリスクブルーの生徒は中等部から成績優秀な者ばかり、君らのように高等部から編入する者は成績優秀者でもラーイエロー、多くはオシリスレッドになってしまうものだ。気を落とすな。」
遊飛「うーん……ま、いっか! 俺はデュエルがたくさん出来れば何でもいいぜ!」
久城「だがプロになるつもりなら万年オシリスレッドだと評価に響くぞ? それだけは肝に命じておけよ!」
遊飛「げっ!? マジかよ〜。」
久城「今は半年に一度審査がある。そこで成績が認められれば昇級できるから頑張れよ。」
遊飛「そっか! 色々教えてくれてサンキューな、先生!」
久城「んん!?」
遊飛「ありがとうございます先生!!」
久城「よかろう。この船ではオシリスレッドの生徒はこの通路の突き当たりにある大部屋に荷物を置けるようになっているぞ。」
久城「それにまだ船がつくまでは時間もあるからデュエルスペースを使ってデュエルも出来る。」
遊飛「船の中でデュエル出来んのか!? スゲー!!!」
久城「これから3年間ともに競い学ぶ者同士、交流が深められるかもしれん。ではまたアカデミアでな。」
そう言い残すと久城は指差した方向とは逆に歩いていく。
ちよ「見た目はおっかないけど優しい先生だね、伴くん。」
遊飛「ああ! じゃ、荷物置いたらすぐデュエルスペース行こうぜ!」
ー船室ー
久城が指差した部屋は段差の上にカーペットが敷かれ、周りをロッカーで囲んだだけの殺風景なものだった。しかしそこには大勢の生徒がところ狭しと座ってカードや携帯をいじったり、会話に花を咲かせている。
遊飛「……部屋ってタコ部屋なのか。」
ちよ「あはは……オシリスレッドだからね。」
遊飛「ま、仕方ねーな。しかしこう人が多くちゃどこに荷物を置いていいやら……」
???「もし良かったらこっちのロッカー二つ空いてるよ?」
二人が声のした方に目をやるとそこにはニコニコと笑う美少年が座ってスペースを作っていくれていた。さらさらな髪はまるで女子のようで中性的な印象を持たせる。
遊飛「お、サンキュー! じゃあここに荷物入れさせてもらうぜ。ちよも来いよ。」
ちよ「あ、ありがとうございます。そうさせてもらおうかな。」
二人はロッカーに荷物を入れ、空けてくれたスペースに座る。
遊飛「俺は伴遊飛だ!よろしくな!」
ちよ「う、うちはちよっていいます。」
???「遊飛くんとちよさんだね。僕は大場景介(おおば けいすけ)。よろしくね。二人は付き合ってんの?」
景介と名乗る少年の不意の問いかけに二人はフリーズ、そして瞬時に顔を赤くして取り乱す。
遊飛「ち、違う違う!全然違う!」
ちよ「は、はい。うちなんかとそんな……滅相も無い!
