HOME > 遊戯王SS一覧 > 遊戯王 Hedgehog Flowers > 第28話 嫉妬

遊戯王 Hedgehog Flowers/第28話 嫉妬 作:白金 将

※エクストラパック2016のみんなの反応
葵(ん、あれは次のパックの情報がのった雑誌……)
葵「……ふむ、そろそろこの時期がやってきたか」ペラッ
葵「私のデッキに入りそうなものはあんまりないな……」ペラペラ

遊乃「苦渋の黙札いいなぁ……テラナイトにいれよっと」ワクワク
伽藍「壊獣も面白そうな動きをするわね~」
シロ「僕はKozmoがかっこいいと思うなー」
翌檜(神の摂理……嬉しい……)ニコ
桔梗「オパピリアかーわーいーいー? でも効果は激ヤバって感じ?」

葵「……」
葵(次元障壁買うか)

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 その日の議会は一瞬だった。
 開催反対派に桔梗が突き付けた証拠書類の数々に無党派層も開催派に傾き、圧倒的な差をつけて開催が決定されることとなった。勿論最後の最後まで叫んだり、数の暴力だとか言ったり向こうもしていたわけであったが、とりあえずは、さくらの心境が幾分か楽になったのは言うまでもない。
 そしてその日の夜、翌檜は桔梗、さくらの二人に呼ばれ、居酒屋「はなや」に集まっていた。本来であれば伽藍も来るはずだったのだが、急用で彼女は来れなくなってしまったらしい。
「まずは今までの頑張りを祝してカンパイってことでー!」
「かんぱーい!」
「乾杯」
 チンとグラスを当てた後、三人はコップ一杯のビールを飲み、フーとため息をついた。桔梗は最初から飛ばすように二杯目を自分のコップにつぐと、タガが外れたかのように翌檜に尋ねてくる。
「それでそれで、噂の彼氏さんとは最近どんなカンジ?」
「か、彼氏、なんて……」
「こら、桔梗。翌檜ちゃんが顔真っ赤にしてるでしょー?」
 予想だにしていない言葉に翌檜はコップを持つ手を震わせる。シオンの姿が脳裏に浮かび、息がほんの少しだけ乱れてしまっていた。
「フフーン、伽藍さんからお話は聞いてるよ? 遊園地デートしてきたんだって?」
「あっ、その、それは……」
 翌檜の視界が揺らぐ。そう言えば、あれ以降彼とは一度も会っていなかった。
「……デート、だったけど」
「おおっ、それじゃあキスとかしたの!? そしてその先まで」
「ぁぁっ……!」
「ああ、翌檜ちゃんが壊れちゃうからその辺にしてぇ」
 かちん=こちんに固まった翌檜をさくらがポンポンと叩いて様子見するが、翌檜はクラクラと揺れたまま何も答えようとしない。桔梗はそんな彼女を面白そうに見つめていた。



 部屋に帰って来た翌檜は、酒が残っている中ベッドに倒れ込んだ。まだ上気している頬は赤く染まっていて、酒が抜けきっていないのか、桔梗の恋バナにもっていかれたのかは分からないが、ずっとそのままだった。
 枕に顔を半分埋もれさせながら、翌檜はぼんやりした頭でシオンのことを考えていた。あの遊園地で一緒に行動してから、翌檜は度々彼のことを思い出していることが多くなっていた。そして、その度に、彼に会いたい、という気持ちも強くなってきていた。
「……ううっ」
 携帯電話を見るが、彼からのメールは来ていない。メールアドレスの交換で送った事務的な内容のメールが最後のやり取りだった。
 ベッドの上を転がる。うつらうつらとしていると、翌檜の意識が溶けて行った。

 朝、まだ酒が完全に抜けきっていないまま、翌檜は談話室の窓際でぼうっとしていた。口を開けてぼんやりしていると、そこに遊乃と葵がやってくる。
「あ、翌檜さん、おはようございます」
「おはよう」
「……ぁ」
 返事が返ってこないことに遊乃が疑問符を浮かべた。二人に全く気が付いていない。
「翌檜さーん」
「……ん」
 翌檜は手をぶんぶんと振る遊乃の方を向くと、今までの表情を見られていたことを悟ったのか、ぷいっと視線をそらしてしまった。いつになくモジモジとしている彼女の様子に流石の遊乃も何かを察したらしい。
 そこにシロに背負われて伽藍が到着した。伽藍はまだ半分眠っているのか、ふらふらとしたシロはそのまま止まることが出来ずにぐるぐると部屋を回り始めてしまう。それでも止まることが出来ず、翌檜の座っている所に突っ込んで行ってしまった。
「わ、翌檜さん!」
「……っ!」
 ぼんやりしていた翌檜はシロがやってくることに気が付かず、受け止めることが出来ずに椅子ごと床に落ちてしまった。床で伽藍とシロと翌檜の三人がもみくちゃになる。
「……伽藍」
「あら、目が覚めたわ~。これはどうしたのかしら?」
「ら、らん姉、はやく、おきて……」
 翌檜と伽藍の間で挟まれているシロが虫のような声を上げる。伽藍がゆっくりと起き上がったが、シロは翌檜に捕まってしまって起き上がることが出来ない。
「あれ、翌檜さん!?」
「……伽藍は、もう少しこの子を大切にした方がいい」
「あら~、翌檜もシロちゃんの魅力に気が付いたのね~」
 ちょっと不機嫌そうに翌檜はシロを抱く。遊乃と葵はその様子を遠くから興味深そうに見つめていた。
「違う」
 だが、ちょっと今回の翌檜は様子が違う。伽藍もどうやらそれに気が付いたようだ。
「伽藍は……どう思ってる?」
「私はシロちゃんのことが大好きよ~。それは変わってないわ」
「……そう」
 悔しそうに下を向く翌檜。その腕から解放されたシロが伽藍の所へ帰る。
「翌檜、どうしたの?」
 伽藍が聞くと、翌檜は少し沈黙したのち、呟いた。
「伽藍。一回、デュエルして」



