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HOME > 遊戯王SS一覧 > 37 ジェネシック強襲

37 ジェネシック強襲 作:ギガプラント

(ジェネシック・エレクトロニクス本社・1階ロビー受付)


受付嬢「本日はどのようなご用件でしょうか?」


?「会長のアストベリーにお目通り願いたい。」


受付嬢「…恐れ入りますが、お約束は頂いておりますでしょうか?」


?「『オットー・アクランド・マヘル』」


受付嬢「…?」


マヘル「私の名だ。本人に伝えれば分かる。」


受付嬢「…はぁ。ではただいまお取り次ぎいたしますので、少々お待ちください」




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(M.C.C社員寮)


天音「…せーの」


夏武斗・天音・ロバート「「「かんぱ~い!」」」

缶ジュースを軽くぶつけ合う。


仁「………」


天音「皆さん、予選通過おめでとうございます!」


夏武斗「おう!ありがとな!」


ロバート「ま、この面子なら当然っしょ。」


仁「………」



仁「……何故俺の部屋に。」


天音「あはは…ごめんなさい。」


夏武斗「ちょっとくらい良いじゃんかよ。近かったんだしさ。」


ロバート「そうそう。こうやって皆してワイワイすんのも悪かないだろ。…ま、ちっと狭いがな。」


仁「…一人用の部屋に4人も入れば狭くなるに決まっているだろう。」


夏武斗「ほらほら!仁も飲めよ!美味いぜこれ。」



仁「………はぁ。」




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(ジェネシック・エレクトロニクス本社・社長室)