ちよ(でも…そんなに否定されるのもなんかヤだなぁ…)
景介「え?違うの?やけに仲良く見えるけど…」
遊飛「実は今朝かくかくムカムカで………」
遊飛は今朝の出来事を景介に話す。
景介「………凄いなあ遊飛くん。ドラマみたいだね!」
遊飛「いやあ照れるぜ……っとそうだ! 俺らこれからデュエルスペースに行くんだけど景介もどうだ?」
景介「うん、いいね。行こうか。」
ーデュエルスペースー
遊飛「ここがデュエルスペースか! 結構でかいな!!」
アカデミアシップのワンフロアが丸々デュエルスペースとなっており、いくつものデュエルコートが並んでいる。
ちよ「うん。人もたくさんいるね。」
景介「でも今は全部使われてるみたいだね。」
遊飛「じゃあ空いたらどっちか俺とデュエルしようぜ!」
景介「じゃあ僕が先でいいかな?」
遊飛「は、はい。うちはそれで大丈夫です。」
遊飛「早くやりてー! どっか空かねーかなー!!」
景介「ははは、それまで面白そうなデュエルでも見て……ん?」
数あるデュエルコートの一つにやたら人が集まっており景介は首をかしげる。
ちよ「なにかあったのかな…」
遊飛「よく分からねーけどとりあえず行ってみようぜ!!」
三人がギャラリーの多いコートに行くとそこでは大柄で角刈りの少年と小柄で波のようにうねった髪をした少年のデュエルが行われていた。小柄の少年の場にはモンスターが揃い、大柄の少年の場はガラ空きだ。
小柄な少年「ボクは『ニードル・ギルマン』でダイレクトアタック。これで終わりだ。」
大柄の少年「ぐおおおお!!!」
LP800→LP0
大柄な少年のライフが0になると同時にギャラリーから歓声があがる。
生徒「うおぉぉぉ!?6人目だ!」
生徒「勝てる奴いんのかこれ!!」
小柄な少年「さぁ、他にボクとデュエルしたい人はいるかい?」
勝った少年は次の対戦相手を募るがギャラリーはざわつくばかりで名乗りをあげる生徒はいない。しかしその中で一人の手が上がった。伴遊飛である。
遊飛「俺! 俺やりたい!!」
遊飛「悪い二人とも!先こっちやっていいか?」
ちよ「うん、大丈夫だけど…」
景介「僕も構わないよ。」
遊飛「おし!じゃあ行ってくる!」
ディスクを装着し、遊飛はデュエルコートに立つ。
生徒 「次のやつ出て来たぞ…」
生徒「今度こそ勝てるか……?」
小柄な少年「やあよろしく。ボクは海里 優(みさと すぐる)だ。」
遊飛「おう! 俺は伴遊飛。よろしくな!」
海里「一応ボクはこの船でデュエルを続けてさっきの人で6人抜きなんだけど承知で出て来たのかな?」
遊飛「ああ、さっき聞いたぜ! 強いみたいだな。」
海里「ふ、ありがとう。承知で出てくるとは君も腕に自信があるようだね。さしずめラーイエローの入試上位者なんだろうなあ。」
遊飛「らーいえろー?……ああランクのことか! それなら俺はおしるこゲットだ!」
先程までニヤついていた海里が真顔になりギャラリーも一斉に静まり返る。ちよと景介も固まってしまうがはっと我に帰ったちよは遊飛に近づき小声で助言する。
ちよ「伴くん! おしるこじゃなくてオシリス!オシリス、レッドっ!」
遊飛「え? あ、そっか! 悪い悪い。オシリスレッドだってさ!」
生徒「オシリスレッドだってよ…」
生徒「ラーイエローの奴らが6人抜きされてんのに勝てるわけねーよ…」
生徒「7勝目も決まったな。」
海里「……っははは! 伴くん…だったかな? ジョークが上手いなあ…はっははは!!」
海里「……にしても、オシリスレッドだって? 勇猛なのか馬鹿なのか… 」
遊飛「………」
先程まで飄々としていた海里の雰囲気が変わり、それを察知した遊飛の目つきもまた変わる。
海里「このボクを誰だと思ってるんだか…」
遊飛「……俺と同じ一年生の海里くんだろ?」
海里「同じじゃないんだよねえ……ちょっとくらい優秀なのがいるかもしれないラーイエローならまだしも底辺のレッドとはねえ。」
ちよ「え?それって……だって編入生はラーイエローかオシリスレッドだって先生が……」
景介「……噂で聞いたことがあるよ。高等部からの編入組の中に数人、オベリスクブルーに在籍を許可された生徒がいるって。」
遊飛「なるほど…この船の中でも飛び抜けて強い奴ってことね。」
海里「そう…ボクはその選ばれし者の一人って訳。そのボクにオシリスレッド風情が挑むのは少々おこがましいと思うなあ。」
遊飛「そういうなって。ははーん…もしかして海里クン。負けるのが怖いのかな?」
海里「何?」
見下した態度に対して見え透いた挑発をする遊飛。海里はそれを受け流せず忌々しげに爪を噛む。
海里「君ィ……底辺のクセにナメた口ききやがって…」
海里「………相手してやるよ。」
遊飛「そうこなくっちゃ…行くぜ!」
デュエル!!!!
