side涼花：交わる光と闇　作：名無しのゴーレム

「……バトル！ 銀河眼の時空竜で古代の機械双頭猟犬を攻撃！」



アカデミア生徒 LP1600→0




「……ハァ、ハァ……」




これで、五人目……ようやく周りにアカデミアの姿は見えなくなった。



（恭治は避難を進められているでしょうか……？）



「おーい、涼花ちゃん！」
「……あなたは、コンさん？」
「恭治に頼まれて来たんだ！ いいか、今俺たちは……」




「…………ここで、アカデミアを迎え撃つと？」
「そうだ。恭治は向こうの方に行った……どうやら、あいつの妹がここにいるらしい」
「ぇ……風音さんが！？」



……風音さんは京子と共に行動していたはず。ということは、まさか……！？



「……ありがとうございます。私は今からそちらに向かいます。私の知り合いが、いるかもしれませんから……」
「悪いが、俺はこれ以上持ち場を離れられない。サポートは出来ないが……涼花ちゃん、気を付けろよ」
「はい。コンさんも、気を付けて……」




コンさんと別れて、アカデミアが侵入してきている方面へ……即ち最前線へ向かう。戦えない人たちはすでに地下への避難を済ませているらしいが、数少ないレジスタンスのメンバーは地上に残りアカデミアと対峙している……他の次元から来たという助っ人とともに。



（コンさんの話によれば、『助っ人』は五人組。そのうち二人は風音さんと京子だとして、残りは……？）



そもそも、あの二人は次元転移の手段を有してはいないはず。おそらくは、残りの三人のうちの誰かが……



「……もうそろそろ、ですね」



……考えるのはあとだ。今は、アカデミアの撃退に集中しないと……！



「……私の、ターン！」







「……く、ううっ……！」
「ハァ、ハァ……まさか、たった1人のガキにここまでやられるとはな」
「だが、それもここまでだ。この状況は、どうやっても覆すことは出来ない！」



……出来る限り一対一になるように策を尽くしてきたけれど、ついに囲まれてしまった……四対一、か。



（仕方、ないですか……）



「お願い、No.……」
「お嬢様ぁ！！」



！！ そんな……



「シ、シルビア！？ なんでここに！」
「……増援か？」
「ハッ、1人増えたくらいで何が変わる。まとめてカードにしてやる！」
「させません！ お嬢様は……私が守ります！」



……なんてこと。今ここでNo.の力を使って離脱すれば、シルビアが……！



「……参ります。私のターン、ドロー！」


涼花 LP800
シルビア LP4000
アカデミア生徒A LP1300 モンスターゾーン古代の機械究極猟犬
アカデミア生徒B LP2100 モンスターゾーン古代の機械双頭猟犬 魔法・罠ゾーン融合塹壕––フュージョン・トレンチ
アカデミア生徒C LP2500
アカデミア生徒D LP4000


「マシュマロンを召喚！ さらに永続魔法、マシュマロンのメガネを発動！ これであなたたちは、マシュマロン以外を攻撃出来ません！」
「……ハハハ、お前は馬鹿なのか！ そんな弱小モンスターを、わざわざ自分からサンドバッグにするとはなぁ！」
「……何とでも言いなさい。主人のためにその身を尽くすのがメイド、ならば我が身を犠牲にしてでも……お嬢様は守り抜いてみせましょう！」
「シルビア！ 駄目です、それじゃあシルビアが……」
「カードを3枚伏せて、ターンエンド。……さあ、かかってきなさい！」


涼花 LP800
シルビア LP4000 モンスターゾーンマシュマロン 魔法・罠ゾーンマシュマロンのメガネ 伏せカード3枚
アカデミア生徒A LP1300 モンスターゾーン古代の機械究極猟犬
アカデミア生徒B LP2100 モンスターゾーン古代の機械双頭猟犬 魔法・罠ゾーン融合塹壕––フュージョン・トレンチ
アカデミア生徒C LP2500
アカデミア生徒D LP4000


「俺のターン、ドロー！ バトル、古代の機械究極猟犬で……」
「リバースカードオープン！ 永続罠、スピリット・バリア！私のフィールドにモンスターが存在する限り、私が受ける戦闘ダメージは0になります！」
「っ……！ ターン、エンドだ」


涼花 LP800
シルビア LP4000 モンスターゾーンマシュマロン 魔法・罠ゾーンマシュマロンのメガネ、スピリット・バリア 伏せカード2枚
アカデミア生徒A LP1300 モンスターゾーン古代の機械究極猟犬
アカデミア生徒B LP2100 モンスターゾーン古代の機械双頭猟犬 魔法・罠ゾーン融合塹壕––フュージョン・トレンチ
アカデミア生徒C LP2500
アカデミア生徒D LP4000


