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HOME > 遊戯王SS一覧 > Scar / 6:俺が、許しはしない

Scar / 6:俺が、許しはしない 作:げっぱ

スカー「復讐は、これからだ」


強く睨み付けるスカーの宣誓を、ウルフは鼻で笑う。

ウルフ「ハッ! 笑わせるじゃねえか、やれるモンならやってみろよ!」

ウルフ「だがな、「グレイドル・ドラゴン」には破壊された時、墓地の自身以外の水属性モンスター1体を特殊召喚できる効果を持つ!」

ウルフ「この攻撃力と、この効果を、超えられるか!」

自慢げに語るウルフ。だがその自信に見合う通り、その効果は実に突破し難いものだ。
「グレイドル・ドラゴン」の攻撃力を超える攻撃力を持つモンスターで戦闘破壊すれば、その効果で蘇生される下級「グレイドル」によって、「グレイドル・ドラゴン」を上回る攻撃力を持つこちらのモンスターのコントロールを奪われてしまう。
どうにかして破壊以外の手段で除去をしなければならない。

スカーにはその手段があった。

スカー「特殊召喚に成功した「ヴィンディクト」の効果を発動。二つの内、手札を捨てる効果を選ぶ」

スカー「自分フィールドの「SS」1体と相手フィールドのカード1枚を選んで手札に戻す」

ウルフ「破壊しなければ良いってか。正解だが、無駄だ!」

ウルフはD・ホイールの更にスピードを上げる。そして同時に、伏せていたカードを発動した。

ウルフ「リバースカードオープン、速攻魔法「Sp-シンクロ・クラッシュ」発動!」


「Sp-シンクロ・クラッシュ」 通常魔法
このカードは自分用のスピードカウンターが4つ以上の場合のみ発動できる。
①:自分フィールドのシンクロモンスター1体と相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのカードを破壊する。


ウルフ「この効果で「グレイドル・ドラゴン」と「SS-ヴェンジェンス」を対象とし、破壊する!」

カードから迸る二つのエフェクトは、方や「SS-ヴェンジェンス」に、方や「グレイドル・ドラゴン」に突き刺さる。
苦しみ悶える2体のモンスターは、間も無くヴィジョンの破壊によって砕け、ガラス片のようになって散らばる。


「SS-ヴェンジェンス」「グレイドル・ドラゴン」破壊!


すぐ傍でのヴィジョンの破壊であったために反射的反応ができないと察したスカーは、咄嗟に、真後ろのアンを庇うように覆い抱き締める。
即座に襲い掛かるヴィジョンの欠片は、幸いにして大きな物が二人に襲い掛かる事は無かった。
しかしそれ以外の破片が、小さいと言っても鋭い悪意が、確実にスカーの体を傷付けた。

スカーは呻きもせず、その代わりと言わんばかりにアンを強く抱き締める。
小さくするように、アンに少しでも危害が及ばないように。

アン「スカー……!」

破壊のエフェクトが立ち消え、そこでようやく、スカーはアンを離し、ウルフを探す。
スピードを上げたが為にウルフはサーキットをかなり進んでいた。スピードを上げたのは、破壊のヴィジョンから確実に逃げる為だったのだ。

スカー「……そして「ヴィンディクト」の効果は、相手の場にカードが無くなった事により不発となる」

残された、不発となった「ヴィンディクト」の効果処理を行う。

ウルフ「まだだ! 「グレイドル・ドラゴン」の効果はタイミングを逃さん! よって墓地から、「グレイドル・スライム」を守備表示!」

破壊され、砕け散った「グレイドル・ドラゴン」のヴィジョン。それが液体のようになって集まり始め、やがて、「グレイドル・スライム」の姿を取った。
変幻自在の侵略集団。ウルフは、その神髄を、シンクロと言う手段を以て明らかにしたのだ。

ウルフ「クックック……哀れだなア。張り切った復讐は見事空振りィ~!」

ウルフ「で、何がこれからだって? ヒャハハハハ!」

潰えたスカーの目論見に、ウルフは品の無い嘲笑を響かせる。

スカー「……カードを1枚セットし、モンスター1体をセットしてターンを終了」


先攻:ウルフ / 手札:1 / LP:6400 ●●●●
フィールド…ライディング・ワールド-トップスピード
ス…グレイドル・スライム ATK/0 DEF/2000 守備
□|□| □ |□|□
□|□|ス|□|□

□|□|執心|■|□
□|■|. □ .|□|□
執心…SS-ヴィンディクト ATK/1500 DEF/1700 攻撃
■…リバースカード
後攻:スカー / 手札:0 / LP:3300 ●●●●


スカーからターンを受け取ったウルフは、D・ホイールの速度を緩め、悠々とカードを引く。

ウルフ「俺のターン、ドロー! そしてスタンバイフェイズに、スピードカウンターが増加ァ!」

ウルフ「さて……復讐たあ面白いな。憎いか? どうだ、悔しいか? 俺をブッ殺したいか?」

高らかなウルフの挑発に対し、スカーは眉一つ動かさない。
しかしウルフは、満足げにニヤリと笑う。まるでスカーのその反応こそを求めていたかのように。

ウルフ「だったらもっと気持ちよく復讐できるように、もぉっと痛めつけてやらないとな! メインフェイズ!」

ウルフ「手札から2体目の「グレイドル・アリゲーター」を召喚するぜ!」

ウルフが召喚したモンスターは、種類こそ違えど、チューナーとチューナー以外のモンスターと言う点では「グレイドル・イーグル」と何ら変わらない。
それは、今再び、先の侵略の破壊準備が整った事を意味する。

アン「これで、また「グレイドル・ドラゴン」がシンクロ召喚できる……」

アンの声は恐怖に震えた。先ほどはリバースカードを破壊され、モンスターは残ったために物理的なダメージは避けられた。
しかし、スカーのフィールドにはリバースカードが1枚のみ。先ほどに比べ、警戒するに値しない。
それよりも、モンスターを2体とも除去し、スカーにダイレクトアタックを仕掛ければ、スカーは攻撃力3000のダメージを、実際に肉体に負う事になる。

