第162話：精神の成長　作：光芒

「輝竜星-ショウフクでダイレクトアタック！ 竜星昇天波！！」

輝竜星-ショウフク ATK2800

「くっ……！！」

遊望 LP7000→4200

　ショウフクの放った光の波動が重い衝撃となって遊望の身体に走った。シンクロ素材となったシュンゲイの効果で強化されたショウフクの一撃で遊望のライフが大きく削られる。
このターンの開始時まで綾香を侮っていた遊望であったが、クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンと青眼の白龍を一斉に除去された上、大ダメージを与えてきたことに少なからず動揺を感じていた。

「メインフェイズ2に移るわ。と言ってもできることが無いし、これでターンエンドよ」
―――綾香。気づいたか？
（何？）
―――遊望の顔だ、笑みが消えている。
（……ホントだ。どうしたんだろう）
―――少なからず彼女も動揺を感じているということなのかもしれないな。だが、追い詰められた獣は何をするかわからない。気を付けろ。


遊望　LP4200　手札1枚
デッキ：30　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：11　除外：0
綾香　LP6900　手札1枚
デッキ：29　モンスター：1（輝竜星-ショウフク）魔法・罠：1（竜星の具象化）墓地：10　除外：1


☆TURN05


（まさか、この私がライフで上回られるなんて……）
―――遊望。

　5ターン目。遊望のターンであるが、彼女はこのデュエルで初めて動揺を露わにしていた。これまで敵にすらならないと思っていた綾香に一時的とはいえライフで大差を付けられたのである。わずか数か月の間でここまで成長した綾香に遊望はわずかながら恐怖心を抱きつつあった。そんな彼女の精神状態を察した時空竜が優しく言葉をかける。

（……時空竜？）
―――精神に乱れが見える。少し落ち着いた方がいい。
（ふん……そんなこと、わかっています……）

　時空竜に言われて我に返った遊望はふう、と小さく息を吐いてからカードをドローした。デュエルは人間と人間の戦いである。心を持たない機械がするものではないため、その時々の体調は心理状況がプレイングに左右される。そのため、熱くなりすぎてしまえば一度のプレイングミスが自分に牙を剥く。

「墓地の太古の白石の効果を発動します。このカードをゲームから除外し、墓地のブルーアイズ1体を手札に加えます。私が加えるのは青眼の白龍です。そして、トレード・インを発動。今手札に戻した青眼の白龍をコストに2枚ドローします」
（ここでデッキを回転させてきた……一体何を狙って……）
「手札から魔法カード、復活の福音を発動。墓地のレベル7またはレベル8のドラゴン族1体を特殊召喚します。蘇れ、青眼の亜白龍！」

　遊望のフィールドには青眼の亜白龍が蘇る。特殊召喚モンスターだが、一度自身の効果で特殊召喚されていることから蘇生制限を満たしているために墓地からの特殊召喚も可能になっていた。
　ショウフクの攻撃力は素の攻撃力の低さも相まって、シュンゲイの力で強化されていても青眼の攻撃力である3000にはわずかに届かない。綾香はこの時前のターンでショウフクの2つ目の効果を使っておくべきだった、と臍を噛んだが後の祭りである。

「バトル、青眼の亜白龍で輝竜星-ショウフクを攻撃。“滅びのバーン・ストリーム”！！」

青眼の亜白龍 ATK3000 VS 輝竜星-ショウフク ATK2800

綾香　LP6900→6700

「モンスターが破壊されたことで竜星の具象化の効果を発動！ デッキから地竜星-ヘイカンを守備表示で特殊召喚するわ！」
「……バトルフェイズを終えてメインフェイズ2に移行します。手札からチューナーモンスター、太古の白石を召喚。そしてレベル8の青眼の亜白龍にレベル1の太古の白石をチューニング。その聖なる輝きで全てを照らせ。再び飛翔せよ！ 青眼の精霊龍！」

　竜星の展開力を警戒した遊望は2体目の精霊龍をシンクロ召喚する。1度だけとはいえ、墓地でのカード効果の発動を封じることができるため、やはりこのモンスターをどう使うかが勝利への鍵となると判断したようだった。

