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HOME > 遊戯王SS一覧 > 09:純粋なる悪意

09:純粋なる悪意 作:ほーがん

第9話「純粋なる悪意」



「そういうことだ。ああ、奴はここに居る。」




「な、なぁ・・・ジェイミーさん、それって・・・」

恐る恐るカケルは近づき、声を掛けた。

「ん?ああ、カケル君か。これかい?・・・さっき闘技場に落ちててね。」

神妙な顔つきでジェイミーはそのカードを見つめる。

「な、なんだ・・・落ちてたのか・・・。」

ほっと胸を撫で下ろすカケル。しかし、その直後にハッとして口を開いた。

「って、落ちてたのか!?ペンデュラムカードが!?」

ジェイミーはそのカードをポケットに仕舞い込んだ。

「もしかすると、カポネの言っていたペンデュラムカードを売っているという商人の物かもしれない。」

「ってことは、あの闘技場に・・・!」

ジェイミーは頷く。

「ああ。マサカーの関係者が来ているんだ。・・・ユーガの元へ急ごう。」




一方、ユーガは。


「止めだ!!《アライブナイト・ジャックス・レイ》で《仮面呪術師カースド・ギュラ》を攻撃!!」

白銀の騎士は剣を振りかざす。その一撃は仮面の魔人を切り裂いた。

「そ、そんなぁ!こんなの、認めないかんなー!!!(LP1000→0)」

仮面の男は騎士の斬撃により吹き飛んだ。


『勝者:ユーガ』


実況が叫ぶ。

『あっという間の決着!!凄まじい強さを見せつけて勝利を掴んだのは、さすらいの旅人ユーガだぁッ!!!』

会場が歓声に包まれる。

「すげぇぜユーガ!!!」

「今度もあんたに掛けさせてくれ!!!」

観客の声を聞き流しながら、ユーガは一息吐くとディスクを仕舞った。

「これである程度の資金は稼げたか。」

ステージから立ち去ろうとした、その時。

「・・・いやぁ、素晴らしい。さすがだなぁ。」

拍手をしながら、一人の男がステージへと上がって来た。

『おおっと、乱入者か!?』

実況の声にユーガは振り向く。

「誰だ。」

身構えたユーガ。その男は笑いながら言う。

「嫌だなぁ、俺を覚えてないのか?ユーガ君。」

薄暗い闘技場の下では、その顔はよく見えない。

「俺に何の用だ。」

男は相変わらず薄ら笑いを浮かべている。

「あぁ、探していたよユーガ君。”あの日”から君をずっと・・・ずっとね。」

「!?」

ユーガの背中に悪寒が走る。男は言葉を続けた。

「あの賞金稼ぎは結局、仕事を果たさなかったみたいだし・・・直接ここに来た方が早いと思ってさ。」

「お前は・・・誰だ!!」

それを聞き、男は1枚のカードを取り出しユーガに見せた。

「ああ、申し遅れたね・・・俺の名前は・・・」

「っ!!そのカードは!!」

2つの色を持つカード。世界に破滅をもたらした力。

「リチャード・ベン。・・・君の大嫌いなマサカーさ。」

「ま、マサカー・・・!!」


ついに邂逅した。今まで探し続けていた、敵。ユーガは血が滲むほどに拳を握り込むと、怒りのまま叫び、飛び出した。

「う・・・あああぁぁぁ!!!」

ユーガの拳をひょいと躱すと、リチャードは笑う。

「おお、思ったより元気そうだ。健康で居てくれて良かったよ。」

「があああ貴様!!しね!!しねぇぇぇえええ!!!」

間髪入れず振り返ったユーガは、リチャードに掴み掛かろうと手を伸ばした。だが、それよりも先にリチャードはユーガの頭を掴む。

「おいおい、落ち着け・・・よっ!!」

掴んだ手に力を込めたリチャードは、そのまま腕を振り上げユーガの頭を床に叩き付けた。

