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第4話:翡翠の瞳 作:ドクダミ2号
翔が大きな声をあげ、櫻達も近づく。
「何だ!?」
翔がいたのは、台所の奥。そこで翔はとんでもないものを見つけてしまったのだ。
「だ……誰だお前!?」
そう言う翔の目の前には、ボロ切れの様な服を着て、ボロボロになったブランケットの様なものを羽織った1人の少女がいた。
「え……?私……?……ごめんなさい。私、自分が誰だか……分からないの……。」
「だ……だからと言って人の家に勝手に上がり込むかぁ!?普通!?」
すると少女は不思議そうに顔を傾げた。どうやらここがどこだか分かっていない様子だった。
「……誰。」
櫻が思わず、低い声で質問する。少女はその声に過剰な反応を示した。
「ひっ……ごめんなさい……ごめんなさい………!」
「え!?えぇと……。えぇ……!?」
少女は涙を浮かび始め、櫻が大きく戸惑う。
「な、泣かないで……。……で、どっから来たの?」
六花が質問をするが、それにも分からないと答える。
「じゃぁ、結局……自分が何者かで、どこから来たのかもわからないと………。」
櫻が再度確認し、少女が頷く。どうやら嘘ではない様だ。
「さーて……どうしたものか……。このまま放置する訳にも行かないし………でもなぁ………うーん。」
翔が唸る。家に置く訳にもいかない、でも外に追いやる訳にもいかない。とてつもない葛藤に襲われる。その間に櫻が質問を続ける。
「……ねぇ、自分の事で分かってる事ってある?」
「え……?えぇと……自分の年齢ぐらいしか………。」
「ふーん、何歳なの?」
「えっと、15歳です……。あ、でも今年で16かな……?」
「へぇ、結構歳近いのね。……誕生日はわかる?」
「ごめんなさい……分からないです。」
ふーん、と声をあげ暫くして首を傾げ始める。
「これは……記憶喪失とは違う……?」
「記憶喪失ではないです……ただ、初めから自分が何者なのかが分からないだけで………。」
その言葉に翔が反応を示す。何か心当たりがある様だ。
「お父さん……?」
「つーことはだ、こいつはつまり身寄りの無い……って事になるな。」
「孤児……?」
「多分それだけじゃ無いと思うぜ。おい、お前ここに来る前の事覚えてるか?」
「……覚えてます。けど……あまり思い出したくはありません。………やっと逃げだせたのに………。」
逃げだせたのに……。その言葉は彼女がどんな境遇で育ったか、それを説明するには十分な言葉だった。
「そっか……大変だったんだね。………お父さん。」
「………。だーーー!!!わーったよ!!置けばいいんだろ!?置けば!」
「え?でも……!」
「いいんだよ、別に。……逃げだせたってのは自力でか……?」
翔がいつになく真剣な表情で質問する。
「いえ、手助けしてくれた人達がいるんです。……たしか、ディスペアーとかーーー」
「「ディスペアーだと!?」」
翔とナナリアが同時に反応する。どうやら何か知っている様だ。
「……ディズペアーだっけ?何なの……それ?」
「ディスペアーな。うーん……何かよく分かんないけど色々危ない事してる連中。」
「え……えぇ………。」
意味のわからない説明を受けて、困惑する櫻達。
「まぁなんだ、あんまり気にすることでもねぇよ。……あんな奴等………いなくていいんだよ………!」
「………。」
翔のその言葉を櫻達は理解する事は出来なかったが、とにかく触れてはいけない事だけは分かった。
「……。あの人達………一体こっちで何をしたの………?私を助けてくれた……あの人達が………。」
「んなもん、考えなくていい。まぁ……あれだ。一個だけ、部屋空いてるからそこで過ごしてくれや。櫻、六花。準備してやれ。」
翔に言われ、部屋の準備に向かう櫻と六花。それに合わせ、少女が立とうとした時……
「あっ……。」
羽織っていたブランケットが落ち、少女の姿が露わになった。
「………!お前………!」
その少女には痛々しい程の傷が大量にあった。火傷痕のようなものも所々ある。
「あっ……これはその………大丈夫です。もう………痛く無いですから。」
「そう言う問題じゃ………!」
ナナリアが何かを言おうとする。しかし、翔がそれを止める。
「翔……?」
「触れてやるな……。触れちゃ………ダメだ。」
そういった翔の目には、涙が浮かんでいる様に見えた。
ーーー
「えっと、君の部屋はここね。」
六花が説明をする。少女はただ、黙って聞いている。
「ねぇ六花。いつまでも君、じゃやりにくいんだけど……。」
「え?あっ……そうか。ねぇ、名前何ていうの?」
櫻に言われて、慌てて質問をする。しかし帰ってきた答えは相変わらず「わからない」というものだった。
「私はここに来る前は……名前でなんて呼ばれませんでした。……私は番号で呼ばれてましたから………。」
「……そっか。」
その言葉に、六花達はただ黙るしかなかった。
「……じゃ、じゃあさ!名前決めようよ!このままじゃあれだし!」
「えぇ!?六花……何言ってるの!?」
「えー……ダメ?」
「何も……ダメとはーーー」
「じゃあ決まりだね!」
半ば強引に六花が決める。どうやら櫻と少女に拒否権は無い様だ。
「そうだねー……うーん………あ、目……綺麗だね。」
少女の顔をまじまじと見ていた六花は、少女の綺麗な眼に気づいた。翡翠色の透き通る様な目だった。
「え?そうですか?……ありがとうございます………。」
「えーと、じゃあ!綺麗な翡翠だから……翡翠とかは!?」
「まんまじゃないの!もっと真面目に考えなさい!」
「えー!……じゃあ………緑。緑はどう?」
「また色……でもさっきよりはマシね。………あくまで日本人名で通すのね………。どう考えても日本人の顔立ちじゃないのに………。」
「うーんとじゃあ………翡翠石の軟石の意味を持つネフライトから………フライは?」
それって別に翡翠石関係ないじゃない……という櫻の声は六花に届かず、六花は少女に聞く。
「……フライ………かぁ……。」
「私はいいと思うよ?」
(どちらかと言うと男性名っぽく聞こえるというのは黙っていた方がいいのかしら………?)
