第98話：矛を交える決闘者・3　作：光芒

第98話（番外編第17話）：矛を交える決闘者・3



　迎える第3試合。クジで振り分けられた対戦カードは結衣と美夏だった。1戦目の歩美対ベアトリスは初心者同士のデュエル、2戦目の凛対心のデュエルは6人の中でも特に仲の良い2人による中級者同士のデュエルとするならば、この2人のデュエルはまさにアカデミアの学生のレベルに最も近い、上級者同士のデュエルであると言えた。
　さらにこのデュエルには単に結衣と美夏のデュエル、という以外にも別の意味合いが含まれていた。それは彼女たちの指導者をする2人、結衣の指導者である遊希と美夏の指導者である千夏にあった。
　この2人の指導方針は他の3人と違ってひたすら実戦を繰り返す方式を取るという厳しいものであるのだが、そんな彼女たちについた2人はもっと自分を高めたいという上昇志向の持ち主であったため、遊希と千夏の指導方針は結衣と美夏に意外と合っているといえる。
　指導法が肌が合っていることに加え、気性が合ったということもあって結衣と美夏はそれぞれ遊希と千夏に深い恩義を感じており、それが「自分たちを指導してくれた遊希（千夏）のためにも負けられない」という気持ちに繋がっていた。遊希と千夏が知らないところで、結衣と美夏による代理戦争の意味合いも含んでいたのだ。

「ねえところでさ……」
「……！？ 私は大丈夫ですが、お二人が了解してくれるでしょうか？」

　デュエルの前に美夏が結衣に何やら耳打ちする。結衣は最初はおお、という顔をしたがすぐに不安そうな顔に変わる。2人は何を考えているのだろうか、と思った遊希と千夏の元に結衣と美夏が作り笑いを浮かべながらやってくる。

「あのー、ちょっとあたしの方から提案があるんですけど」
「提案？ 何かしら」
「自分で言うのもなんなんですけど、あたしたちってそれなりにデュエルの経験があるんですよ。4000ライフじゃなくて……8000ライフのデュエルに関しても」

　結衣と美夏の2人の提案は、このデュエルだけでいいのでライフを4000制ではなく8000制でさせてほしい、というものだった。あくまで高みを目指す2人である、4000制のデュエルでは互いに実力を出し切らないうちに終わってしまう可能性もあったのだ。
　しかし、開会式の場で説明を受けたようにここでのデュエルは基本ライフは4000制を取っているため、8000制ライフのデュエルは規則違反と捉えられかねない恐れもあった。

「あっ、でもルール違反なら無理に変えなくてもいいですよ。あたしは決められたルールとかを破る、ってのはそんなに気が乗らないんで」
「……どうでしょうか？」

　最もこの2人のこの申し出はダメ元で行ったものである。しかし、それを決める遊希と千夏の反応は実にあっさりとしたものだった。

「いいんじゃない？ 別に」
「そうよね。バレなきゃオッケーよ！」

　あまりに簡単にGOサインが出たため、結衣と美夏は唖然とする。

「えっ……いやいや、言い出しといてなんなんですけど、そんな簡単に決めちゃっていいんですか？」
「別に。バレたところでちょっと校長先生に怒られる程度よ」
「それはまずいんじゃないんですか？」
「大丈夫よ、最悪綾香あたりに「パパのケチ！ パパ大っ嫌い！」とか言わせれば晴れて無罪放免だから」

　そんなことを平気で言ってのけるあたり、改めて天都 遊希という人間の恐ろしさを知った結衣と美夏であった。そんなことを彼女たちが思っているのを知る由もない遊希と千夏は綾香たちにこのデュエルのみ8000制で行うということを告げる。
　綾香たちも二つ返事で了承したが、そうなると凛たちから不平不満の声も少しは出るだろう、と遊希は思っていた。しかし、彼女たちもむしろそのデュエルには歓迎といったムードであり、自分たちと同世代ながら8000制のライフでデュエルができる結衣と美夏の腕に期待の目線を送るほどだった。