 アルストロメリアのビルの前で伽藍と翌檜は向き合っていた。その横に遊乃と葵、そしてシロが立ちながら二人の様子を見守っている。珍しく翌檜は怒っているような表情であった。遊乃はそんな彼女の表情を見て不安げになっている。
「翌檜さん、何があったんだろ」
「このデュエルが終われば分かる。ほら、始まるぞ、遊乃」
 翌檜を見つめる伽藍は笑顔のままだったが、それでも、顔の一部には陰が出来ていた。シロはその表情の変化に気が付いているのか、真剣な顔で伽藍と翌檜の様子を見る。
「「デュエル!」」

― ― ― ― ― ―
伽藍 8000
翌檜 8000
― ― ― ― ― ―

 先行は伽藍だ。
「私のターン。手札から『強欲で謙虚な壺』を発動するわよ~」
 彼女のデッキトップが三枚めくられる。その中にあったのは「積み上げる幸福」「連鎖爆撃」「仕込みマシンガン」だった。彼女のデッキ【チェーンバーン】を象徴するカードだ。

「私は『連鎖爆撃』を手札に加えるわね」
「チェーンバーン……」
 翌檜が真剣な顔でつぶやく。おそらく彼女もこれは想定内だったのだろう。
 このデュエルは、お互いのことを知り尽くしているだけにお互いのデッキをいかにかいくぐっていくか、という戦いになっていた。伽藍も、翌檜も、どちらもこのことを理解している。お互いを知り尽くしているだけに。
 そのことを葵も感じているのか、妙に悲しそうな顔をして見守っていた。
「私は手札の5枚全てを伏せてターンエンドよ」
「私のターン、ドロー」

 翌檜はドローするが、伽藍が動く気配はない。あの五枚のうち一枚は「連鎖爆撃」だが、デッキの構成上数枚ほどブラフが混ざっている可能性もある。伽藍の表情を見るが、彼女の顔には何も映っていない。それもそのはず、このデッキを彼女はずっと使い続けているのだ。
「私は手札の『竜剣士ラスターP』と『解放のアリアドネ』でペンデュラムスケールをセッティング。そして、ラスターPのペンデュラム効果を発動。アリアドネを破壊して、デッキから二枚目の『解放のアリアドネ』を手札に加える」
「いつも通りの動きね……」
「破壊されたアリアドネの効果を発動。選んで」

 翌檜のデッキから提示された三枚は「強烈なはたき落とし」3枚。選択の余地はない。伽藍はデッキの都合上、手札にあまりカードが溜まらない。そのため、ドローフェイズごとのドローが非常に重要となってくる。翌檜のこの一手は、次の伽藍の動きを潰す一手となる。
「それじゃ、『強烈なはたき落とし』で」
「私は手札のアリアドネをスケールにセット。これでレベル3から5までのモンスターが同時に召喚可能。ペンデュラム召喚」
 翌檜の場に現れたのは、エクストラデッキから特殊召喚された「解放のアリアドネ」、そして、手札から特殊召喚された「豊穣のアルテミス」の2枚。翌檜のデッキ【エンジェル・パーミッション】を象徴する2枚だ。

― ― ― ― ― ― ―
豊穣のアルテミス

効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1600/守1700
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
カウンター罠が発動される度に自分のデッキからカードを1枚ドローする。
― ― ― ― ― ― ―
― ― ― ― ― ― ―
解放のアリアドネ

ペンデュラム・効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1700/守 800
【Pスケール:青3/赤3】
(1):このカードがPゾーンに存在する限り、以下の効果を適用する。
●自分はカウンター罠カードを発動するために払うLPが必要なくなる。
●自分はカウンター罠カードを発動するために捨てる手札が必要なくなる。

【モンスター効果】
(1):このカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。
デッキからカウンター罠カード3枚を相手に見せ、相手はその中から1枚選ぶ。
そのカード1枚を自分の手札に加え、残りをデッキに戻す。
― ― ― ― ― ― ―