サーキットに巨大なクレーターを作り出した、「グレイドル・ドラゴン」の突進のような踏み付け攻撃。
それを生身の人間が受けて、生きていられるはずがない……。

ウルフ「いくぜェー! レベル3の「グレイドル・アリゲーター」に、レベル5の「グレイドル・スライム」をチューニング!」

アンが最悪な未来を予測するのも意に介さず、ウルフは無情にも二度目のシンクロ召喚を行う。
宙を走る光の道を進み、星となって生まれ変わる2体のモンスター。

ウルフ「まだまだ、絶望してもらう! 象れ、超常の権化! 「グレイドル・ドラゴン」、シンクロ召喚!」

弾けた光の中から、もう1体の「グレイドル・ドラゴン」が雄叫びを上げて飛び出した。

ウルフ「シンクロ召喚に成功した「グレイドル・ドラゴン」の効果発動! シンクロ素材とした水属性モンスターの数だけ、相手フィールドのカードを対象にして破壊する!」

ウルフ「破壊するのは「SS-ヴィンディクト」とリバースモンスター! コズミカル・ジャーックゥ!」

そしてウルフは、当然と言わんばかりに、2体のモンスターを標的として破壊を命じる。

「グレイドル・ドラゴン」は体を震わし、液体金属のような水のブレスを吐き出す。
ウルフが駆るD・ホイールに先行する形でサーキットを蠢いて駆ける濁流のブレスは、今度は1体の復讐の戦士とカードのヴィジョンを飲み込む。
溺れ、沈み、瞬く間に見えなくなったそれらは、地面に染みるように消えた濁流と共に、姿を消した。


「SS-ヴィンディクト」「SS-グリーフ」破壊!


これで、スカーを守るモンスターはいなくなった。リバースカードが防御のカードでなければ、間違いなく死が、スカーに直撃する。

アン「スカー、逃げて!」

アンは叫ぶ。スカーは、動きもしない。

ウルフ「お前の執念諸共、死んじまいなア! 「グレイドル・ドラゴン」、ダイレクトアタック!」

ウルフは容赦なく、攻撃宣言を行う。
そのタイミングで、スカーは伏せたリバースカードを発動した。

スカー「リバースカード発動、通常罠「SSS-反撃の時」!」


「SSS-反撃の時」 通常罠
①:相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在せず、自分の手札とLPがそれぞれ相手より少ない場合に発動できる。デッキから「SS」モンスター2体を特殊召喚する。


スカー「相手フィールドにのみモンスターが存在し、俺の手札とライフがそれぞれ相手より少ない場合に発動できる」

スカー「その効果で、デッキから「SS」2体を特殊召喚する! 2体の「SS-ヘイト」を守備表示!」

スカーに迫る「グレイドル・ドラゴン」の眼前に、二つの炎が巻き起こる。
同時に消えたその炎から現れるのは、杖を傍らに座り込む「SS-ヘイト」が2体。
どちらも、まっすぐに、「グレイドル・ドラゴン」を睨む。悍ましい怪物の咆哮にも臆せず。

復讐の戦士3人は、変わらずに憎き敵を見据えていた。

スカー「特殊召喚した2体の「SS-ヘイト」の効果発動。どちらもライフを1000払い、墓地の「SS」2体を手札に加える効果を選ぶ」

スカー「その効果で墓地の「SS-グリーフ」「SS-ヴィンディクト」、「SS-ネメシス」「SS-ヴェンジェンス」を手札に加える」LP:3300→2300→1300

ライフこそ消費したが、これでスカーの手札は十分な程に潤った。
それも、ウルフがデュエルに勝利する事よりもスカーの命を奪う事を優先したからであるが……この状況は必然とも言えた。

状況が如何に不利であろうが、デュエルディスクにヴィジョンを実体化する装置を搭載している限り、早い話が先に相手を戦闘不能にしてしまえばよいのだ。
それには、ダイレクトアタックによって相手に致命的な物理ダメージを与える方が手っ取り早い。
それで、例えば相手の腕の一本でも奪い取れば、デュエルの続行は困難となる。

ウルフがこの盤面でモンスターの除去を優先したのも、それが理由だ。

ウルフ「やるじゃねえか! 壁モンスターを場に出し、手札まで補充するか!」

ウルフ「「ヘイト」を戦闘で破壊すれば更にドローを許す……だったら攻撃を中止し、バトルフェイズ終了!」

ウルフ「また今みたいなカードを発動されたら堪らねえからな、メインフェイズ2にカードを1枚セット! ターンエンド!」


先攻:ウルフ / 手札:0 / LP:6400 ●●●●.●
フィールド…ライディング・ワールド-トップスピード
■…リバースカード
ド…グレイドル・ドラゴン ATK/3000 DEF/2000 攻撃
□|□| ■ |□|□
□|□|ド|□|□

□|□|憎|憎|□
□|□| □ |□ |□
憎(右)…SS-ヘイト ATK/1000 DEF/1200 守備
憎(左)…SS-ヘイト ATK/1000 DEF/1200 守備
後攻:スカー / 手札:4 / LP:1300 ●●●●.●


スカー「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズにスピードカウンターが増加し、メインフェイズに移行する。リバースカードを1枚セット」

ウルフがサーキットの半分を走った頃に、スカーは何よりも先に、カードを伏せた。
通常ならば打てる手が無いと、カードをセットしターンエンドするように見える。だが、スカーは続けて手札の1枚に手を伸ばした。

スカー「続いて「SS-グリーフ」を召喚」

スカーが召喚したのは、仮面を着けた長身の戦士。
傷だらけな身体を猫背のようにして丸めて、それでもまだスカーと同じくらいの高さだ。


「SS-グリーフ」 炎 ☆4 ATK/800 DEF/1500
戦士族/効果
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に、以下の効果から1つを選んで発動する。●手札を1枚捨てる。自分フィールドの「SS」モンスターの数×1000LPを回復する。●1000LPを払う。デッキから「SS」モンスター1体を選んで手札に加える。


スカー「召喚成功時に効果を発動する。手札を1枚捨て、自分フィールドの「SS」の数×1000のライフを回復する効果を選ぶ」捨てたカード→「SS-ネメシス」

スカー「その効果により、3000回復!」LP:1300→4300

ウルフ「この期に及んでまだしぶとく生き残るつもりか! いい加減、くたばってもいいんだぜ!」

耳は貸さない。ターンも終わらない。スカーは続けて、残る手札から1枚のカードをウルフに見せる。

スカー「俺のフィールドに「SS」が2体以上存在する場合、手札のこのカードを特殊召喚できる。再び出ろ、「ヴィンディクト」!」

舞い上がる炎のヴィジョンから飛び出す「ヴィンディクト」。身に纏う鎧、振り回す剣、どれにも新たな傷が付いていた。
しかし、仮面越しに見える眼からは、まるで闘志が失われていない。