「んー、思っていた以上に大事になりそう」
「ったく……もう少し考えて物を言ってください」
「悪い悪い。でも結衣もそれなりにノリ気だったじゃん？」
「それは……まあ、遊希さんに成長したところを見て貰って……その、褒めてもらいたいから」

　口ごもる結衣を尻目に美夏はデュエルディスクを腕につけてデュエルの準備を始める。美夏はデュエルディスクにセットしてあったデッキを一度外すと、パラパラとデッキの上から数枚のカードをめくった。親友の助言を受けて組んでみた【陽炎獣】デッキはいつも使っているデッキとは戦術から使用感まで何から何まで違うデッキだ。
　最初は新しいデッキにだいぶ戸惑った美夏であったが、今となってはこのデッキも肌に合い始めているし、何より昨日千夏の指導を受けてひたすら実戦を重ねたことで相手のデッキや初動を見た上でどのように動くべきか自然と判断できるようになっていた。

（……頼むよ、あたしのデッキ）
「美夏さん、私は準備できました」
「よし、じゃあそろそろ始めよっか」

　デュエルディスクを起動させ、デュエルモードに移行する。先攻後攻の決定権はコンピューターによって美夏に与えられた。

（海皇水精鱗……注意すべきカードはメガロアビスにディーヴァにネプトアビス……全部が全部対策できるわけはないからある程度割り切って……）
「じゃあ、あたしは先攻を貰うわ」
「わかりました、では私は後攻ですね」

　先攻後攻が決まり、デュエルスペースに向かう2人。しかし、そこに向かうまで何もない場所でつまずいて転びそうになるなど、結衣は目に見えて緊張しているようだった。
　遊希は最初にデュエルした時点で結衣の弱点はデュエルタクティクスではなく、予想外の事態に弱いところにあると指摘していた。メンタル面の弱点はすぐに治るものではないだろう。しかし、完治させることはできなくとも自身の意識次第でそれを抑えることができる。要は心の持ちようなのだ。
　ここは結衣自身で乗り越えなければならない、と思っている遊希であるが、非情になり切れなかった彼女は緊張した面持ちの結衣の下へ向かい、その肩をポンと叩く。

「わっ、びっくりした……どうしたんですか、遊希さん」
「肩に力が入っているわね。リラックスしなさい」
「す、すいません」
「でも緊張することは悪いことじゃない。私だってデュエルの前はいつだって緊張してるわ」
「私とのデュエルの時もですか？」
「ええ。結衣とは昨日10回デュエルしたけど、10回とも緊張してた。でも緊張するってことはそれだけそのデュエルにかける思いが強いってこと」
「思い……」
「まあ、気負いすぎないことね。変に気負うといつも通りの動きができなくなってしまうから」

　それだけ言い残すと遊希は先に待っていた千夏の隣に座る。遊希は相変わらず言葉が足りないようであるが、彼女が何を言いたいのかはおぼろげであるが結衣には伝わった。

（気負いすぎるな……そっか。そうだよね、このデュエルは遊希さんのためにするんじゃない。このデュエルは私のデュエルなんだから）
「結衣、準備はいい？」
「はい、いつでも」
「このデュエルはさ。練習と言えば練習かもしれないけど、あたしはやれるだけのことをするから」
「……私もです。練習とはいえ、負けてあげる道理はありません」
「「デュエル！！」」


美夏　LP8000　手札：5枚
デッキ：35　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：0　除外：0
結衣　LP8000　手札：5枚
デッキ：35　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：0　除外：0


