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HOME > 遊戯王SS一覧 > TURN 35 一掃―証の真実―上

TURN 35 一掃―証の真実―上 作:Dann

 「俺らが勝ったのはいいが……」
 「他はどうなってるかしらね」

 悠美とセキュリティの青年、零時は周りを見た。

 雀夜【LP:200】vs黒ロボット【LP:1000】

 「手古摺らせやがって……《オシリス》で《マジカル・アンドロイド》を攻撃! “サンダー・フォース”! 昇天-ア-がれ!!」

 【ATK/4000 vs ATK/2400】
 【LP:0】

 勝者――遊幻 雀夜。

 「ふぅ……」
 『ふむ。中々やるではないか』

 攻撃を終えて雀夜の下へ降りてきたオシリスの言葉はそれだった。

 「今までも何度か決闘に出しただろ?」
 『ふむぅ……その時の事は覚えてない』
 「さいですか……」


 葵【LP:400】vs黒ロボット【LP:1900】

 「やっと伏せが尽きた……《アームズD・T-ブレード》、“サテライト・トランスフォーム”!」
 【ATK/2400 ★7】

 「永続魔法《エレクトロ・シールド》発動し、《ブレード》の効果を発動。手札を1枚捨てて攻撃力を守備力の半分アップする」

 《エレクトロ・シールド》には自分の場の《アームズD》の守備力を800ポイントアップする効果がある。
 【DEF/2000→2800】

 「“ナイフ・セパレーション”!」

 守備力は変化しているため、《ブレード》に加わる攻撃力も変わる。
 【ATK/2400→3800】

 「バトル。《ブレード》で《ヒュンレイ》を攻撃! “サーズド・バンブレード”!」

 【ATK/3800 vs ATK/2300】
 【LP:400】
 《XX-セイバー ヒュンレイ》を戦闘破壊。

 「罠カード、《ハンド・ブラスト》! 手札のモンスターカードを墓地に送り、そのモンスターのレベル×100ポイントのダメージを相手ライフに与える!」
 葵が捨てたのは《ラーの翼神竜》。

 【★10 DAMAGE:1000】
 【LP:0】

 勝者――神崎 葵。

 「か、勝った……!」
 『見事だ、葵』

 墓地から不死鳥の如くラーが現れ、葵に声を掛けた。

 「うん、ありがとう。後は……真と狩だね」

 狩【LP:600】vs黒ロボット【LP:800】

 「そろそろ、その戦略飽き飽きしてきた……ぶっ潰す」
 〔?〕
 「俺は場の《シュート・ビルダー》をリリース。《クラッシュ・ビルダー》をアドバンス召喚」
 【ATK/2200 ★5】