「かはぁっ・・・・」

床に激突したユーガの意識が一瞬霞む。リチャードは手をはたくと溜め息をついた。

「ったく、もっとクールになれよ、ユーガ君。」

「き、貴様・・・!!俺を殺しに来たのか・・!!最後の生き残りを殺しに!!!」

上体を起こしながらユーガは問う。

「ん?殺しに?いいや、俺はユーガ君自体が必要だから探していたんだけど。」

「俺が・・・必要・・・だと・・・じゃあ何故皆を殺した!!!何故だ!!!何故!!!」

よろけながらも立ち上がるユーガ。リチャードは飄々とした態度で言う。

「”シラミ潰し”ってやつだよ。一つずつ潰して行かないと分からない事ってあるだろう?しっかし、ヨシトは面倒くさい事してくれたよなぁ。」

「許さない・・・俺は貴様らを・・・」

ユーガは恨み、憎しみ、殺意を込めた眼光でリチャードを睨みつける。

「別にユーガ君に許して貰おうなんて思ってないよ?というか、許して貰わなきゃいけないような悪い事してるつもり無いんだけど。これって、仕事みたいな物だし。」

極限の怒りに震え、ユーガはディスクを展開する。

「・・・叩き潰す!!!」

「ん?ああ、デュエル?こっちとしても手間が省けるし、いいよ。ただ、君は絶対に勝てないけど。」


二人のやり取りを見ていた会場は困惑し、静まり返っていた。

『ああ・・・ええと。ど、どうやらデュエルをするようだけど・・・。』

実況が弱々しく口を開く。ユーガはそれを掻き消すほどの声で叫んだ。


『デュエル!!!(LP4000 VS LP4000)』


リチャードは笑って言う。

「先攻はあげるよ。せいぜい、この1ターンでペンデュラムへの対策でもすればいい。」

ユーガは震える手で手札のカードを取り出した。

「俺は・・・《アライブナイト・ウェイス(☆4/光/戦士/1700・1300)》を召喚・・・!!」

白き甲冑に身を包んだ剣士がユーガに前に現れる。

「そして、残りの手札を全て伏せる!!!」

場に4枚のカードがセットされた。それを見たリチャードは関心したように口を開く。

「へぇ、その伏せカードでなんとかしようって事?まぁ一応、正攻法かな。」

「俺はターンエンド。」

ユーガは睨みつけたまま、ターンを渡した。


リチャードはデッキに手を伸ばす。

「さーて、見せてあげようかな。君のお仲間をたくさん、たくさん殺した召喚法をさぁ。俺のターン!!」

その言葉にユーガは、爪が食い込み血が流れるほど拳を固めた。リチャードは手札のカードを2枚取り出し宣言する。

「俺はスケール1の《BS(バーンアウト・スピーダー)トライアルモトクロス(☆4/地/機械/ペンデュラム/2000・0)》とスケール5の《BSソニックフォーミュラ(☆4/風/機械/ペンデュラム/2000・0)》でペンデュラムスケールをセッティング!!」

浮かび上がる2本の光。それを見た観客達は驚愕する。


「あ、あれは、世界を滅ぼした・・!!!」

「なんか、やばくねぇか・・・!?」

「やべぇ!!に、逃げろ!!!」


一斉に逃げ惑う観客達。闘技場は一気に混乱に陥った。リチャードは満足そうに笑う。

「ああ、良いね良いね。恐怖と畏怖。自分が世界を滅ぼした力を持っていると実感できる。良い!!この強さだ!!」

「・・・俺はリバースカードを発動!!」

その時、ユーガの場でカードが開く。

「カウンター罠《アンチエフェクト・アライブ》!!自分の場に「アライブナイト」が居る場合に、相手が発動した魔法・罠カードを無効にし破壊する!!俺はペンデュラムスケールの《BSトライアルモトクロス》を無効にし、破壊する!!」