伴遊飛 LP4000
海里優 LP4000
海里「先攻はもらう。ボクは『海皇の重装兵』を召喚。」
・海皇の重装兵 ☆3 攻0守1600
海里「場に『海皇の重装兵』がいる時、手札からさらに海竜族を召喚出来る。『海皇の竜騎隊』召喚!」
・海皇の竜騎隊 ☆4 攻1800守0
場に盾を持つ魚人と竜に跨る魚人が並ぶ。
海里「カードを2枚伏せてターン終了だ。」
景介「攻撃力0に伏せカード2枚…完全に誘ってる…」
遊飛「俺のターン、ドロー! 誘ってようがなんだろうが俺は俺のやり方でやるだけだ!」
遊飛「俺は『機動獣-ライガー』召喚、攻撃表示!」
・機動獣-ライガー ☆4 攻1800守800
海里「くく…罠カード『激流葬』発動。」
海里「モンスターの召喚時、フィールドの全モンスターを破壊する!」
遊飛「げっ!?」
表になったカードから鉄砲水が吹き出し、3体のモンスターを飲み込んでいく。
ちよ「でも自分のモンスターまで…」
海里「そしてもう一つの罠カード、『激流蘇生』発動! モンスターが破壊された時、破壊された自分のモンスターを全て蘇らせる。『重装兵』を守備表示、『竜騎隊』を攻撃表示。」
再びカードから激しく吹き出す水。その中から葬られたはずの2体の魚人が姿をあらわす。
海里「さらにこの効果で蘇ったモンスター1体につきお前に500ポイントのダメージを与える!」
遊飛「ぐうっ!」
遊飛 LP4000→LP3000
海里「このボクをバカにしたこと、後悔させてやるよ!」
続く
●次回予告
ちよ「伴くん、いきなりモンスターやられちゃってダメージまで…大丈夫かなあ…私も頑張って応援するよ!えっ?このカードが逆転の鍵?こ、怖い……」
ちよ「次回! 『暴君、立つ!』 デュ、デュエルスタンバイ!」
※オシリスレッドとかラーイエローとか制服でわかるだろ?って思うかと存じますが編入生は私服で来て寮に荷物を置く時に着替える。みたいな感じになってます。
だったら最初から島に来るのは前日とかにしろって話ですけどね…
この春デュエルアカデミアに入学する少女「ちよ」は入学式の朝、タチの悪い不良に絡まれデッキを奪われてしまう!しかし同じくデュエルアカデミアの新入生の少年、「伴 遊飛」があらわれ不良とデュエル。見事勝利しデッキを取り戻すのだった。
ー港ー
カモメが飛び交う空の下、港には様々な船が並んでいる。その中でひときわ大きな客船が目を惹く。船体にはでかでかとデュエルアカデミアの文字が書かれており入り口付近には受付が設置されて隣にはいかつい男性が仁王立ちしている。
男性「デュエルアカデミア行き、間も無く出航する!!もう乗る者はいないか!!?」
受付スタッフ「二名を除き、編入組の新入生は乗船しております。」
デュエルアカデミアは中等部、高等部とある。中等部からのエスカレーター組はすでにアカデミア島にいるため、今日この船に乗るのは編入生だけなのだ。
男性「まだ来てない奴がいたか……しかし間も無く時間となる。受付撤収の後、出航だ!!」
???「待ってくれえ!!!」
男性「む?」
男性が船に乗り込もうとしたその時、背後から間の抜けた叫び声が響く。大きなリュックを前後にかけて険しい顔で走ってくる伴遊飛の姿がそこにはあった。
