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HOME > 遊戯王SS一覧 > side京子:守り抜くために

side京子:守り抜くために 作:名無しのゴーレム





「!?」



……なんだろう。今、すごく嫌な感じがしたけど……



「……こ、京子!! ボーッとするな、デュエルに集中しろ!!」
「……あ、ごめん郁哉! 大丈夫、大丈夫だから……」



……そうだ、今は余計なことを考えている場合じゃない。月詠や風音さんも他のところで頑張ってるんだ、なら私だって……!



「私のターン、ドロー!」






「……トドメだ! 行け、ハンニバル!」
「「「うわぁぁぁぁ!!!」」」



「……ハァ、ハァ……」
「郁哉、大丈夫……」
「グハァ!?」



ビチャリ、と嫌な音が聞こえた。その音を発した、郁哉を見ると……



「い、郁哉、それ……!!」
「…………問題、ない……次だ、まだ、アカデミアが向こうに……」
「駄目だよ!! だって郁哉、血が出てるんだよ!? そんな状態でデュエルなんかしたら……」



……どうしても、『彼女』のことを思い出してしまう。全身ボロボロで、それなのにデュエルを続けた結果、血に塗れながら倒れた彼女を……



「やるしか、ないんだろうが……! ここを突破されたらどれだけの被害が出ると思う!」
「でも……でも!!」
「話している暇はない、行くぞ……っ!?」
「郁哉!? ほら、やっぱり身体が……」
「だい、じょうぶだ……」
「……全く、それの何が大丈夫なんだか。京子ちゃん、そいつは任せたよ」
「え……? 敦人さん!」
「お前……余計な、お世話だ……!」
「……なら、こちらに向かって来てるアカデミアの迎撃に回ってもらおうか。さあ、さっさと立てよ」
「ちょっと、敦人さん!? 郁哉が闘えないの、敦人さんだって分かってるよね!!」
「黙ってろ、京子……ううっ……グッ!?」



なんとか立ち上がろうとした郁哉は、けれどその途中で倒れてしまった。



「郁哉!!」
「それ見ろ。『禁断融合』は人の手に余るカードだ……しばらく休んでな。残りは僕が倒して来るからさ」
「……そう言うお前だって、とっくの昔に限界が来てるんだろ?」
「……何のことかな?」
「しらばっくれても無駄だ。……さっきから、神のカードをほとんど使っていないだろう。そのせいで、アカデミアの奴らにも苦戦して……」
「そうなの、敦人さん!?」
「……ハァ、まいったね。そんなところだけ鋭いなんて、僕にとっては嫌がらせ以外の何物でもないよ……まあ、郁哉に比べればまだまだ闘えるさ。ほら、敵さんも待ってはくれないようだし……」



……敦人さんの言う通り、すぐそこまでアカデミアが迫って来ていた。



「それじゃあ行ってくる。……郁哉、無茶するなよ」



そう言い残して、敦人さんはアカデミアの軍勢に向かっていった……私はひとまず、郁哉を身を隠せる場所まで連れて行った。



「ねえ郁哉。なんで敦人さんって、郁哉のことを気にかけるんだろうね……」
「……分からない。でも、あいつが俺に何かを隠しているのは間違いないんだ。もしかすれば、それが関係しているのかもしれないが……」
「……私ね、敦人さんが悪い人って言われても、いまいちそうは思えないんだ」
「それは、京子があいつのしてきたことを見ていないからだ。あいつは神のカードを使って、多くの人を……」
「……そうかもしれないけどさ。けどね、ここに来る途中に敦人さんが私に聞いてきたんだ。『知らない方がいいこともあるとは思わないか』って……たぶん、郁哉が聞こうとしてることが敦人さんにとって『知らない方がいいこと』なんじゃないかなって。敦人さん、本当に郁哉のことを考えてるんだと思う。そんな人が悪い人だなんて……」
「…………」



郁哉は黙り込んでしまった。……たぶん、郁哉も薄々は勘付いていたのだろう。敦人さんの、郁哉に対する思いを……



「ねえ、郁哉……」
「静かにしろ。……おい、誰か近付いてきてないか?」
「え?」



まだ動けない郁哉に代わって、おそるおそる周辺の様子を窺ってみると……!



