対峙〜君臨する女帝〜　作：名無しのゴーレム

「………ス、起きるっスよ、遊介君！」
「ん……？ ぁ……誰？」
「エルドっス！ 寝ぼけてないで早く行くっスよ！」
「……？」






「……ようやく来たか。遅いぞ！」
「わ、悪い！ まさかこんなに急だとは思わなくて……」
「シズク様の前で言い訳する気か！ 貴様……」
「今は言い争いしている場合ではないのでは？ ……シズク様、全員揃いました」
「……よし。総員、馬に乗れ！」
「……馬ぁ！？」





まさか移動手段が馬だとは……当然俺はそんなものには乗れない。それを話したらシズクは……



「……そうか。なら私の後ろに乗れ」



……ということで、俺はシズクの馬に二人乗りする形となった。そのやりとりの間、ロザリーがずっとこちらを睨んでいたが……無視することにした。











「…………」



……女帝、か。俺とシズクの二人がかりでなお厳しい勝負になるとされているが、一体どれほど強いのか……



「……私は一度、アルカ・グランベルゼと相対したことがある」



馬を走らせながら、シズクはこちらを向かずに話し出す。



「そうなのか？ ……どうだったんだ？」
「……相手にならなかった。時間稼ぎすら満足に叶わず、ただ蹂躙された……覚えておけ。それがお前が今から立ち向かう相手だ」



……勝てるのか？



（……いや、そうじゃない。勝つしかないんだ。あの姫様のためにも……）



「…………見えたぞ」
「エルド！」
「はいっス！ バブル・ワールド発動っス！」



シズクの合図と同時にエルドがカードを発動する。すると周囲が無数の泡に包まれて……



「な、なんだよこれ！」
「敵を撹乱するための策だ！ このまま直進する、私に掴まっていろ！」
「お、おう！」



……く、泡で前が……




「……！？ 貴様、どこに触れている！」
「え！？ ……あ、そういやなんか柔らかいのが……」
「叩き落すぞ！ ッ……本隊が見えたぞ！ 作戦開始！」
「「「「はい！！」」」」




4人がそれぞれの方向に展開していく。俺たちは……




「……もうすぐ女帝のところに着く。覚悟はいいか」
「……ああ」




泡の中を抜ける。すると、そこには……















「……待っていたぞ」





そこには、堂々とした佇まいの女性が立っていた。





「……そちらの女は前に蹴散らした奴か。だが男の方は見たことがない……そいつが王国の切り札か？」
「おしゃべりに付き合うつもりはない。……遊介、構えろ」
「ほう、まさか2対1なら敵うとでも？ ……悪いが、我が国では一度負かした相手の挑戦は受け付けないのでな。……というわけだ。行け、我が弟よ」
「……ッ！？」




突然、女帝の背後から一人の男が現れた。




「そんな……！ 側近は全員ロザリーたちが足止めしているはず、なのに……」
「その通り、彼らは全員私の周りからは離れているよ。……しかしな、そいつは残念なことに馬も乗りこなせない軟弱者故に私の後ろに引っ付いていたのだ。実力は側近より遥かに劣るが……時間稼ぎくらいはしてみせろよ、弟」
「姉様ぁ！ 俺軍師だよ！？ 何向こうの筆頭騎士にぶつけようとしてんの！？ バカなの！？」
「泣き言を言うな！ 我が弟ならそれくらいの根性は見せてみろ！」
「あ〜、分かったよチクショウ！ ……姉様の命令だ、徹底的に時間稼ぎさせてもらうぞ！」
「くっ……遊介、作戦は失敗だ！ お前は早く逃げ……」
「逃すとでも？ ……何故かは分からんが、お前からはただならぬ気配を感じる。……楽しませてくれよ？」




……どちらにしろ、俺が馬に乗れない以上ここで勝たなければ逃げることも叶わない。




「……やってやる」
「遊介！ 命令が聞けないのか！」
「ハハハ！ いいぞ、気に入った！ さあ、戦いを始めよう！」







「「デュエル！！」」



遊介 LP8000 手札5枚
アルカ LP8000 手札5枚




「俺のターン！ ミラージュ・ワーロックを召喚！ ミラージュ・ワーロックの効果発動！ 手札を1枚捨てて、デッキからもう一体のワーロックを特殊召喚する！ さらに手札から永続魔法、ミラージュ・プリズン発動！ 俺の場にミラージュと名の付く同名モンスターが2体存在する限り、相手は攻撃できない！ ……俺は、これでターンエンド」



遊介 LP8000 手札2枚 ミラージュ・ワーロック×2（表側攻撃表示） 魔法・罠ゾーン ミラージュ・プリズン
アルカ LP8000 手札5枚



「私のターン、ドロー！」
「この瞬間、二体のワーロックの効果発動！ お前に500ダメージ、合わせて1000ダメージを与える！」


アルカ LP8000→7000


「……私の場にカードがないとき、このカードは手札から特殊召喚できる。来い、覇滅竜ナッシェ！ このカードをリリースしてアドバンス召喚を行うとき、一体で二体分のリリースとできる。ナッシェをリリースして、覇滅竜ディストルをアドバンス召喚！」
「1ターン目から最上級モンスターを出してきやがった……だが、攻撃できなきゃ怖くはない！」
「甘い。アドバンス召喚したディストルは相手の魔法・罠カードの効果を受けない！ バトル！ ディストルでワーロックを攻撃！」


遊介 LP8000→6200


「っ……まさか、プリズンをすり抜けて来るなんて……」
「その場しのぎの策など、絶対的な力の前には意味を成さない！ 私はこれでターンを終了する！」




遊介 LP6200 手札2枚 ミラージュ・ワーロック（表側攻撃表示） 魔法・罠ゾーン ミラージュ・プリズン
アルカ LP7000 手札4枚 モンスターゾーン 覇滅竜ディストル（表側攻撃表示）