 伽藍はまだ、動かない。
「バトルフェイズ。2体のモンスターでダイレクトアタック」
「痛いわね……」
 伽藍のライフが4700に削られる。翌檜のデッキは性質上、1ターンで勝利へと持っていくことは出来ない。ターンを掛けて相手をじわりじわりと追い詰めていくのが彼女のやり方だった。それも知っているのだろう、伽藍は何もしなかった。
「私は手札の残り4枚を伏せてターンエンド」
 その中には勿論、先程手札に加えた「強烈なはたき落とし」も含まれる。
 伽藍が、動いた。

「――エンドフェイズ時、『裁きの天秤』を発動」
「裁きの天秤?」
 横で見ていた遊乃が聞いたこともないような反応をする。それもそのはず、あのカードはまず、普通のデッキには絶対に入らない一枚。相手と圧倒的なハンド・ボードアドバンテージが付くことを最初から想定しているデッキでないと入らないカード。
「続けて私は『仕込みマシンガン』『自業自得』『おジャマトリオ』『連鎖爆撃』を発動」
「くっ……」
 伽藍のチェーンが止まる。処理が始まった。
「まずは連鎖爆撃のダメージ、2000」

― ― ― ― ― ― ― ―
伽藍 8000 → 4700(バトルフェイズ)
翌檜 8000 → 6000
― ― ― ― ― ― ― ―
― ― ― ― ― ― ― ―
連鎖爆撃(準制限カード)

速攻魔法
チェーン2以降に発動できる。
このカードの発動時に積まれているチェーン数×400ポイントダメージを相手ライフに与える。同一チェーン上に複数回同名カードの効果が発動されている場合、このカードは発動できない。
― ― ― ― ― ― ― ―

 伽藍のデッキの要ともいえるカードだ。その後「おジャマトリオ」の効果で翌檜の場に3体の「おジャマトークン」が生成され、彼女をからかうように踊り出した。これで、翌檜のモンスターの場が5体埋まりきった。
「次に『自業自得』を処理するわね。翌檜の場には5体のモンスターがいるから、2500ダメージを与えるわよ」
「ぐ……」
「そして『仕込みマシンガン』で2200ダメージ」

― ― ― ― ― ― ― ―
翌檜 6000 → 3500 → 1300
― ― ― ― ― ― ― ―

 まだ、最後に一枚残っている。伽藍がデッキに欠けている手の先から電流のような物が走っているのが、確かに見えた。遊乃は葵の陰に隠れてしまう。
「最後に『裁きの天秤』の効果……相手のフィールド・手札の枚数と自分のフィールド・手札の枚数だけドローするわよ」
「それじゃあ、伽藍さんは……」
「裁きの天秤で、私は、デッキから10枚ドローするわね」
 翌檜の目がかっと見開かれる。これを待っていたのだ。翌檜が場に展開しきって、そのカウンター罠を伏せてフィールドのカードが増えるこの瞬間を伽藍は狙っていたのだ。
「……ターンエンド」
「それじゃ、私のターンね」
 伽藍は神妙な顔になって、ドローフェイズのドローをする。そこに立っているのは平常時の伽藍ではない。真剣な表情をして立つ、戦場の鬼だ。

― ― ― ― ― ― ― ―
伽藍 4700
翌檜 1300
― ― ― ― ― ― ― ―
― ― ― ― ― ― ― ―
裁きの天秤

通常罠
「裁きの天秤」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):相手フィールドのカードの数が自分の手札・フィールドのカードの合計数より多い場合に発動できる。自分はその差の数だけデッキからドローする
― ― ― ― ― ― ― ―

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光芒
翌檜の可愛さが限界突破。普段クールな女の子が恋する乙女になるとそれが際立ちますね。シオンとはなんだかんだ言って上手くいっているのかそれとも(え

一方でいつも通りな伽藍とのデュエルですが、裁きの天秤とはまた珍しいカードを。パーミッションデッキはカウンター罠が多くなるためカードをセットする必要がある。そしてチェーンバーンもまたセットしなければ使えないカードが多い+それらのカードをより手札に引き込む必要がある、となれば裁きの天秤はうってつけのカードですね。アリアドネの登場からPゾーンも駆使し始めたわけですし。身内メタ(というわけではなさそうですが)を張ってきた本気の伽藍相手に翌檜はどう挑むのか。
(2016-09-01 11:48)
白金 将
<<光芒 さん
シオンとはしばらく連絡が取れていない状態が続いています。
翌檜さんに関しては何もしていないので単純に連絡が取れていないだけか……?

翌檜を相手してのデュエルでは裁きの天秤は非常に強力なカードになりえます。
でも普通の人相手でも裁きの天秤のドロー枚数は期待できるのですぞ。
お互いの手を知り尽くしているだけに若干二人のデッキ構築も変わっているのでそこも見てみると面白いかもしれません(`・ω・´) (2016-09-02 11:52)

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