遊飛「俺らもアカデミアの………新入生………だあ!!」
男性「バカもんがっ!時間ギリギリに来るとは何事かあっ!!!」
遊飛「うおっ!? あんた先生? 色々あってさ……遅れてごめんなさい!」
久城「私はアカデミア講師の久城甚平(くじょう じんぺい)! 講師に向かってあんたとはどういうつもりだあ!!」
遊飛「ひっ! ごめんな…」
久城「んん!?」
遊飛「………申し訳ございません。」
久城「ま、よかろう……受付をしなさい。しかし先ほど俺らと言っていたがもう一人いるのか?リュックも二つあるようだが…」
遊飛「そうなんだよ! まだ一人一緒に来てたんだけど……あっ!」
ちよ「はあッ……はあッ……待ってください〜」
ちよ「うち……もうはしれ………なひぃ…」
息も絶え絶えでふらふらと走ってくるちよ。しかし受付に着く前にその場にへたり込んでしまう。
久城「お、おい……大丈夫か?」
遊飛「ちよ! しっかりしろ! 受付はすぐそこだぞ?」
ちよ「あ……はぃぃぃ…」
ちよは笑っているが焦点が合っていない。よほど無理をしていたのだろう。
受付スタッフ「今来た子も顔写真が受付を行っていない生徒と一致しますね。どうします?」
久城「うーむ……仕方ない! 二人とも先に乗れい! 受付は後でやってもらう。」
ー船内ー
船の通路に設置されているベンチに座るちよ。空いたスペースにはリュックが二つ置いてある。
遊飛「お茶持って来たぞー。最近の船ってドリンクバーあるんだな!……そろそろ平気か?」
ちよ「あ、ありがとうございます。だいぶ元気になりました。荷物までもっていただいて…」
ちよはお茶を受け取るとコクンと一口飲む。ベンチにどかっと腰を下ろした遊飛はぐびぐび飲み干す。
遊飛「ぷはあ! そりゃ良かった! にしてもその敬語、なんとかならない?」
ちよ「へっ? 私言葉遣いなってませんか? すみません!」
遊飛「あ、悪い、そうじゃなくてさ。タメに敬語使われるのむず痒くってさあ。」
ちよ「あっ、そういうことでしたか。」
遊飛「ああ、敬語なし!さん付けなし! それで頼むぜ?」
ちよ「分かりま……わ、分かった。」
遊飛「よろしく頼むぜ!ちよ。」
ちよ「はい……じゃなくて…うん。よろしくね、伴くん。」
座って話す二人にいかつい男性講師、久城甚平が近づいてくる。
久城「気分はどうだ?」
ちよ「あ、先生。おかげさまでこの通り元気です。」
久城「そいつは結構。なら二人ともこれに記入してくれ。」
二人は渡された用紙に名前や受験番号を記入し久城に渡し返す。
久城「確かに受け取った。改めてアカデミアシップにようこそ。二人ともオシリスレッドだな。」
遊飛「お尻スウェット?何だそれ?」
ちよ「………デュ、デュエルアカデミアの入学案内見てないの?入学通知にも書いてあったはずだよ。」
遊飛「そういえば書いてあったような……そうでないような……」
久城「そんなことも知らんで入学するとはたるんどるっ!!」
遊飛「ごめ……申し訳ございません。」
久城「全く! いいか?デュエルアカデミアでは入学試験の成績によって上からオベリスクブルー、ラーイエロー、オシリスレッドという風に三段階にランク付けされるのだ。」