「……俺のターン、ドロー！ ミラージュ・プリズンの効果発動！ このカードを破壊して、デッキからミラージュ・シスターを手札に加える。ミラージュ・シスターを召喚！ シスターの効果で墓地のミラージュ・ワーロックを特殊召喚！」



……見せてやる、俺の切り札を！



「……行くぜ！ レベル3のミラージュ・ワーロック2体にレベル2のミラージュ・シスターをチューニング！ シンクロ召喚！ 現れろ、ミラージュ・マージナリー！」
「シンクロ召喚か……！ いいぞ、上出来だ！」
「マージナリーの効果発動！ ディストルの攻撃力を半分にする！」


覇滅竜ディストル 攻撃力2800→1400


「……ほぅ、なかなかやるな」
「バトル！ マージナリーでディストルを攻撃！」
「……だが隙だらけだ。手札の覇滅竜ポテアの効果発動！ このカードを捨てて、ディストルの攻撃力を1500アップする！」


覇滅竜ディストル 攻撃力1400→2900


「なら墓地のミラージュ・シスターの効果発動！ このカードを除外してマージナリーの破壊を無効にする！ っ……」


遊介 LP6200→6000


「……カードを1枚セットして、ターンエンド」


覇滅竜ディストル 攻撃力2900→1400


遊介 LP6000 手札2枚 ミラージュ・マージナリー（表側攻撃表示） 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
アルカ LP7000 手札3枚 モンスターゾーン 覇滅竜ディストル（表側攻撃表示）



「私のターン、ドロー！ 墓地のナッシェの効果発動！ ディストルを墓地に送り、このカードを特殊召喚する！ さらにこのとき、手札を1枚捨てることでデッキから覇滅竜を1枚手札に加えることができる。ナッシェをリリースして、覇滅竜フォラーをアドバンス召喚！」



最上級モンスターを入れ換えて闘う戦術か……それでも！



「マージナリーの効果発動！ フォラーの攻撃力を半分にする！」
「アドバンス召喚されたフォラーはモンスター効果を受けない。よってマージナリーの効果は不発だ！」



くっ……ダメだ、こちらの戦略がまるで通用しない！



「バトル！ フォラーでマージナリーを攻撃！」


遊介 LP6000→5800


「っ……リバースカードオープン！ 通常罠、ミラージュ・ディフュージョン！ 俺のミラージュと名の付くレベル7以上のモンスターが破壊されたとき、デッキから2枚ドローする！」
「こちらの攻撃すら反撃のチャンスにするとは……面白い！」



……期待されてるところ悪いが、あいにく俺の手札に逆転の手段はない。なんとかして凌ぐしかないか……



「私のターンはこれで終わりだ。さあ、お前の力を見せてみろ！」



遊介 LP5800 手札4枚
アルカ LP7000 手札3枚 モンスターゾーン 覇滅竜フォラー（表側攻撃表示）



「……俺のターン、ドロー！ 手札から通常魔法、ミラージュ・コンバージュ発動！ 墓地のミラージュ・ワーロック2体を融合する！」
「融合も扱えるのか……いいぞ、来い！」
「融合召喚！ 現れろ、ミラージュ・ジェネラル！ ミラージュ・ジェネラルの効果発動！ 手札のミラージュ・アーマーナイト2枚を墓地に送り、エクストラデッキのミラージュ・ジェネラルを融合召喚扱いで特殊召喚する！」



守備力3500、さらに効果では破壊されないジェネラルを2体……これならば向こうもたやすくは突破できないはずだ。



「これでターンエンドだ」



遊介 LP5800 手札2枚 ミラージュ・ジェネラル×2（表側守備表示）
アルカ LP7000 手札3枚 モンスターゾーン 覇滅竜フォラー（表側攻撃表示）



「私のターン、ドロー！ ……どうやら、お前も私の敵にはなり得なかったようだな」
「……なんだと？」
「お前はこのターンで敗北する。……だが光栄に思え。私の切り札を見られるのだからな！」
「切り札……？」



……なんだ、この感じは。身体中に寒気が走る。全身が危機を伝えている。なのに、身体が動こうとしない。



「……さあ、行くぞ！ 墓地のナッシェの効果発動！ フォラーを墓地に送り、このカードを特殊召喚する！ さらに手札を1枚捨て、デッキから覇滅竜1枚を手札に加える。ナッシェをリリースして覇滅竜クレスをアドバンス召喚！ クレスの効果発動！ 手札の同名モンスターを可能な限り特殊召喚する！ ……さあ、蹂躙の開始だ！」



一気に3体のモンスターが並んだ。



「……でも、そいつらの攻撃力じゃあジェネラルは倒せない。それに効果で破壊されないジェネラルを、どうやって…」
「何を言っている？ 私のデュエルは常に力のみを追求する。それが私が女帝と言われる所以だ。破れぬ盾があるならば、それより強力な矛で貫くのみ！ ……そして、これがゲヴァルフォス最強の矛だ！ 私はレベル8のクレス3体でオーバーレイ！」



……！ まさか、あいつは……



「万物を破壊する君臨者よ、抗う愚者に鉄槌を下せ！ エクシーズ召喚！ 天より舞い降りろ、覇滅竜王ネロ！」








……あ、無理だ。黒き巨体の竜、その姿を見た瞬間にすべてを理解してしまった。あれには、勝てない。







「ぁ…………」
「……終わりだ。鉄槌のターミネイト・ストリーム！」




















……悪い、姫様。俺じゃあ、あいつには勝てなかったよ……