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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第14話 事件の入口

第14話 事件の入口 作:イベリコ豚丼

「あぁ畜生!!」
あれから柔道部に1週間の停部命令が出された。何とかあの一件のことを考えないようにしようと柄にも無く勉強してみたりしたが、結局長続きせず鉛筆を放り投げたのであった。
「ちっ、もう朝かよ…」
段々と窓から見える景色が明るくなってゆく。
最近ずっとこんな生活が続いている。おかげで宗介との待ち合わせに遅れることが無くなったのだが、代わりに殆ど眠れていない。
「今日でもう5日経つってのに学園は何の動きも見せやがらねぇ…!雅也さんも来てねぇらしいし、さっさと無実を証明してあの下種女を……」

カンコーン!

メール?
こんな早朝に?
訝しみながらも内容を確認する。
「………!!こいつは…!!」
そこには衝撃的な内容が綴られていた。





―――




「武雄君おはよ。……今日も全然寝れて無いみたいだね」
武雄君の顔には黒いクマがしっかりと刻み込まれていた。
「あぁ……」
虚空を見つめ、まったく気持ちの入っていない返事が返って来る。
「根黒先輩の事、気にするのは分かるけどちゃんと寝なきゃだめだよ。これで武雄君が体調崩したら元も子も無いんだから」
「あぁ……」
相当重症の様だ。
多分僕の言葉は1㎜も聞こえていないだろう。
でもそれも仕方のないことだ。
根黒先輩が学園を休み続けているというのは僕の耳にも入っている。大恩ある先輩がそんな状況に置かれているというのは相当のストレスに違いない。
「ほら元気だして。今日の1限目は武雄君の好きな実践デュエルの授業だよ」
「あぁ……」
ん?これは寝不足というより…
「もしかして何かあった?」
「!?」
突然驚いた表情に変わり、こっちを振り向いた。
「初めは何も考えて無いのかと思ったけど、そうじゃなくて何かずっと思い詰めてるみたいだったから…。大丈夫?」
「………っ!何もねぇよ!!」
「あ、ちょっ…!!」
そう言い放ち、一人で足早に去っていってしまった。
「武雄君……」



その後放課後まで武雄君と口を利くことは無かった。
「武雄君一緒に……」
「悪い宗介、今日は一人で帰ってくれ」
「………武雄君はどうするの?」
「俺は……、ちょっと寄りたい所があるんだよ。だから気にせず帰れ」
「じゃあ僕も行く」
「一人になりたい気分なんだ。ほっといてくれ」
「やめてよ」
「え?」
「一人で抱え込むのはもうやめてよ。何かあったんでしょ?」
「だから何もねぇっつってんだろ!」
「嘘だ!!」
「!!」
普段は絶対に出さない大声にクラスの皆がこっちを振り向くけど、そんなことは気にならない。
「何年一緒にいると思ってるの!?それぐらい分かるよ!何か困ったことがあったんならまず僕に相談してよ!」
どんなことがあっても僕のことだけは信用してくれていると思っていた。
なのに、なのに……!
「ちょっと二人共、いったいどうしたのよ!?急に大きな声だして…」
「綾崎、ちょっと黙ってろ」
「なっ……!」
僕等を心配して近寄って来てくれた綾崎さんを武雄君が制した。
「俺はお前を心配してんだよ。事情を話したらお前は絶対に付いて来る。俺の勝手な都合にお前を巻き込む訳にはいかねぇ」
「そんな心配いらない。武雄君が困ってるなら迷惑だと思われても僕は力になる。もしそれで大怪我したって後悔は無い。それが親友ってことでしょ?」
「………!!」
顔が熱い。
もしかしたら泣いてしまっているかもしれない。
「はぁ……。やっぱお前には敵わねぇな…」
諦めた様に天井を仰ぐ。
「分かったよ。ついて来い」
席を立った武雄君に続いて、僕も教室を出た。
「何なのよあの二人…」



時計台の階段を一番下まで下り、そこからさらに梯子を降りた所に小さなスペースがある。ここは学園の生徒が秘密の話をする時によく使われる場所だ。
「これ見てくれ」
手渡されたD-パッドに目を落とす。
「メール?」
「あぁ、今日の朝に届いたんだ。―――雅也さんからな」
「!!」

