50 疾風怒濤の龍神　作：ギガプラント

天音「私のターン！ドロー！」


奏「……！」


天音「私は……『幻日の神子』を召喚！」星３・ＡＴＫ４００
白い装束を身に纏った神秘的な少女。


奏（レベル３が２体…来る！？）


天音「更に！私は装備魔法『レベリング・サンバイザー』を発動！このカードをサンライズ・ゲイザーに装備！」

星マークが沢山ついたサンバイザーを装着する。


奏「ここで装備魔法ですって！？」


天音「レベリング・サンバイザーは、装備したレベル４以下のモンスターのレベルを３倍にします！」


天音「サンライズ・ゲイザーのレベルは３…。よってそのレベルは９になる！」星３→９


茶ノ畑「お～っと！？同じレベルを２体揃えたと思ったらレベルを大きく変更してしまった～！！これはどういうことか！！」


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竜太「な、なんだ！？どういう事だ！？」


初「エクシーズするんじゃないの！？」


楯山「ええい黙って見ておけ！！天音さんの事だ…何か深く精巧な作戦がだな……」


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奏「レベル変更なんて、一体何をするつもりかしら…？」


天音「さっきまでと変わりませんよ。私は私の全力で勝ちに行くだけです。」


奏（あの目…あの時の光輝の目に似ている…！）


奏（絶対何かとんでもない事をしてくる…私の勘がそう言ってる！！）



天音「私は幻日の神子のモンスター効果発動！」


天音「このカードのレベルを、フィールド上に存在するレベルが変化しているモンスター１体と同じにする！」


奏「レベルを揃えて来るっていうの！？」


天音「選択するのはサンライズ・ゲイザー！よってレベルは同じく９となります！」星３→９


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夏武斗「すっげ～！！２体ともレベル３倍だ！」


夏武斗「これでレベル９が２体に…あぁ～ワクワクすっぜ～！！」


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奏「この気迫……！」


天音「私はレベル９となったサンライズ・ゲイザーと幻日の神子でオーバーレイ！」


天音「２体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築！」




エクシーズ召喚！！


現れよ！ランク９！疾風怒濤の龍神！！『シュトゥルム・ウント・ドラグーン』！！ランク９・ＡＴＫ３０００




荒れ狂う渦潮を纏いながら暴れまわる、巨大な龍神


茶ノ畑「ルァンク９だあああ！！何とも珍しい！！こんな高ランクモンスターはそうそうお目にかかれないぞおお！！」


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初「ランク９のエクシーズモンスター…！」


竜太「す、すっげえええ！！あのドラゴンめちゃくちゃかっけえええ！！」


楯山「正に天音さんの強さ賢さ美しさを精巧に…ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ」


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奏「ランク９だなんて……こんなの」


天音「私だって常日頃から強くなるよう努力してますから！何でもデータ通りにはいきませんよ！！」


奏（これが……この娘の力だっていうの！？）


天音「シュトゥルム・ウント・ドラグーンのモンスター効果発動！」


天音「オーバーレイユニットを１つ使い、モンスター１体をエンドフェイズまでゲームから除外する！！」


天音「対象は騎楽極士フォルティッシモ！」


奏「！！」


天音「アージ・メゾサイクロン！！」

とんでもないエネルギーの上昇気流が発生し、フォルティッシモに襲い掛かる。







奏（あのモンスターのオーバーレイユニットは全部で２つ。）


奏（あの効果で私のモンスターを２体とも飛ばされればダイレクトアタックがそのまま飛んでくる…）


奏（向こうの攻撃力は３０００。私の残りライフは……２８００。一撃で私のライフは０に…）


奏（そんな、私はここで……光輝と戦う前に……こんなところで）







奏（そんな……）






奏「そんな事させない！！」


奏「罠カード発動！『オーバーレイ・シンフォニー』！」


天音「！？」


奏「オーバーレイユニットを持ったエクシーズモンスターをエクストラデッキへ戻す！！」


奏「更に！この時戻したモンスターが持っていたオーバーレイユニットの数だけ、そのモンスターのランクと同じレベルのモンスターを効果を無効にして墓地から特殊召喚する！！」