マヘル「…久しいなアーネスト。」


アストベリー「まさか本当に君が来るとは思ってもみなかったよ…オットー。」


マヘル「前に逢ったのは何年前だったか……お前も大層立派になったものだな。」


アストベリー「何、こんな馬鹿デカいビルも見かけだけだよ。大したことはない。」


マヘル「フッ、相変わらずだな。これがダグラスなら、このビルの概要を小一時間程語っていただろう。」


マヘル「…彼の事は本当に残念だった。」



アストベリー「ダグラス……。」



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夏武斗「そっかぁ…最後の相手が香子だったんだな。」


天音「はい。本戦前に当たっちゃいましたね。」


ロバート「ま、こればっかはしゃーないわな。俺もここの面子と当たらなくて良かったぜ。」


仁「…呑気な。」


夏武斗「あ、そういや…仁とロバートって小さい時からダチだったんだよな?」


ロバート「あぁ。」


夏武斗「二人はどこの出身なんだ?上波町じゃないんだろ?」


天音「あ、私も少し気になってたんです。」


ロバート「あぁ、邑咲村(くにさきむら)ってとこさ。……今はもうないけどな。」


仁「………」


天音「そう……なんですか……?」



ロバート「邑咲村にはよ、ちょっと歩いた村外れにデカい社(やしろ)があったんだよ。ガキの俺等は入れてもらった事ねえけどさ。」


ロバート「…数年前のあの日、何の行事か知らねえが村の大人連中は皆して社に篭ってたんだ。外から来た何百っていう客人と一緒にな。」


夏武斗「何百って…そんなに人入んのかよ…!」


ロバート「そんだけデカい建物ってこった。」


ロバート「大人達は夜には帰ってくる筈だったんだ。…だが」


仁「………」





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マヘル「邑咲村周辺を襲った局地的大地震…。」


マヘル「その規模は過去に類を見ない程で、村の社は倒壊……いや崩落といった方が正しいか。」


マヘル「地盤の崩壊は社を中心とし円形に拡大。……邑咲村もろとも地域一体を大規模に飲み込んだ。生存者は僅か数十人。」


マヘル「その中の一人に、偶然あの村に居合わせたお前が入っていたのは改めて奇跡だったのだと感じる。」


アストベリー「私、はな。」



マヘル「……だがお前は一人でもしっかりやっているようで安心した。」




アストベリー「…それで、要件はなんだ?まさか思い出話をしにわざわざこんなところに来たわけではあるまい。」


マヘル「………」



マヘル「アーネスト…此処で開発された、『あの力を吸収する装置』を頂きに来た。」



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天音「えっと……すみませんそんなこと聞いてしまって。」


ロバート「んー別にいいのいいの。俺も仁もこうして生きてるわけだし。」


仁「…そもそもお前が勝手にペラペラと喋りだしただけだろう。」


ロバート「あ、それもそーか。」


夏武斗「ふーん大変だったんだなぁ……ん?」


窓から外を覗く夏武斗。

多人数が街道を行きかっている。


夏武斗「やっぱ大会やってっと人も沢山居るんだなぁ。」


天音「アストベリー杯は大きいですし、夏武斗君みたいに外から来ている人も大勢いますからね。」


夏武斗「あれ?でもあっちってセンターと逆方向だぜ?」


ロバート「んー?もう予選は終わってるし、みんな帰るとこなんじゃねーの?」


夏武斗「ああ、そっか。」


仁「………ん?」


人々に目を向ける仁。


仁(あれは…。)


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アストベリー「………何の話だ。」


マヘル「とぼけなくともよい。ジェネシック本社の研究所で開発された事は判っている。」


アストベリー「…仮にそんなものがあったとして、それをどうするつもりだ。考古学者の君には縁遠い物だと思うが?」


マヘル「…お前も見ているのではないか?あの日ダグラスを飲み込んだ大地震。いや『厄災』そのものを。」


アストベリー「………厄災。」


マヘル「あの悲劇を再び引き起こすわけにはいかぬ。……その為にあの力が必要なのだ。」


アストベリー「オットー貴様……Dオーラがどういったものなのか知っているのか…!?」


マヘル「Dオーラ……それがあの力の名という事か。」


マヘル「私があの力について知っている事はただ一つ。奴を滅ぼすのに必要な力という事だけだ。」


マヘル「そして…世界の為その力を必要としているお方が居る。」


アストベリー「具体的な話が聞けねばなんとも言えぬが、Dオーラについて何かを知っているというのなら、そのお方とやらに興味はある。」


アストベリー「しかしあの装置はまだ試作段階だ。何処であれの事を聞きつけたかは知らぬが、仮に納得のいく説明ができたとしても今直ぐに易々と渡すわけにはいかない。」


マヘル「…世界の危機だとしてもか?」


アストベリー「それこそ俄かには信じがたいな。このような言い方はしたくないがお前がそのお方とやらと共にあれを悪用しないとも言い切れぬ。」


アストベリー「私は会長だ。私の一挙手一投足がジェネシック・エレクトロニクス社全体に関わる。」


アストベリー「悪いが、そのような玉虫色の理由で貴重な機器を渡す決断などできんよ。」


マヘル「フッ……人の上に立つ者として理想的な、筋の通った返答だ。」


アストベリー「………」


マヘル「だがなアーネスト。」






マヘル「覚えておけ。本当に成さねばならぬ事が出来た時、その筋と垂直に道を切り開かねばならぬ事もあるのだと。」



アストベリー「何っ…まさか貴様…!?」


マヘル「もう遅い…。」




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(上波町・街道)


夏武斗「仁~!一体どこ行くんだ~?」


天音「確かこっちは……」


仁「…何故お前達までついてくる。」


夏武斗「だって急に外に飛び出すから…。」


仁「…ついて来いと言った覚えはない。」


夏武斗「まぁそういうなって!」


ロバート「そら普段むっつりの仁ちゃんが急に部屋飛び出しゃ気になるっしょ。」


仁「…はぁ。」



天音「この道を行くと……ジェネシック本社前に着きますね。」


ロバート「!!」


夏武斗「ジェネシック本社?皆そこに向かってるってのか?」


天音「さぁ…でもこっちは駅とも離れていますし…。」


仁「………」


天音「あ、あれ…!」


ビル前の集団を指さす。


ロバート「なんだありゃ…祭でもやってんのか?」


夏武斗「すっげぇ人だかりだなぁ…さっきのセンター程じゃないけど。」


天音「やっぱりジェネシック本社に…。」


走り出す仁。


夏武斗「あ!おい仁!」


天音「仁君っ!?」


ロバート「ったく!」


追いかける三人。



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truuu...truuu...