 狩が召喚したのは両腕に巨大な鉄の塊を備えたボディビルダーだった。

 「《クラッシュ・ビルダー》の効果発動。墓地からレベル3以下の《ビルダー》1体を特殊召喚する。《シュート・ビルダー》を復活」
 【ATK/1800 ★3】

 《クラッシュ・ビルダー》は両腕の鋼鉄をぶつけ、その破片の中から既に朽ち果てた《シュート・ビルダー》が現れた。

 「レベル5の《クラッシュ》にレベル3の《シュート》をチューニング……!」
 【★5+★3=★8】

 「疾走する本能よ、己が力の極みを求めここに降臨せよ! シンクロ召喚! 破壊の限りを尽くせ! 《デストロイ・ビルダー・ドラゴン》!」
 【ATK/3000 ★8】

 《ジーグ》の姿に似た、翼を鋼鉄の装甲で覆い、《デストロイ》の名に相応しい破壊衝動を露にした暴竜が降り立った。

 「《デストロイ》の効果発動! シンクロ召喚時に手札を全て捨てる事で、その数だけ相手フィールド上のカードを破壊する……」
 狩【手札:2】

 「お前の《暗黒界の龍神 グラファ》、《魔轟神レイジオン》を破壊! “タクティカル・デス・プレス”!」

 《デストロイ》は咆哮と共に《グラファ》と《レイジオン》を踏み潰した。

 〔……!〕
 「《デストロイ》で直接攻撃! “アルケミック・デストロイヤー”!!」

 【ATK/3000 vs LP:800】
 【LP:0】

 勝者――獣田 狩。

 『狩、お疲れ……』

 オベリスクが決闘を終えた狩に声を掛けた。

 「ああ……真も、もう終わりか」

 真【LP:1000】vs黒ロボット【LP:2500】

 「ふぅ……行くぜ。《マスクド・ウォリアー・ビートル》の効果発動! 手札を1枚捨てる事でスロットルカウンターを1つ乗せる。俺は3枚全て捨てるぜ!」

 《ビートル》はベルトにバックルとして取り付けられた《マスクド・コア》のスイッチを3つ連続で押した。

 『One_Two_Three』

 「そして《ビートル》の効果発動! スロットルカウンターを3つ取り除き、相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを戦闘ダメージとして相手ライフへ与える!!」

 《マスクド・コア》の角を、《ビートル》が分厚い鎧を纏った姿の時の状態に戻し、再び脱皮した時の状態に操作した。

 「“ライダー……キック”!」
 『Rider_Kick』

 《ビートル》が《マシンナーズ・フォートレス》目掛けて飛び蹴りを放った。
 《フォートレス》は爆発し、その中に凛と立つ《ビートル》は上を、空を、天を指差していた。

 「《フォートレス》の攻撃力は2500。その攻撃力分の戦闘ダメージを受けてもらうぜ」
 〔!!!〕

 【LP:0】

 勝者――小野寺 真。

 『《ビートル》か……正に天の道を往き、総てを司るモンスターだな』
 「色々と危ないからそれは言うなウリア!!」

 ウリアの大人の事情に引っ掛かりそうな危ない発言に真が突っ込んだ。

 「でも、これで全部みたいだな」

 真は“ID”の全員で倒し、砕け散った黒ロボット達の残骸を見渡した。

 「しっかしよぉ、厄介なデッキばっか使いやがって……」

 雀夜は気だるそうに呟いた。

 「さて、騒ぎは片付いた事だし、この変態は連行するぜ」
 「おっと、折角“ID”が6人揃ったんだからここで捕まるわけには行かないわ♪」

 零時は悠美の腕を掴もうとしたが、素早く悠美はそれをかわす。

 「アイ……ディー……?」
 「それは後で説明してやる。セキュリティになったんだな……零時」

 雀夜はデュエルディスクを閉じながら、零時に踏みよった。

 「……雀夜……」

 零時は雀夜の顔のマーカーを見て悲しげな表情を浮かべた。

 「さて、帰るかぁ~」
 「ああ……」
 「うん」
 「上がらせて貰うわ~」
 「おう」
 「……事情は聞かせてもらう。こいつを逮捕するのはそれからだ」

 『お、おい……こいつら片付けないのか?』

 フィニーはその場に散らばった黒ロボット達の残骸を片付けようとしない雀夜達に突っ込んだ。
 が、諦めて主の下へと飛び去った。





 暗かった。
 そこにはとてつもない闇が広がり、蔓延っていた。
 闇の中には人影が数個あった。

 「やはり“ο”程度では、奴等の始末はならなかったか……」
 「まあ、最初から期待なんてしてなかったけどね~」
 「ちぃ……役立たずの機械共め」
 「だがどうする? 残る“ID”は1人となったぞ?」
 「“三幻神”、“三幻魔”……そして残るは“幻狂鬼”か」
 「どうせすぐに“ID”は揃ってしまうわ。今まで何度か“幻狂鬼”には攻撃してきたけど、全部失敗してるし」
 「その結果は“幻狂鬼”だけの話ではないだろうがよ~、“λ”」
 「ま、そうなんだけどね」
 「よろしい。ならいっその事全員集めて、その上で全員を叩いてやるか」
 「じゃあ、この結論で決定かしら?」
 「そうだな」
 「うむ。では今回は解散だ」