『今夜12時に武道場に来てくれ。話したいことがある』

今夜12時?
しかも学園の武道場で?
「これ、行く気なの?」
「当然だ。今の状況が変わるかもしれねぇってんなら、どんだけ小さい可能性だろうと俺はやる。それにこれは雅也さん自身からのメールなんだ。行かない選択肢は無ぇだろ」
「………。」
時間や場所の指定が怪し過ぎる。もし本当に根黒先輩からのメールだったとしても、何事も無く終わるということはまず無いだろう。最悪、何か事件に巻き込まれるかもしれない。
(それでも行くって言うんだろうなぁ…)
だったら僕の答えは一つだ。
「じゃあ僕も一緒に行くよ」
「……やっぱり俺の予想通りじゃねぇか」
「あはは、武雄君だって僕の思ってた通り隠し事してたじゃない」
「お互い嘘は付けないって訳か…」
苦笑いを浮かべてそう呟く。

その後、夜の予定を決め、一旦家に帰ろうということになった。
「あ……、僕教室に鞄置いてきたままだ。ちょっと取って来るね」
「宗介」
教室に戻ろうと梯子に足を掛けたところで、声を掛けられる。
「ありがとな」
そう言って武雄君は少し恥ずかしそうに笑った。





「どう?いけそう?」
「よっ……と。よし、開いたぞ」
昼の内に緩めておいた通用口の鍵を開き、校舎の中へと入る。
「まだ12時まで時間あるけど、どうしよっか?」
「見回りを避けて行かなきゃならねぇ分どうしても時間食っちまうからな。さっさと武道場に迎おう」
警備員の持つライトの光を警戒しながら南校舎を進んで行く。
「夜の学園ってやっぱり不気味だよね…」
「まぁ学校っつったら怪談が付き物だしな。もしかしたらネクロフェイスとか出るかもしれねぇぞ?」
「やめてよ変な事言うの。ほんとに出ちゃったらどうするのさ」
「ネクロフェイスなら怖いのは打点アップだけで耐性もねぇしなんとかなんだろ」
「いやいや、デュエルのルールは実際には通用しないでしょ。僕等破壊も除外も出来ないよ?」
「まぁそん時は俺が何とかして…」

ズルッ

「うぉぉい!」
思いっきりずっこけた。
武雄君の巨体も相俟って学園中にその音が響いたんじゃないかというぐらいに。
「大丈夫武雄君!?」
「痛ってぇ!………あん?何だこれ?」
足元を確認すると、何か液体が広がっていた。
「水……?」
「……いや、暗くてよく見えないけど多分これ…」
液体に触れてみると、指先にドロッっとした感触があった。そしてこの独特の匂い。これは……
「血、だと思うよ」
「血……!?何でこんな所に!?」
「それは分かんないけど…。でもこの感じだとそんなに長くは経ってないんじゃないかな…?」
その血は曲がり角の先まで繋がっていた。
「………どうする?」
「……武道場はあっちだ。行くしかねぇだろ」
覚悟を決め、一歩踏み出したその時、
「おいそこで何してんだ!」
突然懐中電灯の光が僕達を照らし出した。
不味い、血に気を取られて警備員の存在まで気が回っていなかった。
「こんな時間に学校にいちゃ………ってあれ?宗介に剛田じゃねぇか。お前ら何でここにいるんだ?」
「鶴岐さん!!」
「鶴岐!!」
振り向くとそこにはよく知った顔があった。
「おいおい、お前らそんな歳でまだ学校探検なんかやってんのか?」
「そんなもんしてねぇよ。ったくビビらせやがって…」
「じゃあ何してんだよ。明日の宿題でも忘れたか?」
「違いますよ。僕等はまあ……色々あって。それより、鶴岐さんこそここで何を?」
「バイトだよバイト。今度から夜警のシフトになったってお前には言ったろ」
そういえばそうだ。
そんなことはすっかり失念していた。
「何でもいいが、さっさと家帰れよ。見付かったのが俺じゃなかったら大目玉だったぞ」
そう言って鶴岐さんはもう一度僕等に懐中電灯を向ける。
だが僕等が照らされたということは、必然的にその先の廊下にも光が当たるということである。
「……何だあれ?もしかして……血か?お前らのどっちかが怪我した、訳じゃねぇよな。あんなの昨日は無かったし…。……何があった?」
当然そうなるだろう。
「僕等にも分かりません。ここに来た時にはもうあんな風になってたんです」
「仕事上確認しない訳には行かないしな…。よし、ちょっと見てくるからお前らはここで待ってろ」
「断る」
「はぁ?」
「俺達はこの先に用があるんだ。ここで立ち止まってる訳にはいかねぇ」
「そうは言ってもだな…」
「武雄君ここは…」
一旦やり過ごした方がいいんじゃないかと提案しようとしたところで、武雄君が自分の腕時計を僕に向ける。デジタル時計の表示は既に11時45分を示していた。いつの間にか随分と時間を食ってしまっていたらしい。
「はぁ……。仕方ない、二人共絶対俺から離れるんじゃねぇぞ」
もう一度、今度は三人で血の先へと踏み出した。