☆TURN01


「あたしのターン。あたしは手札から永続魔法、陽炎柱を発動。これであたしはリリースなしで陽炎獣を召喚できるよ」

　美夏のフィールドには灼熱の火柱が立つ。陽炎獣の力の源となる柱の中では何かモンスターの影のようなものが揺らめいていた。

「じゃあリリースなしであたしは“陽炎獣 ペリュトン”を召喚」


※陽炎獣 ペリュトン
効果モンスター
星6/炎属性/炎族/攻1600/守1700
このカードは「陽炎獣」と名のついたモンスターの効果以外では特殊召喚できない。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手はこのカードをカードの効果の対象にできない。
また、手札の炎属性モンスター1体を墓地へ送り、このカードをリリースして発動できる。
デッキから「陽炎獣」と名のついたモンスター2体を特殊召喚する。「陽炎獣 ペリュトン」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。


「ペリュトン……ということは」
「あたしは手札の陽炎獣 ヒュドラーを墓地に送り、ペリュトンをリリースして効果を発動するよ。デッキから陽炎獣2体を特殊召喚するよ。特殊召喚するのはヒュドラー2体」

　嘶きを上げたペリュトンの身体が灼熱の炎に包まれ、やがて多頭の蛇を模したモンスター2体へと姿を変えていく。オーバーレイユニットを多く持てば持つほど強化される陽炎獣にとって、ペリュトンの効果を発動できるかどうかが生命線となるのだ。

「あたしはレベル6の陽炎獣 ヒュドラー2体でオーバーレイ！ 2体の恐竜族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚！ 太古の恐竜は永き時を経て進化する。炎を纏い竜となりて転生せよ！”ランク6！ エヴォルカイザー・ソルデ！！」
「っ……エヴォルカイザー・ソルデですか」
「オーバーレイユニットになった2体のヒュドラーの効果が発動するよ。墓地の陽炎獣をこのカードのオーバーレイユニットにする」
「だったらその特殊召喚にチェーンして私は手札のドラゴン・アイスの効果を発動します！」


※ドラゴン・アイス
効果モンスター
星5/水属性/ドラゴン族/攻1800/守2200
相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、自分の手札を1枚捨てる事で、このカードを手札または墓地から特殊召喚する。
「ドラゴン・アイス」はフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。


「相手が特殊召喚に成功した時、手札を1枚捨てることでこのカードを手札または墓地から特殊召喚します！ そしてこの効果で捨てる手札はこのカード自身でも構わない。よって捨てたドラゴン・アイス自身を墓地から特殊召喚します」
「実質ノーコストで特殊召喚できるってことかぁ……ヒュドラーの効果であたしの墓地に存在するペリュトンと3枚目のヒュドラーをソルデのオーバーレイユニットにするよ」

　エヴォルカイザー・ソルデはオーバーレイユニットを持っている限り、カードの効果では破壊されず、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで特殊召喚に成功したモンスターを破壊する効果がある。そしてこの効果には1ターン中の発動回数制限がない。
　そのためペリュトンの効果で特殊召喚したヒュドラー2体を素材としてエクシーズ召喚することで、ソルデのオーバーレイユニットは4つまで増やすことができる。特殊召喚を多用する海皇水精鱗にとって効果破壊耐性を持つソルデは天敵の1体である、といってもいいだろう。結衣からしてみれば、早急にソルデの素材を使い切らせてしまいたかった。

「私はドラゴン・アイスの特殊召喚に成功しましたが、ソルデの効果を発動しますか？」
「んー……いや、あたしはソルデの効果は使わないよ。カードを1枚セットしてターンエンドで」


美夏　LP8000　手札：1枚
デッキ：33　モンスター：1（エヴォルカイザー・ソルデ ORU:4）魔法・罠：2（陽炎柱）墓地：0　除外：0
結衣　LP8000　手札：4枚
デッキ：35　モンスター：1（ドラゴン・アイス）魔法・罠：0　墓地：0　除外：0


☆TURN02


「私のターンです、ドロー！」

　結衣のデッキは弾が揃えば物凄い爆発力を誇る。しかし、その弾を打ち出す銃口がソルデによって塞がれてしまっている以上、ディスアドバンテージになろうともまずはソルデを退かさなければならなかった。

