第６０話　悪夢　作：白金　将

～午前　里への道～

ヴェルズ・アザトホース「キシャァァァァ！」
射手（後ろに下がりながら撃たなきゃいけないんだし……）
射手（これは実戦……トーナメントとは全く違うんだし……！）

射手「そいやぁぁぁぁ！」ﾊﾞｽﾝ

ﾋﾞｭｩｩﾝ



ｸﾞｻｯ

アザトホース「ギャァァァァ！」
射手「まずは一本……」

アザトホース「ギシャァァァァ！」ﾄﾞｯﾄﾞｯﾄﾞｯ
射手「……！」
射手（そんな、動きが、早すぎる……！）
アザトホース「シャァァァァ！」ｼｭｯ

射手（やられる……！）



ｶﾞﾝｯ



射手「……」
射手「……？」


女戦士「間に合ったよ、射手ちゃん！」
射手「女戦士さん……どうして！」
女戦士「いいから体勢整えて！」

女戦士「そいやぁぁぁぁ！」ﾌﾞｩｩﾝ

ｶﾞｽﾝ

アザトホース「ギシャァァァァ！」ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ

女戦士「動きが止まってるうちに森の中に！」ﾀｯﾀｯﾀｯ
射手「わ、わかったんだし」ﾀｯﾀｯﾀｯ




～午前　森～
女戦士「撒いたみたいだね」
女戦士「……どうして、一人で出て行ったの？」
射手「それは……」

射手「女戦士さんが戦ったら、死んじゃうんだし」
女戦士「……！」

女戦士「どういうこと？」
射手「古文書にそんなことが書いてあるらしいんだし」ｳﾙｳﾙ
射手「女戦士さんのこともヴェルズのこともみんな書いてて当たってるんだし」
射手「だから……女戦士さんが戦っちゃったら、死んじゃうんだし」ｸﾞｽｸﾞｽ
女戦士「……」

女戦士「ばかっ！」
射手「……！」

女戦士「射手ちゃんが……射手ちゃんがいなくなったら、私はどうしたらいいの？」
女戦士「私が生き延びたとしても、射手ちゃんがいないなんて考えられないよ」
女戦士「里の仲間はみんな家族なんでしょ？　だったら、射手ちゃんも生きなきゃ！」
射手「女戦士さん……」

射手「……ごめんなさい」
射手「女戦士さんの方が合ってるんだし」ｷﾞｭ
女戦士「射手ちゃん……」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

ｶﾞｻｯ

二人「……！」

スカ黄「あ、いた！」
スカ黄「重要報告！」
女戦士「どうしたの、黄色ちゃん？」

スカ黄「ヴェルズが……とうとう里の入り口まで到達しました」
スカ黄「セイクリッドの部隊も到着して、今は乱戦状態です」
女戦士「そんな……」

スカ黄「里に戻っても安全地帯はありません」
スカ黄「一応里の後方に緊急のキャンプは作ったので、自信がない人は下がってください」
スカ黄「これが、女王からの伝言です」
女戦士「……」
射手「……」

ﾎﾟﾀｯ

女戦士「……あ、雨」
射手「よりによって今降って来るんだし……？」
スカ黄「雨、だけじゃないみたいです」

ｺﾞﾛｺﾞﾛ　ﾋﾟｼｬｰﾝ

女戦士「雷……とても荒れそうだね」
射手「辺りも夜みたいに暗くなったんだし」

スカ黄「私は伝令係ですのでずっと走りっぱなしです」
スカ黄「女戦士お姉ちゃん、射手ちゃん……絶対に、生き延びますよ！」
二人「うん！」
スカ黄「それでは」ﾀｯﾀｯﾀｯ



女戦士「一回、里の様子を見に行くよ」
射手「分かったんだし」





～嵐の中　里　市場～
ｷｼｬｰ!　ｺﾞﾛｺﾞﾛ　ｾｲﾔｧ!　ｷﾞｼｬｧｧｧｧ!　ﾋﾟｼｬｰﾝ



女戦士「あっちこっちで戦いが起きてる……」
射手「こっちに一匹向かって来るんだし！」

ヴェルズ・ゴーレム「ギシャァァァァ！」
射手「近づかせないんだし！」ﾊﾞｽﾝ

ﾋﾞｭｩｩﾝ
ﾊﾞｼｯ
ゴーレム「ギシャァァァァ！」

射手「女戦士さんは後ろを頼むんだし」
射手「前から来るのは……全部通さないんだし！」
女戦士「わかったよ！　背中は任せて！」



ゴーレム「ギャァァァァ！」
射手「もう一発！」ﾊﾞｯｽｩｩﾝ


ﾎﾞｽｩ
ゴーレム「ギイイイヤァァァァ！」
射手「キリがないんだし……！」


ｶﾞｽｯ
ゴーレム「ギャッ……」


射手（遠くからの光の一撃……？）



セイクリッド・カウスト「間に合いましたか！」
射手「セイクリッド……？」

カウスト「二人とも、早く後ろに下がってください！」
カウスト「ヴェルズの勢力が徐々に集結しつつあります」
カウスト「トレミスＭ７の起動までまだ時間がかかるので、安全な場所に！」

