海の中は大騒ぎ／第１話　目覚めて深海　作：BLUE忍者

　……ここはどこだろう？

　何も聞こえない。　ただ果てしない蒼が広がっていた。

　いや、かすかに聞こえる。　誰かの歌声が。

　透き通るような高い声を耳に残し、僕は意識を失ったようだ。

　今は何も思い出せない……。




＊「おい！　おいったら！」

　強い揺さぶりと大きな声で目が覚めた。

＊「あっ、目が覚めたみたいだよ！？」

＊「巫女さん巫女さん！　はやくはやく！」

　辺りが騒々しい……。

　少し目を開けると、魚や河童のようなものに囲まれていた。

ひょうすべ「おっ、気が付いたみたいだな」

弓を引くマーメイド（以下、弓マー）「ずっと起きないから心配したのよ～」

　僕はゆっくりと立ち上がり、周りを見渡した。　どうやらここは海の底のようだ。

海神の巫女「ホント良かったです！　これもきっとポセイドンさまのご加護ですね！」

舌魚「お主名は何というんじゃ？」

　僕の名前？

　あれ……？　なんだったっけ。

弓マー「記憶をなくしてるらしいわね……」

ひょうすべ「そうなのか？　今まではみんな前の記憶を持っていたのに……」

ザリガン「そうだな。　俺もただのザリガニだった頃の記憶は今でもあるぜ」

ヒトデンチャク「確かに僕も……」

海神の巫女「何か思い出せることはないですか？　例えば、その背負っている長槍とか……」

　言われて初めて気付いた。

　そこにあるのがさも当然であるかのように、その長槍は僕の背中に寄りかかっていた。

　よく見ると青と金の二色で「KAIO」と書かれていた。

＊「カイ……オ？」

弓マー「カイオ？　あなたカイ夫っていうのね！」

＊「えっ、ちが」

ひょうすべ「そうか！　よろしくな！　カイ夫！」

フライングフィッシュ（以下、FF）「よろしくー」

恍惚の人魚「よろしくねんっ」

　そうして僕は、カイ夫と命名された。

カイ夫「みなさんはなぜここに居るのですか？」

ひょうすべ「まあさっきも少し言ったが、俺たちは元はこんなモンスターでは無かったんだ。　だけど気が付いたらここに居て、モンスターになってたってわけさ」

舌魚「そうじゃ。　しかしお主は記憶が無いんじゃったのう」

弓マー「確かにおかしいわよね。　私たちはみんな記憶を持ってたのに」

海神の巫女「二つ考えられますね。　ただ単に記憶を失っているだけか。　もしくは私たちとは違う方法でここに辿り着いたか」

ザリガン「俺的には後者が臭うZE☆」

恍惚の人魚「本当に何も思い出せないの？」

カイ夫「はい……何も」

　少しの間沈黙が訪れた。

　しかしそれはすぐに破られてしまった。

FF「！？　……これは！？」

ひょうすべ「どうした！？」

FF「仲間から危険信号が送られて来たんだ！　方角は……あっちだ！！」

舌魚「また乱獲かのう……？」

弓マー「そうかもね。　フラちゃんなぜか人気あるから……」

ひょうすべ「おし！　俺たちも向かうぞ！！」

　巫女さん以外のみんなはFFさんを追いかけて行ってしまった。

　ぼ……僕も行こう！