スカー「特殊召喚に成功した「ヴィンディクト」の効果発動! ライフを1000払い、自身を破壊して、墓地の「SS」1体を特殊召喚する!」LP:4300→3300

炎に包まれる「ヴィンディクト」。

スカー「まだだ……復讐は終わっていない! 「SS-アヴェンジャー」!」

入れ替わりで現れる「アヴェンジャー」。
同胞によって取り戻された怒りが、「アヴェンジャー」を再び呼び覚ます。

強い意志が、そこにはあった。

スカー「「アヴェンジャー」が特殊召喚に成功した時に、3つ目の効果を選んで発動!」

スカー「手札を1枚捨て、ライフを1000払い、相手フィールドのモンスター1体を選ぶ。そのモンスターの効果を無効にし、攻撃力・守備力を0にする!」LP:3300→2300 捨てたカード→「SS-ヴェンジェンス」

スカー「力を奪え、ソウルスティール!」

「アヴェンジャー」の右腕に光が宿る。奪われたモノの無念を晴らすべく、「アヴェンジャー」はその腕を「グレイドル・ドラゴン」に向ける。
開いた掌から伸びるのは、光の線。それはD・ホイールで疾走するウルフに追従する「グレイドル・ドラゴン」さえ、逃さずに捕える。

淡い光に捕らわれた「グレイドル・ドラゴン」が、途端に絶叫を上げる。
しかしそれは弱々しく、ついにはウルフを追う事もできなくなり、サーキットの上に墜落する。

光の線で繋がった「アヴェンジャー」が、異質なる怪物の力を奪い取っているのだ。


「グレイドル・ドラゴン」無力化!


ウルフ「「グレイドル・ドラゴン」が……チィッ!」

スカー「その後、「アヴェンジャー」の攻撃力・守備力は、フィールドのカードの数×300アップする」


先攻:ウルフ / 手札:0 / LP:6400 ●●●●.●●
フィールド…ライディング・ワールド-トップスピード
■…リバースカード
ド…グレイドル・ドラゴン ATK/0 DEF/0 攻撃
□|□| ■ |□|□
□|□|ド|□|□

□|不幸|憎|憎|復讐
■| . □ .| □ | □ | □
憎…SS-ヘイト ATK/1000 DEF/1200 守備
不幸…SS-グリーフ ATK/800 DEF/1500 攻撃
復讐…SS-アヴェンジャー ATK/1900 DEF/1900 攻撃
■…リバースカード
後攻:スカー / 手札:0 / LP:2300 ●●●●.●●


スカー「フィールドのカードは、「ライディング・ワールド-トップスピード」を含め8枚」

ウルフ「2400アップし……4300!? 攻撃力0にされた「グレイドル・ドラゴン」を攻撃されれば、ダイレクトアタックも同じっ……!」

その攻撃力が自身に直接降りかかる事は無いとは言え、初期ライフの半分を削るダメージは、デュエルを決しかねない物である。
故に、さしものウルフも驚きを隠せなかった。

スカーは、リバースカードを警戒していなかった。あれはブラフだと分かっていたからだ。
事前に見せられた「SSS-反撃の時」。あれを警戒して手札を空にする為に、適当なカードを伏せるなどよくある事だった。
そしてその選択は、「アヴェンジャー」の力の源となる。

スカー「バトルフェイズだ。「SS-アヴェンジャー」で「グレイドル・ドラゴン」を攻撃!」

言われるまでも無く、「アヴェンジャー」は駆け出していた。
「SS」。傷だらけの戦士。その称号を冠する同胞から、そして己から。
最後の存在意義とも言える復讐の意志を奪い去った怨敵、その首魁を、その手で討ち取るのであれば。

戦士の歩みはサーキットを砕き、振り翳した腕には炎が宿り、熱風を産む。
両腕の炎を練り上げ、怪竜目掛け放つ。地を走り、空を舞い、迫る炎は「グレイドル・ドラゴン」の体を包む。

スカー「その傷の復讐を果たせ、「アヴェンジャー」!」

そして渾身の一撃が、燃え盛り絶叫する「グレイドル・ドラゴン」の巨体を、木っ端微塵に打ち砕いた。


「グレイドル・ドラゴン」戦闘破壊!


ウルフ「ぐっ……!」6400→2100

スピードを維持して尚、攻撃による衝撃波がウルフを襲う。
バランスを崩しかけたD・ホイールを鍛え上げた技術で何とか持ち直し、大きな息を吐く。

ウルフ「ハアッ! ……ぐひ、ひひひ! これでこそ、それでこそだ!」

そしてウルフの顔に浮かぶのは、エクスタシーに浸る恍惚。

ウルフ「クズ虫共を捻り潰すのも、奪い尽くして踏み躙るのも悦楽だが、何よりも強者とのデュエルは格別に良い!」

ウルフ「奪われて尚食らい付く強い精神を持つデュエリストを、その上で叩きのめすのは、ガキを犯すより勝る最上の快感だ!」

狂人。

自分の快楽の為に他の誰かを蹴落とす外道。それで奪ってきたものの数は、その卑劣さは、他の追随を許すまい。
そうでありながら、的確に状況を見据え、デュエルを進める技術。
世界に毒された、根っからの邪悪。もはや矯正の余地はないと、瞬間的に悟らせる。

この男は、生かしてはいけない。存在するだけで、多くの不幸を生むだけだ。

ウルフ「破壊された「グレイドル・ドラゴン」の効果発動! 墓地より水属性モンスター1体を特殊召喚する!」

ウルフ「特殊召喚するのは、「グレイドル・アリゲーター」!」

スカー「バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2。「トップスピード」に乗っているスピードカウンターを2つ取り除き、「グリーフ」を対象としてその効果を発動する」

スカー「「グリーフ」の攻撃力は500アップする」

もし、次のターンに再び「グレイドル・ドラゴン」を出されるような事があれば、「ライディング・ワールド」の効果を使い攻撃力を上げ、「グリーフ」を攻撃されてしまい、スカーの敗北が決定してしまう。
それを避けるために、スカーは前以て「グリーフ」の攻撃力を上げておく。本来であれば、自爆特攻を防ぐために守備表示にしたかったのだが……。