（肉を切らせて骨を断つ、とはよく言いますが……仕方ないですね）
「私は深海のディーヴァを召喚！ そしてディーヴァの効果でデッキから海皇子ネプトアビスを特殊召喚します！」
「ソルデの効果を発動。オーバーレイユニットを1つ取り除いて特殊召喚したネプトアビスを破壊するよ！」

　深海のディーヴァからの海皇子ネプトアビス特殊召喚、の流れは海皇水精鱗の必殺コンボの1つである。これが決まれば妨害が入らない限り相手ライフを瞬く間に0にすることが可能であり、深海のディーヴァが制限カードとなった理由の1つである。
　当然そのコンボの強力さは美夏も熟知しているため、ネプトアビスの効果を発動されないためにソルデの効果でネプトアビスを破壊する。それでも結衣のフィールドにはチューナーである深海のディーヴァが残っている。

「私はレベル5のドラゴン・アイスにレベル2の深海のディーヴァをチューニング！ “打ち棄てられし鉄魂に命宿りし時、純粋なる悪魔が目覚める！” シンクロ召喚！ 起動せよ！ “スクラップ・デス・デーモン”！」


※スクラップ・デス・デーモン
シンクロモンスター
星7/地属性/悪魔族/攻2700/守1800
チューナー＋チューナー以外のモンスター1体以上


「攻撃力でソルデを上回ってきたか……」
「ソルデは効果破壊耐性こそありますが、戦闘破壊耐性はありませんからね。さあ、どうします？」

　不敵な笑みを浮かべる結衣。昨日までの彼女だったら先攻でオーバーレイユニット4つのソルデを出されていた時点で取り乱してしまっていただろう。しかし、今この瞬間の彼女はシンクロ召喚したこのモンスターを出汁にして美夏と駆け引きができるくらいまで成長していた。それも遊希の指導の賜物といえた。

「どうするも何も……当然ソルデの効果を使わせてもらうよ。スクラップ・デス・デーモンを破壊！」

　ソルデの放った炎で焼き払われ、再度元の鉄くずへと戻るスクラップ・デス・デーモン。結局このターン結衣は4体のモンスターを消費するも、ソルデを攻略するには至らなかった。それでもソルデのオーバーレイユニットを2つも使わせられた、というだけで十分だった。

「……私はカードを2枚セットしてターンエンドです」


美夏　LP8000　手札：1枚
デッキ：33　モンスター：1（エヴォルカイザー・ソルデ ORU:2）魔法・罠：2（陽炎柱）墓地：2　除外：0
結衣　LP8000　手札：1枚
デッキ：33　モンスター：0　魔法・罠：2　墓地：5　除外：0


☆TURN03


「あたしのターン、ドロー！ あたしは手札からフレムベル・ヘルドッグを召喚。そしてバトルフェイズに移行するよ。エヴォルカイザー・ソルデでダイレクトアタック！“エヴォルカイザー・ブレイズ”！」

エヴォルカイザー・ソルデ ATK2600

「この瞬間、リバースカードを発動します！ 永続罠、アビスフィアー！ デッキから「水精鱗」1体を特殊召喚します！ 特殊召喚するのは“水精鱗-アビスリンデ”です！」


※水精鱗-アビスリンデ
効果モンスター
星3/水属性/水族/攻1500/守1200
フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られた場合、デッキから「水精鱗-アビスリンデ」以外の「水精鱗」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。
「水精鱗-アビスリンデ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。


「ソルデの特殊召喚したモンスターを破壊する効果はバトルフェイズには発動できないんだよね。まあどっちにしてもアビスリンデを破壊したところで効果を使われちゃうんだけど……」