 雀夜宅。

 「へぇ~。結構広いじゃない?」
 「けど俺一人で住むには広すぎるんだよな……」

 悠美が関心していると、雀夜は溜息をついた。

 「ここが……今の雀夜の家か……」
 「ああ。セキュリティから貰った……」
 「……そうなのか」

 零時の表情は未だ重かった。

 「さて、“ID”に付いてだが……」
 「それはハモン達の方が詳しいでしょ?」
 『そうね。じゃあ、改めて“ID”について説明しましょうか』

 ハモン達が姿を現し、“ID”について説明を始めた。

 『“ID”の略は“Ⅰ(アインス)Diviner”、第一段階の預言者って意味よ』

 『……』
 「おい待てフィニー」

 肩から飛ぼうとしたフィニーを雀夜は掴み、その目を見つめた。
 とても黒い目で。

 『あら、何かあった?』
 『い、いや……別に……』
 「まあいい、話は後だ。続けてくれ」

 雀夜はフィニーをがっちりと掴みながら再びハモンに目を向けた。

 『え、ええ。で、その“ID”って言うのは、世界が事前に危機を察知して、神やら幻魔やらに相応しい決闘者を選択させて、その危機と戦わせるってシステムよ』
 「だが、ハモン。今この世界には“シグナー”も居るだろう? 何故“ID”なんて存在がいるんだ?」

 狩はハモンに尋ねた。

 『ん~。強いて言えば、それだけじゃ足りないから……かしらね』
 「……ふむ。なるほど」

 ハモンの返答で狩は納得した。

 『“ID”は全部で7人。オシリスと“疾風”の証を持つ遊幻 雀夜。
 ラーと“太陽”の証を持つ神崎 葵。
 オベリスクと“地割れ”の証を持つ獣田 狩。
 ウリアと“炎”の証を持つ小野寺 真。私、ハモンと“雷”の証を持つ影天 悠美。
 でもって今覚醒したラビエルと“闇”の証を持つ空 零時ね』
 「って事は、あと1人なの?」
 『ええ。残りの1体……あの子はちょっと危険ね……』

 葵の質問に答え、ハモンは難しそうに唸った。

 『まあ“ID”についてはこんな所ね』

 ハモンは説明を終えて、ふっと息をついた。

 「さて……フィニー。よくも俺らに嘘の情報言ってくれたな」
 『ハ、ハハ……ま、まあ雀夜、ここは落ち着いて平和的解決をだな……』
 「やかましい。焼いて食うぞ」

 怒りを見え隠れさせながら雀夜はフィニーの顔を揉みくちゃにする。

 『んがぁ~……ごぉぅ~……』
 『おいおい。あまり精霊を手荒に扱うなよ?』
 「? お前は……《サファイア・ペガサス》か?」

 背後から聞こえた声に雀夜は振り向いた。
 そこに居たのは翼にサファイアの宝玉を埋め込み、額に青い角を生やした白馬だった。

 「そうそう、忘れてた。私も精霊は持ってるんだよね~」
 「やっぱりか。さっきの決闘中に精霊っぽいの感じてたからそうじゃないかとは思ってたんだ」

 見ると悠美の周りには先ほど決闘に出た白虎や、翼に青い宝玉が埋め込まれた鷲。
 甲羅にエメラルドが埋め込まれている陸亀に、額に琥珀を埋め込んだ牙が6本ある象もといマンモス。
 首のところに紫色の宝玉が埋め込まれた鎧をつけた猫と、額と尾の先に紅玉のついた見た事も無い小動物が居た。

 『ルビィ~』
 「!」

 可愛らしい鳴き声に葵が反応した。

 「ああ、その子はカーバンクルのルビー。カーバンクルってのは伝説上の生き物よ」

 悠美は説明したが、葵は全く聞いてない様子でルビーを見つめていた。

 「か……」
 『ルビ?』

 視線に気付き、ルビーは葵に目を向ける。
 対して葵は目を輝かせてルビーを見つめていた。

 「かぁわいぃぃぃ!!♪」
 『ル、ルビィィ!?』

 いきなり飛びついて来た葵に驚きルビーは逃げ出した。

 「あ、待ってよ~!♪」
 「葵……壊れたか?」

 必死にルビーを追い掛け回す葵の姿を見た雀夜が呟いた。


//葵の本当のキャラが露見www
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