スカー「これでターンエンド」


先攻:ウルフ / 手札:0 / LP:2100 ●●●●.●●
フィールド…ライディング・ワールド-トップスピード
■…リバースカード
鰐…グレイドル・アリゲーター ATK/500 DEF/1500 守備
□|□| ■ |□|□
□|□|鰐|□|□

□|不幸|憎|憎|復讐
■| . □ .| □ |□ | . □
憎…SS-ヘイト ATK/1000 DEF/1200 守備
不幸…SS-グリーフ ATK/1300(800) DEF/1500 攻撃
復讐…SS-アヴェンジャー ATK/4300(1900) DEF/4300(1900) 攻撃
■…リバースカード
後攻:スカー / 手札:0 / LP:2300 ●●●●


ウルフ「俺のターン、ドロー! スタンバイフェイズに「トップスピード」にスピードカウンターが乗り、メインフェイズ!」

ウルフ「手札から二枚目の「Sp-エンジェルバトン」発動!」

ウルフ「デッキからカードを2枚ドローし、その後手札を1枚捨てる!」捨てたカード→「グリズリー・マザー」

手始めに手札の厳選を行うウルフ。続け様に、ドローしたカードをそのまま発動した。

ウルフ「「トップスピード」のスピードカウンターを2つ取り除き、通常魔法「貪欲な壺」を発動!」

ウルフ「自分の墓地のモンスターを5体、「グレイドル・ドラゴン」2枚と「グレイドル・イーグル」「グレイドル・コブラ」「グレイドル・アリゲーター」を1体ずつ対象として発動する!」

ウルフ「対象としたモンスターをデッキに戻し、2枚ドロー!」

ドローを繰り返し、望むカードを引き込んだらしいウルフは、不敵に笑む。

ウルフ「そのモンスター、そこまで強くした事を後悔するんだな! 「グレイドル・イーグル」召喚!」

召喚するのは、鷲の「グレイドル」モンスター。
しかしウルフのフィールドには、前のターンに蘇生した「グレイドル・アリゲーター」が既に存在する。
それを攻撃表示にし、「グリーフ」に攻撃を仕掛ければ戦闘破壊をトリガーとして「アヴェンジャー」のコントロールを奪えるはず。

フィールドに、「グレイドル」カードが2枚……。

アン「これ、また……!」

真後ろのアンも、スカーと同時に答えに達したらしい。だが、今のリバースカードではその展開を止める事は出来ない。

ウルフ「そして、フィールドの「グレイドル・イーグル」と「グレイドル・アリゲーター」を対象に、墓地の「グレイドル・スライム」の効果発動!」

効果の対象となった2体のモンスターのヴィジョンが、不気味に形を崩し、ただの液体の塊として流動する。
パチンと弾けたヴィジョンは、やはりして再び集まり、片方は「グレイドル・スライム」へと変わった。


「グレイドル・スライム」蘇生!


ウルフ「対象としたカードを破壊し、自身を特殊召喚! そしてこの方法で特殊召喚に成功した場合、更に効果発動!」

ウルフ「墓地の「グレイドル」モンスター1体を特殊召喚する! 対象にするのは「グレイドル・コブラ」!」

ウルフ「更に、「グレイドル・スライム」のモンスター効果で破壊された「グレイドル・イーグル」の効果も発動するぜ!」

ウルフ「奪うのは、「SS-アヴェンジャー」!」

この一連の流れの一番の目的は、恐らくはこれだ。「アヴェンジャー」を奪う事で、スカーの全てを奪おうと言う魂胆だろう。
対象を定めた「グレイドル・イーグル」の残骸は、地面を這いずって「アヴェンジャー」に迫る。

それを通してなるものか。スカーは躊躇わず、リバースカードを発動した。

スカー「その効果にチェーンし、「アヴェンジャー」を対象としてリバースカードオープン、通常罠「スキル・プリズナー」発動!」


「スキル・プリズナー」 通常罠
①:自分フィールドのカード1枚を対象として発動できる。このターン、そのカードを対象として発動したモンスター効果を無効にする。
②:墓地のこのカードを除外し、自分フィールドのカード1枚を対象として発動できる。このターン、そのカードを対象として発動したモンスター効果を無効にする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

スカー「ターン終了時まで、対象のカードを対象として発動したモンスター効果を無効にする」

効果の防御加護を受けた「アヴェンジャー」は、「グレイドル・イーグル」の残骸が飛び掛かってくるのに合わせ、自分の正面に光の障壁を作り出す。
「グレイドル・イーグル」の寄生はそれによって阻まれ、弾かれて地面に強かに叩き付けられた。

ウルフ「チィッ! だが、「グレイドル・スライム」の蘇生効果は行われる! 「グレイドル・コブラ」を特殊召喚!」

そしてまたしても、素材の片割れは違うが、再び怪竜の召喚条件が整った。

ウルフ「これで素材が揃った! レベル3の「グレイドル・コブラ」に、レベル5の「グレイドル・スライム」をチューニング!」

ウルフ「象れ、超常の権化! もう二度と、塵芥の無能が抗えぬ様に! 「グレイドル・ドラゴン」、シンクロ召喚!」

三度目の、「グレイドル・ドラゴン」のシンクロ召喚。
何度でも、何度でも、敵対する者の全てを奪っていく姿は、正に『カオスクロス』の理念の具現化と言っても過言ではない。

ウルフ「シンクロ召喚した「グレイドル・ドラゴン」の効果で、2体の「SS-ヘイト」を破壊! コズミカル・ジャック!」

「グレイドル・ドラゴン」は緩慢な動きで、再び液体金属のようなブレスを吐く。
それは近くに差し迫ったスカー達に呆気なく到達し、対象となった2体の復讐の戦士を飲み込んだ。


「SS-ヘイト」「SS-ヘイト」破壊!