「これでターンエンド。そして墓地に送られた太古の白石の効果でデッキから白き霊龍を特殊召喚します。特殊召喚に成功した白き霊龍の効果を発動。フィールドの魔法・罠カード1枚を選択してゲームから除外します」
「あっ……」

　白き霊龍はその名前こそ青眼という名前を持たないが、自身の効果で青眼の一種に含まれるため太古の白石の効果で特殊召喚ができるのである。ステータスは通常の青眼の白龍より攻守ともに500ポイント低いものの、特殊召喚に成功した時に発動できる効果があり、それが魔法・罠カード1枚を除外するというものだ。

「除外するのは当然、竜星の具象化です」


遊望　LP4200　手札1枚
デッキ：26　モンスター：2（青眼の精霊龍、白き霊龍）魔法・罠：0　墓地：13　除外：1
綾香　LP6700　手札1枚
デッキ：28　モンスター：1（地竜星-ヘイカン）魔法・罠：0　墓地：11　除外：2


☆TURN06


「私のターン、ドロー！」

　遊望のフィールドに存在するモンスターはいずれも攻撃力2500。決して越えられない数値ではない。ただし攻撃表示の白き霊龍はともかく、守備表示の精霊龍を突破するにはやはり攻撃力3100以上のモンスターを召喚する必要がある。
　それに加えて竜星の火力補助を担うシュンゲイは既に3枚とも墓地にあり、デッキからの特殊召喚は竜星の輝跡などでデッキに一度戻さない限り物理的に不可能であるため綾香はこの数ターン反撃のための手はずを整えなければならなかった。

「私はモンスターをセット。さらにカードを1枚セットしてターンエンドよ」

　竜星の具象化を除去され、精霊龍によって墓地発動を封じられる。それでもフィールドに竜星を途絶えさせないこと。それがこのデッキで勝つため綾香に求められているプレイングであった。


遊望　LP4200　手札1枚
デッキ：26　モンスター：2（青眼の精霊龍、白き霊龍）魔法・罠：0　墓地：13　除外：1
綾香　LP6700　手札0枚
デッキ：27　モンスター：2（地竜星-ヘイカン）魔法・罠：1　墓地：11　除外：2


☆TURN07


「私のターン、ドロー。カードを1枚セット。そして青眼の精霊龍を攻撃表示に変更し、バトルフェイズに移ります。まずは白き霊龍で地竜星-ヘイカンを攻撃します」

白き霊龍 ATK2500 VS 地竜星-ヘイカン DEF0

「破壊されて墓地に送られたヘイカンの効果を発動！ デッキから竜星1体を攻撃表示で特殊召喚するわ！」
「させません。その効果にチェーンして青眼の精霊龍の効果を発動します」

チェーン2（遊望）：青眼の精霊龍→地竜星-ヘイカン
チェーン1（綾香）：地竜星-ヘイカン

「墓地で発動するカードの効果の発動を無効にする。よってヘイカンの効果は発動できません」
「まあ、わかってたわ。でも私のモンスターはもう1体いるよ。このモンスターはどうするのかしら？」
「リクルートできるモンスターを1体減らせるだけで十分です。青眼の精霊龍でセットモンスターを攻撃します」

青眼の精霊龍 ATK2500 VS 破面竜 DEF1100

「破面竜……竜星以外の幻竜族も入っているのですね」
「竜星の名前が無くても幻竜族ならある程度のシナジーはあるのよ。破面竜でデッキから守備力1500以下の幻竜族を特殊召喚するわ！ 来て、チューナーモンスター“タツノオトシオヤ”！」


※タツノオトシオヤ
チューナー・効果モンスター
星7/水属性/幻竜族/攻2100/守1400
このカードは幻竜族モンスターの効果でしか特殊召喚できない。
「タツノオトシオヤ」の効果は1ターンに3度まで使用できる。
(1)：自分メインフェイズに発動できる。このカードのレベルを1つ下げ、自分フィールドに「タツノコトークン」（幻竜族・水・星1・攻300/守200）1体を特殊召喚する。


