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HOME > 遊戯王SS一覧 > 1-12:失責の雷(*未修正)

1-12:失責の雷(*未修正) 作:氷色

律儀にフェイズ移行を宣言するエビル・デーモン。
なんだかデュエルのレクチャーを受けているような感覚になり、ユウゴは慌てて頭を振った。

今はユウゴ達全員の命が懸かったデュエルの真っ最中だ。ストックホルム症候群でもあるまいし、敵に親近感を持ってどうする。これもエビル・デーモンの仕掛けた心理攻撃の一種かもしれないのに。

沸き上がりつつあったデュエル相手への感情を振り切り、ユウゴはデッキからカードをドローする。

「俺のターン、ドロー!」

後攻であるユウゴにはドローフェイズにカードをドローする権利が与えられている。

これでユウゴの手札は6枚。
この6枚でエビル・デーモンの場に存在する《トラッシュ・デーモン》を攻略しなければならない。

デュエルの基本はモンスターのステータスによるぶつかり合いだ。
相手のモンスターを倒すには、そのモンスターの表示形式に応じた攻撃力・守備力を上回る攻撃力の高いモンスターでそれに攻撃するしかない。
如何にして相手モンスターのステータスを上回るかがデュエルの戦術の根幹だ。

しかしユウゴの手札に《トラッシュ・デーモン》の攻撃力1900を上回る攻撃力を持つモンスターはいなかった。
となれば魔法カードとのコンビネーションでモンスターの攻撃力を上げるしかない。手札にはそのための強化カードが2枚もあった。

1枚は《黒魔術の呪文書》。



《黒魔術の呪文書》(*オリカ)
装備魔法
闇属性・魔法使い族モンスターのみ装備可能。
(1):装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
(2):装備モンスターが戦闘で相手プレイヤーにダメージを与えた時、発動できる。自分はカードを1枚ドローする。
(3):フィールドに表側表示で存在するこのカードが墓地に送られた場合に発動できる。デッキから「マジシャンズ」魔法・罠カード1枚を手札に加える。



《黒魔術の呪文書》は攻撃力を500ポイントアップするだけではなく、更なるアドバンテージを得ることができる可能性を持つ強力な装備魔法カードだ。
しかし強力なカードにはそれに相応しい発動条件が課されることが多い。《黒魔術の呪文書》もまた使いこなすことができるのは闇属性の魔法使い族モンスターに限られていた。
そして残念ながらユウゴの手札にはその条件に合うカードはない。

となればもう1枚のカードに委ねるしかないのだが、こちらもこのターンには発動条件を満たすことはできなさそうだ。

ならば、とユウゴは手札から2枚のカードをデュエルディスクにセットする。

「俺はモンスターを裏側守備表示でセット。更にカードを1枚伏せてターンエンドだ」

守備表示のモンスターならば例え攻撃力の高いモンスターに攻撃され倒されてしまってもユウゴにダメージは届かない。
現状を打破できない以上、被害を最小限に留めつつ反撃の準備ができるまで持久戦を耐えるしかない。


ユウゴ(手札4・LP4000)

モンスター
セットモンスター×1
魔法・罠
セットカード×1


ユウゴがエンド宣言したことによりターンが移る。
エビル・デーモンがデッキからカードをドローし嗤う。

『ククク、打つ手なしか。儂のターン、ドロー』

引いたカードを確認し目を細める。
そしてフィールドの下僕に命を下す。

『まずは《トラッシュ・デーモン》の効果を発動する。デッキから再度《トリック・デーモン》を墓地に送り、その効果でデッキから《デーモンの雄叫び》を手札に加える』

《トラッシュ・デーモン》のモンスター効果は1ターンに1度発動させることができる。
墓地に送られればデッキから『デーモン』カードをサーチできる《トリック・デーモン》がある限り、《トラッシュ・デーモン》は毎ターンカードをサーチできることになる。

「くそ…」

ユウゴにはエビル・デーモンがこうして手堅くアドバンテージを広げていくのを忸怩たる思いで見送るしかない。

そしてその無力はエビル・デーモンに切り札の召喚を許してしまった。

『絶望を拝ませてくれるッ!儂はフィールドの《トラッシュ・デーモン》をリリースし、儂自身《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》をアドバンス召喚する!!』