「……本当だ。しかもあれ、一人二人じゃないよね……」
「あいつ、まさか……!」
「敦人さんが、やられたの……!?」
「まだ分からない、だが……グ、グァあ……!!」
「郁哉!? 駄目だよ、無理に動いたりしたゃ!!」
「なら、このまま奴らが進むのを黙って見てるのか? ……行くぞ。あいつが無事なのかを確認するためにも、ここで闘わなくちゃいけないんだ……!」
「……分かった。でも、絶対に無茶しないでね!」
「……努力する」






「数は……多いな」
「どうしよう……?」
「……あれくらいの人数なら、やり方次第で何とかなる。アクションフィールド、クロス・オーバー発動!」



デュエルディスクの起動と同時に、周囲にアクションカードが散らばった。



「……元々、アクションデュエルはアカデミアに対抗するために赤馬 零児がランサーズ全員のデュエルディスクに組み込んだものだ。アクションカードを活かせば、俺たちにも勝機はある……準備はいいか?」
「……うん、いつでも!」
「よし。……始めるぞ!」



「……居たぞ! 敵襲だ!」
「遅い!」


郁哉 LP4000
京子 LP4000
アカデミア×6 LP4000


「俺の……ターンッ!!」








デュエルは終始、郁哉がアカデミアを圧倒し続けていた。そう、その時までは……



「お、れのターン……ガッ、ハァ!?」



自分のターンを始めようとした郁哉が、カードをドローする前にその場に倒れ伏してしまった。



「郁哉!! ……お願い郁哉、返事して!!」
「…………」
「……なんだ? 急に倒れやがった……」
「ハッ、なんだっていいじゃねえか。男の方が闘えなきゃ俺たちが負ける道理はないんだからな!」
「そうだ。あとは女を始末すれば、霧生様の命令はほとんど達成されたも同然……ハハハ!!」
「ぁ…………!!」



……どうしよう、どうしよう、どうしよう。まだアカデミアは4人もいる。それを、私1人で……?



「………ょう、こ……」
「!! 郁哉、大丈夫!?」
「……に、げろ……おれを、おいて……」
「そ、そんなの……出来るわけないでしょ!!」
「いうこと、を、きいてくれよ……おれは、おまえを…………」
「……郁哉、郁哉ぁ!!」



いくら呼び掛けても、郁哉は一向に反応を示さない。



(嫌だ、嫌だよ……!)



「郁哉!! 郁哉!!」
「……心配する必要はないぞ? お前らは今からカードになるんだ。そうなりゃ何の問題もない……ハッハッハ!!」
「!! ……させない。郁哉は、私が守る!!」
「おいおい、状況が分からないのか? 数も実力も、何もお前が勝っている場所なんてないんだぞ? 続けるだけ無駄だ、早く楽になっちまえよ」
「っ…………」



……確かに、状況は絶望的だ。ここからの逆転なんて、奇跡でも起きない限りは……



(……あれ、待って? …………そうだ。ある。私が勝つための、逆転への道が……!!)



もちろん、上手くいくとは限らない。それどころか、失敗したら……



「郁哉、ごめんね……それと、ありがとう。郁哉のおかげで、なんとかなるかもしれないから……」



……迷っている暇なんてない。もう一秒たりとも無駄には出来ない。全神経を集中させて、『あれ』を探すしか……!!


京子 LP2900 モンスターゾーン 剣闘獣ホプロムス(表側守備表示) 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
アカデミアA LP1800 モンスターゾーン 古代の機械参頭猟犬
アカデミアB LP2300 モンスターゾーン 古代の機械双頭猟犬 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
アカデミアC LP2100 モンスターゾーン 古代の機械究極猟犬
アカデミアD LP2600


「……私のターン、ドロー!! ……行くよ! スケール1のPSレッド・デビルとスケール7のPSレッド・エンジェルでペンデュラムスケールをセッティング!」



これは私たちがシンクロ次元に来る前に郁哉にもらったカード。バトルロイヤルには参加出来なかったけど、遊矢君や美愛のデュエルを見てやり方は覚えてる。このカードを使って、私は……!



