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遊戯王 Ωロード/第2話 異邦人 作:たおー

 その少女は、いかにも近未来的な建物から外を見ていた。
 眼下に広がる景色は、灰色に染まっていた。彼方から聞こえるは荒廃仕切った空気の流れ。あちこちに灰と炭ばかりの生物の屍が転がり、天を無機質な暗雲が覆っている。まるで希望などない光景だが、少女はその心に希望を持っていた。――再生へ、巨大な自然が復活し世界に訪れる「太平」。
 そして少女は自らを、巨大な機械の中に押し込めた。その周りには他の大小の影も同じことをしていた。少女は目を閉じ、耳を閉じ世界から自らを隔絶する。もう嫌、元に戻りたいと願えば、不意に胸元が暖かくなる。何か分からないが、心は穏やかになる。
 そしてその機械はは天に向かい柱を伸ばす。中の彼女はひどく不安だった。しかし分かっていた。誰かが呼んでいることを。行かなくてはならないことを。そしてその人が自分達にとっての望みだと。そして柱の先端から数多の光が飛んで、暗雲を突き抜け、宙へと飛んで行った。まるで希望を求めるかの様に…

 遊香は飛び起きた。
 夢を見た。こめかみを汗が伝い、瞬きをしばらくできなかった。
 落ち着きを取り戻した遊香は周りに仰天する。辺りは見慣れない光景だった。真っ白な広いドーム状の部屋。目の前には格子状の模様の床がある。そして薄ら寒い。

「昨晩は…」

 何でこんなことになったのか、と遊香は必至に思い出す。
 昨日は帰りにカードを買うためカードショップに寄った。そしたら帰りが七時を過ぎ、小遣いを一万円以上カードに注ぎ込んだことを母親に叱られた。それから親子喧嘩をし、イライラから制服を着たまま夕食を食べずに寝た。以上。寝たのは自室、ベッドの上だ。なのに何故こんな所にいるのだろう。家族に監禁する趣味があったものはいないし、第一こんな広い部屋が家にあるわけない。
「ふふ、ようやく目覚めたな、『決闘者』とやら。」
幼さのある声に目を凝らすと、奥に奇妙な人間がいた。遊香にはそれが自分と同じくらいの身長だとわかった。そしてこちらに近づいて来るにつれ、それが女の子だということが分かった。だがその外見は常識的に考えて全身怪しさの塊だ。白地に水色の紋様が刻まれた鎧を纏っている。ただ鎧と言うには機械的で、SFに出て来そうな見た目だ。そして頭には同じカラーリングのヘッドフォンをつけ、髪型は黒髪のポニーテール。遊香と同年代そうな顔には少し得意げな、そして期待している様な表情をうかべている。
「あの、あなたは?」
問いかけると、何かを投げてきた。それはパッドに似た機械。
(これは決闘盤? デュエルしろっての?)
「決闘者よ。それをやるから私とデュエルをしろ。お前の力量を図ってやる。“希望”となりうるかのな。」
白づくめは腕の鎧の一部を決闘盤の様に変形させる。その表情はさっきとは違い、緊張している様だった。
 何故このタイミングで、しかも怪しいコスプレ少女からデュエルの誘いを受けるのか。斬新すぎる決闘の誘いと意味不明な誘いな言葉に遊香は困惑する。
 唖然とする遊香を見て、少女は呆れた様だった。
「本当にこんなのがこの星の強者なのか…」
その言葉を聞いた遊香は、決闘者としてのプライドに火がついた。見知らぬ奴だが、実力を疑われるのが我慢ならなかった。しかし少女の言葉がひっかかる。まさか彼女は宇宙人なのか…と一瞬思ったが、そんな事はどうでも良くなっていた。
 肩掛けのバッグの中に水色のカードケースがあった。ケースを開き、カードの束を取り出し、意思表明を見せる。少女は再び笑みをうかべた。
夢にしてはリアルだと思いながら、遊香はデッキを決闘盤に差し込む。
「では始めよう。希望の試験を。」
「宇宙人気取りだか知らないけど、馬鹿にするなら容赦しないよっ!」
「「決闘!!」」
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