「最上級モンスターのチューナー……バトルフェイズを終了。私はこれでターンエンドです」


遊望　LP4200　手札1枚
デッキ：26　モンスター：2（青眼の精霊龍、白き霊龍）魔法・罠：1　墓地：13　除外：1
綾香　LP6700　手札0枚
デッキ：26　モンスター：1（タツノオトシオヤ）魔法・罠：1　墓地：13　除外：2


☆TURN08


「私のターン、ドロー！ タツノオトシオヤの効果を発動するわ。自身のレベルを1つ下げて自分フィールドにタツノコトークン1体を特殊召喚する。この効果は3回まで使用できる、ってことで3回連続で発動するわ！！」

タツノオトシオヤ 星7→4

「タツノオトシオヤのレベルが4まで……そしてフィールドにはレベル1のモンスターが3体……」
「これで私はレベル5から7までのシンクロ召喚が可能になった。でもそれだけじゃ終わらない！ 私はレベル1のタツノコトークン1体にレベル4となったタツノオトシオヤをチューニング！“飽くなき速さを求めるものよ。今次元の壁を突き破り、新たな境地へと到達せよ！”シンクロ召喚！ 駆け抜けよ、シンクロチューナー！ “アクセル・シンクロン”！！」

　綾香のフィールドにシンクロ召喚されたのは赤い身体が特徴的な機械のようなモンスターであった。フォーミュラ・シンクロンや源竜星-ボウテンコウなどと同じく、シンクロモンスターでありながらチューナーモンスターでもあるアクセル・シンクロンだった。


※アクセル・シンクロン
シンクロ・チューナー・効果モンスター
星5/闇属性/機械族/攻500/守2100
チューナー＋チューナー以外のモンスター1体以上
自分は「アクセル・シンクロン」を1ターンに1度しかS召喚できない。
(1)：1ターンに1度、デッキから「シンクロン」モンスター1体を墓地へ送り、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●墓地へ送ったそのモンスターのレベル分だけ、このカードのレベルを上げる。
●墓地へ送ったそのモンスターのレベル分だけ、このカードのレベルを下げる。
(2)：相手メインフェイズに発動できる。このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。


「アクセル・シンクロンの効果を発動するわ！ デッキから「シンクロン」モンスターを墓地に送ることでこのカードのレベルを変更できる。私はデッキからジェット・シンクロンを墓地に送り、ジェット・シンクロンのレベル分このカードのレベルを下げるわ！」

アクセル・シンクロン 星5→4

「そして手札から魔法カード、竜星の軌跡を発動！ 墓地の竜星モンスター3体をデッキに戻してシャッフルし、2枚ドローするわ。デッキに戻すのはシュンゲイ2枚とガイザーよ！」
「シュンゲイは火力補助のカードとしては優秀ですからね。妥当な判断でしょう」
「……そうかもね。でも、この引き運は自分でもどうかな、って思うわ。炎竜星-シュンゲイを召喚！」
「まさか今戻したカードを引き当てるとは……」
「レベル4の炎竜星-シュンゲイに、レベル4となったシンクロチューナー、アクセル・シンクロンをチューニング！」
―――綾香！
（お願い、私に力を貸して！）
―――うん！

　綾香はエクストラデッキから1枚のカードを取り出した。白い枠に覆われたそのカードは綾香が必死の思いで覚醒させた相棒であり、彼女がいてくれたからこそ綾香は今この場所で何よりも大事な友のため、仲間のために戦うことができるのだ。

「“暗黒に染まる空を切り裂く一筋の閃光よ！ 今その姿を白き竜と変え、未来へ繋がる道を切り拓く！ 魂を、命を震わし、世界へ！ 親友の心へ届け！！”シンクロ召喚！ 目覚めよ、精霊！ 閃珖竜 スターダスト！」

　一筋の閃光が竜へと姿を変えた。対峙する遊望もそのスターダストの持つ力をその身をもって受け止める。

閃珖竜 スターダスト ATK2500/DEF2000→ATK3000/DEF2500

「っ……青眼の精霊龍の効果を発動！ このカードをリリースし、エクストラデッキから光属性・ドラゴン族のシンクロモンスター1体を特殊召喚します！ 来なさい、蒼眼の銀龍！ 蒼眼の銀龍が特殊召喚に成功した時、効果が発動します。私のフィールドのドラゴン族モンスターは次のターン、つまり次の私のターン終了時までカードの効果の対象にならず、カードの効果では破壊されません！」
「精霊龍は攻撃表示のままだからスターダストの攻撃力と同じ守備力の蒼眼の銀龍を特殊召喚することで守りを固めたのね。でも、もう1体のモンスターは攻撃表示のままよ！ バトル！ 閃珖竜 スターダストで白き霊龍を攻撃！“流星閃撃”！！」