ちよ「昔は女子はみんなオベリスクブルーだったんだけど、デュエリスト人口の増加とかでラーイエローとオシリスレッドにも女子寮が出来たみたい。」
遊飛「ヘェ〜、そうだったんだ……って俺ら一番下のランクじゃん!? 俺入試のデュエル勝ったぜ?」
ちよ「うちもギリギリ勝ったけど……筆記の方が多分あんまり…」
久城「そう、ランク付けは筆記と実技の評価を総合して決まるものだ。試験デュエルも勝敗だけでなく内容も重視されるため、勝てば良いというものでもない。」
久城「………ということにはなっているがな。実際問題オベリスクブルーの生徒は中等部から成績優秀な者ばかり、君らのように高等部から編入する者は成績優秀者でもラーイエロー、多くはオシリスレッドになってしまうものだ。気を落とすな。」
遊飛「うーん……ま、いっか! 俺はデュエルがたくさん出来れば何でもいいぜ!」
久城「だがプロになるつもりなら万年オシリスレッドだと評価に響くぞ? それだけは肝に命じておけよ!」
遊飛「げっ!? マジかよ〜。」
久城「今は半年に一度審査がある。そこで成績が認められれば昇級できるから頑張れよ。」
遊飛「そっか! 色々教えてくれてサンキューな、先生!」
久城「んん!?」
遊飛「ありがとうございます先生!!」
久城「よかろう。この船ではオシリスレッドの生徒はこの通路の突き当たりにある大部屋に荷物を置けるようになっているぞ。」
久城「それにまだ船がつくまでは時間もあるからデュエルスペースを使ってデュエルも出来る。」
遊飛「船の中でデュエル出来んのか!? スゲー!!!」
久城「これから3年間ともに競い学ぶ者同士、交流が深められるかもしれん。ではまたアカデミアでな。」
そう言い残すと久城は指差した方向とは逆に歩いていく。
ちよ「見た目はおっかないけど優しい先生だね、伴くん。」
遊飛「ああ! じゃ、荷物置いたらすぐデュエルスペース行こうぜ!」
ー船室ー
久城が指差した部屋は段差の上にカーペットが敷かれ、周りをロッカーで囲んだだけの殺風景なものだった。しかしそこには大勢の生徒がところ狭しと座ってカードや携帯をいじったり、会話に花を咲かせている。
遊飛「……部屋ってタコ部屋なのか。」
ちよ「あはは……オシリスレッドだからね。」
遊飛「ま、仕方ねーな。しかしこう人が多くちゃどこに荷物を置いていいやら……」
???「もし良かったらこっちのロッカー二つ空いてるよ?」
二人が声のした方に目をやるとそこにはニコニコと笑う美少年が座ってスペースを作っていくれていた。さらさらな髪はまるで女子のようで中性的な印象を持たせる。
遊飛「お、サンキュー! じゃあここに荷物入れさせてもらうぜ。ちよも来いよ。」
ちよ「あ、ありがとうございます。そうさせてもらおうかな。」
二人はロッカーに荷物を入れ、空けてくれたスペースに座る。
遊飛「俺は伴遊飛だ!よろしくな!」
ちよ「う、うちはちよっていいます。」
???「遊飛くんとちよさんだね。僕は大場景介(おおば けいすけ)。よろしくね。二人は付き合ってんの?」
景介と名乗る少年の不意の問いかけに二人はフリーズ、そして瞬時に顔を赤くして取り乱す。
遊飛「ち、違う違う!全然違う!」
ちよ「は、はい。うちなんかとそんな……滅相も無い!