　この時、美夏はソルデでの攻撃を中止した。ソルデでアビスリンデを破壊してもいいのだが、仮にアビスリンデの効果でフレムベル・ヘルドッグで破壊できないモンスターを特殊召喚された場合、フレムベル・ヘルドッグの効果で後続を呼べなくなってしまうのだ。

「ソルデの攻撃を中止。フレムベル・ヘルドッグでアビスリンデに変更して攻撃するよ」

フレムベル・ヘルドッグ ATK1900 VS 水精鱗-アビスリンデ DEF1200

「破壊され墓地に送られたアビスリンデの効果が発動します！」
「それにチェーンしてあたしのフレムベル・ヘルドッグの効果も発動するよ。特殊召喚するのは守備力200の陽炎獣 サーベラスだよ」
「ならば私はデッキから“水精鱗-リードアビス”を特殊召喚します！」


※水精鱗-リードアビス
効果モンスター
星7/水属性/海竜族/攻2700/守1000
自分のメインフェイズ時、手札からこのカード以外の水属性モンスター3体を墓地へ捨てて発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚に成功した時、自分の墓地から「アビス」と名のついた魔法・罠カード1枚を選択して手札に加える事ができる。
また、このカード以外の自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する「水精鱗」と名のついたモンスター1体をリリースする事で、相手の手札をランダムに1枚墓地へ送る。
「水精鱗-リードアビス」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。


　リードアビスは攻撃力こそ水精鱗の中で最も高いが、普通に特殊召喚するには3体のモンスターが必要になるため、あまりデッキに採用されることはない。そう踏んでいた美夏はリードアビスの姿を見て面喰らう。

「うわっ、また超えられた……しょうがない、バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2に移る。んー……じゃあリバースカードを発動するよ」
「このタイミングでリバースカードですか？」
「っ、もっと早く発動すればよかったかも。ミスったなぁ……永続罠“陽炎光輪（ヘイズ・グローリー）”」


※陽炎光輪（ヘイズ・グローリー）
永続罠
このカードがフィールド上に存在する限り、自分は「陽炎獣」と名のついたモンスターを召喚する場合に必要なリリースを1体少なくする事ができる。
また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送る事で、自分の墓地から「陽炎光輪」以外の「ヘイズ」と名のついたカード1枚を選択して手札に加える。


「表側表示で存在するフィールドに存在するこのカードを墓地に送ることで、自分の墓地から「陽炎光輪」以外の「ヘイズ」1枚をサルベージ。手札に戻すのは前のターンにオーバーレイユニットとして墓地に送ったペリュトンかな。これでターンエンド」


美夏　LP8000　手札：2枚
デッキ：31　モンスター：3（エヴォルカイザー・ソルデ ORU:2、陽炎獣 サーベラス、フレムベル・ヘルドッグ）魔法・罠：1（陽炎柱）墓地：2　除外：0
結衣　LP8000　手札：1枚
デッキ：31　モンスター：1（水精鱗-リードアビス）魔法・罠：1　墓地：7　除外：0


「あうう……結衣おねえちゃんと美夏おねえちゃんのデュエルがはやくてよくわからない……」

　未だに両デュエリストともダメージを与えられていないなど、8000ライフというのも相まって長期戦の様相を呈してきたこのデュエル。しかし、実際に戦いに臨んでいる2人と違ってそれを見る歩美たちはそのレベルの高さに言葉を失っていた。
　刀を持った侍が丁々発止、激しい鍔競り合いをしているかの如く、一進一退のデュエル。対峙する2人の空気は下手すればアカデミアの学生にも引けを取らないほどの迫力を醸し出していた。

「それだけ両者の実力が高いということなのですね。途中参加ですが、このイベントに参加できて私改めて嬉しいと思います」
「ねえ心ちゃん、このデュエルどっちが勝つと思う？」
「……どっちが勝つかなんて私にはわからないけど……でも、私たちはこのデュエルを最後まで見届けないといけない気がする。それが私たちの成長にも繋がる気がするから」