スカー「くっ……!」

戦闘破壊された時に発動できるドロー効果を目当てにしていた2体の「ヘイト」だが、効果破壊の前では意味が無い。
「アヴェンジャー」を対処できないのであればと、返しのターンでのダメージも覚悟して攻めてくるウルフ。
ハンターとしての底意地か。デュエリストとしての衝動か。

それとも、飽くまでも欲望に忠実に、奪う事を遂行しているだけか。

ウルフ「そしてバトルフェイズ! 攻撃表示の「SS-グリーフ」に攻撃しろ、「グレイドル・ドラゴン」!」

スカー「攻撃宣言時に、墓地の「SSS-カウンター・ストライク」を除外してその効果を発動!」

スカー「このターン、俺の「SS」は戦闘では破壊されない!」

ウルフ「だが戦闘によるダメージは受けてもらうぜ!」

攻撃対象に選択された「グリーフ」は、「グレイドル・ドラゴン」を睨みながらもカウンターの構えを取る。
跳躍から、突進のような踏み付け。その足が迫る。「グリーフ」は大きく身を引いた。

刹那。

「グリーフ」は引いた半身からバネのように弾けて加速を得、真っ向から「グレイドル・ドラゴン」に立ち向かった。
それでもインパクトは消せるものではなく、「グリーフ」を中心として、サーキットのコンクリートのヴィジョンが砕けてクレーターを作る。

スカー「クッ……」LP:2300→600

ついに、スカーのライフが1000を切った。これで「SS」共通の、ライフを払う効果が使用できなくなった。

ウルフ「ギャハ、ぎひひひひゃひゃはあッ! 虫の息だ、テメエも、手札もねえ、ライフもねえ!」

ウルフ「これでもまだ逆らうか? 復讐なんて抜かせるか? こんなものか、所詮はクズなら!」

ウルフ「テメエ等クズ共は、黙って奪われていればいいんだよ! ターンエンド!」


先攻:ウルフ / 手札:1 / LP:2100 ●●●●.●
フィールド…ライディング・ワールド-トップスピード
■…リバースカード
ド…グレイドル・ドラゴン ATK/3000 DEF/2000 攻撃
□|□| ■ |□|□
□|□|ド|□|□

□|不幸|□|□|復讐
□| . □ .|□|□| . □
不幸…SS-グリーフ ATK/800 DEF/1500 攻撃
復讐…SS-アヴェンジャー ATK/4300(1900) DEF/4300(1900) 攻撃
後攻:スカー / 手札:0 / LP:600 ●●●●.●


黙って奪われていればいい。それはウルフの本心であり、スカーを焚き付ける為の挑発でもあるのだろう。

乗ってやろう。そんな傍若無人な思考自体を、スカーが許せないのだ。
元よりデュエルを始めた時から、相手が『カオスクロス』の構成員と言うだけで、完膚なきまでに叩きのめすつもりだったのだから。

スカー「俺のターン……」

アン「スカー……!」

ドロー、と言う時に、不安に満ちたアンの声で、スカーは振り向く。

スカー「どうした?」

アン「私、嫌……あいつ、こわい……」

アンの瞳は恐怖に満ちていた。両肩を掴んで、まるでウルフから隠れようとするように、小さくなって震えていた。
自分が、反吐の出るような悪意をぶつけられていると理解しているのだ。そしてスカーが不甲斐無いデュエルをするばかりに、スカーの敗北を臭わせてしまった。
自分が何を慰めても、決して薬にはなるまい。

スカーはウルフに視線を戻し、そのまま告げた。

スカー「耳を塞いでいるんだ。目を瞑れ」

アンは消えそうな声で「うん」と返してきた。見えないが、恐らくはスカーの言葉通りにしているのだろう。
後は勝利を以て少女を迎えに行くだけ。

スカーの手に、力が入った。

スカー「ドロー! ……スタンバイフェイズにスピードカウンターが増え、メインフェイズ」

スカー「スピードカウンターを2つ取り除き、「アヴェンジャー」を対象としてその効果を発動! 「アヴェンジャー」の攻撃力は500アップ!」

「アヴェンジャー」の右腕が震える。徐に前に向けたと思えば、その指先に炎が灯った。
攻撃力と共に、「アヴェンジャー」にも気力が宿る。

スカー「バトルフェイズ! 「SS-アヴェンジャー」! もう一度だ、「グレイドル・ドラゴン」に攻撃!」

「アヴェンジャー」は雄叫びを上げ、正面の「グレイドル・ドラゴン」に接近する。
対する「グレイドル・ドラゴン」も、「アヴェンジャー」を迎え撃つべく翼を羽ばたかせる。

「アヴェンジャー」の両腕に炎が燃えて輝いた。
「グレイドル・ドラゴン」の、「コブラ」の姿をした尾による薙ぎ払いを、右腕で迎え撃ち粉砕。
すかさず跳躍し、孤を描いて逸らした背中のバネを解放。雷光のような炎の左ストレートが、これまた「グレイドル・ドラゴン」の頭部を粉砕した。


「グレイドル・ドラゴン」戦闘破壊!


ウルフ「無駄だ! 「グレイドル・ドラゴン」の効果を発動! もう一度、「グレイドル・イーグル」を守備表示で蘇生する!」LP:2100→300

だが、状況は変わらず。結局「グレイドル・ドラゴン」の効果で墓地の「グレイドル・イーグル」が蘇り、止めには至らない。

スカー「バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2に「グリーフ」を守備表示に変更。ターンを終了する」


先攻:ウルフ / 手札:1 / LP:300 ●●●●.●●
フィールド…ライディング・ワールド-トップスピード
■…リバースカード
鷲…グレイドル・イーグル ATK/1500 DEF/500 守備
□|□| ■ |□|□
□|□|鷲|□|□

□|不幸|□|□|復讐
□| . □ .|□|□| . □
不幸…SS-グリーフ ATK/1300(800) DEF/1500 守備
復讐…SS-アヴェンジャー ATK/4800(1900) DEF/4300(1900) 攻撃
後攻:スカー / 手札:1 / LP:600 ●●●●


ウルフ「俺の、ターン!」

ウルフ「スタンバイフェイズにスピードカウンターが増加! そしてメインフェイズ! 手札から通常魔法「Sp-シフト・ダウン」発動!」


「Sp-シフト・ダウン」 通常魔法
①:自分用のスピードカウンターを6つ取り除いて発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。