リチャードの場にそびえた光の柱の内、一本が消滅する。リチャードは相変わらずの笑い顔で言った。

「へぇ、ペンデュラムゾーンに発動したペンデュラムモンスターは魔法扱いになる。それを見越した上でのカウンターか。やるじゃん。」

そんな態度も気にせず、ユーガはもう一枚の伏せカードを開いた。

「俺はもう1枚のリバースカードを発動!!速攻魔法《サイクロン》!!《BSソニックフォーミュラ》を破壊する!!」

表示された魔法カードから暴風が発生し、残りの柱が消えた。ユーガのその行動に、リチャードは拍手をする。

「フィールドで破壊されたペンデュラムカードはエクストラデッキに入る。・・・意地でもペンデュラムを許さない、そんな意志が見えるね。良いじゃん、その殺意、その憎悪。でもさぁ、意味ないんだよねぇ・・・。」

リチャードはエクストラデッキに入ったカードをユーガを見せつけ、言った。

「《BSソニックフォーミュラ》の効果発動!!このカードが戦闘・効果で破壊された時、デッキから「BS」ペンデュラムモンスター1体を特殊召喚する!!俺はデッキから《BSデッドヒーター(☆4/炎/機械/ペンデュラム/2000・0)》を特殊召喚!!」

マフラーから火を噴くレースカーがフィールドにタイヤ痕を付けた。

「そして、《BSデッドヒーター》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「BS」ペンデュラムモンスターを手札に加える!!俺はデッキから2枚目の《BSトライアルモトクロス》を手札に加える!!ふふっ、あはは!!な?意味ないって言っただろう?これがペンデュラムの良い所なんだよねぇ・・・。」

ユーガは憎悪の表情に顔を固めたまま、口を開いた。

「俺はリバースカードを発動!罠カード《ドッペルナイト》!相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合、そのモンスターと同じ攻撃力・守備力を持つ「ドッペルナイト・トークン(☆4/闇/戦士/2000・0)」を特殊召喚する!!」

白銀の剣士の隣に、幻影の騎士が浮かび上がる。

「壁でも増やしたつもり?意味ないんだって。俺はスケール1の《BSトライアルモトクロス》を再び、ペンデュラムスケールにセッティング!!」

またしても浮かび上がる光。ユーガの顔がどんどん憎悪に歪んで行く。


とうとう、観客も実況すら逃げ出し闘技場から誰もが消えた。その時、入り口のドアが勢いよく開く。

「ユーガ!!」

飛び込んで来たカケルは、ステージ上に浮かぶ光の柱を見て焦燥にかられた。

「クソっ、遅かったか!!」

「あれは、ペンデュラム。やはり、マサカーの関係者が・・・」

後から入って来たジェイミーが呟く。

「しかし、こうも早くユーガと接触を謀るとは・・・マサカー、奴らの目的は一体・・・いや、それよりもどこから侵入して来たのか、まずそれを・・・」

一人でブツブツと喋っているジェイミーに、カケルは怒鳴った。

「なぁ、ジェイミーさん!!あんたもユーガと同じ村の生き残りなんだろ!?なのに、なんでそんな落ち着いて分析してられるんだよ!!関係ない俺がこんなにも焦りと怒りで震えてるってのに、なんであんたは平気なんだよ!!」