光の球体となったフォルテッシモが強風から逃れる。


奏「フォルテッシモが持っていたオーバーレイユニットは２つ！！よって…」


奏「墓地よりレベル４の『騎楽士 ラメントーソ』『騎楽士 ラルゴ』を特殊召喚！！」ラメン星４・ＤＥＦ１０００　ラルゴ星４・ＤＥＦ１８００


天音「エクストラデッキへ戻す事で私の効果を躱すなんて…！」


奏「私のエースモンスターを私自身の手でフィールドから離す事になるなんて思わなかったわ。」


奏「でも……まだ私のライフは尽かせない！！」


天音「くっ…！でもまだ攻撃は残っています！バトルフェイズ！」


天音「シュトゥルム・ウント・ドラグーンで、騎楽士クレシェンドを攻撃！！」


天音「インディグネイト・ストーム！！」

四方八方より現れた大型の竜巻が収束しながらクレシェンドを飲み込む。


奏「きゃああ！！」ＬＰ２８００→１９００



奏「……まだまだ！！」


天音「私は……これでターンエンドです。」





奏（負けたからどうにかなるわけじゃ無い…優勝して何がしたいとか、特別夢や理想があるわけでもない。）


奏「だけど……私はただ勝ちたい！」


奏「デュエルで誰よりも強いって……周りに、そして自分自身に証明したい！！」


天音「奏さん…。」


奏（相手の場にモンスターは１体…セットカードも手札もなし…。）


奏（あのモンスターさえなんとかできれば…！！）




奏「私のターン！！ドロー！！」


奏「！！」


奏「…勝利の女神は、私に微笑んでくれた！」


天音「………！」


奏「私は『騎楽士 エレガンテ』を召喚！！」星３・ＡＴＫ１１００


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初「よし！エレガンテだ！これでまたデッキから仲間を呼べる！」


竜太「いや待て！確かあのモンスターは味方の効果ターゲットにならなきゃ効果が使えない！」


竜太「さっき蘇った２体は効果が無効化されてるんだろ！？効果を使ってくれる味方が居ないんじゃ……」


初「あ……」


楯山「いや…問題ない！」


竜太・初「えっ！？」


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奏「私は騎楽士ラルゴのモンスター効果発動！ターゲットはエレガンテ！」


奏「そしてエレガンテの効果！１ターンに１度、自分のモンスター効果のターゲットとなった時、デッキからレベル４以下のインスターモンスター１体を特殊召喚できる！」


奏「デッキより２体目の『騎楽士 クレシェンド』を特殊召喚！」星４・ＡＴＫ１７００


天音「くっ…！」

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竜太「んなっ！？」


初「効果が発動できてる…！」


楯山「エレガンテの効果の誘発に必要な条件は『自分の効果モンスターの効果の対象になる事』であり、『効果を受ける事』ではない。」


楯山「確かに蘇生された騎楽士ラルゴは効果が無効になっているが、効果の発動そのものは封じられていないんだ。」


楯山「つまり対象を選択し効果を発動する事自体はできる。勿論効果は無効化されるわけだから『対象のレベルを１つ上げる』という効果自体は適用されないけどね。」


楯山「しかし今の状況だと…それだけでも充分…！！」


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天音「レベル４モンスターが再び３体に…！」


奏（絶対負けない…！）


奏（勝って…勝ってもう一度この舞台で…）


奏（今度こそ、光輝に勝つんだから！！）



奏「私は！レベル４の騎楽士ラルゴ、騎楽士ラメントーソ、騎楽士クレシェンドでオーバーレイ！！」




エクシーズ召喚！！



再び現れよ！！『騎楽極士 フォルティッシモ』！！ランク４・ＡＴＫ２５００




奏「フォルティッシモのモンスター効果発動！オーバーレイユニットを１つ使い、私の場の騎楽士エレガンテと貴女の場のシュトゥルム・ウント・ドラグーンをターゲットに選択！！」


奏「シーリング・コンチェルト！！」


奏（攻撃力を下げて、２体で攻撃すれば勝てる！！）















フォルティッシモが音を奏でた……筈だったがその音色は聞こえてこない。















奏「えっ………？」








何かに気付き空を見上げる奏。

天高く吹き飛ばされるエレガンテの姿がそこにあった。





天音「シュトゥルム・ウント・ドラグーンの…モンスター効果発動。」


天音「対象となったエレガンテがフィールドから離れたので、その効果は不発となります。」










奏「そんな……」


奏「相手ターンでも…発動できるなんて……。」







天音「私も……ずっと夢見てましたから。」


天音「この大会に出て、そして優勝する事。」


天音「だから私も……譲れません！」


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茶ノ畑「決まったあああ！！自身の身をギリギリまで削り見事大逆転して見せました！！」