「これでレベル2から6までのモンスターが同時に召喚可能! 未来を切り拓くために、その力を貸して! ペンデュラム召喚! 行っけー! 剣闘獣ラクエル、剣闘獣アンダル!」
「同時に2体のモンスターを召喚しただと!?」
「狼狽えるな! あんな弱小モンスター、いくら並べたところで……」
「まだまだぁ!! ホプロムス、ラクエル、アンダルをデッキに戻して、この3体を融合する! 最強の剣闘獣よ、その無双の力を世に示せ! 融合召喚! 行っけー!! 剣闘獣ヘラクレイノス!」
「融合召喚まで……!?」
「……古代の機械双頭猟犬の効果発動! ヘラクレイノスにギア・アシッドカウンターを……」
「リバーズカードオープン! カウンター罠、剣闘獣の戦車! 古代の機械双頭猟犬のモンスター効果の発動を無効にして、破壊する!」
「なんだとぉっ!?」
「さらにレッド・デビルのペンデュラム効果発動! ヘラクレイノスの攻撃力を300アップする!」

剣闘獣ヘラクレイノス 攻撃力3000→3300

「バトル! ヘラクレイノスでダイレクトアタック!」

アカデミアD LP2600→0

「よし、まずは1人……! 私はこれでターンエンド!」


京子 LP2900 ペンデュラムゾーン PSレッド・デビル、PSレッド・エンジェル モンスターゾーン 剣闘獣ヘラクレイノス
アカデミアA LP1800 モンスターゾーン 古代の機械参頭猟犬
アカデミアB LP2300 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
アカデミアC LP2100 モンスターゾーン 古代の機械究極猟犬


「クッ……俺のターン、ドロー! 」



向こうの言葉を聞くこともなく走り出す。どこ、どこにあるの……!!



「手札から装備魔法、古代の機械殲滅砲を古代の機械参頭猟犬に装備! これで……」
「この瞬間、ヘラクレイノスの効果発動! 手札を1枚捨てて、相手の魔法・罠カードの発動を無効にして破壊する!」
「……何? お前の手札は0枚、それではヘラクレイノスの効果は……」
「手札なら……ここにあるよ!」



ようやく見つけた『それ』を……アクションカードを掴んだ。



「なっ……!?」
「今手札に加えたアクションカード、回避を捨てる。これでその装備魔法の発動は無効になる!」



相手が驚いている、その間にも次のアクションカードを探さないといけない。何が致命傷になるか分からない以上、向こうが発動したカードはすべてカウンターしないと……!



「……古代の機械参頭猟犬を守備表示に変更、カードを1枚セットしてターンエンドだ」


京子 LP2900 ペンデュラムゾーン PSレッド・デビル、PSレッド・エンジェル モンスターゾーン 剣闘獣ヘラクレイノス
アカデミアA LP1800 モンスターゾーン 古代の機械参頭猟犬(表側守備表示) 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
アカデミアB LP2300 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
アカデミアC LP2100 モンスターゾーン 古代の機械究極猟犬


「俺のターン、ドロー。……リバースカードオープン! 永続罠、古代の機械増幅器!」
「ヘラクレイノスの効果発動! ……よし! アクションカードを捨てて、そのカードの発動を無効にする!」
「……ハハハ! やはりそうか! おい、こいつは俺たちが発動したカードを全部無効にするつもりだぞ! ロクにカード効果も見ちゃいない! 何でもいい、カードを発動させまくってやれ!」
「!?」



マズい、このままじゃあ!?



「……なるほど、そういうことか。なら俺も、リバースカードオープン! 永続罠、古代の機械閃光弾!」



っ……あれはブラフかもしれない、けど……



「通さない、よ! ヘラクレイノスの効果発動! アクションカードを捨てる!」
「な、俺の言った通りだろ?」
「……ハッハッハ、そうだな! この調子なら、もう少ししたらあいつの体力も限界が来るはずだ! 俺たちはそれまでじっくり待てばいい!」
「さらに手札から装備魔法、再融合を発動! ライフを800払い、墓地の古代の機械双頭猟犬を特殊召喚する!」

アカデミアB LP2300→1500

「まだ、まだぁ!!」



次のアクションカードはもう見えている。しかし、それがある場所は……



「諦めて……たまるかぁ!!」



空中に作られた足場を飛び降り、地上へと……



「痛っ!? ……とっ、たぁ!! ヘラクレイノスの効果発動! アクションカードを捨てる!」



これは、キツいかも……着地するときに足に痛みが走った。……もしかしたら、足を捻っちゃったか……?