「か、カケル君・・・」

カケルはどんどん詰め寄る。

「ごたごた喋る前に、なんで怒りが涌いて来ないんだ!!あんた、本当に”村”の生き残りなのか・・・!?」

「・・・」

ジェイミーは黙り込んだ。そして、ふとステージの方を見つめると、ゆっくりと口を開いた。




「・・・なぁリチャード。やっぱり、俺に演技は向いてないみたいだ。」




カケルは固まった。

「は・・・?じ、ジェイミーさん・・・?」


ステージの上。リチャードはジェイミーに向かって言う。

「おいおい、いいのか?もうちょっと粘ってもさぁ・・・」

ジェイミーはステージへと足を進める。

「まぁ、いいじゃないかリチャード。こうして目的の”ブツ”は見つかった訳だし、お前にしっかりと預け渡した訳だしさ。」

「確かに。じゃあ、ジェイミー。長い間お疲れさん。いい演技だったぜ。」

笑い合う二人。カケルは震える声で言った。

「・・・おい、ジェイミーさん。そいつペンデュラム使いだろ・・・?なんで・・・」

その言葉に、ステージ上のリチャードが口を挟む。

「はいはい、俺が説明しますよ。そこに居るのは賞金稼ぎのカケル君だよね?ジェイミーは俺達マサカーの一員で、ずっと”村”にスパイとして潜伏して貰ってました!ヨシトと共に戦ったなんてもちろん嘘だし、そもそも村の場所を俺達、他のマサカーに教えてくれたのもジェイミー君でーす!それから、ヨシト殺したのも確かジェイミーだったよね?あ、一応言っておくと君たちが探してたペンデュラムカードをこの街に横流ししてた商人は、この俺、リチャードだけどね。」

「おいおい、リチャード。・・・まぁ、そういう事だカケル君。俺はリチャードと随時連絡を取っててね。ここにユーガが居る事を教えたのも俺だ。」

カケルは震える手でディスクを構えた。

「・・・手配所・・・リチャード・・・そういう事か・・・俺は魔法カード《武装融合》を発動!!!」

カケルは飛び出した。

「《I・Bドラゴン・マイデン》!!!ぶった切れぇぇぇ!!!」

突如、ジェイミーの真上に竜の勇者が剣を振りかざし出現する。それを見たジェイミーは透かさず、先ほどポケットに仕舞い込んだペンデュラムカードを取り出し、自分のディスクに叩き付けた。

「・・・俺は《BFM(ブラックフェザー・マサカー)ー暴虐のペイン》を召喚。」

ジェイミーの前に現れた悪しき鳥人は、勇者の一撃を片手で押さえ込む。カケルは怒りの涙に頬を濡らし、叫んだ。

「ふざけんなぁぁぁ!!!ユーガは!!!ユーガはどんな気持ちでぇぇぇ!!!」

「はぁ・・・知らないよ。弱くて逃げるしかなかった自分が悪いだけだろう?」

リチャードはユーガの方へ向き直った。

「さて、あっちはジェイミーに任せるとして、続きを始めようか。俺は《BSトライアルモトクロス》のペンデュラム効果を発動!1ターンに1度、エクストラデッキの「BS」ペンデュラムモンスターをもう片方のペンデュラムゾーンにセットできる!俺は、さっき破壊された《BSソニックフォーミュラ》を再びセッティング!!」

「・・・さない・・・」

小さく呟いたユーガにリチャードは聞き返す。

「は?何?なんか言った?」

その時、ユーガは豹変し叫んだ。


「・・・許さない!!許さない!!許さない!!許さない!!許さない!!許さない!!許さない!!許さない!!許さない!!許さない!!許さない!!許さないぃぃぃ!!!あああぁぁぁあああ!!!」


それを横目で見たジェイミーは呟く。

「・・・また来たか・・・デュエルロイドの本能が。」

怒号を飛ばすようにユーガは叫びながら言う。

「俺はリバースカードを発動!!罠カード《生への代償》!!このカードは自分がモンスターを特殊召喚した相手ターン中にライフを100残るように払って発動できる!!自分フィールドのモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの属性の数だけデッキからカードをドローする!!!(LP4000→100)」

ユーガの場のモンスターが砕け散る。

「破壊したモンスターの属性は光と闇!!よって、俺はデッキから2枚ドローする!!!」

リチャードは興味津々で訊ねる。

「え?なになに?何を見せてくれんの?」

引いたカードを見たユーガはそのカードを掲げた。

「そして!!!このカードは自分フィールドのモンスターが2体以上破壊された場合に特集召喚できる!!!」

ただでさえ薄暗い闘技場のステージを闇が包んで行く。


「穢れし闇の甲冑よ!!踏みにじられた死者の魂を背負い、今再び、この現世に舞い戻れ!!!現れろぉぉぉおおおぉぉ!!!《コープスナイトロード・シャッタード・グラス(☆8/闇/アンデット/?・?)》!!!」


