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1-14:反撃の一手(*未修正) 作:氷色
「さてと…」
離れていくアスナを見送ると、ユウゴとマナは振り返った。
「待たせたな、エビル・デーモン」
アスナと話す間、口を挟むこともなく待っていてくれたエビル・デーモン。
ユウゴの中でこの上級悪魔に対する気持ちもまた少し変わってきていた。
事あるごとに粗暴そうに振る舞ってはいるがその実わりと紳士的な性格なんじゃないか、という感覚が拭えない。まるでわざと暴力的・高圧的な態度を演じているように思えた。
そのユウゴの思いを知ってか知らずか、エビル・デーモンは満足げに笑む。
『まさか儂の“魔降雷”に耐えてみせるとはな…』
「ま、ボロボロだけどな」
合わせてユウゴもヘラッと笑う。
やせ我慢も甚だしいその笑みに、エビル・デーモンの笑みも深くなる。
『少しは面白くなってきおったわ』
この悪魔の本質は紳士というより歴戦の武人という方が近いのかもしれない。
好戦的ではあるが、最低限の礼は弁えている。粗暴に見える態度は自分の力に誇りを持っていることの裏返しで、相手の弱さが許せない。それが弱い者を蔑む選民意識に繋がっている。
だが先程までのこちらを嘲るような言動はそれだけが理由ではあるまい。およそこちらを発奮させるための挑発というところか。
弱い相手では闘いがつまらない。強者を相手にした時こそ、闘いに面白さを見出せるタイプなのだろう。
「ひどく好意的に捉えれば…だけどね」
『何をブツブツ言っている?』
「いや、作戦を練ってたのさ。アンタをぶっ倒すためのな」
あえて強い言葉を使ってみる。
エビル・デーモンがユウゴの思っている通りの性質ならば、こうやって強気に挑まれる方が好みのはずだ。
『フッ、良かろう。ではデュエル再開といこうではないかッ!』
ユウゴとエビル・デーモンが再び一定の距離をとって相対する。
「えっ…と、どこまでだったっけ?」
ユウゴがあごを伝う汗を拭う。
何もしていないのに、立っているだけで脂汗が滴り落ちる。無理をしているのは誰の目にも明らかだ。
『儂の直接攻撃を貴様が受けたダメージステップだ』
流石は律儀な悪魔、きっちり状況を止めている。
ダメージステップはモンスターの戦闘により発生するLPへのダメージを計算するステップである。
受けたダメージを計算しプレイヤーのLPから差し引く。またダメージを受けることがトリガーになるカードの効果もこのステップで処理する。
今回の場合は《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の直接攻撃が計算の対象となり、その攻撃力分がユウゴへのダメージとなる。
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の元々の攻撃力は2500だが、現状ではフィールド魔法《闇の二重魔法陣》の効果で攻撃力が300ポイントアップしているので、総攻撃力は2800となり、ユウゴのLPが受けるダメージもそれと同値である。
ユウゴ/LP4000→1200
「一撃でLPの7割も削られたわけか。だが悪いことばかりでもないな」
ユウゴが相変わらずフラフラのくせにそんなことを言うのを聞いて、エビル・デーモンは愉快げだ。
『減らず口だな、小童。だが、まぁ確かに死の淵を覗き込んだせいか儂への怯えが目から消えはしたか』
一度、死の感覚から生還したデュエリストは強くなる。
それは迷信や噂の類いではなく真実だ。
エビル・デーモンもそのことは知っている。
魔力というものは精神と密接に関係している。精霊の方が人間より遥かに魔力の扱いに長けているのは、精霊が実体と精神体の狭間に位置する生命体だからだ。
だが魔力の強さがその生まれ持った種族に大きく依存しそう簡単には増減しない精霊に対し、人間は精神を成長させることで魔力を爆発的に高めることができる。悠久の時を重ねながら少しずつ力を増していく精霊達にとって、それはとてつもない成長スピードに感じるものだ。
その成長力こそが、人間が精霊に対抗し得る最大の武器なのである。
デュエリストが生還することで強くなるのは、死を乗り越えたことによる精神の成長が魔力を飛躍的高めるからだと考えられている。
つまり今のユウゴはすでに先程までのユウゴとは全く別次元のデュエリストということになる。
『全く小癪なことだ…』
ユウゴがエビル・デーモンを恐れなくなったのは、単純にその強さの差が先程よりも縮んだからに他ならない。
「なるほどね。怯えってフィルターがなくなったからさっきよりアンタの本質がちょっとだけ見えてきたのかもな」
嘯きながら、しかしユウゴは笑う。
「だけど、俺が言ったのはそのことじゃないよ」
『何ィ?』
「忘れた?アンタの直接攻撃が決まる前、俺のフィールドには伏せカードが1枚残されていたのを」
確かにあの時ユウゴのフィールドにはセットされた魔法・罠カードが1枚残されていた。だが今はそのカードはない。
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》にはモンスターを破壊する力はあっても魔法・罠カードを破壊する力はない。あの攻撃で吹き飛ばしてしまったということは絶対にありえない。