ウルフ「自分用のスピードカウンターを6つ取り除き、2枚ドロー!」

ここにきて、ウルフは溜めたスピードカウンターを豪勢に使用した。
その結果得たのは2枚の新たな手札。逆転するには十分すぎる枚数だ。

ウルフ「さぁ~て、そろそろお前をぶっ殺して、ベイビーちゃんを頂くとするか」

自信に満ちたウルフの宣告。

スカー「黙れ……その汚い口を、開くな!」

ウルフ「怒るなよお、お前よりも大事に大事に、ベイビーちゃんは可愛がってやる!」

ウルフ「死にかけのお前の目の前で、ヒィヒィ鳴いて悦ぶベイビーちゃんの姿を見せてやるよ!」

ウルフ「安心しろ、お前が死んでも、すぐに生まれ変わらせてやるぜ。ベイビーちゃんが産むガキとしてな!」

ウルフ「勿論パパはこの俺だァ~~~! ヒャーハハハ、ハーッハッハッハアッ!」

スカーの表情は怒りに歪む。アンが見ていなくてよかったと、内心思いながら。
アンに聞かせられないような言葉を平気で並べ立てるこの男だけは、絶対に――――。

ウルフ「行くぜぇ、「グレイドル・コブラ」を召喚! そして「グレイドル・イーグル」と「グレイドル・コブラ」を対象にして、墓地の「グレイドル・スライム」の効果発動!」

ウルフ「その2体を破壊し、墓地の「グレイドル・スライム」を特殊召喚! その効果で、墓地の「グレイドル・アリゲーター」を蘇生!」

ウルフ「そしてモンスター効果で破壊された「グレイドル・イーグル」の効果も同時に発動! 対象は当然、「SS-アヴェンジャー」!」

スカー「その効果にチェーンし、墓地の「スキル・プリズナー」を除外してその効果を発動。このターン、「アヴェンジャー」を対象として発動したモンスター効果を無効にする!」

お決まりのコンボも、「スキル・プリズナー」の効果によって再び防ぐ。しかしこれで、今度こそ防御の手段は失われた。
これがウルフの狙いだった。こちらを摩耗させ、息切れした頃に、一気に叩く。

ウルフ「だろうな。「グレイドル・イーグル」の効果は不発になるが、「グレイドル・アリゲーター」は蘇る!」

ウルフ「これでお前の頼みの綱は失せた……次のターン、お前が大事に守った物を全て、奪う!」

ウルフ「モンスターも、ガキも、命も、プライドも、価値も!」

ウルフ「カードを2枚セットしてターンエンド!」


先攻:ウルフ / 手札:0 / LP:300 ●
フィールド…ライディング・ワールド-トップスピード
■…リバースカード
鰐…グレイドル・アリゲーター ATK/500 DEF/1500 守備
ス…グレイドル・スライム ATK/0 DEF/2000 守備
□| ■ | ■|■|□
□|鰐|ス|□|□

□|不幸|□|□|復讐
□| . □. |□|□| . □
不幸…SS-グリーフ ATK/1300(800) DEF/1500 守備
復讐…SS-アヴェンジャー ATK/4800(1900) DEF/4300(1900) 攻撃
後攻:スカー / 手札:1 / LP:600 ●●●●.●


追い打ちの、2枚のリバースカード。何故、「グレイドル・ドラゴン」をシンクロ召喚しなかったのか。

不安と疑問がスカーを迷わせる。
だが今になって、それに怯えていてはいけない。
どの道、これがラストターンなのだから。

スカー「俺のターン、ドロー!」

ドローしたカードを一瞥。スカーが、待ち望んだカードだ。

スカー「スタンバイフェイズにスピードカウンターが増え、メインフェイズ。スピードカウンターを2つ取り除き、装備魔法「SSS-フレイム・スピア」を「SS-アヴェンジャー」に装備する!」

「アヴェンジャー」の左腕に炎が宿る。
それは左手に下り、棒のような形となり、「アヴェンジャー」の手に収まる。

復讐の炎の槍。傷だらけの戦士たちが心に持つ、魂の武器だった。

スカー「装備モンスターの攻撃力は500アップし、貫通効果を得る!」


「SSS-フレイム・スピア」 装備魔法
「SS」モンスターにのみ装備可能。
①:装備モンスターの攻撃力は500アップし、装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
②:1ターンに1度、装備モンスター以外の自分フィールドの「SS」モンスター1体をリリースし、以下の効果から1つを選んで発動できる。●デッキからカードを1枚ドローする。●自分は1000LP回復する。


ウルフ「この土壇場でそんなカードを引き当てるか!」

スカー「「フレイム・スピア」は装備カードとしての効果以外に、もう一つの効果を持つ。自分フィールドの装備モンスター以外の「SS」1体をリリースする事で、カードを1枚ドローするか、ライフを1000回復できる」

スカー「「グリーフ」をリリースし……」

リリースされた「グリーフ」のヴィジョンは炎に包まれ、「アヴェンジャー」が持つ槍の炎と融合する。
同胞の力を受け継ぎ、炎の槍から火の粉が弾ける。ゆらゆらと降るそれは、スカーのデッキの一番上にやんわりと落ちた。
想いの炎は、装置によって実体化したヴィジョンでありながら、カードを焼く事は無かった。
そしてスカーが触れても、ただ温かいだけ。可能性を与えてくれる温もりに導かれ、スカーはカードを引く。

スカー「1枚、ドロー!」

スカー「……もう一度、スピードカウンターを2つ取り除き、通常魔法「戦士の生還」を発動する!」


「戦士の生還」 通常魔法
①:自分の墓地の戦士族モンスター1体を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。


スカー「墓地の戦士族モンスター、たった今墓地へ送られた「SS-グリーフ」を手札に戻し、そのまま召喚!」

スカー「召喚に成功した「SS-グリーフ」の効果発動! 手札を1枚捨て、自分フィールドの「SS」モンスター1体につきライフを1000回復する!」捨てたカード→「SSS-カウンター・ストライク」

スカー「俺のフィールドには「アヴェンジャー」と「グリーフ」の2体! よって2000回復する!」LP:600→2600

ウルフ「この期に及んでまだ粘るかよ!」

スカー「そして「SS」モンスターの効果で手札から捨てられた「カウンター・ストライク」の効果で、ライフを1000回復し、デッキから1枚ドロー!」LP:2600→3600


ウルフ「良いぞ、良いぞお、その闘志! デュエリストとしての全力を、ぶつけて見せろ、ゴキブリのクズ虫風情がッ!」

スカー「バトルフェイズだ。「SS-アヴェンジャー」で、「グレイドル・スライム」を攻撃!」

炎の槍を構え、「アヴェンジャー」は突撃する。狙いは「グレイドル・スライム」。

スカー「貫け、復讐の炎の槍で!」


にやりと、ウルフは嗤った。


ウルフ「止まるんだよ、お前は! 攻撃宣言時にリバースカードオープン!」

ウルフ「通常罠「緊急同調」――――!」


「緊急同調」 通常罠
①:バトルフェイズのみ発動できる。自分フィールドのモンスターを素材としてSモンスター1体をS召喚する。


スカー「そのカード……!」

それは、本来のルールを捻じ曲げ、メインフェイズでしか行えないシンクロ召喚をバトルフェイズで行えるようにする罠カード。
このタイミングでの発動には意味がある。前のターンでは「スキル・プリズナー」での妨害を受け、「アヴェンジャー」を除去できない。
次のターンでのシンクロ召喚では、スカーの残り1枚の手札で妨害されてしまうかもしれない。