アストベリー「私だ。」


社員「こちら開発部!!謎の集団が侵入してきてアブソーバーを強奪していきましたぁ!!」


アストベリー「人数は?」


社員「それが……3人で」


アストベリー「なっ…!たった3人…!」


社員「はいぃ!!何故か防衛装置が使い物ならな(プツン)」


アストベリー「…通信機器がやられたか。」


アストベリー「オットー……一体どういうつもりだ。」


マヘル「…先程言ったとおりだ、私が成すべき事の為少々荒っぽい手を使わせてもらう。」


マヘル「願わくば平和的にやりたかったがな…。」



マヘル「私はここで失礼する。仲間を待たせているのでな。」


アストベリー「ここまでの事をしておきながら…簡単に逃がすと思うか?」


マヘル「お前こそ……その当てすらないまま私がここまで来たと思うか?」


忍びの如くその場から消え去るマヘル。



アストベリー「オットー…。」



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(ジェネシック・エレクトロニクス本社・1階ロビー受付)


「あっちだ!追えええぇぇ!!」
「非常用ゲートはどうした!?」
「どうすればこんな壊れ方……」
「あんな小娘に…くっ!」
「まだこの近くに居るはずだ!!」


社員A「なんだこれは!?」


社員B「ビルの前にこんなに人が…聞いてないぞ!?」


社員A「くそっ!この中に入っていきやがったのか!」


社員B「とにかく探せ!速やかに拘束するんだ!」



--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---


(ジェネシック・エレクトロニクス本社前)



デュエリストA「時間だぁ!!おっぱじめっぞおおお!!」


デュエリストB「いっくぜえええ!!」


社員A「くそっ!除け!どこに行った!?」


デュエリストA「よし!まずはそこのお前だ!!」


デュエリストC「オッケー!!」


社員B「警備の者もこちらへ寄越せ!逃がしてたまるか!」


デュエリストB「俺も俺も!!」


デュエリストD「相手になろう。」


社員C「探せぇ!フードを被った連中だ!」


「デュエル!」
「デュエル!」
「デュエル!」


ビルの前に溜まっていた集団が一斉にデュエルを始める。



仁「………これは。」


夏武斗「なんだぁ!?これも大会なのか!?」


天音「いえ、こんなイベントは聞いたことがありません…。」


ロバート「こりゃあ……」


仁「…雇われだ。」


天音「えっ?」


仁「恐らくここにいる全員。しかし何故……」


仁(それに様子がおかしい……何故雇われに加えジェネシック社員がこんなに…!?)



夏武斗「ん?」

光り出す一枚のカード。



夏武斗「ヴィクトリー……ビートル?」


ヴィクトリー・ビートルを持ちながらスタスタと脇道に歩き出す夏武斗。



天音「夏武斗君…一体どこに…!?」


夏武斗「なんか……こっちに引っ張られるような…そんな気がする。」


仁「何…?」


夏武斗「なんだろう…よく分かんねえけどこっちだ!」


天音「あ、待ってください!」


仁「っ……」








ロバート「………」


ロバート「ジェネシック本社…か。」





--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---



(ジェネシック本社・裏出入り口前)