《トラッシュ・デーモン》が稲光に吸い込まれるように消える。
と同時に日が傾き始めた空に暗雲が立ち込め始めた。

「…来る」

暗雲の隙間に稲光が走る。
それが吸い込まれるように一点に集束し、そして弾けた。
轟音と共に一筋の稲妻が両者の間に落ちた。
勢いよく砂埃が舞い上がり、ユウゴは思わず顔を伏せる。
その砂埃が収まると現れたのは、紅い瞳、白い外骨格、力強く巨大な体躯、そして稲妻を纏った濃密な瘴気、紛れもなくもう一人のエビル・デーモンー《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》であった。


《真紅眼の凶雷皇(レッドアイズ・ライトニング・ロード)-エビル・デーモン》
デュアル・効果モンスター
星6/闇属性/悪魔族/攻2500/守1200
(1):このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。
(2):フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。このカードの攻撃力より低い守備力を持つ、相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する。


「くっ…!」

『フハーッハッハッハッハッ!』

ユウゴは苦虫を噛み潰したように唸り、エビル・デーモンは最早勝敗が決したかのように高笑いする。

ユウゴからすればエビル・デーモンが2体に増えたように見える。
放たれる圧力も単純に二倍。思わず足がすくむ。

『あややー、出てきちゃいましたよぅマスター』

マナの言葉には字面ほどの焦りの色はない。
ユウゴならばあの程度のモンスター倒せるはず、と信じているのだろう。
さっき会ったばかりの相手になぜそうまで信頼を置けるのか疑問ではあるが、それでもその信頼がユウゴの背中を押してくれる。

「大丈夫だ」と震えそうになる膝を叩く。
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の攻撃力は2500。確かに強大な力だ。しかしそれに攻撃されても守備表示のモンスターが防いでくれるはず。このターンはユウゴにダメージはない。

『…と、そう考えているのだろうなぁ』

エビル・デーモンがユウゴの考えを見透かすように嗤いながら呟く。
見透かされた側のユウゴは背中に走るものを止められない。

『見え透いているぞ小童!言ったであろう!絶望を見せてやるとッ!儂は手札から魔法カード《『守備』封じ》を発動!貴様の貧弱な守備モンスターをあばいてくれるわッ!』


《『守備』封じ》
通常魔法
相手フィールド上に守備表示で存在するモンスター1体を選択して表側攻撃表示にする。


エビル・デーモンが魔法カードをデュエルディスクにセットすると、ユウゴのセットモンスターにバツ印が表示され、ゆっくりと翻っていく。

「なっ…!?」

カードが完全に表側となり、現れたのは清らかな姿の女性モンスター。


《祈りの聖女 ホーリー・エルフ》(*オリカ)
星4/光属性/魔法使い族/攻800/守2000
「祈りの聖女 ホーリー・エルフ」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか発動できない。
(1):手札・フィールドのこのカードをリリースし、自分フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力は800ポイントアップする。この効果は相手ターンにも発動できる。
(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。墓地から「祈りの聖女 ホーリー・エルフ」以外の攻撃力2000以下の魔法使い族モンスター1体を選んで特殊召喚する。


『《『守備』封じ》は、どんなモンスターにも守備表示を許さぬ魔法カード。このカードの前ではどんなモンスターも貧弱な攻撃力を晒すしかないのだ!』

ユウゴの守備モンスターだった《祈りの聖女 ホーリー・エルフ》は高い魔法力で守備力は高いが、争いを好まない性質からその攻撃力は僅かに800。しかし今や《『守備』封じ》の力で強制的に攻撃表示を取らされていた。
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》にとっては格好の獲物である。このままでは大ダメージは必至だ。

『まだまだ真の絶望はこれからよッ!儂自身である《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》は闇属性のデュアルモンスター!!よって《闇の二重魔法陣》上では再度召喚された状態として扱われる!!そして《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》には自身の攻撃力以下の守備力の相手モンスターを全て葬り去る効果があるのだッ!!』