このタイミングは、ウルフにとって最高のタイミングと言えた。

ウルフ「これがお前の希望を、跡形もなく摘み取る! レベル3の「グレイドル・アリゲーター」にレベル5の「グレイドル・スライム」をチューニング!」


光の道が、星が、輝く。


ウルフ「これで略奪は終わりを迎える! 濁流の如き侵略の手が、哀れなる反逆も知るべき恐怖も奪い去る! そしてお前は、死ぬんだよ!」


狂喜に満ちた宣言が響く。


ウルフ「シンクロ召喚! 象れ、超常の権化! 「グレイドル・ドラゴン」!」


未だに立ち塞がる、怪物。


ウルフ「シンクロ召喚に成功した「グレイドル・ドラゴン」の効果発動! 相手フィールドのカードを、シンクロ素材にした水属性モンスターの数だけ対象として破壊する!」

ウルフ「「緊急同調」によるシンクロ召喚も、素材を利用したもの! よって素材となった水属性モンスターと同じ数のカード、「SS-アヴェンジャー」と「SS-ヘイト」を、破壊する!」

ウルフ「飲み込め、絶望の混沌の中に! ラスト・コズミカル・ジャック!」

「グレイドル・ドラゴン」が吐き出す濁流のブレスに、「アヴェンジャー」が飲み込まれる。
「アヴェンジャー」を押し戻しながら、濁流はスカー達に迫り、もう一方の対象である「ヘイト」を飲み込んだ。


ウルフ「ギヒ、ぎひゃひゃひゃひゃ! これでお前の場からカードは無くなった! 召喚権も使った! 文字通り、丸裸だあ!」


ウルフ「次の俺のターンに「グレイドル・ドラゴン」でダイレクトアタックしてジ・エンド! お前は死に、後はベイビーちゃんとのお楽しみタイムってわけだ!」


ウルフ「この瞬間だ! 歯向かうクズの希望を奪い去り、一方的な絶望を与えるこの瞬間が、世界で、一番、大好きだ!」


ウルフ「俺に、強いデュエリストであるお前がそれを与えてくれた事、ガキを差し出してくれる事を、感謝アアァ!」


ウルフ「悔しいか? 悔しいかあ! だったらその手札で止めてみろよ、残り1枚のてふ……」


ウルフはそこで言葉を切った。
なまじ実力のあるデュエリストであっただけに、すぐに、異変に気付いたのだ。


ウルフ「お、おい、お前――――手札はどこにやった……?」


スカーが持っていた残り1枚の手札が無い事に。


ウルフ「貴様、残り1枚の手札を、どこにやったアアァーーー!?」


先ほどまでの上機嫌な様などどこにも無く、ウルフの顔は焦燥と怒りに歪んだ。
すぐに、D・ホイールのデュエルパネルの表示を確認する。

そして、スカーが1枚のカードを発動していた事に気付いた。

ウルフ「そ、速攻魔法……!」

スカー「2枚目の「SSS-リベンジ・オブ・スカーズ」。魔法カードだから、最後のスピードカウンター2つを取り除いて発動する」

「SSS-リベンジ・オブ・スカーズ」 速攻魔法
①:自分フィールドの「SS」モンスターが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。自分の墓地からそのカードを特殊召喚する。その後、デッキから1枚ドローする。

スカー「俺のフィールドの「SS」が戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。そのモンスターを全て、特殊召喚する」

「アヴェンジャー」と「ヘイト」を飲み込んだ濁流。その中から突如、炎が燃え盛った。
瞬く間に、音を立てながら濁流が蒸発していく。薄汚れた蒸気が上がり、辺りが見えなくなっても、炎はまるで意志のように存在を示し続ける。
何物にも屈せず、そして己を貫く事を誓った戦士たちは、倒されても立ち上がる。

復讐の戦士の名の下に、炎に包まれてそこにある。


「SS-アヴェンジャー」「SS-グリーフ」復活!


スカー「その後、デッキから1枚ドローする」

スカー「この程度で潰えるような怒りを抱いた覚えは、無い」

静かな怒りを語気に孕ませ、スカーは強く、ウルフを睨む。


ウルフ「ば、馬鹿な……」

オート走行でなければ間も無く横転していたであろう程に、ウルフは唖然とし、放心していた。
リバースカードは残っているもの、方やスカーが睨んだ通りブラフのスピードスペル、方やこの状況では意味を為さない「リビングデッドの呼び声」だった。
しかし構わず、スカーは自分の効果処理を進める。

スカー「特殊召喚した「グリーフ」の効果、ライフを1000払い、デッキから「SS」1体をサーチする効果を選んで発動する」

スカー「それにチェーンし、同時に特殊召喚した「アヴェンジャー」の、3つ目の効果を選んで発動」

スカー「チェーンを崩し、「アヴェンジャー」の効果から処理をする。その効果で、「グレイドル・ドラゴン」の効果を無効にし、攻撃力・守備力を0にする」LP:3600→2600

ウルフ「そ、そして「SS-アヴェンジャー」の攻撃力・守備力は、フィールドのカードの数×300アップする……」

既にその効果を受けているだけに、ウルフは効果の続きを読み上げる。


先攻:ウルフ / 手札:0 / LP:300 ●
フィールド…ライディング・ワールド-トップスピード
■…リバースカード
ド…グレイドル・ドラゴン ATK/0(3000) DEF/0(2000) 攻撃
□|■| ■ |□|□
□| □ |ド|□|□

□|不幸|復讐|□|□
□| . □. |. □ . |□|□
不幸…SS-グリーフ ATK/800 DEF/1500 守備
復讐…SS-アヴェンジャー ATK/1900 DEF/1900 攻撃
後攻:スカー / 手札:1 / LP:2600 


スカー「フィールドのカードは6枚。1800アップし、3700! ソウルスティール!」

「アヴェンジャー」の瞳が赤く輝く。右腕に宿った光を、迷いなく「グレイドル・ドラゴン」へと放つ。
またもや脱力の光に囚われた「グレイドル・ドラゴン」は失速し、そのままサーキットを抉りながら墜落した。
飛び散る瓦礫のヴィジョンがウルフのD・ホイールに当たる。


「グレイドル・ドラゴン」無力化!