「俺のターン、ドロー……カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」


涼花 LP800
シルビア LP4000 モンスターゾーンマシュマロン 魔法・罠ゾーンマシュマロンのメガネ、スピリット・バリア 伏せカード2枚
アカデミア生徒A LP1300 モンスターゾーン古代の機械究極猟犬
アカデミア生徒B LP2100 モンスターゾーン古代の機械双頭猟犬 魔法・罠ゾーン融合塹壕––フュージョン・トレンチ 伏せカード1枚
アカデミア生徒C LP2500
アカデミア生徒D LP4000


すごい……2人の攻撃を凌ぎ切った。



「……手こずらせやがって。だが、それもこのターンで終わりだ。リバースカードオープン！ 永続罠、融合蹂躙––フュージョン・トランプル発動！ これで融合モンスターをコントロールしていないプレイヤーは罠カードを発動出来ず、すべてのプレイヤーが融合召喚を行ったとき、そのプレイヤーはフィールドの魔法・罠カード1枚を破壊出来る！」
「！？」
「よくやった！ 俺は手札から通常魔法、融合発動！ 手札の古代の機械猟犬3体を融合する。融合召喚！ 来い、古代の機械参頭猟犬！ フュージョン・トランプルの効果でスピリット・バリアを破壊！ ……参頭猟犬は1ターンに3度、モンスターに攻撃出来る！ これで終わりだぁ！」
「くっ……リバースカードオープン！ 速攻魔法、収縮！ 参頭猟犬の攻撃力を半分にします！」


古代の機械参頭猟犬 攻撃力1800→900


「……バトル。参頭猟犬でマシュマロンを攻撃！」


シルビア LP4000→3400→2800→2200


「う、ううっ……」
「シルビア！」
「ターンエンドだ。……おい、次のお前のターンできちんと終わらせろよ」
「分かったよ。……だが、フュージョン・トランプルでマシュマロンのメガネを破壊すればあのガキも攻撃出来る。さあて、どっちから葬ってやろうかな？」
「っ！？ お嬢様に……手を出すな！」
「……そうかそうか、ならお前からだな。安心しろ、すぐに2人とも同じところに送ってやるからなぁ！ 俺の……」






「私のターン、ドロー。手札から通常魔法、影依融合を発動します」
「「「！？」」」



まさか、また誰かが乱入……？ いや、でも……



「……お、お前は……天宮 月詠！？」
「……影依融合を用いて融合する際、相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する場合、デッキのモンスターを融合することが出来ます。デッキのシャドール・ハウンドとシャドール・ヘッジホッグを融合。影に呑まれし風の巫女よ、今こそ次元の狭間より現出せよ！ 融合召喚、エルシャドール・ミドラーシュ！」



……あのカード、間違いない。彼女は、スタンダードで私が闘った……



「……フュージョン・トランプルの効果発動。マシュマロンのメガネを破壊します。さらにシャドール・ハウンドの効果でマシュマロンの表示形式を変更。そしてシャドール・ヘッジホッグの効果でデッキからシャドール・ドラゴンを手札に加えます」



……彼女は、一体……？



「フュージョン・トレンチが存在するとき、融合モンスターは直接攻撃出来る……バトル。ミドラーシュでダイレクトアタック！」
「なっ……！？」


アカデミア生徒A LP1300→0


「……う、裏切り者、め……」
「……装備魔法、魂写しの同化をミドラーシュに装備。魂写しの同化を墓地に送ることで、装備モンスターを任意の属性のモンスターとして扱い融合召喚を行います。エルシャドール・ミドラーシュと手札のシャドール・ドラゴンを融合。天に縛られし影の人形よ、今こそ次元の狭間より現出せよ！ 融合召喚、エルシャドール・シェキナーガ！」



融合モンスターを、さらに融合した……



「フュージョン・トランプルの効果でフュージョン・トレンチを破壊します。さらにシャドール・ドラゴンの効果でフュージョン・トランプルを破壊。ミドラーシュの効果で墓地の影依融合を手札に加えます。カードを1枚伏せて、ターンエンド」


涼花 LP800
シルビア LP2200モンスターゾーンマシュマロン 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
アカデミア生徒B LP2100 モンスターゾーン古代の機械双頭猟犬
アカデミア生徒C LP2500 モンスターゾーン 古代の機械参頭猟犬
月詠 LP4000 モンスターゾーンエルシャドール・シェキナーガ 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
アカデミア生徒D LP4000