「……でも、止まるわけには、いかないんだ……!!」
「チッ、粘りやがるな……モンスターをセットしてターンエンド」


京子 LP2900 ペンデュラムゾーン PSレッド・デビル、PSレッド・エンジェル モンスターゾーン 剣闘獣ヘラクレイノス
アカデミアA LP1800 モンスターゾーン 古代の機械参頭猟犬(表側守備表示)
アカデミアB LP1500 モンスターゾーン 伏せモンスター1体
アカデミアC LP2100 モンスターゾーン 古代の機械究極猟犬


「俺のターン、ドロー」



……早く、次のアクションカードを……!



「……装備魔法、古代の機械戦車を古代の機械究極猟犬に装備。どうだ、カウンターするか?」
「あたり、前でしょ……!!」



右足が動かない。左足も変な感じがする。それでも、それでも……!!



「アクション、カードは……っ!?」
「……もう立つことも出来ないか。ならばこのまま続行させてもらうぞ。古代の機械戦車を装備したことにより、古代の機械究極猟犬の攻撃力は600アップ!」

古代の機械究極猟犬 攻撃力2800→3400

「そ、そんな……」
「バトル! 古代の機械究極猟犬で剣闘獣ヘラクレイノスを攻撃!」
「っ、きゃあぁぁぁ!!」

京子 LP2900→2800

「ヘラクレイノスが……」
「これでお前のフィールドにモンスターはなくなった。手札もない以上ペンデュラム召喚とやらも脅威にはならない……終わりだな」
「……いや、だ……! 私は、あの子を……美愛を助けなきゃ……」
「……フン、俺はこれでターンエンド。最後にどこまで足掻くか、この目で見届けてやるさ」


京子 LP2800 ペンデュラムゾーン PSレッド・デビル、PSレッド・エンジェル
アカデミアA LP1800 モンスターゾーン 古代の機械参頭猟犬(表側守備表示)
アカデミアB LP1500 モンスターゾーン 伏せモンスター1体
アカデミアC LP2100 モンスターゾーン 古代の機械究極猟犬 魔法・罠ゾーン 古代の機械戦車(古代の機械究極猟犬装備)


「私のターン、ドロー……」



……駄目だ。このカードじゃ、あいつらには……



「……ごめん、みんな……私、ここまでみたい……」



……お父さん、お母さん。智に幹治、みんな……



「もう一度、会いたかったなぁ……」





















「大丈夫だ。お前は、お前たちは……俺が守る」
「ぇ……?」



……嘘、この声って、まさか……!!



「お、兄さん……!?」
「京子、ここまでよくやった。……あとは俺に任せて、ここで休んでろ」
「ぁ……うん、ありがと……」
「貴様、何者だ!!」
「……俺はこいつらの先生で、そして……仲間だ。時間が惜しい、さっさと終わらせるぞ」
「……ハァ? お前、状況が分かんねえのか? さっさと終わらせるのは俺たちの方だ、おら、乱入するんならとっととターンを始めやがれ!」
「お兄さん、気を付けて……」
「心配すんな。……久し振りに先生っぽいところを見せてやるよ」
「……アハハ、そんなの今まで見せたことあったっけ?」
「ぐむっ……じゃあ初めて先生っぽいことしてやるよ!」





まあ、今のは冗談だけどね。……お兄さん、頑張ってね……!




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ター坊
やっと、やっと…主人公登場!!ボロボロの仲間を助ける様はまさに王子様か勇者。さぁ新しい機密兵器の力を見せられるか? (2016-03-26 21:10)
名無しのゴーレム
ター坊さん、コメントありがとうございます。
ヒ、ヒーローは遅れてやってくるんですよ……とりあえずここからは主人公力全開でいきます。完成版機密兵器の威力、とくとご覧あれ! なんか調子が上がってきたので更新ペースももう少し上がるかも。 (2016-03-26 22:49)

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