ちよ(でも…そんなに否定されるのもなんかヤだなぁ…)
景介「え?違うの?やけに仲良く見えるけど…」
遊飛「実は今朝かくかくムカムカで………」
遊飛は今朝の出来事を景介に話す。
景介「………凄いなあ遊飛くん。ドラマみたいだね!」
遊飛「いやあ照れるぜ……っとそうだ! 俺らこれからデュエルスペースに行くんだけど景介もどうだ?」
景介「うん、いいね。行こうか。」
ーデュエルスペースー
遊飛「ここがデュエルスペースか! 結構でかいな!!」
アカデミアシップのワンフロアが丸々デュエルスペースとなっており、いくつものデュエルコートが並んでいる。
ちよ「うん。人もたくさんいるね。」
景介「でも今は全部使われてるみたいだね。」
遊飛「じゃあ空いたらどっちか俺とデュエルしようぜ!」
景介「じゃあ僕が先でいいかな?」
遊飛「は、はい。うちはそれで大丈夫です。」
遊飛「早くやりてー! どっか空かねーかなー!!」
景介「ははは、それまで面白そうなデュエルでも見て……ん?」
数あるデュエルコートの一つにやたら人が集まっており景介は首をかしげる。
ちよ「なにかあったのかな…」
遊飛「よく分からねーけどとりあえず行ってみようぜ!!」
三人がギャラリーの多いコートに行くとそこでは大柄で角刈りの少年と小柄で波のようにうねった髪をした少年のデュエルが行われていた。小柄の少年の場にはモンスターが揃い、大柄の少年の場はガラ空きだ。
小柄な少年「ボクは『ニードル・ギルマン』でダイレクトアタック。これで終わりだ。」
大柄の少年「ぐおおおお!!!」
LP800→LP0
大柄な少年のライフが0になると同時にギャラリーから歓声があがる。
生徒「うおぉぉぉ!?6人目だ!」
生徒「勝てる奴いんのかこれ!!」
小柄な少年「さぁ、他にボクとデュエルしたい人はいるかい?」
勝った少年は次の対戦相手を募るがギャラリーはざわつくばかりで名乗りをあげる生徒はいない。しかしその中で一人の手が上がった。伴遊飛である。
遊飛「俺! 俺やりたい!!」
遊飛「悪い二人とも!先こっちやっていいか?」
ちよ「うん、大丈夫だけど…」
景介「僕も構わないよ。」
遊飛「おし!じゃあ行ってくる!」
ディスクを装着し、遊飛はデュエルコートに立つ。
生徒 「次のやつ出て来たぞ…」
生徒「今度こそ勝てるか……?」
小柄な少年「やあよろしく。ボクは海里 優(みさと すぐる)だ。」
遊飛「おう! 俺は伴遊飛。よろしくな!」
海里「一応ボクはこの船でデュエルを続けてさっきの人で6人抜きなんだけど承知で出て来たのかな?」
遊飛「ああ、さっき聞いたぜ! 強いみたいだな。」
海里「ふ、ありがとう。承知で出てくるとは君も腕に自信があるようだね。さしずめラーイエローの入試上位者なんだろうなあ。」
遊飛「らーいえろー?……ああランクのことか! それなら俺はおしるこゲットだ!」
先程までニヤついていた海里が真顔になりギャラリーも一斉に静まり返る。ちよと景介も固まってしまうがはっと我に帰ったちよは遊飛に近づき小声で助言する。
ちよ「伴くん! おしるこじゃなくてオシリス!オシリス、レッドっ!」
遊飛「え? あ、そっか! 悪い悪い。オシリスレッドだってさ!」
生徒「オシリスレッドだってよ…」
生徒「ラーイエローの奴らが6人抜きされてんのに勝てるわけねーよ…」
生徒「7勝目も決まったな。」
海里「……っははは! 伴くん…だったかな? ジョークが上手いなあ…はっははは!!」
海里「……にしても、オシリスレッドだって? 勇猛なのか馬鹿なのか… 」
遊飛「………」
先程まで飄々としていた海里の雰囲気が変わり、それを察知した遊飛の目つきもまた変わる。
海里「このボクを誰だと思ってるんだか…」
遊飛「……俺と同じ一年生の海里くんだろ?」
海里「同じじゃないんだよねえ……ちょっとくらい優秀なのがいるかもしれないラーイエローならまだしも底辺のレッドとはねえ。」
ちよ「え?それって……だって編入生はラーイエローかオシリスレッドだって先生が……」
景介「……噂で聞いたことがあるよ。高等部からの編入組の中に数人、オベリスクブルーに在籍を許可された生徒がいるって。」
遊飛「なるほど…この船の中でも飛び抜けて強い奴ってことね。」
海里「そう…ボクはその選ばれし者の一人って訳。そのボクにオシリスレッド風情が挑むのは少々おこがましいと思うなあ。」
遊飛「そういうなって。ははーん…もしかして海里クン。負けるのが怖いのかな?」
海里「何?」
見下した態度に対して見え透いた挑発をする遊飛。海里はそれを受け流せず忌々しげに爪を噛む。
海里「君ィ……底辺のクセにナメた口ききやがって…」
海里「………相手してやるよ。」
遊飛「そうこなくっちゃ…行くぜ!」
デュエル!!!!