「っ……俺のターン、ドロー！ 手札から通常魔法、古代の機械共鳴融合を発動！ 相手の墓地に存在するモンスターを融合素材として、古代の機械融合モンスターを融合召喚できる！ 来い、古代の機械参頭猟犬！ ……まずはこれで、そのガキを始末してやる！」
「リバースカードオープン。速攻魔法、融合解除。参頭猟犬をエクストラデッキに戻します」
「っ！？ き、さまぁ……！！」
「古代の機械共鳴融合を発動したプレイヤーは、そのターンモンスターを召喚・特殊召喚出来ない……でしょう？」
「……うぅっ！！ カードを2枚セットして、ターンエンドだ！」


涼花 LP800
シルビア LP2200モンスターゾーンマシュマロン 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
アカデミア生徒B LP2100 モンスターゾーン古代の機械双頭猟犬
アカデミア生徒C LP2500 モンスターゾーン 古代の機械参頭猟犬
月詠 LP4000 モンスターゾーンエルシャドール・シェキナーガ
アカデミア生徒D LP4000 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚


……やはり、彼女はアカデミアを攻撃している。でも、何故……？



「……あとは、あなた次第です」
「！？」



……そうだ、今はそんなことを考えている場合ではない。私が生き残るためには、シルビアを守るためには……



「……私のターン、ドロー！ ……手札から装備魔法、銀河零式を発動。墓地のNo.107 銀河眼の時空竜を特殊召喚します。そして……手札から通常魔法、RUM––アージェント・カオス・フォースを発動！ 銀河眼の時空竜を、ランクアップします！」



これが、クレアさんから受け取ったカード。No.のさらなる力を、引き出す……



「遥かなる時の始まりより現れよ、すべての時の暴虐なる支配者！ ランクアップ・エクシーズチェンジ！ CNo.107 超銀河眼の時空龍！」
「……な、なんだあのモンスターは！？」



……従えている私でさえも感じる。このモンスターから放たれる、圧倒的な迫力を……気を緩めると、またNo.の力に呑まれてしまうかもしれない。



「っ……手札から通常魔法、フォトン・サンクチュアリ発動。私のフィールドに2体のフォトントークンを特殊召喚します。フォトントークンをリリースして、超銀河眼の時空龍の効果発動！ このターン、このモンスターは3回攻撃を行える！」
「攻撃力4500の……3回攻撃だとぉっ！？」
「狼狽えるな！リバースカードオープン！ 永続罠、融合塹壕––フュージョン・トレンチ！ これで融合モンスター以外のモンスターは攻撃出来ない！」
「……無駄です。超銀河眼の時空龍の効果発動！ このモンスターのオーバーレイユニットを1つ取り除いて、このモンスター以外のすべてのカード効果を無効にします！ さらにこのターン、相手はカード効果を発動出来ない！」
「そ、そんな……」
「バトル！ 超銀河眼の時空龍で3回攻撃！ これで……終わりだぁぁぁ！！」
「「「うわぁぁぁぁ！！」」」


アカデミア生徒B LP2100→0
アカデミア生徒C LP2500→0
アカデミア生徒D LP4000→0





「…………」
「お嬢様、ご無事ですか！？」
「シル、ビア……私は、大丈夫です。それよりも……待ってください！」
「……私に、何か用ですか」



彼女––––アカデミアのデュエリストでありながら私たちを助けた少女は、私の呼びかけに応じてこちらを振り返った。



「……どうしてあなたが、アカデミアのデュエリストと闘っているのですか？」
「…………」
「……どうして、私とシルビアを助けたのですか？」
「…………」
「答えては、くれないんですね……」
「……私が答えて、あなたは納得しますか？ 『今はアカデミアと敵対している、だから私はあなたの味方だ』……と」



……それは、無理だ。彼女は私の目の前であの子をアカデミアへ連れて行った。だから……



「私は、あなたを信用しません。……それでも、あなたはアカデミアと闘っている。なら私は……あなたを、利用します」
「……利用？」
「はい。私はここの人たちを守りたい。そのためにはアカデミアを倒さなければならない……だからあなたを利用して、私は私の目的を成し遂げます」
「……いいでしょう。好きにしてください」



彼女は踵を返し、この場を立ち去ろうとする。



「待って！ ……私は薙野 涼花です。あなたの名前は？」
「…………天宮 月詠です」



そう言い残し、彼女––––天宮 月詠は瞬く間に姿を消した。恐らくは、他の場所にいるアカデミアを倒すために。



「お嬢様……」
「……シルビア、行きましょうか。守りたいものを守る、そのために……私は、闘います」