「……ふふ。この名前……大切にします。」
少女は微笑み、その名を受け取った。
「良かったぁ…。じゃあフライちゃん。これからよろしくね!」
「ふふ……よろしく。」
フライは黙っていたが、その顔は笑顔に満ちていた。
……深夜だろうか、フライが何か音を聞き取り目を覚ます。誰か2人ほど、階段を降りた様な音だった。
「?」
確認しようと扉を開け階段へ向かうと、何か話し声が聞こえてくる。
「こういうのも何だがはっきり言おう。あいつは危険な存在だ。」
「だろうな。ディスペアー共が狙っているんだろう?」
「あぁ。じゃなきゃ助ける理由なんてないだろ?恩を売って協力させるとか、そういう脳はあいつらにはなさそうだし。何か、この世界……もしくはあいつがいた世界において、重要な存在なんだろう。」
「じゃあどうするんだ?このまま引き取ったままでは……。」
「あぁ、まずいだろうな。俺は正直、置いたままで生活するのは勘弁だ。だが………。」
「……櫻達か?」
「そうだ。あいつら………妹みたいに思ってるだろうからな。そんな事すれば……止めに来るだろ。」
「どうするんだ………?」
「保護はするさ。あいつの身寄りができるまで………。」
それを聞いたフライは静かに部屋へ戻った。
次回に続く
「何だ!?」
翔がいたのは、台所の奥。そこで翔はとんでもないものを見つけてしまったのだ。
「だ……誰だお前!?」
そう言う翔の目の前には、ボロ切れの様な服を着て、ボロボロになったブランケットの様なものを羽織った1人の少女がいた。
「え……?私……?……ごめんなさい。私、自分が誰だか……分からないの……。」
「だ……だからと言って人の家に勝手に上がり込むかぁ!?普通!?」
すると少女は不思議そうに顔を傾げた。どうやらここがどこだか分かっていない様子だった。
「……誰。」
櫻が思わず、低い声で質問する。少女はその声に過剰な反応を示した。
「ひっ……ごめんなさい……ごめんなさい………!」
「え!?えぇと……。えぇ……!?」
少女は涙を浮かび始め、櫻が大きく戸惑う。
「な、泣かないで……。……で、どっから来たの?」
六花が質問をするが、それにも分からないと答える。
「じゃぁ、結局……自分が何者かで、どこから来たのかもわからないと………。」
櫻が再度確認し、少女が頷く。どうやら嘘ではない様だ。
「さーて……どうしたものか……。このまま放置する訳にも行かないし………でもなぁ………うーん。」
翔が唸る。家に置く訳にもいかない、でも外に追いやる訳にもいかない。とてつもない葛藤に襲われる。その間に櫻が質問を続ける。
「……ねぇ、自分の事で分かってる事ってある?」
「え……?えぇと……自分の年齢ぐらいしか………。」
「ふーん、何歳なの?」
「えっと、15歳です……。あ、でも今年で16かな……?」
「へぇ、結構歳近いのね。……誕生日はわかる?」
「ごめんなさい……分からないです。」
ふーん、と声をあげ暫くして首を傾げ始める。
「これは……記憶喪失とは違う……?」
「記憶喪失ではないです……ただ、初めから自分が何者なのかが分からないだけで………。」
その言葉に翔が反応を示す。何か心当たりがある様だ。
「お父さん……?」
「つーことはだ、こいつはつまり身寄りの無い……って事になるな。」
「孤児……?」
「多分それだけじゃ無いと思うぜ。おい、お前ここに来る前の事覚えてるか?」
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逃げだせたのに……。その言葉は彼女がどんな境遇で育ったか、それを説明するには十分な言葉だった。
「そっか……大変だったんだね。………お父さん。」
「………。だーーー!!!わーったよ!!置けばいいんだろ!?置けば!」
「え?でも……!」
「いいんだよ、別に。……逃げだせたってのは自力でか……?」
翔がいつになく真剣な表情で質問する。
「いえ、手助けしてくれた人達がいるんです。……たしか、ディスペアーとかーーー」
「「ディスペアーだと!?」」
翔とナナリアが同時に反応する。どうやら何か知っている様だ。
「……ディズペアーだっけ?何なの……それ?」
「ディスペアーな。うーん……何かよく分かんないけど色々危ない事してる連中。」