となれば可能性は一つだった。
「そう、アンタの攻撃を受けた瞬間に俺はあのカードを発動させていたのさ」
破壊されたわけでもない魔法・罠カードがフィールドになくなるのは、すでに発動された場合以外にはない。
あの落雷の直撃を受けながらも伏せカードを発動させていたとは。
「そのカードは、罠カード《ダーク・ホライズン》!!《ダーク・ホライズン》は自分がダメージを受けた時に発動でき、受けたダメージ値以下の攻撃力を持つ闇属性の魔法使い族をデッキから特殊召喚できる!」
《ダーク・ホライズン》
通常罠
(1):自分が戦闘・効果でダメージを受けた時に発動できる。受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ魔法使い族・闇属性モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
ユウゴのフィールドに黒い光を放つ円が浮き上がる。
ユウゴが《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の直接攻撃で受けたダメージは2800。つまり攻撃力2800以下の闇属性・魔法使い族モンスターを自由にデッキから選んで特殊召喚できることになる。しかも攻撃力2800と言えば充分に最上級モンスター水準の攻撃力帯であり、闇属性・魔法使い族という基準さえクリアすればほとんどのモンスターを特殊召喚できる計算だ。
エビル・デーモンからすれば、この効果から出てくるモンスターならば、デッキのエース級モンスターと相対することを覚悟しなければならない。
『抜け目のない小僧よ…』
だがそれに反してエビル・デーモンの表情はどこか愉快げである。
今のユウゴの状態を見ればあの雷撃の威力は自ずと分かる。それをまともに喰らいながらも反撃のための一手をすでに打っていた。
その渋とさには素直に感嘆する。
ユウゴが条件に合うモンスターをデッキから抜き出し、デュエルディスクへとセットする。
「俺が特殊召喚するのはもちろんこのカードだッ!頼むぞ《ブラック・マジシャン・ガール》!!」
ユウゴが反撃の狼煙として切った切り札。
それはユウゴのデッキで最も信頼を置く攻めにおける相棒。
『まぁ~てましたぁー!!』
ユウゴの背後から意気揚々と飛び出したのは、かなり天然のイタい魔法少女であった。
離れていくアスナを見送ると、ユウゴとマナは振り返った。
「待たせたな、エビル・デーモン」
アスナと話す間、口を挟むこともなく待っていてくれたエビル・デーモン。
ユウゴの中でこの上級悪魔に対する気持ちもまた少し変わってきていた。
事あるごとに粗暴そうに振る舞ってはいるがその実わりと紳士的な性格なんじゃないか、という感覚が拭えない。まるでわざと暴力的・高圧的な態度を演じているように思えた。
そのユウゴの思いを知ってか知らずか、エビル・デーモンは満足げに笑む。
『まさか儂の“魔降雷”に耐えてみせるとはな…』
「ま、ボロボロだけどな」
合わせてユウゴもヘラッと笑う。
やせ我慢も甚だしいその笑みに、エビル・デーモンの笑みも深くなる。
『少しは面白くなってきおったわ』
この悪魔の本質は紳士というより歴戦の武人という方が近いのかもしれない。
好戦的ではあるが、最低限の礼は弁えている。粗暴に見える態度は自分の力に誇りを持っていることの裏返しで、相手の弱さが許せない。それが弱い者を蔑む選民意識に繋がっている。
だが先程までのこちらを嘲るような言動はそれだけが理由ではあるまい。およそこちらを発奮させるための挑発というところか。
弱い相手では闘いがつまらない。強者を相手にした時こそ、闘いに面白さを見出せるタイプなのだろう。
「ひどく好意的に捉えれば…だけどね」
『何をブツブツ言っている?』
「いや、作戦を練ってたのさ。アンタをぶっ倒すためのな」
あえて強い言葉を使ってみる。
エビル・デーモンがユウゴの思っている通りの性質ならば、こうやって強気に挑まれる方が好みのはずだ。
『フッ、良かろう。ではデュエル再開といこうではないかッ!』
ユウゴとエビル・デーモンが再び一定の距離をとって相対する。
「えっ…と、どこまでだったっけ?」
ユウゴがあごを伝う汗を拭う。
何もしていないのに、立っているだけで脂汗が滴り落ちる。無理をしているのは誰の目にも明らかだ。
『儂の直接攻撃を貴様が受けたダメージステップだ』
流石は律儀な悪魔、きっちり状況を止めている。
ダメージステップはモンスターの戦闘により発生するLPへのダメージを計算するステップである。
受けたダメージを計算しプレイヤーのLPから差し引く。またダメージを受けることがトリガーになるカードの効果もこのステップで処理する。
今回の場合は《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の直接攻撃が計算の対象となり、その攻撃力分がユウゴへのダメージとなる。
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の元々の攻撃力は2500だが、現状ではフィールド魔法《闇の二重魔法陣》の効果で攻撃力が300ポイントアップしているので、総攻撃力は2800となり、ユウゴのLPが受けるダメージもそれと同値である。