夏武斗「………!!」


走り続ける夏武斗。


天音「夏武斗君、待って!」


仁「……こちらには人が居ないのか。」


夏武斗「ヴィクトリー・ビートル……一体どうしたってんだ?」





裏出入り口から飛び出してくるフードの3人組。




アリス「あ~あ~皆して必死にあっち探しちゃって……馬鹿かっつ~の。」


ヴァルト「急ぎましょう。気付かれるのも時間の問題です。」


アリス「まぁでも、また邪魔するのが居たら寝かせときゃいいんでしょ?」


女の子「できるだけ穏便に済ませなきゃ駄目。お姉ちゃんもマヘルもそう言ってたでしょ。」


アリス「あんだけ派手にやっといて今更穏便って言われてもねぇ。」


ヴァルト「アリス様…今優先すべきことをお忘れなきよう。」


アリス「わかってるわよ!どうせこっち側に人なんていな……えっ!?」




鉢合わせする6人。




夏武斗「なっ…!」


アリス「なんでこっちに人が…!」


ヴァルト「慌てる必要はありません…!たったの3人です。」


天音「夏武斗君!…えっ?」


仁「これは…!!」


女の子「くっ…!」

手にした装置を強く抱え込む。


仁「…そういうことか。」


夏武斗「えっ?」


仁「正面の雇われ連中はカムフラージュ……派手に暴れさせて内部の人間の目を逸らす為のおとり。」


仁「そして貴様等は……ビルに潜入したコソ泥といったところか。」


天音「!?」


アリス「ちょっと双葉(ふたば)!あんたのせいで全部バレてんじゃないのよ!」


双葉「ちょっとアリス!声が大きい!」


ヴァルト「…アリス様、更に墓穴を掘らないでください。」


夏武斗「ホントに泥棒だってのか!?」


夏武斗(ヴィクトリー・ビートル……お前が教えてくれたのか…?)


ヴァルト「双葉、ここは先に行ってください…!」


アリス「ったく!それ奪われたらぶっ飛ばすわよ!」


双葉「分かってる…!」

別方向に走り出す。


仁「逃がさない…!」

空かさず走り出す。


夏武斗「仁!」


アリス「あんたの相手はあたしよ!」

夏武斗の行く先を塞ぎ、デュエルディスクを構える。


夏武斗「くそっ!やってやらぁ!!」

dPhoneを構える。


ヴァルト「ここを通すわけにはいきません……!」

ディスクを構える。


ヴァルト(双葉……どうかよろしくお願いします。)


天音「私も……こんなことは見過ごせません!」

同じくdPhoneを構える。


夏武斗「いくぞ!!」
天音「いきます!」








--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---



双葉の前方に現れる仁。


双葉「っ!先回り!?」


仁「ジェネシックはM.C.Cの提携会社……悪いがM.C.Cの社員となった以上、お前達を見過ごすわけにはいかない。」


双葉の背負ったトランクに目を向ける。


仁(盗品はあの中か…。)

dPhoneを構える。


双葉「どうも簡単に逃がしてはくれなさそうだね……!」

ディスクを構える。


仁「…行くぞ。」







dPhoneモードチェンジ!Dパッドモード!



ターゲットロックOK!



ビジョンリンクOK!



ファーストディールOK!



6人「デュエル!!」

















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(次回予告)


天音「ジェネシックに盗みに入るなんて…一体何者!?」


夏武斗「ヴィクトリー・ビートル……もしかしてこいつらに反応したのか…?」


天音「急すぎてちょっと状況が見えませんが……この人達を倒さなければいけないのは間違いないみたいです!」


夏武斗「よく分かんねえけどそうだな!泥棒だってんなら懲らしめてやるぜ!」


夏武斗「次回!『謎の窃盗集団』」


夏武斗「俺たちみんな本戦出場決めたんだ!!そう簡単にゃやられねえぜ!!」

--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---
・一応補足ですが、次回は2on2や3on3ではなく、1対1を並行で3戦やることになります。
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ター坊
荒い手口で強奪とは超展開…いや、異世界に飛ばされたり、デュエリストが変形しないだけ普通の展開か。
そして仄かに怪しい匂いを出すヴィクトリー・ビートル、やはりキーカードか。
(2016-02-21 19:45)
ギガプラント
コメントありがとうございます。
Dホイールと合体して走りながらコースを破壊したりしてないしこんなんまだまだ普通ですよね!!
まだまだみんな人間です! (2016-02-21 19:48)

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