「え……えぇ………。」
意味のわからない説明を受けて、困惑する櫻達。
「まぁなんだ、あんまり気にすることでもねぇよ。……あんな奴等………いなくていいんだよ………!」
「………。」
翔のその言葉を櫻達は理解する事は出来なかったが、とにかく触れてはいけない事だけは分かった。
「……。あの人達………一体こっちで何をしたの………?私を助けてくれた……あの人達が………。」
「んなもん、考えなくていい。まぁ……あれだ。一個だけ、部屋空いてるからそこで過ごしてくれや。櫻、六花。準備してやれ。」
翔に言われ、部屋の準備に向かう櫻と六花。それに合わせ、少女が立とうとした時……
「あっ……。」
羽織っていたブランケットが落ち、少女の姿が露わになった。
「………!お前………!」
その少女には痛々しい程の傷が大量にあった。火傷痕のようなものも所々ある。
「あっ……これはその………大丈夫です。もう………痛く無いですから。」
「そう言う問題じゃ………!」
ナナリアが何かを言おうとする。しかし、翔がそれを止める。
「翔……?」
「触れてやるな……。触れちゃ………ダメだ。」
そういった翔の目には、涙が浮かんでいる様に見えた。
ーーー
「えっと、君の部屋はここね。」
六花が説明をする。少女はただ、黙って聞いている。
「ねぇ六花。いつまでも君、じゃやりにくいんだけど……。」
「え?あっ……そうか。ねぇ、名前何ていうの?」
櫻に言われて、慌てて質問をする。しかし帰ってきた答えは相変わらず「わからない」というものだった。
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「……そっか。」
その言葉に、六花達はただ黙るしかなかった。
「……じゃ、じゃあさ!名前決めようよ!このままじゃあれだし!」
「えぇ!?六花……何言ってるの!?」
「えー……ダメ?」
「何も……ダメとはーーー」
「じゃあ決まりだね!」
半ば強引に六花が決める。どうやら櫻と少女に拒否権は無い様だ。
「そうだねー……うーん………あ、目……綺麗だね。」
少女の顔をまじまじと見ていた六花は、少女の綺麗な眼に気づいた。翡翠色の透き通る様な目だった。
「え?そうですか?……ありがとうございます………。」
「えーと、じゃあ!綺麗な翡翠だから……翡翠とかは!?」
「まんまじゃないの!もっと真面目に考えなさい!」
「えー!……じゃあ………緑。緑はどう?」
「また色……でもさっきよりはマシね。………あくまで日本人名で通すのね………。どう考えても日本人の顔立ちじゃないのに………。」
「うーんとじゃあ………翡翠石の軟石の意味を持つネフライトから………フライは?」
それって別に翡翠石関係ないじゃない……という櫻の声は六花に届かず、六花は少女に聞く。
「……フライ………かぁ……。」
「私はいいと思うよ?」
(どちらかと言うと男性名っぽく聞こえるというのは黙っていた方がいいのかしら………?)
「……ふふ。この名前……大切にします。」
少女は微笑み、その名を受け取った。
「良かったぁ…。じゃあフライちゃん。これからよろしくね!」
「ふふ……よろしく。」
フライは黙っていたが、その顔は笑顔に満ちていた。
……深夜だろうか、フライが何か音を聞き取り目を覚ます。誰か2人ほど、階段を降りた様な音だった。
「?」
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「こういうのも何だがはっきり言おう。あいつは危険な存在だ。」
「だろうな。ディスペアー共が狙っているんだろう?」
「あぁ。じゃなきゃ助ける理由なんてないだろ?恩を売って協力させるとか、そういう脳はあいつらにはなさそうだし。何か、この世界……もしくはあいつがいた世界において、重要な存在なんだろう。」
「じゃあどうするんだ?このまま引き取ったままでは……。」
「あぁ、まずいだろうな。俺は正直、置いたままで生活するのは勘弁だ。だが………。」
「……櫻達か?」
「そうだ。あいつら………妹みたいに思ってるだろうからな。そんな事すれば……止めに来るだろ。」
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