ユウゴ/LP4000→1200
「一撃でLPの7割も削られたわけか。だが悪いことばかりでもないな」
ユウゴが相変わらずフラフラのくせにそんなことを言うのを聞いて、エビル・デーモンは愉快げだ。
『減らず口だな、小童。だが、まぁ確かに死の淵を覗き込んだせいか儂への怯えが目から消えはしたか』
一度、死の感覚から生還したデュエリストは強くなる。
それは迷信や噂の類いではなく真実だ。
エビル・デーモンもそのことは知っている。
魔力というものは精神と密接に関係している。精霊の方が人間より遥かに魔力の扱いに長けているのは、精霊が実体と精神体の狭間に位置する生命体だからだ。
だが魔力の強さがその生まれ持った種族に大きく依存しそう簡単には増減しない精霊に対し、人間は精神を成長させることで魔力を爆発的に高めることができる。悠久の時を重ねながら少しずつ力を増していく精霊達にとって、それはとてつもない成長スピードに感じるものだ。
その成長力こそが、人間が精霊に対抗し得る最大の武器なのである。
デュエリストが生還することで強くなるのは、死を乗り越えたことによる精神の成長が魔力を飛躍的高めるからだと考えられている。
つまり今のユウゴはすでに先程までのユウゴとは全く別次元のデュエリストということになる。
『全く小癪なことだ…』
ユウゴがエビル・デーモンを恐れなくなったのは、単純にその強さの差が先程よりも縮んだからに他ならない。
「なるほどね。怯えってフィルターがなくなったからさっきよりアンタの本質がちょっとだけ見えてきたのかもな」
嘯きながら、しかしユウゴは笑う。
「だけど、俺が言ったのはそのことじゃないよ」
『何ィ?』
「忘れた?アンタの直接攻撃が決まる前、俺のフィールドには伏せカードが1枚残されていたのを」
確かにあの時ユウゴのフィールドにはセットされた魔法・罠カードが1枚残されていた。だが今はそのカードはない。
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》にはモンスターを破壊する力はあっても魔法・罠カードを破壊する力はない。あの攻撃で吹き飛ばしてしまったということは絶対にありえない。
となれば可能性は一つだった。
「そう、アンタの攻撃を受けた瞬間に俺はあのカードを発動させていたのさ」
破壊されたわけでもない魔法・罠カードがフィールドになくなるのは、すでに発動された場合以外にはない。
あの落雷の直撃を受けながらも伏せカードを発動させていたとは。
「そのカードは、罠カード《ダーク・ホライズン》!!《ダーク・ホライズン》は自分がダメージを受けた時に発動でき、受けたダメージ値以下の攻撃力を持つ闇属性の魔法使い族をデッキから特殊召喚できる!」
《ダーク・ホライズン》
通常罠
(1):自分が戦闘・効果でダメージを受けた時に発動できる。受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ魔法使い族・闇属性モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
ユウゴのフィールドに黒い光を放つ円が浮き上がる。
ユウゴが《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の直接攻撃で受けたダメージは2800。つまり攻撃力2800以下の闇属性・魔法使い族モンスターを自由にデッキから選んで特殊召喚できることになる。しかも攻撃力2800と言えば充分に最上級モンスター水準の攻撃力帯であり、闇属性・魔法使い族という基準さえクリアすればほとんどのモンスターを特殊召喚できる計算だ。
エビル・デーモンからすれば、この効果から出てくるモンスターならば、デッキのエース級モンスターと相対することを覚悟しなければならない。
『抜け目のない小僧よ…』
だがそれに反してエビル・デーモンの表情はどこか愉快げである。
今のユウゴの状態を見ればあの雷撃の威力は自ずと分かる。それをまともに喰らいながらも反撃のための一手をすでに打っていた。
その渋とさには素直に感嘆する。
ユウゴが条件に合うモンスターをデッキから抜き出し、デュエルディスクへとセットする。
「俺が特殊召喚するのはもちろんこのカードだッ!頼むぞ《ブラック・マジシャン・ガール》!!」
ユウゴが反撃の狼煙として切った切り札。
それはユウゴのデッキで最も信頼を置く攻めにおける相棒。
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更新情報 - NEW -
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なかなか返信しづらいコメントですね笑。まぁネタバレってほどでもないんですが。
パイタッチはもう少しお預けです。
(2016-09-14 20:15)
ありがとうございます。コメントはやはり励みになります。
コメントにはできる限り返信していこうと思ってます。次に読んでもらったときに返信があるとコメントした方もうれしいだろうし、そうした方が閲覧も伸び…おっとそろそろお祈りの時間だ。 (2016-09-15 07:46)