「な…に…」

エビル・デーモンの放った言葉を、ユウゴはすぐに理解できなかった。
だがそれは次の瞬間にユウゴの眼前で表されることとなる。

『《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》の効果発動ッ!打ち払え“怒髪天昇撃”ィ!!』

主の命に呼応し、フィールド《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》が凶悪な声で吠える。獣の鳴き声など足下にも及ばない、まるで身体中の力を一気に放つような凄まじい声音。辺り一面がビリビリと震える。

そして次の瞬間、ユウゴのフィールドからいくつもの稲妻の柱が立ち上った。
それに巻き込まれる形で《祈りの聖女 ホーリー・エルフ》は断末魔もなく消滅してしまう。
ユウゴは悲鳴を上げる暇もなく、ただそれを刮目して見送るしかない。

振動と地面から天へと伸びる雷の柱が止むまで、ユウゴは一言も発せず一歩も動くことができなかった。
まさに圧倒的だった。圧倒的にレベルが違う。そう痛感せざるを得ないほどの、まさに人智を超越した圧倒的な光景と破壊力だったのだ。
ユウゴがへたりとその場に尻餅をついた。
その様子を見てエビル・デーモンは満悦に酔う。

『ぐうの音も出ぬか。だがこの儂に歯向かうなどという愚かを今更嘆いても遅いわ。儂は手を緩めたりなどせぬぞッ。続いてバトルフェイズ、《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》でダイレクトアタック!!』

エビル・デーモンは手を止めたりはしなかった。すかさず指令を出す。
すると《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》が今度は自身の身体へと雷のエネルギーを貯め始める。

「マズイッ…!」

それまで仁王立ちで静観していたアスナが初めて唸るように叫んだ。

デュエリストは普通『魔力障壁』を纏ってデュエルを行う。
『魔力障壁』は他者からの魔力による干渉を遮るいわゆるバリアだ。
デュエリストとは言え生身の人間なのだ。いくら魔力によって身体を強化していようと、ファンタジーの世界から飛び出して来たような精霊に比べれば身体能力も耐久力も遥かに劣る。その差を埋め対等に闘うための技術こそが『魔力障壁』なのだった。
これを纏うことによって、デュエリストは普通なら一撃で死んでしまうようなモンスターの攻撃にも耐え闘い続けることができる。
しかし『魔力障壁』はあくまで技術である。技術とは教えられて初めて身に付けることができるものであり、デュエリストになったからといって自然に纏うことができるというものではない。

そう、先程緊急回避的にデュエリストになったばかりのユウゴにはそれを身に付けるだけの時間的な余地などなかった。
生身のままあの雷撃を受ければどうなるかなど想像するまでもない。

「逃げろッ!武藤ユウゴッ!」

叫んでアスナは地を蹴る。

逃げることなどできないことも逃げてもどうにもならないこともアスナには分かっていた。
だがアスナはDMCDの守護官だ。守護官の職務は『護ること』。最悪は身代わりになってでもユウゴを護る責務があった。

アスナの動き出しは素早かった。
まるで獣が獲物を追うときのように低い体勢から一気にトップスピードに乗る。
しかしそれでも、それでもそれはすでに致命的に遅かった。

ユウゴは動けない。身体が完全にすくんでしまっていた。

悪かったのは誰か。きっと間に合うことはないアスナか、ユウゴをデュエリストにしたマナか、それとも目の前で雷を構えるエビル・デーモンか。

いや…違う。

悪いのは…致命的に間違ったのはユウゴだ。
そう、ユウゴは失敗したのだ。

失敗した。侮っていた。
《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》を、相手にしている精霊のエビル・デーモンを、そして何よりデュエルそのものを。

守備モンスター1体だけでこのターン凌げるだなどと考えが甘すぎた。デュエルにおいて、たった1体の守備モンスターなど壁にはならない。守りを固めるのなら二重三重と張り巡らせておかなければ充分とは言えなかった。

これは罰だ。
アスナの忠告を軽んじた、マナやクリボーの信頼を裏切った、エビル・デーモンを侮った、これは罰なんだ。

アスナが駆ける。しかし間に合わない。

ユウゴは見上げる。しかし攻撃は止まらない。

エビル・デーモンは嗤う。しかし落胆したように。

『…終わりだ。所詮、童は童か』

《真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン》が雷を放った。

ユウゴの悲鳴は、しかし轟音に掻き消された。


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