女戦士「早く行くよ！」
射手「わ、分かったんだし！」




～里　広場～
セイクリッド・ボルクス「ていやぁ！」ｻﾞｸｯ
ヴェルズ・ケルキオン「ギャァァァァ！」ﾊﾞﾀｯ



ヴェルズ・ヘリオロープ「キシャァァァァ！」
格闘戦士「叫び声がやかましいんだよ！」ﾌﾞﾝｯ
ヘリオロープ「ギシャァァァァ！！」ﾌﾞｩﾝ

格闘戦士「緋色の波紋疾走（スカーレットオーバードライブ）！」
ヘリオロープ「ギャァァァァ！」ｽﾞﾎﾞｫ



女戦士「早く、こっちに！」ﾀｯﾀｯ
射手「わかってるんだし」ﾀｯﾀｯ



ｷﾞｼｬｱｱｱｱｧｧｧｧｰｰｰｰ!!!


二人「……！」
女戦士「今の声……」
射手「ヴェルズにしては大きいような……」

女戦士「あ」



ヴェルズ・ウロボロス「ギシャアアアアァァァァーーーー！！！」

二人「……！」
女戦士「早く隠れて！」



女戦士（とりあえず近くの家の屋内に隠れたけど……）
射手（空を大きなヴェルズが飛んでたんだし……）


ﾋﾟｼｬｰﾝ!!!

二人「……！」




ｷﾞｼｬｱｱｧｧ!


女戦士「……」
射手「……」



女戦士「向こうに行ったね」
射手「今のうちに里の後方に避難するんだし」
女戦士「うん、それじゃ、家の外に出て……」

女戦士「あ」



女戦士「里が、燃えてる……」
射手「そんな」
女戦士「さっきのドラゴンみたいなヴェルズが……」

ﾒﾗﾒﾗﾒﾗ……　ﾎﾞｫｫ

射手「ほんとう、なんだし」
女戦士「雨が降ってるのに、全然消えない……」



射手「……」
射手「みんなの、家が」ｶﾞｸｯ
女戦士「……」


女戦士「一回、戻ろう」
射手「……」ｺｸﾘ


ｺﾞﾛｺﾞﾛ　ﾋﾟｼｬｰﾝ


射手「……」
女戦士「ねえ、射手ちゃん」
射手「女戦士さん……？」

女戦士「ちょっと、隣、座っていい？」
射手「も、もちろんなんだし」
女戦士「ありがとう」


射手「……女戦士さん」
女戦士「なあに？」
射手「その」
射手「……ほんとうの、お姉ちゃんに、なってほしいんだし」
女戦士「……！」



女戦士「どうしたら、いい？」
射手「……やり方は私が知ってるんだし」
射手「女戦士さんが、いいって言うなら……」
女戦士「……」


女戦士「私は、どんな時も、射手ちゃんの味方だよ」
女戦士「射手ちゃんのお姉さんに、なってもいいよ」
射手「……分かったんだし」ｽﾁｬ

女戦士「小型ナイフ……？」
射手「ちょっとだけ痛いんだし」

射手「親指の付け根辺りを……」ｽｯ
女戦士「っ……！」
射手「ごめんなんだし」
女戦士「大丈夫……続けて」

射手「そしてこれを私の親指の付け根にも……」ｽｯ
射手「ぐっ……そして」

射手「女戦士さんと、握手をするんだし」
射手「傷口を合わせるように……」ｷﾞｭ
女戦士「うん……」ｷﾞｭ



射手「……」
女戦士「……」


射手「終わり、なんだし」
射手「これで、女戦士さんは、ほんとうのお姉ちゃん……」ｷﾞｭｩ
女戦士「うん……」ｷﾞｭｩ


女戦士「……ありがと」
射手「女戦士さん……」
女戦士「お姉ちゃん、でしょ？」
射手「……っ」///



ｽﾞｺﾞｫｫｫｫﾝ


女戦士「……！」ﾀﾞｯ
射手「今の音は……？」ﾀﾞｯ




女戦士「外にあるこのへこみ……何かが落ちてきた後かな」
射手「空飛ぶヴェルズに何か乗ってたんだし……？」
女戦士「……あっ」

女戦士「射手ちゃん、後ろ……！」ﾀﾞﾀﾞｯ
射手「あっ……」

ヴェルズ・ナイトメア「ギシャアアアアァァァァーーーー！！！」ﾌﾞｩﾝ
射手「いやあっ……！」
女戦士「っ……！」ﾄﾞﾝｯ


ｻﾞｸｯ



射手「……」ﾊﾞﾀｯ
射手「……え」
射手（いたくなかった……？）


ﾎﾟﾀｯ

女戦士「あれ」


ﾎﾟﾀﾎﾟﾀ

女戦士「わたし、なにしてるんだろ」
射手「女戦士さん！」


ﾊﾞﾀｯ


射手「女戦士さん！」


女戦士「射手ちゃん……ごめん」


女戦士「いまのうちに、にげて」
女戦士「」ﾌﾂｯ

射手「あ……」





ｻﾞｰ　　ｺﾞﾛｺﾞﾛ



射手「嫌ああああぁぁぁぁーーーーっ！！！！」