ウルフ「クッ、クソがあああーーーッ!」

スカー「そして「SS-グリーフ」の効果でデッキから「SS-グラッジ」を手札に加える!」LP:2600→1600

スカー「バトルフェイズは続いている! 「SS-アヴェンジャー」で、「グレイドル・ドラゴン」を攻撃!」

今度こそ、決着をつけるべく。
光を通じて「グレイドル・ドラゴン」の力を奪った「アヴェンジャー」は、漲る活力のままに駆け出した。

もう二度と、復讐の想いを失わぬと誓うように。
そしてそれを弄ばれた怒りを象徴するように。

両腕に纏う炎は嘗てなく燦然とあった。

「アヴェンジャー」の意思によって先走る炎は、力無く横たえる「グレイドル・ドラゴン」を一瞬で火達磨に変えた。
高温に焼かれ、その金属質な表面は融解するが如く蕩けて爛れる。焼かれる喉から断末魔を絞り出す。
だがそれを、哀れだとは思わない。これまで何者かの全てを奪い去ってきたのであれば、今こそ清算の時がきただけだ。

スカー「正統なる復讐者として、その傷の復讐を果たせ!」

「アヴェンジャー」が大きく踏み込む。

戦士のヴィジョンは、何の淀みなく、怪物を殴りつけた。

渾身は衝撃を生み出し、「グレイドル・ドラゴン」の巨体を穿ち、その下のサーキットを砕き、地を震わす。

ウルフ「ぐおおおっ!」LP:300→0

それは、奇しくもウルフのD・ホイールのコントロールを奪った。
よろけるD・ホイールは、まるで吸い込まれるように、「グレイドル・ドラゴン」が作り出したクレーターの一つへと走る。

ウルフ「し、しまった――――ぎゃあ!」

気付いた時には既に遅く、ウルフは大きく横転し、その身は投げ出される。
大したスピードが出ていたのだ。ウルフは何度も地面に打ち付けられ、頭を打ち、無様に転がり、ようやく止まった頃には、満身創痍となっていた。

ウルフ「ぐ、あ……」

その状態でも、顔を上げ、周囲を見渡し状況を探る。遠くに、空しく機能停止の音を響かせるD・ホイールが見えた。
また、周囲の「ライディング・ワールド」のヴィジョンは消滅しかけていた。発動していたD・ホイールのデュエルモードが停止したのだから当然だ。
そして、その視界を遮って目の前に立つ、スカー。その傍には、新たに召喚され装置によって実体化した「ヘイト」のヴィジョン。

ウルフ「ひいっ!」

思わず、と言った風に悲鳴を上げ、ウルフはうつ伏せにになって身をよじらせる。
全身を強かに打った結果、激痛で上手く動かせないのだ。だから、這うように体を揺らす事しかできない。

ウルフ「や、やめろぉ……見逃してくれぇ……!」

辛うじて逃げながら、その口は赦しを乞う。


スカー「お前は、許されない邪悪な存在だ」


ウルフがやっとの事で移動しても、スカーは一歩でそれを詰める。

ウルフ「助けてくれ……! 何でもするぅ……頼むゥ……!」

逃げられないと悟ったのだろう、ウルフは蠢くのを止め、仰向けになる。
その額に、「ヘイト」のヴィジョンが仕込み杖の先端を押し当てた。

スカーの手には、1枚のカード。

ウルフ「ヒィ……ひっ、ひっ……」

涙を流し、恐怖で失禁する。

だが、それでも――――。


スカー「そして俺が、許しはしない」


スカーはその手札を、デュエルディスクの墓地ゾーンに送る。
瞬間、銃声が轟いた。


ウルフの死を確認したスカーは、ウルフが乗っていたD・ホイールを破壊した後、アンの許へと戻った。
ずっとスカーの言葉に従っていたのだろう。アンは耳を塞ぎ目を瞑り、状況も分からぬまま、デュエルで発生した衝撃に怯えながら待っていた。
次に自分に話しかけるのは誰か、自分はどうなるのか。
瞑った目の端から涙が零れている事から、感じていた恐怖は尋常ではないとよく分かった。

可哀想な事をしたと反省しながら、スカーはアンの頭に手を乗せる。

アンの体が引き攣る。そして恐る恐る、ゆっくりと、目を空ける。
目の前にいるのが誰かを確認し、また確かめるように、その名を呼んだ。

アン「ス、カー」

掠れて、震えた、小さな声。

スカー「待たせた」

スカーは申し訳なさそうに言った。
そんな事などお構いなしに、途端にアンの目から涙がぼろぼろと流れる。

アン「スカー!」

縋るように抱き付いてきたアンを抱き止め、そっと、後ろ頭を撫でる。
しかし、こうものんびりしてはいられない。

スカー「すぐにここを離れる。次の追手が来る」

アン「うん……」

泣きじゃくりながら、アンは頷いた。スカーはアンの頭をぽんぽんと軽く叩き、少し待つように言った。それと、ウルフの死骸がある方は見ないようにと言い含め。
鼻を啜るアンの泣き声を聞きながら、スカーは急いで荷物を纏める。それを紐で腰に巻き付け、アンに近寄る。
立ち上がろうとするアンを制止し、その姿勢のままのアンを抱えて持ち上げた。

アン「わ……」

スカー「暫く、我慢していろ」

足を痛め、精神的にも弱っている……弱らせたのはスカーだが、兎に角そんなアンを歩かせるわけにはいかない。
まあ、ウルフとのデュエルがあろうが無かろうが、翌日の移動はこうするつもりだったのだ。遅かれ早かれでしかない。

アン「大丈夫だよ、歩ける。スカー、疲れてる」

何を遠慮しているのか、アンはスカーの服を引っ張って主張する。
こんな事で時間を喰っていられないので、少し強めに返す。

スカー「急いで離れるんだ」

アン「……うん」

アンはバツが悪そうに俯き、それ以上は何も言わなかった。
スカーにとって、スカーの服を握り締める手だけが、アンの言いたい事で良いと思った。
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