「曲がり角……。何かあるとしたらこの向こうだよなぁ…」
鶴岐さんは一瞬躊躇ったようだったが、思い切って体を90度回転させた。
「………ふぅ、何も無かったか。ビビって損したぜ…」
そう言っておもむろに前へ向けられた懐中電灯が、廊下の先を照らした。
「………!!鶴岐さんあれ…!」
「人……!?おいあんた!大丈夫か!?」
武道場の扉に、見覚えのある人物が肩から大量の血を流してもたれ掛かっている。
「草津………先輩?」
『あらぁ……、多田野くん…じゃなぁい……。こんな…ところで会うなんて……奇遇…ねぇ……』
息も絶え絶えという感じなので、いつもと声が違って聞こえる。
「と、とりあえず警備員さんに…ってそれは鶴岐さんか…!えぇっと……救急車!鶴岐さん救急車お願いします!!」
『それは…ありがたいんだけどぉ……その前に…多田野くん、肩……貸してくれないかしらぁ…?』
「わ、分かりました!」
草津先輩の横に腰を落とす。
『ごめんねぇ……』
僕の胸に草津先輩の手が伸びた。
………胸?
「危ねぇ宗介!!」
いきなり武雄君に襟首を引っ張られた。
「うわっ……!」
バランスを崩してリノリウムの床に尻餅を付く。その僕を目掛けて草津先輩が突っ込んで来た。その手には大きな鋏が握られている。
「おらぁっ!!」
大きく振られた武雄君の腕が横合いから草津先輩の手を弾いた。
『ぐっ……!』
空中へ飛び出した鋏は大きな音を立てて壁際へと転がって行く。
『不意を突いて一撃で決めるつもりだったのに……!殺せなかった殺せなかった殺せなかった!!このままじゃあいつに……!!』
状況がまったく飲み込めない。
草津先輩は僕を殺そうとした?
何で?
『こうなったら…!D-ハッカー、強制デュエルモード!!』

『デュエルモードスタンバイ。プレイヤーは直ちにD-ゲイザーを装着して下さい』

「なっ……!勝手に……!!」
『さっさとデュエルで多田野くんを無力化して仕留めないと…。まだ後二人も残ってるのに……!!』
まだ状況は理解出来ないが、どうやらこのデュエルを受けなければ武雄君と鶴岐さんにも危険が及ぶらしい。だったら断る訳にはいかない。だが、
「痛ぅっ!!」
左手に鋭い痛みが走る。
さっき転んだせいで綾崎さんの時の傷が開いた様だ。
「こんな時にっ…!」