闇の中から出現したのは漆黒の巨人。その巨人は怒りに震える咆哮を上げた。

「そうか、なるほどねぇ・・・。」

リチャードは何か含みのある笑みを見せる。

「《コープスナイトロード・シャッタード・グラス》の効果発動!!このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールドの魔法・罠カードを全て除外し、このカードの攻撃力・守備力は除外したカード1枚につき1000の数値になる!!」

巨人は掌から闇を放ち、リチャードのペンデュラムカードを消し去った。

「これで、《コープスナイトロード・シャッタード・グラス》の攻撃力・守備力は2000となる!!!(ATK2000 DEF2000)」

ユーガの形相を見て、リチャードは大声で笑った。

「あっははは!!いやぁ、すごいな。さすが一人生き残っただけはあるね。そこまでしてペンデュラムを邪魔するか。けどさぁ・・・」

しかし。リチャードは余裕の表情で手札のカードを取り出す。


「その程度で対策できるなら、世界は滅びないよねぇ・・・!!!俺は魔法カード《パラレル・ペンデュラム》を発動!!!」


リチャードの場にカードが表示される。邪悪な笑みを浮かべ、リチャードは叫んだ。

「このカードは、まだペンデュラム召喚を行っていないターンに発動できる!!除外されているペンデュラムカードを再び、自分のペンデュラムゾーンにセットする!!!」

突如、次元の裂け目がフィールドに発生し、そこからリチャードのペンデュラムカードが飛び出した。

「俺は除外されているスケール1の《BSトライアルモトクロス》とスケール5の《BSソニックフォーミュラ》でペンデュラムスケールをセッティング!!!」

またしてもリチャードの場に光の柱が浮かび上がる。

「この効果でセッティングしたペンデュラムカードは、このターン相手の効果を受けない!!これでもう、破壊や除外は不可能になった!!さぁ、しびれる瞬間だぜぇ・・・!!!」

そして。リチャードは手札のカードを取り出し、叫んだ。


「ペンデュラム召喚!!!来い、俺のモンスター達よ!!レベル4《BSダート・マスター(☆4/地/機械/ペンデュラム/2000・0)》《BSドラッグ・ストレート(☆4/闇/機械/ペンデュラム/2100・0)》!!!」


ついに許してしまった。ペンデュラム召喚。世界を壊した力。邪悪な力。

「うううぅうぅうう!!!」

ユーガは頭を抱え唸った。リチャードは高らかに笑う。

「あはははっ!!!どうした大嫌いなペンデュラムだぞ!!?もっと怒れ!!もっと憎め!!あはははっ!!!」

「ううぅぅあああぁぁぁ!!!」

もはや、ユーガの叫喚は言葉にすら成らなかった。リチャードは無慈悲にも言い放つ。

「俺は《BSダート・マスター》の効果を発動!!このカードのペンデュラム召喚に成功した場合、ターン終了時まで相手は魔法・罠カードを発動できない!!そして《BSドラッグ・ストレート》の効果も発動だ!!ペンデュラム召喚に成功した時、相手フィールドの攻撃力が最も高いモンスターを破壊する!!消え去れ、愚鈍な巨人よ!!!」

漆黒の巨人の身体に亀裂が入る。悲しみの断末魔を上げ、巨人は無惨に砕け散った。

「あっはははぁ!!強いぃぃ!!ペンデュラム!!良い!!最高だぁ!!この強さ、これこそが素晴らしい!!!強くなければ、全ては存在する意味がないぃぃ!!!」

リチャードは狂気に満ちた笑い声を轟かせた。ジェイミーはそれを一瞥し、呟く。

「・・・あれがリチャードの悪い癖だ。もう少し静かな男になってくれればな・・・」

「よそ見をするな!!お前の相手は俺だぁぁぁ!!」

再びモンスターで切り掛かるカケルを見て、ジェイミーは不服な顔をする。

「はぁ、しつこいな君は。行け、《BFMー暴虐のペイン》!!」


リチャードは狂った笑みのまま、ユーガを指差す。

「さぁ、フィニッシュだぁぁ!!《BSダート・マスター》でダイレクトアタック!!!」

その言葉に合わせ、場のラリカーはバーンアウトを始めた。その後輪から白い煙が溢れる。

そして、そのラリカーは一直線にユーガへと走り出した。



その時。



「私は手札の《強化恐竜バリアー・ランフォル(☆4/闇/恐竜/100・2200)》の効果を発動!!このカードを手札から捨てる事で、このターンのバトルフェイズを終了する!!」