閃珖竜 スターダスト ATK3000 VS 白き霊龍 ATK2500

遊望 LP4200→3700

「っ……小癪なっ！」
「メインフェイズ2に移るわ。私は墓地のジェット・シンクロンの効果を発動！ 手札1枚を墓地に送り、ジェット・シンクロンを特殊召喚！ そしてレベル1のタツノコトークン1体にレベル1のジェット・シンクロンをチューニング！ “天空に輝く星々の光よ。集いし願いを胸に秘め、見果てぬ道を切り拓け！”シンクロ召喚！！ 希望の力、シンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロン！ フォーミュラ・シンクロンのシンクロ召喚に成功した時に効果発動！ デッキからカードを1枚ドローする。そしてカードを1枚セットしてターンエンドよ！」


遊望　LP3700　手札1枚
デッキ：26　モンスター：1（蒼眼の銀龍）魔法・罠：1　墓地：14　除外：1
綾香　LP6700　手札1枚
デッキ：22　モンスター：3（閃珖竜 スターダスト、フォーミュラ・シンクロン、タツノコトークン×1）魔法・罠：2　墓地：11　除外：3


☆TURN09


「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズ時に蒼眼の銀龍の効果が発動し、墓地の通常モンスター1体を蘇生します。蘇生するのは通常モンスターの青眼の白龍です！」
「っ……攻撃力がスターダストと同じモンスターを……」
「まだです。手札から魔法カード、死者蘇生を発動。墓地の青眼の白龍を特殊召喚します！」
「2体目の青眼の白龍……」

　綾香はこれまで竜司とのデュエルで複数体並ぶ青眼の白龍は幾度となく目撃してきた。しかし、竜司の青眼と遊望の青眼はやはり何かが違っていた。
　竜司の青眼はあくまでソリッドビジョンによって投射された仮想の青眼であるのに対し、遊望の青眼は元々はこの世界に住まう精霊を強制的に自らに従属させたものである。そのため相手の青眼たちは遊望の意のままにこそ動いているが、元は意志を持っている。そのため彼女のデッキのモンスターはほとんどが精霊といっても差し支えない存在なのである。

（……なんて迫力かしら。腐っても青眼は青眼なのよね）
「さて、2体の青眼の攻撃を防げますか？ バトル。1体目の青眼の白龍で閃珖竜 スターダストを攻撃します。“滅びの爆裂疾風弾”！」

青眼の白龍 ATK3000 VS 閃珖竜 スターダスト ATK3000

「させない！ スターダスト自身を対象にスターダストの効果を発動するわ！ このターン対象となったモンスターは1度だけ戦闘・効果による破壊を免れるわ！」
「では私も。墓地の復活の福音を除外してドラゴン族1体の破壊を無効にします。これで閃珖竜 スターダストを守る力はもう……」
「リバースカードオープン！ 罠カード、緊急同調！ バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行える！ 私はレベル8の閃珖竜 スターダストにレベル2のシンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロンをチューニング！ 来て、真閃珖竜 スターダスト・クロニクル！！」

　シンクロモンスターとシンクロモンスターのチューナー同士の組み合わせでのみシンクロ召喚ができる数少ないモンスター、真閃珖竜 スターダスト・クロニクル。その攻撃力は3000であり、シュンゲイの効果を受けたスターダストと同じ数値となる。
　先に行われた遊希とのデュエルではこのモンスターの力で勝利を掴み取ることができたが、今このデュエルにおいてスターダスト・クロニクルは決して勝利への道筋を作ることのできるモンスターではなかった。