『ガードモード起動。最寄のデュエルに乱入します』

「鶴岐さん!」
「下がってろ宗介。俺がやる」
「でも鶴岐さん、デッキは…」
「護身用に支給されてるのがある。どのみち、その傷じゃお前には無理だ」
「だったら俺が…」
「まだ分かんねぇのか」
「「!?」」
「あいつから感じるこの殺気、知ってるだろ」
「………!」
「こいつは…!」
心の底から絶望感にも似た嫌悪感が込み上げる。
「剛田やお嬢様の時と同じなら、あいつは間違いなくラストモンスターを持ってる」
「ラストモンスター…!」
武雄君と綾崎さんの心を惑わし、その強力な効果により何人もの人を傷付けた恐ろしいモンスター達だ。
「だとしたらお前らには危険過ぎる。ここは俺に任せとけ」
鶴岐さんが僕達を庇う様に一歩前に出た。
『何をごちゃごちゃ言ってるのよぉ!私には時間が無いのぉ!』
「そいつは悪かったな。だが時間の心配をする必要はねぇよ。―――お前は俺に負けるからな」
『!!』

鶴岐さんが目を閉じる。
いつかの武雄君の時と同じで、D-ゲイザーを嵌める様子は無い。

『ARビジョン、リンク完了』

再び開かれた鶴岐さんの眼は―――真っ赤に染まっていた。

「『デュエル!!』」

  ISAMI  LP 4000
  ―――VS―――
  LP 4000  SAKAE


『私のターン!フィールド魔法、パールディン・プール発動!!』

パールディン・プール フィールド魔法

『パールディン・プールは私のフィールドに効果モンスターが存在しない時、通常の召喚に加えて1度だけパールディンモンスターを召喚することが出来るのよぉ。行きなさぁい、パールディン・プリズム!』

パールディン・プリズム ☆4 ATK 1400

『パールディン・プリズムが召喚に成功したことで、デッキからパールディン・ピクシーを手札に加えるわぁ。そして手札に加えたパールディン・ピクシーを通常召喚!!』

パールディン・ピクシー ☆3 ATK 1300

『そしてパールディン・ピクシーの効果により、私はさらにもう一体パールディンモンスターを召喚することが出来る!現れなさぁい、パールディン・パイレーツ!!』

パールディン・パイレーツ ☆4 ATK 1500

「1ターンに3回の通常召喚!?」
「さすがは3年生ってとこか…」
「しかもレベル4のモンスターが2体…!これは…!」

『レベル4のパールディン・パイレーツとパールディン・プリズムでオーバーレイネットワークを構築ぅ!』
2体のモンスターが重なり合い、小さな宇宙を生み出した。
『船灯燃やす魂魄が、人々を光届かぬ水底へと誘う!エクシーズ召喚!絶海の守り人、ピンクパールディン・ポープ!!』

ピンクパールディン・ポープ ★4 ATK 2000 ORU 2

『私はカードを2枚セットしてターンエンド。さぁあれだけの口を叩いたあなたの実力、見せてもらいましょうかぁ!』

「手札を全部使ったといえ、モンスターエクシーズの効果も伏せカードの効果も謎のまま……。こいつを切り抜けるのは相当厳しいぞ……」
「うん……。でも鶴岐さんなら、あの人なら何とかしてくれるはず……!」


「不味いな」


「え?」
「いや、パールディン……つったか?そのテーマ、初めて見るんだよ。特徴も弱点も一切知らない」
「「なっ……!!」」

8年分の無知。
それは鶴岐さんの抱える唯一の弱点だった―――。
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ギガプラント
はいはいポープポープ。
初手三回召喚は強い…!パールディンてこんなに強かったっけ!?
情報が無いのは痛いところ。賢妖精は知っていたようですが今回は初見のご様子。今回こ鶴岐さんはどんな戦いを見せてくれるのでしょうか…! (2016-05-02 20:54)
イベリコ豚丼
このssが一瞬訳の分からない表記になっていたことについて深くお詫び申し上げます。
多少手直しするだけの予定が無駄にペーストしてしまって無茶苦茶なことに…!!
既に修正致しましたのでご安心下さい。


》ギガプラントさん
コメントありがとうございます!
何度か皆さんのオリカを借りてデュエルを構成させていただきましたが、今まで一度もカードパワーが足りないと思ったことはありませんよ~。
どれもこれもOCG化すれば一声轟かせそうな魅力的なカードばかりです(^^) (2016-05-04 00:18)
イベリコ豚丼
フィールド魔法の名前が変更されました。
オリカの方も変更されていますので、よろしくお願いします。 (2016-05-05 20:23)

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