伴遊飛 LP4000
海里優 LP4000
海里「先攻はもらう。ボクは『海皇の重装兵』を召喚。」
・海皇の重装兵 ☆3 攻0守1600
海里「場に『海皇の重装兵』がいる時、手札からさらに海竜族を召喚出来る。『海皇の竜騎隊』召喚!」
・海皇の竜騎隊 ☆4 攻1800守0
場に盾を持つ魚人と竜に跨る魚人が並ぶ。
海里「カードを2枚伏せてターン終了だ。」
景介「攻撃力0に伏せカード2枚…完全に誘ってる…」
遊飛「俺のターン、ドロー! 誘ってようがなんだろうが俺は俺のやり方でやるだけだ!」
遊飛「俺は『機動獣-ライガー』召喚、攻撃表示!」
・機動獣-ライガー ☆4 攻1800守800
海里「くく…罠カード『激流葬』発動。」
海里「モンスターの召喚時、フィールドの全モンスターを破壊する!」
遊飛「げっ!?」
表になったカードから鉄砲水が吹き出し、3体のモンスターを飲み込んでいく。
ちよ「でも自分のモンスターまで…」
海里「そしてもう一つの罠カード、『激流蘇生』発動! モンスターが破壊された時、破壊された自分のモンスターを全て蘇らせる。『重装兵』を守備表示、『竜騎隊』を攻撃表示。」
再びカードから激しく吹き出す水。その中から葬られたはずの2体の魚人が姿をあらわす。
海里「さらにこの効果で蘇ったモンスター1体につきお前に500ポイントのダメージを与える!」
遊飛「ぐうっ!」
遊飛 LP4000→LP3000
海里「このボクをバカにしたこと、後悔させてやるよ!」
続く
●次回予告
ちよ「伴くん、いきなりモンスターやられちゃってダメージまで…大丈夫かなあ…私も頑張って応援するよ!えっ?このカードが逆転の鍵?こ、怖い……」
ちよ「次回! 『暴君、立つ!』 デュ、デュエルスタンバイ!」
※オシリスレッドとかラーイエローとか制服でわかるだろ?って思うかと存じますが編入生は私服で来て寮に荷物を置く時に着替える。みたいな感じになってます。
だったら最初から島に来るのは前日とかにしろって話ですけどね…
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次は意地悪講師とデュエルか?と思った矢先普通にいい人そうだった。新キャラ景介君はまだ判断がつかないけどとりあえず開口一番に随分大胆な質問ですなw
ちよちゃんのフルネームが出てこないことに大きな伏線を感じる……。
(2016-11-05 12:51)
コメントありがとうございます。最初は意地悪な講師だったんですがこの人に使わせたいデッキを考えると良い人であって欲しいと思いこうなりました。(果たしてこの先生のデュエルシーンを書くときがくるのか…)
景介くんはなんでしょうね。今はデリカシーのないバクラみたいなやつとでも思ってください笑
いつか何かするかもしれません。
次回はかませが頑張ります。 (2016-11-05 21:20)