奏「そ……そんな…。」





膝をつく奏に近づいてくる光輝。





光輝「ありがとう奏。楽しいデュエルだったよ。」


奏「………」


奏「………ｸﾞｽ」


光輝「奏？」


奏「こ…んかいは…運が良かった…だけなんだからね。」


光輝「あ、あぁ。最後のターンであのカードを引けなかったら間違いなく負けていたと思う。」


突然立ち上がり指を突きつける


奏「あたしは…あたしは認めないからね！！」


奏「来年のアストベリー杯で今度こそアンタに勝ってやるんだから！！…ｸﾞｽﾞ」


光輝「奏……あぁ！僕も負けない。全力でお相手させてもらうよ！！」


奏「見てなさいよ！！圧倒的な実力差でコテンパンにしてやるから！！」




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奏「ターン……エンド」







天音「私のターン。ドロー！」


天音「シュトゥルム・ウント・ドラグーンで、騎楽士エレガンテに攻撃！！」


天音「インディグネイト・ストーム！！」




奏「………」ＬＰ１９００→０




ＷＩＮ・天音





奏「私の負け…か。」


天音「奏さん…ありがとうございました！」


奏「ふふ…そんなとこまで似てるのね。」


天音「？」


奏「何でもないわ。こっちの話。」


奏「あーあ、子ども達に格好悪いとこ見せちゃったなぁ。まさかあなたに負けちゃうなんてね。」


奏「笑われちゃうかもね…へへ。」


天音「大丈夫ですよ…皆いい子達ですから。」


奏「知ってる。…きっと無邪気に労ってくれるわ。なんたってこの私の可愛い教え子達ですもの。」


天音「ふふ…。」


奏「あなたはもっと上に行きなさいよ？天音先生？」


天音「せ、先生だなんて…。」



天音「……私、勝ちます。」


奏「その意気よ。………じゃあこれ私からのエールって事で。」

１枚のカードを手渡す。


天音「良いんですか？」


奏「私に勝った人に簡単に負けてほしくないもの。半分は自分の為よ。」


天音「じゃあ、もう半分を裏切らないよう…頑張ります！」


奏「ふふ、頑張って。それじゃあね。」


天音「はい！」



逆方向に歩き出す二人。







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竜太「奏先生が……」


初「負けちゃった…」


楯山「……こんなに凄いデュエルは久しぶりだ。」


初「うん。二人とも凄かった！」


竜太「だな。ありゃもうどっちが勝ったっておかしくなかったな。」



楯山「天音さん……あなたという人は…。」






楯山（んもおおお！！ホントにどこまで僕の全身全霊を魅了すれば気が済むんですか！！その強さ気高さ美しさ華麗さ！貴女の全ての一挙手一投足が僕の魂をビンビンと震わせる！！この楯山英雄、今日この一試合だけで愛の質量が二乗に膨れ上がりました！我が愛の名の下に心から勝利を祝福致しますマイスィートアンドロメダ天音さん！！！）


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（ジェネシックスタジアム・客席）


フードに身を包んだアリスとヴァルト


アリス「へぇ意外…あん時の奴等、勝ってるんだ。」


ヴァルト「そのようです。やはりそれなりの実力者…アリス様と闘った少年は、見当たりませんね。」


アリス「あのクソガキならとっくに負けて今頃家でメソメソ泣いてんじゃないｗ？きゃはは！！」


ヴァルト「アリス様…あまり大きな声は…」


アリス「分かってるわよ馬鹿ヴァルト！！」


ヴァルト「…申し訳ありません。出過ぎたことを。」


アリス「ふん！まぁそんな事どうでもいいんだけどね。」


二人の通信機器に反応。



マヘル「各員に通達する。力の値が思いの外高い。予定より時刻を早める。」


マヘル「アリス、ヴァルト…事の実行に備えておけ。ブツは作戦通りの場所にある。」


アリス「へぇ…丁度良いわ。いい加減そろそろ退屈してたところだし。」


ヴァルト「承知しました。」


アリス「で？今すぐやっちゃっていいの？」


マヘル「いや、次の平留の試合で最後のテコ入れをする。それまでは引き続き待機だ。」


ヴァルト「成程…熱狂した観戦客に乗じるわけですね。」


アリス「ったく…みんなあの女嫌い女の何処がいいのやら。」


マヘル「力の増加率と同時にジェネシックの警戒も予想以上に強い。警戒は怠るな。」


アリス「りょーかい」
ヴァルト「はい。」




終











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（次回予告）


夏武斗「やったな天姉！これでみんな一回戦突破だ！」


天音「ふふ、そうですね。でも先は長いですよ。」


夏武斗「よーし次の試合に備えてもう一回デッキを確認しておくぜ！」


天音「今まで戦ってきた人達の思いを背負ってここに居るんですよね…私もしっかり準備します。」


天音「次回！『宿命の再戦！夏武斗ＶＳ光輝』！」


光輝「奏…大駕…。必ず勝利を勝ち取ってくる…見ていてくれ。」
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・なんか３話に跨って長々やっていたけど、実は勝利時の天音ちゃんのライフは１１００ポイントと意外に残ってたりする…。