突如として、ラリカーの前に改造された翼竜が飛来する。ギリギリの所で攻撃を阻まれたリチャードは叫んだ。

「ちっ、最後の仲間か・・・!!邪魔しやがって!!!」

ステージ横から飛び出し、ユーガの隣に着地したリンカは口を開く。

「すまない、遅くなった。」

しかし。ユーガからの返答は言葉ではなくただの唸り声だった。

「うぅううぅうぅ・・・!!!」

「ユーガ・・・そうか。また、あの力が・・・。」

リンカの姿を確認したカケルは叫んだ。

「リンカ!!こいつは、ジェイミーは裏切り者だったんだ!!!」

それを聞いたリンカは頷く。

「見ればわかる。私は元々、そいつをあまり信用して居なかった。それよりも、貴様!!」

リンカはリチャードを指差す。

「ユーガに手を出してみろ!!!この私が引き裂いてくれる!!!」

その言葉にリチャードは笑った。

「へぇ、これが友情ってやつ?良いねぇ、泣かせるねぇ!!だけどさぁ、これは防げるかなぁ・・・!?」

怪訝な顔をするリンカ。リチャードは手札に残った最後の1枚を掲げた。

「魔法カード《記憶の扉(メモリアル・ドア)》!!!」

それを見たジェイミーは、リチャードの思惑を察する。

「リチャード、ここでやる気か・・・」

リチャードは叫んだ。

「このカードは特別なカードだ!!!その効果により、相手の記憶をこじ開ける!!!」

その魔法カードから徐々に怪しい光が漏れ出す。

「さぁ見せろ!!!ユーガ!!!ヨシトから受け継いだ記憶を!!!我が主君へと続く道を、その記憶で示せ!!!」

光は段々と輝きを増して行き、ユーガへと降り掛かろうとした。


しかし。


「・・・守る。私は・・・そう決めた!!!」

リンカはユーガを押しのけ、光の前に出た。

「何っ!!貴様!!」

予想外の行動に、リチャードは動揺する。


そして、リンカは眩い閃光に包まれた。

「くっ・・・ああああっ・・・!!!」


カケルが頭を抱える。

「なっ、なんだこれ・・・り、リンカの記憶が・・・頭に入って来る・・・!!?」











それは、ずっと仕舞っていた。ずっと隠して来た記憶。


いや。


私の ”罪”



次回 第10話「過ち」
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ター坊
他人の記憶をこじ開けるカードなんてアリなのか?
デュエルロイドやヨシトから受け継いだ記憶など意味深なワードが続々と出て物語が一気に加速する。 (2016-02-13 07:59)
ギガプラント
面白いことになってまいりました。裏切りもお約束ながら燃える展開ですね。
記憶をこじ開けるなんてなんと恐ろしい…女の子の記憶をこじ開けるなんてなんかちょっと…イヤナンデモナイ (2016-02-13 11:09)
ほーがん
コメントありがとうございます。
>ター坊さん
敗者の魂を封印するカードや、次元を移動するカードがあったりしますし、記憶を開けるカードくらい遊戯王の懐の深さなら大丈夫と思いたいです。
色々、物語の核心に迫る単語を出しました。これから展開を加速させていく予定です。お楽しみに。
>ギガプラントさん
某ベクターほどではないですが、ジェイミーも中々ゲス野郎にできて満足です。
さて、次回リンカの記憶が明らかになりますが、如何わしいものにはならないのでご安心くださいw (2016-02-16 04:18)

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