「真閃珖竜 スターダスト・クロニクル……攻撃力は青眼と同じ3000ですが？」
「スターダスト・クロニクルの1つ目の効果を発動するわ！ 墓地のシンクロモンスターを除外してこのターン、他のカードの効果を受け付けなくするわ！」
「効果破壊は防げても、戦闘破壊は防げません！ 2体目の青眼の白龍で真閃珖竜 スターダスト・クロニクルを攻撃！！ “滅びの爆裂疾風弾”！！」
「迎撃して、スターダスト・クロニクル！ “流星煌閃撃”！！」

青眼の白龍 ATK3000 VS 真閃珖竜 スターダスト・クロニクル ATK3000

　光り輝く黄金の竜と青い眼を持つ白き龍の攻撃は互いに相殺し合い、2体のドラゴンは光の中へと消えていった。遊望の墓地には2枚目の復活の福音があるのだが、この場面で彼女はその効果を発動しなかった。
　最も蒼眼の銀龍が存在する限り、通常モンスターの青眼の白龍は彼女のスタンバイフェイズが来るたびに無限に蘇ってくるのだが。

「まだよ！ 破壊されて墓地に送られたスターダスト・クロニクルの効果発動！ 除外されているドラゴン族のシンクロモンスター1体を特殊召喚するわ！ 帰ってきて、閃珖竜 スターダスト！」

　亜空間の壁を突き破ってフィールドにはスターダスト・クロニクルの進化前にあたる閃珖竜 スターダストが舞い降りる。一度フィールドを離れているため、シュンゲイによる強化は消えてしまっているが、破壊無効効果は問題なく発動できる。綾香は右手で額の汗を拭った。

「結局ダメージは与えられず、ですか。まあいいでしょう。ターンエンドです」


遊望　LP3700　手札1枚
デッキ：25　モンスター：1（蒼眼の銀龍、青眼の白龍）魔法・罠：1　墓地：12　除外：2
綾香　LP6700　手札1枚
デッキ：22　モンスター：2（閃珖竜 スターダスト、タツノコトークン×1）魔法・罠：1　墓地：14　除外：3


☆TURN10


「私のターン、ドロー！」
―――綾香……ごめんね。

　綾香がデッキからカードをドローすると、脳裏にはスターダストの言葉が響き渡る。その言葉はとても精霊らしからぬ謝罪の言葉で始まった。

（えっ？ どうしたの突然）
―――どうしたのって……スターダスト・クロニクルでも相手の攻撃を止めることが精いっぱいで。
（ううん……それに関しては悪いのは私だしむしろ謝らなきゃいけないのは私だと思うわ。だってあなたの力を活かしてあげられなかったんだもん）
―――でも……
（……まだデュエルは終わってないわ。だから、謝るならこのデュエルに勝ってからにしましょ？……って何言っちゃってるんだろう私）

　相手は圧倒的な力で自分だけではなく遊希やエヴァも破っている。そんな相手を前にしても綾香は怯むことなく立ち続けていた。その様に対峙する遊望、デュエルを見守るエヴァとスカーライト、そして綾香自身も自分の精神の変化には驚きを隠せずにいた。

「魔法カード、貪欲な壺を発動するわ。墓地の炎竜星-シュンゲイ、タツノオトシオヤ、フォーミュラ・シンクロン、アクセル・シンクロン、輝竜星-ショウフクの5体をデッキに戻して2枚ドローするわ！」
「メインデッキに戻るカードは2枚。よって実質プラスマイナス0というわけですか」
「そう、だから引きたいカードを引ける確率は上がるけど……スターダストを守備表示に変更し、モンスターをセット。カードを1枚セットしてターンエンドよ」


遊望　LP3700　手札1枚
デッキ：25　モンスター：2（蒼眼の銀龍、青眼の白龍）魔法・罠：1　墓地：12　除外：2
綾香　LP6700　手札1枚
デッキ：21　モンスター：3（閃珖竜 スターダスト、タツノコトークン×1）魔法・罠：2　墓地：10　除外：3


☆TURN11


「私のターン、ドロー。さて……」

　カードをドローした遊望は今ドローしたカードではなく、前のターンにドローした手札のカードを一瞥する。

（……このカードにはあまり頼りたくなかったですが。この際やむを得ないでしょうか）

　遊望の手札には青眼とは姿形が大きく異なる漆黒の竜が描かれたカードがあった。